この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
椎間板ヘルニアの痛みは、ただの腰痛と思って放置していると深刻な症状に発展する可能性があります。主に腰から始まる痛みがお尻、太もも、下腿、足にかけての広い範囲で感じられるのが特徴です。どこが痛いのかによってヘルニアの場所が推測でき、特にお尻から太ももの裏側に現れる痛みは「坐骨神経痛」として知られています。このページでは、 椎間板ヘルニアはどこが痛い かについて、現れる場所や特徴、椎間板の位置による症状の違いについて詳しく解説します。
椎間板ヘルニアとは、腰椎の椎間板の中央にある髄核がその周囲の線維輪の裂け目から飛び出し、神経を刺激して、腰や下肢に痛みや痺れを感じます。
目次
椎間板ヘルニアの痛みはどこに出る?様々な部位に症状が広がる理由
椎間板ヘルニアは、腰の椎骨と椎骨の間にあるクッションの役割をする椎間板の一部が飛び出す状態です。この椎間板の突出部分が神経を圧迫することで、様々な症状が引き起こされます。
腰椎は5つの椎体(L1〜L5)と仙骨(S)で構成されており、それぞれの間に椎間板があります。椎間板ヘルニアが発生すると、神経根が圧迫され、腰痛だけでなく、神経が通っている部位に沿って痛みやしびれが広がっていきます。特に、日常生活で負担がかかりやすいL4/5(第4腰椎と第5腰椎の間)やL5/S1(第5腰椎と仙骨の間)でヘルニアが発生することが多いのです。
腰椎椎間板ヘルニアの初期症状とは?
椎間板ヘルニアの初期症状として、まず腰の痛みが現れます。重い物を持ち上げたり、くしゃみをしたりした際に突然痛みが発生することもあります。
初期の腰痛症状では、前かがみの姿勢を取ると痛みが和らぎ、逆に腰を反らすと痛みが強くなる特徴があります。また、座っている時より立っている時の方が痛みを感じることが多いでしょう。
椎間板ヘルニアはどこが痛い ?痛みの場所と部位別症状
椎間板ヘルニアの痛みやしびれは、ヘルニアの発生場所によって異なる部位に現れます。以下に主な症状部位を解説します。
1. 腰痛 – 椎間板ヘルニアの基本症状
ほとんどの椎間板ヘルニア患者さんは腰痛を経験します。特に急性期には、腰を動かすと痛みが強くなり、時には腰が曲がってしまう「疼痛性側弯」という状態になることもあります。
腰痛の特徴:
- 腰を動かすと痛みが増す
- 長時間同じ姿勢でいると痛みが強くなる
- 朝起きた時や長時間安静にしていた後に痛みが強い
- 咳やくしゃみで痛みが増す
2. 臀部(お尻)の痛み – 坐骨神経痛の特徴
腰椎椎間板ヘルニアでは、お尻の痛みも特徴的な症状です。これは坐骨神経が圧迫されることで生じる「坐骨神経痛」と呼ばれる症状です。
臀部痛の特徴:
- 片側または両側のお尻に鈍い痛みが生じる
- 座っていると痛みが強くなる
- 歩いたり立ったりすると和らぐことがある
3. 太ももの痛み – 前部と後部の違い
太ももの裏側や太ももの前部分に痛みを感じることがあります。特に太ももの裏側(ハムストリングス)の痛みは、L5/S1のヘルニアに多く見られます。
太ももの痛みの特徴:
- 太ももの裏側や外側にピリピリとした痛みやしびれ
- 足を伸ばすと痛みが増す(ラセーグ徴候)
- 長時間座っていると痛みが強まる
ヘルニアの位置 | 主な痛みやしびれの部位 | 特徴的な症状 |
---|---|---|
L1/2 | 腰の上あたり | 比較的症状が軽い |
L2/3 | 足の付け根、そけい部 | だるさ、しびれ |
L3/4 | 太ももの前部 | 太ももの前面の痛み、膝の痛み |
L4/5 | お尻、太ももの横、膝の下、外側のすね | 最も頻度が高い、足首が上がらなくなる場合も |
L5/S1 | お尻の真ん中、太ももの裏、ふくらはぎ、かかと、足の裏、足の小指 | アキレス腱の反射低下、つま先歩きが困難 |
4. 下腿(すね)の痛み – 外側と内側の症状
腓腹筋(ふくらはぎ)や下腿の外側などに痛みを感じることがあります。これはL5/S1のヘルニアで多く見られる症状です。
下腿の痛みの特徴:
- ふくらはぎや外側のすねにピリピリした痛み
- 歩行時に痛みが増す
- 長時間立っていると痛みが強まる
5. 足の痛み – 足底から指先まで
足の甲や足裏、足の指に痛みやしびれを感じることがあります。特にL5/S1のヘルニアでは、かかとから足の裏、足の小指にかけての痛みやしびれが特徴的です。
足の痛みの特徴:
- 足の指や足の裏にしびれや痛み
- 歩行時のつまずきやすさ
- 足首が上がりにくい(下垂足)
椎間板ヘルニアでどんな危険な症状が出る可能性があるのか?
