この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
「ヘルニアの痛みにタリージェを処方されたけど全く効果がない…」「副作用だけ出て辛い…」このような悩みを抱えていませんか?タリージェはヘルニアなどの神経障害性疼痛に効果が期待される薬ですが、すべての患者さんに効くわけではありません。本記事では、タリージェが効かない原因と具体的な対処法を詳しく解説します。タリージェが効果を示さない場合でも、他の治療法によって痛みが軽減される可能性があります。適切な対処法を知り、ヘルニアの痛みから解放されましょう。
腰椎椎間板ヘルニアって腰が痛くなるだけだと思われがちなんですけども、結構大変な症状が出てきます。足首が上がらなくなったりとか感覚がなくなったりとか、ビックリするような症状が出ることもあります。
目次
タリージェとは?神経障害性疼痛に効く薬の特徴と限界
タリージェ(一般名:ミロガバリン)は、神経の痛みを抑える薬で、帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害による痛み、そして椎間板ヘルニアなどによる神経障害性疼痛の治療に使われます。同じ作用を持つ薬剤としてはリリカ(プレガバリン)が有名です。薬の詳細についてはタリージェの添付文書(PMDA)をご確認ください。
タリージェの主な特徴は以下のとおりです:
特徴 | 詳細 |
---|---|
作用機序 | 神経細胞のカルシウムチャネルに結合し、神経の過剰な興奮を抑える |
適応症 | 神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害など) |
効果発現 | 服用開始から効果が現れるまで一般的に1〜2週間かかることが多い |
主な副作用 | めまい、眠気、ふらつき、吐き気など |
限界 | 筋肉痛や関節痛など、神経障害以外の痛みには効果が弱いことがある |
タリージェは神経障害性疼痛に特化した薬であり、すべての種類の痛みに効果があるわけではありません。そのため、ヘルニアの症状によっては効果を感じられない場合があります。
なぜヘルニアにタリージェが効かないのか?5つの主な理由
ヘルニアの痛みにタリージェが効かないと感じる場合、いくつかの原因が考えられます。効果がないと諦める前に、以下の理由を確認してみましょう。詳しくは椎間板ヘルニアの原因と症状についての記事もご参照ください。
1. 痛みの原因が神経障害ではない可能性
ヘルニアの痛みには、神経痛だけでなく、筋肉や関節の痛みも含まれることがあります。タリージェは神経障害性疼痛に効果的ですが、筋肉痛や炎症による痛みには効果が限定的です。特に腰椎椎間板ヘルニアでは、神経の圧迫による痛みと同時に、腰の筋肉の緊張や炎症による痛みも生じていることがあります。
2. 効果が現れるまでに時間がかかっている
タリージェなどの神経障害性疼痛治療薬は、効果が現れるまでに1〜2週間、場合によってはそれ以上かかることがあります。すぐに効果が表れない場合でも、医師の指示に従って継続することで徐々に効果が現れる可能性があります。
ヘルニアは自然に直る場合もありますけれども、それよりも痛みがでない体になるというところと、再発しない体にするっては一番大事かなと思います。
3. 用法・用量が適切でない
タリージェは副作用の出現リスクを考慮して、通常は低用量から開始し、徐々に増量していく方法が取られます。そのため、初期の用量では十分な効果が得られないことがあります。しかし、自己判断で用量を変更するのは危険です。効果が感じられない場合は医師に相談しましょう。
4. 副作用によって服用が難しい
タリージェの副作用としてめまいや眠気、ふらつきなどが起こることがあります。これらの副作用がつらく感じられ、十分な量を服用できないために効果が現れにくいケースもあります。タリージェの副作用についてはPMDAの公式情報に基づいています。
5. 個人差による効果の違い
薬の効果には個人差があります。同じ症状でも、ある人には効果的でも別の人には効果が弱いということがあります。これは体質や代謝の違い、痛みの原因の複雑さなどによるものです。
タリージェが効かないと感じる場合、まずは担当医に相談し、原因を特定することが重要です。自己判断で服用を中止したり用量を変更したりせず、必ず医師の指示に従いましょう。
タリージェの副作用と注意点:安全に使用するために知っておくべきこと
タリージェを服用する際に、副作用についても理解しておくことが大切です。副作用の中には日常生活に支障をきたすものもあるため、注意が必要です。
主な副作用とその対処法
以下の副作用が現れた場合は、医師に相談し、適切な対応を心がけましょう。
副作用 | 対処法 |
---|---|
めまい・ふらつき | 急に立ち上がらない、服用後はしばらく車の運転や危険を伴う作業を避ける |
眠気 | 就寝前の服用を医師と相談する、日中の活動に支障がある場合は医師に報告 |
