坐骨神経痛は、様々な病気や状態が原因となって発生します。坐骨神経痛の原因となる病気には、どのようなものがあるのでしょうか。
また、坐骨神経痛の対処法のうち、自分でもできるものには、どういったものがあるでしょうか。
目次
坐骨神経痛とは
坐骨神経痛は、坐骨神経がさまざまな病気などによって圧迫されて痛む病気です。坐骨神経痛の原因となる病気とその原因について解説します。
坐骨神経痛が起こる病気
坐骨神経痛は、さまざまな病気や状態が原因となって発生する可能性があります。主な病気や状態には以下のものがあります。
【椎間板ヘルニア】
椎間板ヘルニアは、脊椎の椎間板が外側に突出し坐骨神経に圧迫をかけることがあります。この圧迫によって、坐骨神経の痛みや炎症が引き起こされ、坐骨神経痛の主な原因となることがあります。
椎間板の変性や急性の椎間板の突出が、この病態を引き起こすことがあります。
【脊柱管狭窄症】
脊柱管狭窄症は、脊椎の周囲にある脊柱管が狭窄して坐骨神経に圧迫をかける病気です。この圧迫によって神経痛の症状が引き起こされることがあります。高齢者や脊椎の変性が進んだ人に多く見られ、腰痛や下肢の痺れとともに坐骨神経痛の症状が現れることがあります。
【腰椎分離症(すべり症)】
腰椎分離症は、腰椎の一部が前方に滑りやすくなる状態です。この滑りが坐骨神経に圧迫をかけ、坐骨神経痛の症状を引き起こすことがあります。特に若年層に多く見られ、スポーツや重い物の持ち上げなどが原因となることがあります。
【腰椎の変形性脊椎症】
腰椎の変形性脊椎症は、腰椎の関節や椎間板の変性が進行し、坐骨神経に圧迫をかけることがあります。この病態によっても坐骨神経痛が引き起こされることがあります。加齢や長期間の不良姿勢、遺伝的要因などが関与していると考えられます。
これらの病気や状態は、坐骨神経の圧迫や刺激によって坐骨神経痛を引き起こす可能性があります。一般的に、これらの病態は医師の診断と治療が必要です。適切な治療計画が立てられることで、痛みや症状の管理が可能になります。
坐骨神経痛が起こる病気の原因
坐骨神経痛は、様々な原因が絡み合って引き起こされることがあります。主な原因を以下に詳述します。
【椎間板ヘルニア】
●加齢による椎間板の変性
椎間板は加齢とともに弾力性が失われ、線維輪(椎間板を構成する組織の一つ)が破れやすくなります。
●日常生活や仕事での負担
重い物を持ち上げたり、猫背などの悪い姿勢を続けることで、椎間板に負担がかかり、線維輪が破裂する可能性があります。
●遺伝
椎間板の構造や体質が遺伝的に影響している場合もあります。
【脊柱管狭窄症】
●加齢による骨の変形
背骨の骨(椎骨)が変形し、脊柱管が狭くなります。
●椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアが突出し、脊柱管を狭めます。
●靭帯肥厚
加齢や背骨の変形によって、背骨を支える靭帯が肥厚し、脊柱管を狭めます。
【腰椎分離症(すべり症)】
●遺伝
腰椎の一部である椎弓が生まれつき弱い場合、分離症になりやすいと考えられています。
●スポーツなどの外傷
ジャンプや落下の衝撃によって、椎弓が分離する場合があります。
●繰り返し起こるストレス
重い物を持ち上げたり、背骨を繰り返し曲げたりするような動作を繰り返すことで、椎弓が分離する場合があります。
【腰椎の変形性脊椎症】
●加齢
加齢とともに、背骨の骨や軟骨が変性します。
●骨粗鬆症
骨粗鬆症によって、背骨の骨が弱くなり、変形しやすくなります。
●反復的な負担
重労働やスポーツなど、背骨に繰り返し負担がかかることで、変形性脊椎症になりやすくなります。
坐骨神経痛の対処法
坐骨神経痛の対処法のうち、ストレッチやマッサージなどについて解説します。
ストレッチ
ストレッチとは、筋や関節を意図的に伸ばす運動です。
【ハムストリングスストレッチ】
以下の方法で行います。
●床に座り、片脚を伸ばし、もう片方の脚を膝を曲げて足の裏を太ももの内側に付けます。
・伸ばした脚のつま先に向かって体を前に倒します。
・背中を丸めず、胸を伸ばすようにしながら前屈します。
・30秒から60秒間、その姿勢を保ちます。
・反対側の脚でも同じ動作を繰り返します。
このストレッチは、坐骨神経が通るハムストリングスを伸ばし、神経への圧迫を軽減するのに役立ちます。ハムストリングスとは、おしりの付け根から太ももの裏側、太ももから膝裏周辺にある3つの筋肉(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)の総称です。
このストレッチにより柔軟性が向上し、腰や脚の緊張を和らげることで、痛みの緩和が期待できます。
【ピラフォームストレッチ】
梨状筋ストレッチ(ピラフォームストレッチ)は、臀部の筋肉を緩め、坐骨神経への圧迫を軽減します。以下の方法で行います。