椎間板ヘルニアの症状は、単なる痛みやしびれだけではなく、重症化すると以下のような深刻な症状が現れることがあります。
神経の役割というのは運動する役割もあります。ここまでくると足首を動かしたりとか歩いたりする筋肉にも影響するわけです。そうすると足首が上がらなくなったりとかするんですよね。
危険性の高い症状3つと対処法
以下の症状が出た場合は、すぐに整形外科を受診しましょう。これらは神経が強く圧迫され、損傷している可能性を示す危険信号です。
- 運動麻痺: 足首が上がらなくなる(下垂足)、足に力が入らないなどの症状。つまずきやすくなり、高齢者では転倒のリスクが高まります。
- 強いしびれ: 触っている感覚がなくなるほどの強いしびれは神経損傷の可能性があります。
- 膀胱直腸障害: おしっこが出にくい、残尿感がある、排便コントロールが難しいなどの症状。
椎間板ヘルニアの危険な症状として、運動麻痺(足に力が入らない、足首が上がらないなど)、強いしびれ(触っている感覚がなくなるほどのしびれ)、膀胱直腸障害(おしっこが出にくい、残尿感がある、排便コントロールが難しいなど)の3つが挙げられます。これらの症状は神経が強く圧迫されている、または傷ついている可能性を示しており、この場合、早急に医療機関を受診する必要があります。特に膀胱直腸障害は緊急性が高く、手術が必要になることもあります。
椎間板ヘルニアの位置による痛みの違い
椎間板ヘルニアの発生位置によって、痛みやしびれが出現する部位は異なります。腰椎は5つの椎骨(L1〜L5)と仙骨(S)で構成されており、それぞれの間に椎間板があります。
L4/5椎間板ヘルニアの症状
L4/5(第4腰椎と第5腰椎の間)のヘルニアは最も頻度が高く、以下のような症状が特徴的です:
- お尻から太ももの横側に痛み
- 膝の下や外側のすねにしびれや痛み
- 足首を上げる動作が困難になる場合がある
L4/5のヘルニアは日常生活での負担が大きい部分であり、腰を曲げる動作で痛みが増します。
L5/S1椎間板ヘルニアの症状
L5/S1(第5腰椎と仙骨の間)のヘルニアは次に多く、以下のような症状が見られます:
- お尻の真ん中あたりの痛み
- 太ももの裏側からふくらはぎにかけての痛み
- かかと、足の裏、足の小指のしびれや痛み
- アキレス腱反射の低下
- つま先立ちが困難になる場合がある
専門家の見解: 椎間板ヘルニアの症状と対処法
椎間板ヘルニアの症状は、単なる腰痛として見過ごされがちです。しかし、神経症状を伴う場合は適切な診断と治療が必要です。笹川先生によると、椎間板ヘルニアは椎間板の中央にある髄核が線維輪の裂け目から飛び出し、神経を圧迫することで様々な症状を引き起こします。
治療法としては、症状の程度によって異なるアプローチが取られます。軽度の場合は運動療法や薬物療法などの保存的治療が効果的ですが、運動麻痺やしびれ、膀胱直腸障害などの神経症状がある場合は、手術が必要になることもあります。
手術後は適切なリハビリテーションが重要です。腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021(改訂第3版)によると、特に腰を安定させる筋肉(腹横筋や多裂筋など)を段階的に鍛えていくことで、再発リスクを減らすことができます。
椎間板ヘルニアを予防する方法と痛みを和らげる対処法
椎間板ヘルニアを予防するためには、腰周りの筋肉を強化することが重要です。腰は周囲に骨がないため、筋肉で支える必要があります。
家でできる簡単なエクササイズ
- お尻上げ体操: 仰向けで膝を軽く曲げ、お尻から上体をゆっくり持ち上げる運動
- 腹筋強化: 腹部の筋肉を鍛えることで腰への負担を減らす
- ストレッチ: 腰周りの筋肉を柔軟に保つためのストレッチ
痛みが強い場合は、以下が効果的です:
- 急性期は安静にし、腰への負担を減らす
- 医師の処方による痛み止めや炎症を抑える薬
- ブロック注射(神経の近くに炎症を抑える薬を注射)
