坐骨神経痛は、腰から足にかけてのしびれや痛みが特徴です。
この痛みは神経の問題からくるもので、時には排尿に関するトラブル（おしっこが出にくくなったり、漏れたりすること）が生じることもあります。
坐骨神経痛による排尿障害は、生活の質を大きく低下させる危険な状態です。
しかし、早期に適切な治療を受けることで、症状の改善に期待できます。
今回の記事では、坐骨神経痛による排尿障害の原因や一般的な症状、有効な治療法について詳しく説明します。
これらの対策を実践し、健康な体を維持しましょう。
目次
坐骨神経痛とは？症状を紹介
坐骨神経痛とは病名ではなく、下半身に現れる症状の総称です。
坐骨神経は腰から足の指先まで伸びているため、坐骨神経痛の痛みは下半身に現れます。
痛みやしびれ以外にも坐骨神経痛の症状が出ることがあります。
そこで今回の記事では、坐骨神経痛の症状や原因について詳しく紹介します。
坐骨神経痛の症状
坐骨神経痛の多くは、お尻から足にかけて痛みやしびれが生じるのが特徴です。
この痛みはチクチク刺すような痛み、ジンジンとした痛み、ビリビリとしたしびれなど、感じ方はさまざまな症状が見られます。
以下は、坐骨神経痛で多く見られる症状です。
- ・長時間の立ち仕事が辛い
- ・座っているときにお尻や太ももが痛む
- ・歩くときに足に力が入らず、つまづきやすい
主に痛みやしびれのため、長時間立つことが難しくなり、歩くことも困難になりやすい症状が多くなります。
立ったり座ったり歩いたりする動作は日常生活で必要なので、普段できることを制限されるのは大きなストレスを感じやすくなります。
坐骨神経痛の痛みやしびれ以外で見られる症状
実は坐骨神経痛はお尻から足にかけての痛みやしびれ以外にも、症状があります。
例えば、尿失禁や頻尿などの排尿障害や、陰部から肛門付近のしびれなどの異常な感覚です。
痛みがなくても、これらの異常がある場合は坐骨神経痛の可能性があります。
排尿障害は加齢によるものと区別が難しいため、症状を把握しておくことが大切です。
以下は、坐骨神経痛の痛みやしびれ以外で、見られる可能性があります。
- ・トイレに行く回数が増えた
- ・おしっこを我慢できなくなった
- ・会陰部（陰部と肛門の間）にしびれを感じる
坐骨神経痛がひどくなると、太ももの筋肉の緊張が泌尿器や生殖器に影響を与えることがあります。
その結果、頻尿や尿漏れ、生理不順などの症状が見られるでしょう。
日常生活でトイレの回数が増えたり、トイレまでに間に合わなかったりする場合は、予防や治療を優先する必要があります。
その際には生活習慣を見直し、掛かりつけの病院に相談して、治療することが大切です。
坐骨神経痛が起こる原因
座骨神経痛の原因には、さまざまな病気やケガが考えられます。
特に若い人に多いのは「腰椎椎間板ヘルニア」と「梨状筋症候群」という腰痛の症状です。
腰椎椎間板ヘルニアは、腰の椎間板が損傷して神経が押しつぶされる状態です。
一方、梨状筋症候群はお尻の奥の梨状筋という筋肉が座骨神経を強い力で押されることで痛みやしびれが生じます。
特に年配の人では「腰部脊柱管狭窄症」がよく見られます。
この症状は、背骨の脊柱管が加齢や外傷で狭くなり、脊髄や神経根が圧迫されることで坐骨神経に症状が広がります。
これらの原因は、坐骨神経のスタート地点から足先までにわたって痛みやしびれを引き起こす症状が起こりやすくなります。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、背骨の脊柱管が加齢や外傷によって狭くなり、脊髄や神経根が強く押しつぶされる状態のことです。
主に加齢による脊柱管の変化や、脊椎の骨棘（こつ）が脊髄や神経根に圧迫をかけることが原因とされています。
この圧迫により、腰部から臀部、下肢にかけて放射痛やしびれが生じやすくなるのです。
特に歩行時には痛みが増し、足の力が抜けやすくなる症状が見られます。
