腰痛はほとんどの人が一生に一度は経験すると言われています。それほど多くの人を悩ませる腰痛ですが、痛みにはタイプがあり、それらによって痛みの原因を大まかに推測することができます。
腰痛の原因はいろいろありますが、原因によって痛みが生じるメカニズムも異なります。腰痛の原因やメカニズムを押さえた上での対処法や治療法を紹介します。
そして、整体で解決できる腰痛についても解説します。
目次
腰痛とは
腰痛とは、腰部(背中の下からお尻のあたりまで)に生じる痛みや張り、だるさといった不快感の総称です。座骨神経痛のように腰から脚を下っていく痛みも含まれます。
腰痛は、安静にしたり、適切な治療を行うことで、ほとんどの場合は遅くても発症後6週間以内に痛みが気にならなくなります。しかし、中には慢性化したり、重症化する場合もあるので、適切な対処が必要です。
腰痛は、日常生活において誰もが経験しうる痛みです。
腰痛の主なタイプ
腰痛は、腰部に生じる不快感のことですが、さまざまなタイプがあります。腰痛の主なタイプについて解説します。
動くと腰が痛い
安静にしていると何ともないが動くと痛いというタイプがあります。このタイプは腰の筋肉や背骨を構成する椎骨の関節に原因があることが多いです。
具体的には、腰の筋肉や靭帯の損傷、ヘルニアなど腰椎間板の問題など、腰部にある構造体のどこかがダメージを受けているなどです。このような場合は自己治癒することも多いので、安静にしてしばらく様子を見るのが一般的です。
慢性的に腰が重くてだるい
安静にしていても重くてだるかったりする腰痛のタイプもあります。このタイプは内臓疾患や脊椎(背骨を構成する骨)の異常が原因であることが多いです。
このタイプも軽微であれば自然に治癒することもあります。しかし、特に内蔵が原因である場合には癌や解離性大動脈瘤など命にかかわる病気の可能性もありますので、慎重な対応が必要です。
このような重篤な病気の場合には、腰痛のレベルが高く、ほかに吐き気や腹痛など様々な症状も併発することが多いので、諸症状に注意することが大事です。
腰痛の主な原因とメカニズム
腰痛にはいくつかのタイプがあることを先に述べましたが、次に、腰痛の原因と痛みが生じるメカニズムについて解説します。
姿勢
腰痛の原因の一つに姿勢があります。姿勢が悪くて前かがみになると腰椎が後方に湾曲して腰部の筋肉にかかる圧力は増し、その結果、筋血流量が減少します。
腰部筋肉の血流量が少ない状態が長期間続くと、腰痛が発生します。日常の生活において姿勢が悪く前かがみであると、腰痛になる確率が高まります。
ストレス
ストレスのような心理的要因により腰痛が生じることがあります。心理的要因による腰痛のメカニズムは明らかになっていませんが、考えられているのは血行不良です。
ストレスにより腰の筋肉の血管が痙攣を起こして血流が悪くなり、腰痛が生じると考えられています。ストレスによる腰痛は、特定の動きをした場合に、痛みがあったり無かったりと症状に一貫性が見られないのが特徴です。
ストレスによる腰痛は、そのメカニズムが複雑であることから、整形外科、精神科、内科、リハビリテーション科など総合的な治療が推奨されています。とりあえずは、ペインクリニックや痛みの治療経験が豊富な整形外科などを受診するのをおすすめします。
ぎっくり腰
ぎっくり腰とは、急に起こった腰の強い痛みの総称です。物を持ち上げるなどの動作をした時に起こることが多いですが、何もしていないのに起こることもあります。
ぎっくり腰の原因はさまざまですが、腰の関節や椎間板に力がかかって損傷(捻挫)したり、腰を支える腱や靭帯などが損傷したりして起こります。また、脚の方まで痛みやしびれがあったり、力が入らなかったりという症状の場合には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気の可能性もあります。
椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症
椎間板ヘルニアは、背骨の間のクッション材である椎間板が変形して飛び出し、神経を圧迫することを言います。腰や臀部が痛み、下肢が痺れたり足に力が入りにくくなったりします。
原因としては、重いものを持ったり、椅子に長く座るなど同じ姿勢を続けることで背骨に負荷がかかることがあります。また、水分の摂取不足による椎間板の乾燥や劣化が原因となるケースもあります。
水分が不足すると血液が濃くなって血行が悪くなり腰痛も増すので、水を十分摂ることは大切です。
脊柱管狭窄症は、腰椎において神経が入っている管(脊柱管)が、その周辺部にある黄色靭帯の肥厚により狭くなり中の神経が圧迫されることを言います。
症状としては、下肢のしびれ、疼痛、歩行障害などがあります。脊柱管狭窄症の原因は、腰を使う作業や肥満などで腰椎に負担がかかり、脊柱管の周辺にある黄色靭帯が肥厚することにあります。
どちらも放っておくと日常生活に支障をきたしますので、我慢せずに早めに整形外科にいくことをおすすめします。
妊娠、出産
妊娠、出産は腰痛の原因となります。妊娠が進むと、腰椎が後弯し骨盤が後傾することにより、脊柱安定化筋群および骨盤底筋群より構成される体幹支持機構が破綻しやすくなります。
体幹支持機構が破綻した状態では腰部の安定性を確保できず腰椎は過剰運動し、せん断などのメカニカルストレス(機械的刺激)が増えて痛みが生じます。妊娠や出産が原因の腰痛では、体を温めることで血流が良くなり痛みが緩和されます。
