腰痛は、ただの腰の痛みだと軽く考えていませんか?
これまで何度も腰痛を経験し、痛くなっても少し安静にしていれば治まってくるとお考えの方も多いでしょう。
実は腰痛の原因のひとつに「内臓の疾患」が関係していることをご存知でしょうか?
腰痛の原因は、腰回りの筋肉が凝り固まって起こる腰痛や、腰椎が神経を圧迫することで起こる腰痛(ぎっくり腰など)など多岐にわたります。
内臓の疾患が原因で腰痛を起こしている人は、大きな病気が隠れている可能性があるので、すぐに内科や整形外科などを受診するようにしてください。
しかし、どの腰痛が内臓からの腰痛で治療が必要なのか、見分けがつきづらいでしょう。
この記事では、内臓の疾患が原因で腰痛を引き起こしている可能性があるものをご紹介します。
ぜひ最後までお読みください。
目次
腰痛の原因が内臓疾患のもの
身体に何か異常があるときは、身体は必ずサインを出してくれています。
そのサインに腰痛が含まれるとは限りませんが、これから紹介する疾患がある場合は腰痛の症状が現れることがあります。
当てはまる方はすぐに、内科や整形外科などの病院を受診し医師に相談するようにしてください。
消化器系
胃潰瘍や十二指腸潰瘍
胃の粘膜が傷つき、ただれてしまうことを「胃潰瘍」といいます。
胃は通常であれば、胃酸から守られていますが、ピロリ菌などで胃粘膜が弱ったところに胃酸で傷がつき、ただれてしまうことがあります。
また、非ステロイド性抗炎症薬を服用することで、胃を胃酸から守る働きが阻害されてしまい、胃潰瘍を発症してしまうことがあります。
※非ステロイド性抗炎症薬とは、頭痛や発熱、生理痛などのときに服用する薬。市販で売っているものであれば、ロキソニンやバファリン、イブなど。
原因 | ピロリ菌・非ステロイド性抗炎症薬・ストレス・喫煙・暴飲暴食など |
腰痛以外の症状 | 胃痛・吐き気・嘔吐・胸やけ・食欲不振・吐血・下血など |
慢性膵炎
膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があり、急性膵炎は膵液(食べ物の消化を助ける消化酵素)が何らかの影響で膵臓内で作用してしまい、自己消化を起こしてしまうことです。
慢性膵炎は長年にわたり、膵臓に炎症が繰り返し発生することで膵臓の組織が壊され、機能が果たせなくなったものを「慢性膵炎」といいます。
原因 | アルコールや胆石など |
腰痛以外の症状 | みぞおちが痛い・左側の背中や腰が痛い・嘔吐・発熱など |
胆石症
肝臓では胆汁という成分が作られ、胆汁の成分が胆嚢や胆管などで固まってできた結石のことを胆石といいます。
胆石が動いたり、胆管に詰まって道が狭くなることで痛みなどの症状が起こることを胆石症といいます。
原因 | 食生活の変化(食の欧米化)、コレステロールや脂質の多い食事など |
腰痛以外の症状 | みぞおちが痛い・右の肋骨周辺や右肩が痛い、黄疸など |
泌尿器系
尿路結石
腎臓で作られてしまった結石のことを腎結石といい、腎結石があるところで疾患の名前が変わります。
尿管に落ちてくると「尿管結石」、膀胱に落ちてくると「膀胱結石」、尿道までくると「尿道結石」といい、これらを総称して「尿路結石」と呼びます。
腎結石が尿管や膀胱、尿道などへ移動する際に激しい痛みが生じるでしょう。
原因 | 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)や水分不足など |
腰痛以外の症状 | 激しく痛い・血尿・発熱・頻尿・残尿感など |
腎盂腎炎
腎臓の尿が溜まるところを腎盂といいます。
外尿道口から侵入した細菌が、逆流して腎盂や腎臓にまで感染して炎症してしまうことを腎盂腎炎といいます。
また、膀胱炎を起こした後に発症してしまうのが特徴です。
原因 | 大腸菌・陰部の不衛生・妊娠など |