さらに、排尿障害や便秘などの神経が関連する症状を発生することがあります。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアは、背骨をつなぐ椎間板に強い負荷がかかることで起こる腰痛です。
腰の椎間板が外傷や突然の負荷によって損傷し、そのジェル状の核が椎間板の外側に飛び出してしまう状態が見られます。
この飛び出した椎間板が周りの神経組織を直に圧迫し、腰部から臀部、大腿部にかけて鋭い痛みやしびれを引き起こしやすくなるのです。
例えば、重い物を持ち上げる動作や交通事故、特定の動作時に痛みが増すこともあります。
また、テニスやゴルフなどのスポーツでも椎間板ヘルニアになりやすいのも特徴です。
坐骨神経への直接的な圧迫が座骨神経痛の主な原因とされ、これが一般的な症状である足のしびれや痛みにつながります。
仙腸関節の炎症
仙腸関節炎は、仙腸関節周辺の炎症や機能障害によって引き起こされる病気です。
仙腸関節は2mm程度しか動かすことができないため、炎症が起きた状態で動いてしまうと痛みが出やすくなります。
この病気の症状は坐骨神経痛と非常に似ており、例えば長時間座っているとお尻や太ももに痛みが生じたり腰が痛んだりすることがあります。
また、坐骨神経痛と勘違いされることが多いですが仙腸関節炎の痛みは、特に朝に強く、動き始めると少しずつ和らぐことが多く見られます。
お尻の筋肉の炎症や捻挫
坐骨神経痛の痛みは、お尻の筋肉の炎症やアキレス腱、靭帯を痛めることで起こる場合があります。
臀部の筋肉が炎症を起こしたり捻挫したりすると、坐骨神経が押しつぶされ痛みやしびれを引き起こしやすくなります。
例えば、長時間のさんぽや激しい運動をした後にお尻から足にかけて痛みが広がることがあります。
主にお尻の炎症は、運動不足や急な運動、悪い姿勢で長時間の座り続けることで発生することがあります。
腰の骨の変性疾患
腰椎の変性疾患は、腰の骨の形が変わることや、椎間板のすり減りによって神経を刺激する腰痛のことです。
年齢により腰椎の老化や腰に多く負担をかける動作によって変形してしまうことで、神経が圧迫されてしまいます。
この疾患は特に高齢者に多く見られ、腰痛とともに足のしびれや筋力低下が進む症状が見られます。
坐骨神経痛の治療方法
坐骨神経痛の痛みは、薬の使用やマッサージなど痛みや症状によって治療方法が異なります。
病院に受診した際に医師に自分の症状に合った治療法を選んでもらうことが大切です。
事前にどのような治療法があるのか、理解しておくことで安心して治療ができます。
ここからは、一般的に坐骨神経痛に行われている治療方法について詳しく紹介します。
薬を使った治療
坐骨神経痛の痛みを和らげるための治療は「薬を使う治療法」です。
例えば、椎間板の周辺の神経がされて炎症を起こしている場合は、非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）が効果的です。
また、市販薬で耳にする「イブプロフェン」や「ナプロキセン」などがこれに当たります。
薬を使った治療法は他にもあり、湿布や塗り薬を組み合わせて使う場合があります。
また、急性的なぎっくり腰を引き起こしてしまった場合は冷感のある湿布と薬を併用し、痛みを和らげる治療が処置されます。
神経に直接効く注射を打つ
局所麻酔薬やステロイド薬を使い、痛みのある部位に神経ブロック注射を行うことで痛みを和らげます。
痛みにより興奮状態になっている神経を落ち着かせ、血管や筋肉の収縮減り血行不良を防ぐのに効果的です。
たとえ施術後に麻酔が切れた場合も、血行が改善されて患部の状態も良くなるため、痛みが和らぎます。
また、神経ブロック注射は健康保険が使えるため、安心して治療できるのもポイントです。
運動療法
坐骨神経痛の治療では、理学療法士の指導のもとで運動療法を行います。