・仰向けに寝て、両膝を立てます。
・痛みのある脚の足首を反対側の膝の上に乗せます。
・両手で反対側の太ももを抱え、ゆっくりと胸に引き寄せます。
・30秒から60秒間、その姿勢を保ちます。
・反対側でも同じ動作を繰り返します。
このストレッチは、梨状筋を効果的に伸ばし、坐骨神経の圧迫を軽減するのに役立ちます。臀部の緊張がほぐれることで、痛みが和らぎ、動きやすくなります。
【ひざ抱えストレッチ】
膝抱えストレッチは、腰部と臀部の筋肉を緩め、坐骨神経への圧迫を軽減します。以下の方法で行います。
・仰向けに寝て、両膝を立てます。
・痛みのある脚を胸に引き寄せるように抱えます。
・そのまま30秒から60秒間保持します。
・ゆっくりと元の位置に戻します。
・必要に応じて反対側も行います。
このストレッチは、腰椎周りの筋肉を緩め、坐骨神経の通り道を広げる効果があります。腰と臀部の緊張がほぐれ、痛みが軽減されることで、坐骨神経痛の症状緩和に寄与します。
マッサージ
マッサージとは、手や指などを使って筋肉や体組織を刺激する療法です。
【グリッドフォームローラーマッサージ】
グリッドフォームローラーを使ったマッサージは、坐骨神経痛の緩和に効果的です。以下の方法で行います。
・フォームローラーを床に置き、臀部の下に置きます。
・痛みのある側の脚をもう一方の脚の膝にかけます。
・両手を床についてバランスを取り、臀部の筋肉をローラーに押し当てながら前後に転がします。
・特に痛みや緊張を感じる部分に重点を置き、30秒から1分間マッサージします。
この方法は、梨状筋やハムストリングスなど、坐骨神経に関連する筋肉をほぐすのに効果的です。筋肉の緊張を解消し、血流を改善することで、神経への圧迫を軽減し、痛みを和らげます。
【テニスボールマッサージ】
テニスボールを使ったマッサージも、坐骨神経痛の緩和に有効です。以下の方法で行います。
・テニスボールを床に置き、痛みのある側の臀部の下に置きます。
・痛みのある側の脚を反対側の膝の上にかけ、両手で床を支えながらバランスを取ります。
・テニスボールを使って、臀部の筋肉を前後左右に転がしながらマッサージします。
・特に痛みを感じるポイントに重点を置き、30秒から1分間マッサージします。
テニスボールは、小さな筋肉のこりや緊張をターゲットにしやすく、梨状筋やその他の深層筋に効果的に働きかけます。これにより、坐骨神経への圧迫を和らげ、痛みを軽減します。
【指圧マッサージ】
指圧マッサージは、手を使って直接筋肉をほぐし、坐骨神経痛を緩和する方法です。以下の方法で行います。
・痛みのある側の臀部と腰を中心に、指先や親指を使って圧をかけます。
・ゆっくりと円を描くように指を動かし、筋肉の緊張を解きほぐします。
・特に痛みやこりを感じるポイントに、持続的な圧をかけます。
・1箇所に30秒から1分程度、全体で5分から10分間マッサージを行います。
指圧マッサージは、直接的な圧力を通じて筋肉の緊張を緩和し、血流を促進します。これにより、坐骨神経への圧迫が減少し、痛みが和らぎます。自分で行うことも可能ですが、専門家による施術を受けるとより効果的です。
ウォーキング
坐骨神経痛の対処法としてウォーキングは効果的です。ウォーキングは、軽い有酸素運動であり、筋肉を柔軟にし血流を促進することで坐骨神経痛の症状を緩和する助けとなります。
適度なペースで行うことで、体の姿勢やバランスを改善し、腰や背中の筋肉を強化することができます。また、ウォーキングは身体の柔軟性を高め、筋力を増強するためにも役立ちます。
坐骨神経痛の場合、長時間の座位や不良姿勢が原因となることがありますが、ウォーキングはこれらのリスクを軽減するのに効果的です。
運動を通じて身体全体を活性化させ、椎間板や筋肉の健康を保ち、坐骨神経への圧迫や炎症を軽減することが期待できます。しかし、坐骨神経痛の症状が重度である場合や、運動中に痛みが悪化する場合は、医師の指導を受ける必要があります。
専門家のアドバイスを得て、適切なペースと距離でウォーキングを行うことが重要です。また、適切な靴や姿勢の保持にも注意を払いながら、自身の体調とペースに合わせて実施することが推奨されます。
プールでのウォーキング
プールでのウォーキングは、坐骨神経痛の緩和に非常に効果的です。以下の方法で行います。
・腰をまっすぐに保ち、ゆっくりと確実に歩きます。
・前進するだけでなく、後ろ向きに歩いたり、横向きに歩いたりすることも効果的です。
・15分から30分程度、無理のない範囲でウォーキングを続けます。
水中でのウォーキングは、水の浮力が体重をサポートするため、腰や膝への負担が軽減されます。また、水の抵抗が筋肉を適度に刺激し、筋力を強化しながら柔軟性を向上させます。