腰痛以外の症状 | 高熱・悪寒・腹痛・背中が痛い・血尿・尿が少ない・尿の色が薄いなど |
水腎症
腎臓で作られた尿は腎盂に溜まり、尿管を通って膀胱へ流れ、膀胱から体外へと排出されます。
これらの尿路が何らかの影響でせき止められ、腎臓に尿が溜まってしまうことを水腎症といいます。
子供から大人まで幅広く起こってしまう疾患です。
原因 | ・小児は先天性のもの
・成人は尿路結石やがん、前立腺肥大症や妊娠などの影響で発症 |
腰痛以外の症状 | 腹痛・背中が痛い・発熱・吐き気・むくみ・尿が少ないなど |
循環器系
心筋梗塞
冠動脈が心筋(心臓を構成する筋肉)に血流を送ることにより心臓が動いています。
冠動脈が狭くなり、塞がってしまうことで心筋に栄養や酸素が行かなくなることを心筋梗塞といいます。
血流が届かなくなると心筋が壊死し、心臓の機能が低下してしまうため、心筋梗塞の症状がある場合はすぐに救急車を呼ぶようにしてください。
原因 | 生活習慣病(動脈硬化・高血圧・糖尿病・脂質異常症など)や喫煙 |
腰痛以外の症状 | 左胸、左肩、首、みぞおちなどが締め付けられるような痛みや苦しさ、圧迫感など・冷や汗・症状が30分以上続くことがある |
大動脈解離
大動脈は内膜、中膜、外膜で構成されており、心臓から送り出された血液は大動脈を通り、細かく枝分かれして全身へ巡っています。
内膜が裂けて新たに血管の道ができてしまうことを大動脈解離といいます。
大動脈解離の特徴は前兆が無く突然発症してしまうため、胸や背中が痛いと感じた場合はすぐに救急車を呼ぶようにしてください。
原因 | 生活習慣病(動脈硬化・高血圧・高脂血症・糖尿病)など |
腰痛以外の症状 | 胸や背中に激しく痛い |
腹部大動脈瘤
大動脈の一部にこぶができてふくらんでしまうことを大動脈瘤といい、こぶのできる部位で呼び方が変わります。
大きく分けて胸部は「胸部大動脈瘤」、腹部は「腹部大動脈瘤」といいます。
大動脈瘤ができても自覚症状がないまま大きくなってしまい、自然に小さくなったり、無くなることはありません。
まれに、胸の圧迫感や声がかれるなどの症状があります。
また、大動脈瘤が破裂してしまった場合は、胸や背中などに激しい痛みが現れ、命の危険があります。
発症の多い年齢の特徴は50代から増え始め、70代が一番多いと言われているので、気になる方は一度かかりつけ医に相談して検査をしてもらうと良いでしょう。
原因 | 動脈硬化・高血圧・糖尿病・高脂血症・喫煙など |
腰痛以外の症状 | 大動脈瘤ができても自覚症状がない |
婦人科系
子宮内膜症
子宮内膜は子宮内の壁にある組織のことで、通常であれば月経時に経血となって体外へ排出されます。
しかし、子宮内膜が何らかの影響で大量に作られたり、子宮以外のところで作られたりすることを子宮内膜症といいます。
また、子宮内膜症は体外への排出がスムーズに行われず体内に留まってしまい、周辺の組織と癒着を起こしてしまうことがあります。
癒着を起こすと激しい月経痛や不妊などの原因になってしまいます。
原因 | 女性ホルモンの影響・20代~30代の若い女性に多い(はっきりとした原因はわかっていない) |
腰痛以外の症状 | 月経痛・不妊・排便痛・性交痛など |
子宮筋腫
子宮の壁にできる良性の腫瘍のことを子宮筋腫といいます。
筋腫の大きさやできる場所によって症状が異なりますが、流産や早産、不妊などの原因となってしまうこともあります。
また、筋腫が大きくなることにより、周辺の臓器が圧迫されて腰痛や頻尿などの症状も現れます。
原因 | 女性ホルモン(エストロゲン)の影響・遺伝など |
腰痛以外の症状 | 貧血・月経量の増加・月経痛など |
脊髄腫瘍や脊椎の疾患
脊髄腫瘍
脊髄腫瘍は脊椎や脊髄に発症した腫瘍(原発性のもの)と、他の臓器のがんが転移したもの(転移性)と2種類があります。