痛みやしびれがによって動く機会が減ってしまうと、筋肉が弱り逆に坐骨神経痛を悪化させてしまうことがあるため運動は大切な治療法です。
例えば、坐骨神経痛で寝た状態で意味がある場合は、寝たままの状態でできる腰への負担が少ない「腹式呼吸」を行う場合があります。
また、歩行中に腰やしびれや痛みがある場合は、効率よくお腹が鍛えられる「腹筋運動」を取り入れる治療を行うのが一般的です。
このように運動療法を受けることで筋力を保てたり、筋肉を増やしたりすることができます。
温熱療法
温熱療法は硬くなった筋肉をほぐすことで血流が改善され、痛みを軽減させる治療法です。病院での治療では、以下の治療法があります。
- ・ホットパック
- ・赤外線療法
- ・マイクロ波療法
- ・超音波療法
上記の治療法は機械を使うため病院での治療が必要ですが、ホットパックは自宅で治療が行えます。
例えば湿布や入浴、ひざ掛けをかけることで、日常生活に冷えの予防になります。
病院での治療と合わせて自宅でもケアすることで坐骨神経痛を和らげることが可能です。
装具を使った治療
骨盤ベルト使った装具療法は、普段の生活に装着して腰の痛みを軽減する治療法です。
装具療法は2種類あり、坐骨神経痛の症状に合わせて使い分けます。
- ・軟性コルセット
- ・腰部脊柱管狭窄症用のコルセット
軟性コルセットは痛みが軽いときに使用する事が多いのに対して、腰部脊柱管狭窄症用のコルセットは前かがみになっているときに使用されます。
また長時間装着すると腹筋や背筋の筋力が低下するケースもあるため、医師から1日に装着するタイミングを相談した上で利用しましょう。
手術による治療
保存療法で効果がない場合、坐骨神経痛は手術を行う必要があります。
- ・椎間板ヘルニア：内視鏡下腰椎椎間板摘出術・経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術
- ・腰部脊柱管狭窄症：内視鏡下腰椎椎弓切除術・内視鏡下腰椎椎体間固定術
椎間板ヘルニアの手術は椎間板をとり上下の骨を合体させる方法、2番目は飛び出したヘルニアと髄核を取り外す手術です。
対して腰部脊柱管狭窄症の手術は狭くなっている脊柱管を広げる手術、2番目は脊柱管を広げるのに加えて腰痛が前後左右にずれていた場合に固定する手術です。
椎間板ヘルニアの手術と脊柱管狭窄症の手術は、ほとんどが保険適応される手術になります。
坐骨神経痛による排尿障害とは？
坐骨神経痛による排尿障害は、尿をうまく出せなかったり、尿を上手く貯めることができなかったりという問題がよく見られます。
膀胱に貯まった尿を上手く貯められないため、排出機能がうまく働かない状態になります。
例えば、トイレに行っても少量しか尿が出なかったり、頻繁にトイレに行きたくなったり、夜間に何度も起きたりしてしまう症状が現れやすいのが特徴です。
腰部と排尿の関係
腰の部分には馬尾（ばび）神経という神経があります。
馬尾神経は骨盤の機能に影響を与えており、この神経が圧迫されたり炎症を起こしたりすると、尿漏れなどの排尿障害を引き起こします。
坐骨神経と馬尾神経の関係
坐骨神経痛がひどくなると、腰周りの神経が強く圧迫される「馬尾症候群」という危険な病気を引き起こすことがあります。
この病気は、脚や骨盤、膀胱などの働きを助ける神経が影響を受けるため、とても深刻です。
早めに手術を受ければ回復の可能性がありますが、発見や治療が遅れると元に戻れなくなることもあります。
頻繁に排尿障害（おしっこが出にくい、漏れるなど）が起きた場合は、すぐに病院へ行くことが大切です。
坐骨神経痛で排尿障害が起きたら？早期発見と治療のポイント
坐骨神経痛が原因で排尿障害が起きる場合、早期に適切な対策を組み合わせることで症状の改善が期待できます。
以下では早期発見の方法と治療法まで紹介します。
専門医の診察を受ける
坐骨神経痛による排尿障害がある場合は、まず整形外科で診察を受けることが重要です。