これにより、坐骨神経への圧迫を和らげ、痛みの緩和に寄与します。
コアエクササイズ
コアエクササイズは、腹筋や背筋など体幹の筋肉を強化し、腰椎の安定性を向上させることで坐骨神経痛の緩和に効果的です。以下の方法で行います。
【プランク】
・床にうつ伏せになり、肘を肩の下に置きます。
・つま先を立て、体を一直線に保ちながら持ち上げます。
・この姿勢を30秒から1分間保持します。
【バードドッグ】
・四つん這いになり、背中をまっすぐに保ちます。
・右腕と左脚を同時にまっすぐ伸ばし、数秒間保持します。
・ゆっくりと元の位置に戻し、反対側も同様に行います。
・各側を10回ずつ繰り返します。
これらのコアエクササイズは、腰椎の安定性を高め、筋肉のバランスを整えることで、坐骨神経への負担を軽減します。特に、腹筋や背筋が強化されることで、姿勢が改善され、腰への圧力が減少します。
定期的なエクササイズは、長期的な坐骨神経痛の予防にもつながります。
姿勢の改善と筋力トレーニング
良好な姿勢を保つことは、脊椎の負担を軽減し坐骨神経への圧力を減少させます。正しい姿勢は、背中の筋肉や腹部のコア筋群を強化し脊椎の自然な曲線をサポートします。
筋力トレーニングは、特に腰や腹部の筋肉を重点的に鍛えることが効果的です。これにより、脊椎を安定させ、坐骨神経の痛みや圧迫を軽減することができます。
例えば、腹筋や背筋のエクササイズは、脊椎の負担を分散させるだけでなく、日常生活での姿勢の改善にも寄与します。
また、柔軟性を高めるストレッチも重要です。特にハムストリングや腰部のストレッチは、筋肉の緊張を和らげ、坐骨神経痛の症状を和らげるのに役立ちます。
毎日短時間で行うことで効果を実感できます。
最も重要なのは、医師や理学療法士の指導を受けながら、個々の状況に応じた適切なトレーニングプログラムを設計することです。間違った姿勢や過度な負荷のトレーニングは逆効果になる場合がありますので、専門家との連携が不可欠です。
坐骨神経痛の改善に向けては、継続的な努力と個別対応が肝要です。
ツボ押しについて
坐骨神経痛の症状を和らげるためにツボ押しが一つの有効な方法とされています。以下に、ツボ押しの例を3つ紹介します。
【殷門(いんもん)】
殷門は、太ももの裏側のほぼ真ん中に位置します。坐骨神経痛や腰痛を緩和するのに効果的です。抑え方はテニスボールを下に置きその上に太ももの中心が来るように置いて下さい。
【委中(いちゅう)】
膝の裏の真ん中にあります。腰痛や足の痛みを取り除くツボとして有名であり、マッサージだけでなくお灸でも積極的に用いられます。
押すときは力を入れすぎないことがポイントで、座った状態から親指で軽く押す、もしくはなでる程度が丁度良いです。。
【承扶(ふしょう)】
気を付けの姿勢でまっすぐ立つ時、おしりの下に横ジワができます。この横ジワの中央にあるのが「承扶」です。
このツボは、坐骨神経が骨盤の中から外へ出てくる通過点で、この部位を親指で軽く押すと、コリっとしたしこりがあります。坐骨神経痛があると、痛みを庇おうとするために殿部の筋肉がひどく疲れ、しこりができます。
このしこりにマッサージをしたり、お灸で刺激したりすると症状の軽減が期待できます。
まとめ
坐骨神経痛は、様々な病気や状態が原因となって発生します。坐骨神経痛の原因となる病気には、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離症(すべり症)、腰椎の変形性脊椎症などがあります。
坐骨神経痛の対処法のうち、自分でもできるものとして、ストレッチ、マッサージ、ウオーキング、コアエクササイズ、ツボ押しなどがおすすめです。これらの方法は、尻やふくらはぎの血行を良くすることで、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの疾患によるしびれや痛みを軽減し和らげてくれます。
特に、股関節やふくらはぎのストレッチは効果的ですが、このような自分での対処をする際には、整形外科での受診を前提とし、病院や治療院でのやり方等の確認が大事です。患者は、さまざまな記事やエクササイズの一覧を参考にすると、辛い症状を軽減するための適切な対処法を見つけやすいです。
ウォーキングやコアエクササイズは、腰部の筋肉を強くするために役立ち、ツボ押しは、血行を促進し痛みを和らげてくれます。
どのエクササイズも整形外科の監修の下で行い、異常が生じた場合にはすぐに止めるなど適切な対処をすることが必要です。坐骨神経痛に関連して肩こりや首の痛みが生じることもあるため、全身のケアを忘れずに行いましょう。整形外科を受診する際には、受診前に、症状等の情報を整理しておくことで、より適切な治療を受けることができます。
また、栄養も意識しての、健康な生活習慣を維持することも大切です。