原発性の腫瘍は良性と悪性があり、転移性腫瘍は悪性です。
また、がんが骨に転移することにより骨がもろくなり、少しの衝撃などでも骨折しやすくなってしまいます。
脊髄腫瘍は腫瘍の発生部位によって症状は様々ですが、以下のものがあげられます。
原因 | 原発性:はっきりとした原因はわからいない
転移性:乳がん、肺がん、前立腺がんなどの転移 |
腰痛以外の症状 | 手足のしびれ・感覚障害・排泄障害・歩行困難など |
脊椎カリエス
結核菌は肺に感染することが多く、血管を通って脊椎に侵入し、脊椎が結核菌に感染してしまうことを脊椎カリエスといいます。
結核は昔の病気と思われがちですが、2022年でも年間10,000人以上の感染が発見されています。
原因 | 結核菌の感染 |
腰痛以外の症状 | 背中が痛い・微熱・食欲不振・倦怠感など |
要注意すべき症状
原因がわからない腰痛は「非特異的腰痛」と言い、原因が分かっている腰痛を「特異的腰痛」と言います。
割合は、腰痛全体の85%が非特異的腰痛で、15%が特異的腰痛。特異的腰痛は放置しておくと、腰痛が悪化したり、内臓の病気が進行してしまったりなどのリスクがあります。
これから紹介する「要注意すべき症状」がある場合は、すぐに病院へ行くようにしてください。
- 安静にしていても痛みがある
- 痛みが和らがず、増していく
- 排尿障害がある
- 手足のしびれがある
- 食欲不振や嘔吐、体重減少がある
これらの症状がある場合は、内臓の疾患や椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの可能性があります。
一度内科や整形外科へ受診するようにしてください。
腰痛の症状の見分け方
内臓の疾患からくる腰痛の見分け方は「横になって安静にしていても痛みがある」かどうかが最大のポイントです。
筋肉疲労や神経が圧迫されていることが原因の場合は、腰を曲げたり反ったりなど、何か動作をするときに痛みが生じます。
その場合は整体院などで痛みが和らぐでしょう。
しかし、横になって安静にしていても痛みが生じる、又は痛みが増していく場合は脊髄腫瘍やがんの転移などの可能性があるため、すぐに内科などを受診するようにしてください。
また、急に胸や腰、背中などに圧迫されたような激しい痛みや苦しさなどがあった場合は、血液などの循環器に問題が生じている可能性があります。
命に関わることなので、迷わず救急車を呼ぶようにしてください。
内臓が原因の腰痛を防ぐ方法6つ
内臓の疾患は原因がはっきりと分かっていないものもあれば、日常生活を変えるだけで、リスクを下げられるものもあります。
腰痛の対処法だけでなく、他の病気などのリスクを抑えられて健康な日々を送るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
健康診断や人間ドックをしっかりと受ける
やはり病気の早期発見には健康診断や人間ドックが必須です。
健康診断や人間ドックを受けて満足するのではなく、しっかりと結果を確認して内容を理解し、より健康な身体作りを目指すことで病気のリスクを防げるでしょう。
また、指摘事項などがあればすぐに検査などを受けるようにしてください。なお、健康診断や人間ドックは1年に1回は受けるようにしましょう。
健康診断
健康診断は、年齢に適した一般的な検査をしてくれます。
検査項目は少なく、費用は人間ドックと比べて比較的安く受診できるでしょう。
人間ドック
病気の早期発見を目的とした検査で、健康診断よりも検査項目が多く、費用はやや高額です。
健康診断と比べて詳しく検査をしてもらえるので、受診したことが無い人はこの機会に一度受診してみると良いでしょう。
ストレス発散
ストレスを受けることにより自立神経が乱れてしまいます。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、ふたつがバランス良く働いてくれていることにより私たちは健康に過ごせています。
