「病院に行くべきかどうか分からない」
「整形外科を受診したほうが良いの?」
外反母趾についてこのように悩む方は少なくありません。そこで本記事では、外反母趾の原因や症状、治療の種類、またどの段階で病院へ行くべきかなどを詳しく解説していきます。正しい知識を身に付け、自分に合った方法で改善を目指しましょう。
目次
外反母趾とは?
外反母趾(がいはんぼし)とは、足の親指(母趾)が人差し指側へ大きく曲がり、付け根の関節部分が飛び出すように変形する病気です。その曲がる角度や曲がり方でいくつかの種類があります。
足の親指が外側に15度以上曲がっていれば外反母趾と診断されます。これ以下の場合でも、外側に曲がっていることが確認できれば、進行中と判断されます。
●親指の角度が外側へ大きく傾くことで、足全体のバランスが崩れやすい。
●特に女性に多いとされ、ハイヒールや先の細い靴を好んで履く習慣や、遺伝、足の骨格(形)の特徴などが影響するとされています。
外反母趾が進行すると、親指の変形だけでなく、指の裏側にタコができやすくなったり、足がうまく機能しなくなることで、痛みを生じることがあります。また、日常生活でも歩行バランスが崩れやすくなるため、膝や腰、全身へ影響を及ぼすケースも珍しくありません。
外反母趾の原因と症状
外反母趾の原因
外反母趾の原因は、一つではありません。大きく分けると以下のような要因が考えられます。
- 合わない靴の着用
- 先の細い靴、ハイヒールなど、足指を圧迫するデザインの靴を長時間履き続けることで、親指が外側へ押し出される。
- 足に合わない靴(サイズが小さい・幅が狭いなど)は足の負担を増やし、変形を進行させる。
- 足の骨格・遺伝的要因
- 日本人は欧米人と比べて足のアーチが崩れやすい骨格を持つといわれる。
- 母や祖母など、家系的に外反母趾になりやすい場合もあり、遺伝要因が影響することも多い。
- 筋力の低下・生活習慣
- 足指や足裏の筋肉が弱くなると、足裏のアーチを保てず指に負担がかかる。昔と比べ、裸足で過ごすことが減り、足裏の刺激が格段と少なくなってしまったことにより、反射機能が衰えてくることで足裏のアーチを作っていた靭帯が緩んでいく。
- 立ち仕事、長時間の歩行や姿勢の悪さも進行を助長する。
- 肥満・体重増加
- 体重増加により足への負担が増え、足全体の状態が悪化する。とくにかかとや指先に過剰な負荷がかかりやすく、外反母趾が進む場合がある。
これらの複数の要因が重なり合って外反母趾が進み、日常生活でも違和感や痛みを感じるようになる人が多いのです。
外反母趾の症状
外反母趾の代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 親指付け根の痛み
- 病気が軽度の場合は痛みをあまり感じない場合もありますが、進行するにつれて外側へ曲がった関節部分に強い痛みが出ることが多い。
- 靴を履いたときに圧迫される、あるいは歩行時に体重がかかることで、いっそう痛みが増す。
- 足指の変形
- 親指が大きく外側へ曲がり、中足骨が飛び出したように見える状態に。
- 変形が重度の場合、2番目以降の指(人差し指など)との重なりや曲がりが生じ、タコや胼胝(べんち)ができやすくなる。
- タコやウオノメの発生
- 歩行時の圧迫や摩擦によって足裏や指の付け根にタコやウオノメができ、さらに痛みを感じることがある。
- 足全体・関節への影響
- 足指の変形によって歩行バランスが崩れ、膝や股関節、腰など他の関節にも負担がかかりやすい。
- 放置しているとさらに進行し、症状の改善が難しくなることもある。
こうした状態や痛みは、適切なケアや治療を行わずに放っておくと悪化するリスクが高まります。痛みが続いたり、変形が気になる場合は早めの受診が大切です。
外反母趾は病院に行くべき?受診のタイミング
「外反母趾かもしれない」「少し痛みはあるけど、病院に行くほどではないかも」――そう悩む方は多いでしょう。ですが、次のような症状や状態がみられる場合は、整形外科などの病院を受診して医師に相談することをおすすめします。
●痛みが強く、日常生活に支障がある
歩くだけで痛む、靴を履くと激痛が走るなど、生活の質(QOL)が著しく低下している。
●変形が進んでいると感じる
親指の傾きや足の形が以前より大きく歪み、見た目にもはっきり分かるようになった。