口渇・吐き気 | 水分をこまめに摂取する、食後に服用するなど服用タイミングの調整 |
浮腫 | 塩分制限、足を高くして休む、むくみがひどい場合は医師に相談 |
体重増加 | 規則正しい食生活と適度な運動、急激な体重増加は医師に報告 |
服用時の注意点
タリージェを安全に服用するために、以下の点に注意しましょう:
- 医師の処方通りに服用し、自己判断で用量を変更しない
- アルコールと併用すると副作用が強く出ることがあるため注意
- 妊娠中・授乳中の服用は医師と相談
- 他の薬との飲み合わせにも注意が必要
- 急に服用を中止すると、離脱症状が出ることがあるため、減量は医師の指示に従う
詳しくは日本整形外科学会のヘルニア情報も参考になります。
タリージェが効かない場合の具体的な対処法:理学療法師からのアドバイス
タリージェが効かないと感じる場合、諦める必要はありません。以下に具体的な対処法をご紹介します。
1. まずは担当医に相談する
タリージェの効果が感じられない場合は、まず担当医に相談しましょう。その際、以下の点を伝えると良いでしょう:
- いつからタリージェを服用しているか
- 現在の用量と服用のタイミング
- どのような痛みや症状があるか(場所、強さ、性質など)
- 副作用の有無とその程度
- 他に服用している薬がある場合はその情報
症状の正確な伝達が適切な治療につながります。痛みの強さを10段階で表現したり、日常生活でどのような動作が困難かなど、具体的に伝えることが大切です。
2. 他の薬物療法への変更・追加
タリージェが効かない場合、以下のような代替薬や併用薬を検討することがあります:
薬剤のタイプ | 例 | 特徴 |
---|---|---|
他の神経障害性疼痛治療薬 | リリカ(プレガバリン) | タリージェと同様の作用だが、個人差により効果が異なることがある |
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | ロキソニン、セレコックスなど | 炎症や筋肉痛に効果的、神経痛への効果は限定的 |
筋弛緩薬 | ミオナール、テルネリンなど | 筋肉の緊張を緩和し、二次的な痛みを軽減 |
三環系抗うつ薬 | アミトリプチリンなど | 神経障害性疼痛に対して少量から使用することがある |
漢方薬 | 牛車腎気丸、芍薬甘草湯など | 長期使用が可能で副作用が比較的少ない |
3. 神経ブロック注射
薬物療法で十分な効果が得られない場合、神経ブロック注射が選択肢となることがあります。局所麻酔薬やステロイド薬を神経の近くに注射し、痛みを遮断する治療法です。即効性があり、効果が数週間から数ヶ月続く可能性があります。
4. リハビリテーション・物理療法
ヘルニアの痛みには、適切な運動療法やストレッチが効果的なことがあります。専門のリハビリ施設や整体院などで、以下のような治療を受けることを検討しましょう:
- 物理療法(温熱療法、電気刺激療法など)
- ストレッチや筋力トレーニング
- 姿勢の改善指導
- マッサージや手技療法
5. 手術療法
保存的治療で効果がない場合や、神経症状が進行する場合には手術が検討されることがあります。特に、下肢の筋力低下や感覚障害、膀胱直腸障害(排尿・排便障害)などがある場合は、早急に専門医に相談する必要があります。
腰椎椎間板ヘルニアでおしっこがでた感じがしないなとか残尿感が出た場合、これは結構危険な状態なんですよ。こういう症状があったらすぐ手術しないといけないんです。
日常生活でできること:ヘルニアの痛みと上手に付き合うためのセルフケア
薬物療法や医療機関での治療と併せて、日常生活での工夫も大切です。以下に、ヘルニアの痛みを和らげるためのセルフケア方法をご紹介します。
正しい姿勢と動作
ヘルニアの痛みを悪化させないために、日常の姿勢や動作に注意しましょう:
- 長時間同じ姿勢を続けないようにする
- 重いものを持つときは膝を曲げて腰に負担をかけないようにする
- 座るときは良い姿勢を保ち、長時間のデスクワークではこまめに休憩を取る
- 寝るときは横向きに寝る、または仰向けで膝の下に枕を置く
効果的なストレッチと運動
医師やリハビリの専門家と相談のうえ、適切なストレッチや運動を取り入れましょう:
- 腰回りの筋肉をほぐすストレッチ
- 腹筋や背筋を鍛えるエクササイズ
- 水中運動やウォーキングなど負荷の少ない有酸素運動
ストレッチや運動は痛みがない範囲で行い、痛みが強くなるようであれば中止し、専門家に相談しましょう。適切な運動は筋力を高め、腰への負担を減らし、再発予防にもつながります。
痛みの管理については痛みの管理方法の記事も参考になります。
生活習慣の見直し
痛みの管理と健康維持のために、以下の生活習慣の見直しも有効です:
- 適正体重の維持(肥満は腰への負担を増加させる)
- 十分な睡眠と休息
- 禁煙(喫煙は椎間板の栄養状態を悪化させる可能性がある)
- ストレス管理(ストレスは筋緊張を高める可能性がある)
タリージェとリリカの違い:どちらが効果的か?