ストレスを受けてしまうと自律神経が乱れ、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまい、内臓などの機能が悪くなって身体のどこかに異常が生じてしまうでしょう。
また、ストレスは直接腰痛の原因にもなります。ストレスを受けることにより身体が緊張状態となり、腰痛を引き起こしてしまう可能性があります。
映画を見たり本を読んだり、気軽に会える友人との時間を作るなど、ストレスを発散するように心がけましょう。
内臓疲労
食べすぎや飲みすぎなど、ストレスや無理なダイエットなどで気付かない内に内臓に負担がかかっているかもしれません。
お通じが悪くなったり緩くなったり、睡眠をとっても身体がだるいなどの症状は内臓疲労の可能性も。
食べすぎはもちろん内臓に負担がかかってしまいますが、逆に食事を抜くことは脳に栄養が行き渡らず身体に良いとは言えません。
しっかりと三食を腹八分目でよく噛んで食べるようにしてください。
食生活の改善
食生活の改善は多くの人に言えることではないでしょうか。
好きな物を食べたり飲んだりしていませんか?忘年会や新年会などの食事会などで、ついつい楽しくて、暴飲暴食をしてしまうこともあるでしょう。
栄養が偏り、病気のリスクを上げてしまいます。
一度、これまでの自分の食生活を見直し、改善するようにしてください。
また、料理をするときの味付けなども注意が必要です。
味の濃い料理になっていませんか?
塩分の取りすぎや砂糖の使いすぎなどにも気を付けながら、調理をするように意識してください。
内臓脂肪を減らす
内臓脂肪が多いと糖尿病や高血圧などの病気のリスクが高まります。
また、脂肪が多いとお腹が出てしまい、お腹の重みに引っ張られて骨盤が歪み、反り腰になって腰椎に負担がかかり、慢性腰痛となってしまう可能性もあります。また、内臓脂肪が多いと腰だけでなく、股関節や膝への負担もかかってしまいます。
反り腰の姿勢は腰や背中に力が入った状態なので、筋肉が凝り固まり腰痛の原因となります。
内臓脂肪を減らす対処法としては、内臓脂肪の多い人は摂取カロリーや食事の見直しをし、運動やストレッチをするように心掛けてください。
運動習慣を身につける
運動は生活習慣病予防の他にも、ストレス発散や免疫力アップ、新陳代謝の活性化など身体に様々なメリットがあります。
他にも、身体を動かす事により血流が良くなり、筋肉の凝りがほぐれるので腰痛予防にもなります。
厚生労働省によると、1日10分程度のウォーキングを数回行うなどでも、生活習慣病予防の効果が期待できると言われています。座ったままのデスクワークなどでは、歩くことが少なく、首や肩、背中が痛いと感じる人も多いでしょう。しっかりと足を使って歩くことは、凝り固まった背骨や膝の関節をほぐし、股関節も動かすので、整体いらずの強い身体作りが可能となるでしょう。
家事や育児、仕事などで忙しいなかでも、一駅歩くことや、自転車でアクセルしたいたお店を徒歩で向かうなど心がけてみましょう。
まとめ
腰痛の原因は多岐にわたりますが、内臓の疾患が原因の場合は放っておくと危険なものがあります。
要注意すべき症状が当てはまる場合はすぐに内科や整形外科などを受診して医師に相談してください。
内臓が原因の腰痛かどうかの見分け方としては「安静にしていても痛みがあるか」です。
筋肉の凝りや腰椎が神経を圧迫することが原因の場合は、身体を動かすときに痛みが生じるのに対し、内臓疾患の場合は安静にしていても痛みが現れます。
また、内臓を健康に保つ方法としては、主に食事の見直しや体重管理、日々の運動などです。
これらを取り入れることにより、身体を健康に保ち、内臓の疾患や生活習慣病などのリスクを下げられるでしょう。