まず医師に腰の神経や痛みの症状を診てもらい、判断してもらいましょう。
鍼灸治療
鍼灸治療は、特定のツボに鍼を刺激して体内のエネルギーの流れを整えることで、坐骨神経痛や排尿障害に対処します。
以下のツボに鍼を刺激することで、骨盤内の神経機能を調整し、尿トラブルの改善につながります。
- ・中髎（ちゅうりょう）：膀胱の容量を増やして頻尿や尿もれを改善
- ・膀胱愈（ぼうこうゆ）：膀胱の働きを活発にし、頻尿や尿もれを和らげる
- ・腎兪（じんゆ）：体力を補い、腎臓の機能回復を助ける
- ・三陰交（さんいんこう）：頻尿や夜間のトイレ頻度を減らす効果
このように、鍼灸治療は自然治癒力を活性化し、身体のバランスを整えることで、尿トラブルを改善する手助けをします。
整体治療
整体治療では、主に身体のバランスを整えることに重点が置かれます。
特に、骨盤の調整を通じて坐骨神経にかかる圧力を減らし、排尿障害や関連する症状を改善する効果が期待されます。
具体的には、以下のような改善が見込まれます。
- ・姿勢の改善
- ・筋肉の緊張解消
- ・骨盤の歪みを改善
- ・排尿障害を含む広範囲の症状を改善
坐骨神経痛を改善するためには、正しい姿勢を保ち、筋肉をリラックスさせ、必要に応じて整体治療を受けることが大切です。
自分に合った治療方法を見つけるために、専門家としっかり相談しましょう。
生活習慣の見直し
食事や飲水量、トイレの頻度など生活習慣を見直し、尿の管理を助けることが重要です。
- ・便秘にならないようにする
- ・食事は規則正しい時間に取ること
- ・スクワットやウォーキングなどの適度な運動する
- ・就寝前の水分摂取を控え、昼間は適切に水分を摂るようにする
上記の中でも便秘と排尿トラブルは直接関係があるとは思われないことが多いですが、実は便秘が排尿に影響を及ぼすことがあります。
便が直腸にたまると膀胱に圧迫をかけ、排尿障害を悪化させてしまうケースも考えられます。
健康な排尿を保つためには、食生活を見直し、便秘を予防することが重要です。
便秘を予防するためには食物繊維や乳酸菌を含む食品を積極的に摂取し、便通を改善することで排尿もスムーズになる効果が期待できます。
また、辛い食べ物や脂質を過剰に摂取することが便秘を引き起こす可能性があるため、坐骨神経痛を患っている場合はなるべく控えるようにしましょう。
【まとめ】排尿障害は坐骨神経痛の可能性も！専門医の診察を受けよう
今回の記事では、坐骨神経痛が排尿障害に与える影響や、その一般的な症状、有効な治療法について詳しく説明しました。
腰の神経が骨盤周りの神経にも影響を及ぼし、これが排尿に関連した問題を引き起こすことがあります。
例えば、腰や足の痛みやしびれが同時に現れる場合、これは坐骨神経痛や他の腰の疾患が排尿に影響している可能性も考えられます。
また、腰部脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアは、腰部の神経に直接関わる病気で、坐骨神経痛との関係性も深く関連している腰痛です。
腰部脊柱管狭窄症は背骨の通り道である脊柱管が加齢や外傷で狭くなり、脊髄や神経根が圧迫されることで、腰部から臀部や下肢に放射痛やしびれが生じることがあります。
症状が重くなると排尿障害や便秘といった神経学的な症状も現れる可能性もあるでしょう。
一方、腰椎椎間板ヘルニアは、腰の椎間板が破れてジェル状の核が外側に飛び出す状態で、急な腰部の負荷や事故が原因となります。
これらの疾患は病院による早期の診断と適切な治療が肝心です。
医師の診察を受けて症状の進行を防ぎ、生活の質を向上させることができます。
自身の症状に不安を感じたら、希望する病院の診療情報や案内情報を早めにチェックし医療機関を受診するようにしましょう。
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