タリージェとリリカはともに神経障害性疼痛に用いられる薬ですが、いくつかの違いがあります。
項目 | タリージェ(ミロガバリン) | リリカ(プレガバリン) |
---|---|---|
発売開始 | 2019年 | 2010年 |
服用回数 | 通常1日2回 | 通常1日2〜3回 |
標的部位への選択性 | より高い(理論上) | やや低い |
副作用の出現率 | リリカと同等か若干低い傾向 | 長期の使用実績あり |
タリージェが効かない場合、リリカへの変更で効果が出ることもあります。また、その逆も可能性があります。どちらの薬が自分に合うかは個人差があるため、医師と相談しながら最適な選択をしましょう。
ヘルニアとタリージェに関するよくある質問
Q. タリージェはどのくらい飲み続ければ効果が出ますか?
A. タリージェは効果が現れるまでに個人差がありますが、一般的には1〜2週間程度の継続服用が必要です。中には効果を実感するまでに3〜4週間かかる方もいます。効果が感じられない場合は自己判断で中止せず、医師に相談することが重要です。また、症状が改善した後も、医師の指示なく突然服用を中止すると症状が再発することがあるため注意が必要です。
Q. タリージェの副作用でめまいがひどいのですが、対処法はありますか?
A. タリージェによるめまいの対処法としては、服用のタイミングを就寝前にする、少量から開始して徐々に増量する、急に立ち上がらないようにするなどの工夫があります。しかし、めまいが日常生活に支障をきたすほど強い場合は、必ず医師に相談してください。用量の調整や代替薬への変更が検討される場合があります。自己判断での服用中止は避け、医師の指示に従いましょう。
Q. ヘルニアの手術が必要かどうかは、どのような症状で判断されますか?
A. ヘルニアの手術が検討される主な症状としては、①保存的治療(薬物療法、リハビリなど)で効果がなく、強い痛みが続く場合、②足の筋力低下や麻痺が進行する場合、③膀胱直腸障害(排尿・排便に関する問題)がある場合などが挙げられます。特に、足の筋力低下や膀胱直腸障害は緊急性が高く、早急に専門医の診察を受ける必要があります。MRI検査などの画像診断と症状を総合的に評価して手術の必要性が判断されます。
Q. タリージェとロキソニンは併用しても大丈夫ですか?
A. タリージェとロキソニンは作用機序が異なるため、医師の指示のもとで併用されることがあります。タリージェは神経障害性疼痛に、ロキソニンは炎症や筋肉痛に効果があり、補完的に働く可能性があります。ただし、両方の薬を服用することで副作用のリスクが高まる可能性もあるため、必ず医師や薬剤師に相談し、指示された用法・用量を守ることが重要です。自己判断での併用は避けてください。
Q. タリージェが効かない場合、他の薬物療法を試すべきですか?
A. タリージェが効かない場合は、医師と相談して他の薬物療法を検討することが重要です。リリカなど他の神経障害性疼痛治療薬への変更や、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との併用、筋弛緩薬の追加など、様々な選択肢があります。自己判断で薬を変更せず、必ず医師の指導のもとで適切な薬物療法を行いましょう。
Q. ヘルニアの再発を防ぐためにはどうすればよいですか?
A. ヘルニアの再発予防には、①適切な姿勢の維持(特に重いものを持ち上げる際の注意)、②腹筋や背筋などのコア筋力強化、③適正体重の維持、④規則正しい生活と十分な休息、⑤喫煙の回避(喫煙は椎間板の健康に悪影響)、⑥ストレス管理、⑦定期的な軽い運動(医師の許可を得た上で)などが効果的です。症状が完全に消失した後も、これらの予防策を継続することで再発リスクを低減できることが期待されます。疑問や不安がある場合は、専門医やリハビリの専門家に相談しましょう。
Q. タリージェを飲むと眠くなりますか?仕事や運転への影響は?
A. タリージェの副作用として眠気やめまい、ふらつきが報告されており、これらの症状は特に服用初期や増量時に現れやすい傾向があります。個人差はありますが、眠気などの副作用が強く出る場合は、車の運転や機械操作など危険を伴う作業は避けるべきです。仕事への影響を最小限にするためには、就寝前に服用する、週末から服用を開始するなどの工夫も検討できます。副作用の程度や対処法については、医師や薬剤師に相談し、指示を仰ぐことをお勧めします。
まとめ:ヘルニアの痛みとタリージェ治療の今後
ヘルニアの痛みにタリージェが効かないと感じる場合、様々な原因や対処法があることをご紹介しました。神経障害以外の痛みの関与、効果発現までの時間、用法・用量の問題、副作用、個人差など、効果が感じられない理由は多岐にわたります。
大切なのは、自己判断で治療を中断せず、医師と相談しながら最適な治療法を探ることです。他の薬物療法、神経ブロック、リハビリテーション、必要に応じた手術など、様々な選択肢があります。
また、日常生活での姿勢や動作の見直し、適切な運動、健康的な生活習慣の維持も、痛みの軽減と再発予防に重要な役割を果たします。
ヘルニアの痛みは辛いものですが、適切な治療とセルフケアによって、多くの方が症状の改善を実感しています。あきらめずに専門家と相談し、ご自身に合った治療法を見つけていただければ幸いです。