- 症状が改善しない場合は、医師と相談の上で手術を検討
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椎間板ヘルニアの痛みはどこに出る?よくある質問
Q. 椎間板ヘルニアはどんな病気ですか?
A. 椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間にあるクッションの役割をする椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで痛みやしびれなどの症状を引き起こす病気です。腰椎は5つの椎体と仙骨で構成されており、椎間板の突出部分が神経根を圧迫することで様々な症状が現れます。日常生活での負担が大きいL4/5やL5/S1の部位に多く発生します。
Q. 椎間板ヘルニアで足が動かなくなることがありますか?
A. はい、椎間板ヘルニアが重症化すると足が動かなくなる「運動麻痺」が起こる可能性があります。特に足首が上がらなくなる「下垂足」の症状が現れることがあり、これは神経が強く圧迫されていることを示す危険信号です。そのほか、足にうまく力が入らない、つまずきやすくなるなどの症状も見られます。このような症状が出た場合は、すぐに整形外科を受診してください。
Q. 椎間板ヘルニアの痛みはどこに出るのですか?
A. 椎間板ヘルニアの痛みは、腰だけでなく様々な部位に現れます。主な症状は、腰痛、お尻の痛み(坐骨神経痛)、太ももの痛み(前部や裏側)、下腿(すね)の痛み、足の痛みやしびれなどです。どの部位に症状が出るかは、ヘルニアの発生場所によって異なります。例えば、L4/5のヘルニアではお尻から太ももの横側、膝の下、外側のすねに痛みが出やすく、L5/S1のヘルニアではお尻の真ん中、太ももの裏側、ふくらはぎ、足の裏にかけて症状が現れやすくなります。
Q. 椎間板ヘルニアのやばい症状とは何ですか?
A. 椎間板ヘルニアの危険な症状として、運動麻痺(足に力が入らない、足首が上がらないなど)、強いしびれ(触っている感覚がなくなるほどのしびれ)、膀胱直腸障害(おしっこが出にくい、残尿感がある、排便コントロールが難しいなど)の3つが挙げられます。これらの症状は神経が強く圧迫されている、または傷ついている可能性を示しており、早急に医療機関を受診する必要があります。特に膀胱直腸障害は緊急性が高く、手術が必要になることもあります。
Q. 椎間板ヘルニアの手術後の回復はどのくらい時間がかかりますか?
A. 椎間板ヘルニアの手術後の回復期間は症状や手術の種類によって異なります。運動麻痺がある場合、筋力の回復には時間がかかることがあります。一度落ちた筋力は自分で運動して鍛え直す必要があるためです。しびれについては、単なる圧迫による症状なら手術で改善することが多いですが、神経が傷ついている場合は完全に回復しないこともあります。手術後は必ずリハビリテーションを行い、腰を安定させる筋肉をしっかり鍛えることが再発防止につながります。
Q. 椎間板ヘルニアはどうやって予防できますか?
A. 椎間板ヘルニアの予防には、腰周りの筋肉を強化することが重要です。腰は周囲に骨がなく筋肉で支える必要があるため、腹部の筋肉(腹横筋など)や背中の筋肉(多裂筋など)を鍛えることが効果的です。日常生活では正しい姿勢を保ち、重い物を持つときは膝を曲げて持ち上げる、長時間同じ姿勢を避けるなどの工夫も大切です。また、適度な運動やストレッチを行い、体重管理も予防には重要です。すでに腰痛がある場合は、医師に相談しながら適切な運動を行うことをお勧めします。