●タコやウオノメが繰り返しできる
足指の裏や付け根にタコが頻繁にできる、痛くて歩けない状態が続くときは要注意。
●保存療法を試しても改善しない
市販のサポーターやインソールを使っても痛みが続く、改善がみられないなどの場合は専門家の診察が必要。
症状や変形が軽度のうちに行動すれば、手術以外の保存的な治療で十分に対処できるケースが多いです。早めの受診で悪化を防ぎ、より良い治療方法を選択しましょう。
外反母趾の治療方法:保存療法と手術療法
病院では、問診の後、外観上の所見をとります。また、外反母趾の進行度合いをみるためにレントゲンを撮ることもあるでしょう。親指の中足骨と基節骨がなす角度を外反母趾角といいますが、これが20度~30度未満を軽度、30度~40度未満を中等度、40度以上を重度としています。
軽度で痛みが軽いうちに、専門医に見てもらいながら靴の見直しや運動療法など行っていくことで、症状や変形を改善、予防していくことが大切です。
外反母趾の治療には、大きく分けて保存療法と手術療法があります。症状の進行度合いや患者の状態に応じて、医師と相談しながら最適な方法を選ぶことが重要です。
保存療法
インソール・装具の利用
足のアーチをサポートするインソールや、親指の変形を軽減させる装具を使用。
靴の中で足の骨格を正しい位置に近づけ、痛みや進行を抑える効果が期待できる。
テーピング・バンド固定
親指の角度を補正し、関節への負担を軽減する方法。
自宅でも行えるが、適切な貼り方を身につけるために専門家の指導を受けるとよい。
足指体操・筋力トレーニング
足指や足裏の筋力を強化し、足の機能を高める。
タオルギャザー(床に置いたタオルを足指でつかむ運動)などを日々の習慣にすることで改善が期待できる。
当院でお伝えしているセルフケアの1つ、足首のズボラ筋を鍛えるトレーニングは、外反母趾による足の失ったアーチ機能を取り戻してくれます。
↓セルフケア動画についてはこちらの記事でご紹介!
痛み止めや湿布
痛みが強い場合、鎮痛剤や湿布などで一時的に症状を和らげる。
根本原因を取り除くわけではないため、並行して他の方法を取り入れることが望ましい。
手術療法
変形が重度で保存療法では改善が難しい場合、または手術後の改善が見込まれる場合、整形外科での手術が検討される。
●仮骨性外反母趾
親指は曲がっておらず、付け根の骨部分のみ出っ張ている仮骨性外反母趾の場合、骨の突出を切除することで形を整えて親指の機能が残せるもの。骨の切除により、著しい圧迫による症状が軽減される見込みがあるもの。
●日常生活で痛みなどの症状が続いている
変形が重度の為、靴が履けない、または歩行困難。痛みが軽くなることがあっても、ぶり返し著しく生活に支障をきたしているもの。
骨を切り、正しい角度に矯正する手術が一般的。術後はリハビリが必要となるが、痛みや変形の大幅な軽減が期待できる。日本国内でも数多くの患者が受けているため、最新の手術方法や術後ケアについて医師に相談するとよい。
手術を行うかどうかは、医師が足の状態や患者の年齢・生活スタイルを考慮して総合的に判断します。受診のタイミングが早ければ早いほど、保存療法の幅が広がる可能性が高いのがポイントです。
まとめ:適切な受診とセルフケアで健康な足を守ろう
外反母趾は、病院行くべきか迷うケースが多い症状ですが、痛みや変形が進む前に整形外科などで早めに受診し、医師に相談することで治療の選択肢は格段に広がります。
- 痛みがまだ軽度のうちは、保存療法を中心とした矯正やインソール、テーピングなどの方法で改善を図りやすい。
- 変形が重度の場合や痛みが強い場合は、手術を視野に入れて医師と相談することも必要。
また、普段の生活から靴選びを見直し、足指や足裏の筋力を鍛えるセルフケアを続けることは、外反母趾の悪化防止や再発予防にとても大切です。
- 先が細い靴やヒールが高い靴はできるだけ控え、足指がしっかり動かせるものを選びましょう。
- 日々のタオルギャザーやストレッチなど、地道なセルフケアが状態の改善をサポートしてくれます。
「どうしても我慢できない」「痛みが強くて日常生活に支障がある」という場合は、直ちに専門機関へ相談し、適切なアドバイスと治療を受けましょう。外反母趾は放置するとどんどん進む恐れがありますが、正しい知識と予防策を身につけ、適切なタイミングで行動を起こすことで、痛みの軽減や変形の改善が期待できます。