女性の方は妊娠時や産後に腰部が痛く感じたら、お風呂にゆっくり浸かる、温かい食べ物や飲み物をとる、使い捨てカイロを使うなどして腰や身体を温めると良いです。痛みがひどい場合には我慢せず、まずは産婦人科の担当医に診断してもらい、必要なら整形外科を紹介してもらいましょう。
内臓病や癌
内臓病や癌が原因で腰痛になる場合があります。この場合は、安静時も動作時も痛みの強さが変わらない場合が多いです。
腰痛が生じる内臓病としては、癌などの悪性腫瘍、胆嚢炎、尿路結石、胆石、胃十二指腸潰瘍、子宮内膜症、子宮筋腫、月経痛、などありますが、その他多くの病気で腰痛が起こることがあります。
重篤な内臓病が原因の場合では、腰痛とともに頭痛や肩こり、悪心、嘔吐、発熱、排便障害などを伴う場合があります。腰だけでなく肩や膝など体の他の部分に痛みを感じる、時間が経過しても少しも症状の軽減がない場合には、一度、内科での診療、検査をおすすめします。
骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、女性ホルモンの減少や加齢、栄養バランスの偏り、遺伝などにより骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。骨粗しょう症が進むと脊椎が弱くなり、少しの衝撃でも背骨がつぶれてしまうことがあり、これを圧迫骨折といいます。
腰椎(腰部の脊椎)が圧迫骨折を起こすと、腰椎の形が変形して神経が圧迫されるため、腰部が痛くなります。骨粗しょう症が原因の腰痛では、圧迫骨折が進まないように、まずはコルセットで腰を固定することで痛みを軽減し進行を止めます。
おおもとの原因である骨粗しょう症の治療は、カルシウムや薬物の摂取、骨を強くするためのウォーキングや筋トレといった生活習慣の改善が検討されます。骨粗しょう症の治療は、年単位の長い時間がかかります。
痛みが消えた、なかなか骨密度が上がらないといって、自己判断で治療や服薬を止めると元に戻ってしまうことが多いです。あせらず、じっくりと治療を続け、良くなってからも定期的な検査を行うなど慎重な対応が大事です。
腰痛の対処法と治療法
腰痛の原因とメカニズムについて述べてきましたので、次に腰痛の対処法について解説します。
腰の痛みが急に来た時の対処法
腰痛が急に来た時のとりあえずの対処法としては、まずは安静にして、起き上がらず腰を軽く曲げて横向きに寝るなど腰に負担がかからない楽な姿勢をとるとよいです。また、患部に冷却パックをあてて冷やすことにより、炎症が収まり痛みが和らぐことが期待できます。
炎症を抑えるには市販の消炎鎮痛薬もおすすめです。湿布や塗り薬などの外用薬と痛み止めの内服薬があります。
また、コルセットやサポーターを腰に巻いて動きを制限することで、痛みを緩和する方法も効果的です。 こういった対処をして痛みが軽減するようでしたら、しばらく安静を続けて様子を見ます。
対処をしても痛みが軽減しない、あるいは痛みがひどい場合には、整形外科で診てもらうと良いです。
治療法
腰痛には様々な原因がありますが、大きく、腰部の筋肉や腰椎の損傷によるもの、血行障害によるもの、内臓疾患によるものに分けられます。筋肉や腰椎の損傷による腰痛では、整形外科的、理学療法的な治療が一般的です。
損傷した筋肉や腰椎をマッサージや電気刺激などの物理的手段により回復させます。血行障害による腰痛では神経ブロック療法など薬物療法が主になります。
投薬や注射により痛みが伝わる神経経路をブロックして痛みをなくします。痛みがなくなると血行が促進し、血行障害が改善します。
内臓疾患による腰痛では当該内臓を治療することになります。腰痛が生じる内臓疾患には、たとえば、大動脈瘤や尿路結石などがあります。
大動脈瘤であれば血管外科での投薬やカテーテル治療、尿路結石であれば泌尿器科での投薬や手術での治療となります。
整体で解決できる腰痛
腰痛の場合に比較的手軽に利用されているのが整体です。整体は、指圧とかカイロプラクティックとか呼ばれる場合もありますが、手技による療法です。
民間療法であり法律上は医療行為とされてはいませんが、古くから主に脊椎を矯正する目的で行われてきています。腰痛の場合にも整体はよく利用されており、手技を用いて腰や脚などの筋肉をほぐし、 腰椎と骨盤を中心にして骨格の歪みを整えて痛みを抑えます。
腰痛は筋肉や股関節の硬さと関連があります。筋肉や股関節が緊張して硬いと、腰の動きが制限され、無理がかかると痛みが生じます。
筋肉や股関節が硬い場合はストレッチが有効ですが、意外に難しく、特にすでに体に痛みがある時のストレッチは注意が必要です。ストレッチは整骨院や整体院でやってくれる場合もありますので、予約の際に相談してみることをおすすめします。
やり方がわかったなら、生活の中で、一人でストレッチに取り組むことができます。
整体院での施術は、患者の身体の状態にマッチしたきめ細かな対応を行い、全身のバランスにも着目しますので、身体のコンディショニングケアにも役立ちます。
整体では、主に、筋肉や腰椎、血行障害が原因の腰痛に対応することができ、また、筋肉や股関節の柔軟化による腰痛の解消や予防も可能です。
まとめ
ほとんどの人が一生に一度は経験する腰痛について、痛みのタイプや原因、メカニズムについて解説してきました。また、腰痛の対処法や治療法、腰痛のうち整体で解決できるものについても述べてきました。
腰痛は日常生活において、いつでも生じる可能性があります。腰痛の基本的な知識を持っていれば、いざという時に適切な対応ができます。