この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
ヘルニアがある場合、椎間板への負担が大きい仕事は避けるべきです。重いものを持ち上げたり、長時間同じ姿勢を続けたりする職業は、腰や首に過度な負担をかけ、症状の悪化を招く可能性があります。この記事では、ヘルニアの方が知っておくべき向かない仕事の特徴と、働く際の注意点、そして症状悪化を防ぐための対策について詳しく解説します。仕事を選ぶ際や現在の職場環境を見直す際の参考にしてください。一般的な情報提供を目的としており、具体的な判断は必ず医療専門家にご相談ください。
腰痛は人が2本足で直立歩行を行うようになった時から始まった問題で、二足歩行により腰に負担がかかるようになってきました。背骨がS字に湾曲して効率よく体を支えるために進化してきたのですが、しかしそれでも腰の負担は免れません。
目次
【解説】ヘルニアの方が避けるべき4つの仕事特徴
ヘルニアを抱える方にとって、どのような仕事が負担となるのでしょうか。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの腰痛疾患がある場合、特に注意すべき仕事の特徴を以下に解説します。
1. 重量物取扱い作業が多い仕事
椎間板ヘルニアの症状がある方は、重いものを持ち上げる動作を頻繁に行う仕事は避けることが望ましいでしょう。これらの動作は腰部への負担が非常に大きく、症状を悪化させる主な原因となります。ただし、個人差がありますので、必ず医療専門家に相談することをお勧めします。
荷物を持ち上げる時こんな風に膝を伸ばしたまま腰だけ曲げていませんか。ちょっと待ってくださいこの動き腰が壊れちゃいます。体重と荷物の元が集中的に腰にかかってしまいます。軽そうな荷物だから大丈夫という油断は禁物です。
2. 長時間の立ち仕事・同一姿勢
接客業や製造ラインなど、長時間立ち続ける仕事は、脊椎に継続的な負荷をかけることになります。同様に、デスクワークなどで同じ姿勢を長時間続けることも腰部への負担となり得ます。定期的に姿勢を変えることが重要です。
3. 中腰姿勢が多い業務
農業や介護職など、中腰姿勢での作業が多い仕事は、腰椎に大きな負担をかけます。特に、前かがみの状態で物を持ち上げたり、遠くに手を伸ばしたりする動作は要注意です。
4. 振動・衝撃を受ける仕事
建設現場での重機操作や長距離トラック運転など、継続的な振動や衝撃を受ける仕事も椎間板に負担をかけます。これらの振動は時間をかけて蓄積し、症状を悪化させる可能性があることが研究で示されています。
ヘルニアに向かない具体的な仕事ワースト5選
ヘルニアの症状を持つ方が特に注意すべき職種を具体的に紹介します。これらの職業は、腰や首に継続的な負担をかける要素を含んでいます。
職種 | ヘルニアに与える影響 | 注意すべきポイント |
---|---|---|
建設業・土木業 | 重いものを持ち上げる動作が多く、腰椎に大きな負担がかかる | 重量物の持ち上げ方に注意し、可能であれば補助器具を使用する |
介護・看護職 | 患者の移乗や体位変換など、腰に負担のかかる動作が多い | 適切な介助テクニックを学び、複数人で作業する |
運送業・倉庫作業 | 荷物の積み下ろしや長時間の運転姿勢で腰への負担が蓄積 | 定期的な休憩と、荷物を持つ際の正しい姿勢を心がける |
美容師・理容師 | 長時間の立ち仕事や前かがみの姿勢が腰痛を悪化させる可能性がある | 足の高さを調整し、できるだけ中腰の姿勢を避ける |
農業 | 中腰での作業が多く、腰椎に継続的な負担がかかる | 作業の合間に休憩と腰のストレッチを行う |
姿勢や動作も要注意!ヘルニアを悪化させる3つの働き方
特定の職種だけでなく、どのような仕事でも姿勢や動作によってヘルニアの症状は悪化する可能性があります。以下のような働き方には特に注意が必要です。
1. 長時間座り続ける「ずっこけ座り」
デスクワークなどで同じ姿勢で長時間座り続けることは、一見負担が少ないように思えますが、実は腰への負担は非常に大きいものです。特に姿勢が悪いと、椎間板への圧力が増加し、ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。研究によれば、長時間の座位は椎間板内圧を上昇させることが示されています。
今この動画を見てる時こんな風に座っていませんか。この姿勢危ないですよ。これずっこけ座りと言われていて背骨が本来持っている自然なカーブを失い背中が丸まります。ずっこけ座りは腹筋や配筋をあまり使わないので腰椎を支える力が弱まって腰を壊す原因につながります。
2. 不適切な中腰姿勢でのピッキング作業
農業や清掃業、園芸などで多い中腰姿勢での作業は、腰部に継続的な負担をかけ続けます。この姿勢を長時間続けることで、椎間板への圧力が増加し、ヘルニアの症状を悪化させるリスクが高まる可能性があります。
3. 急な動作や不自然な姿勢での作業
突然の重いものの持ち上げや、体をひねった状態での力仕事は、椎間板に急激な負担をかけます。これらの動作は、既存のヘルニアを悪化させるだけでなく、新たな損傷を引き起こす可能性もあります。
ヘルニアでも続けやすい仕事3つの特徴
ヘルニアの症状があっても、工夫次第で続けやすい仕事もあります。ここでは、ヘルニアの方にとって比較的負担の少ない仕事の特徴を紹介します。
定期的なストレッチと適切な姿勢の維持がヘルニア症状の管理に重要です。
1. 姿勢の自由度が高い仕事
以下のような仕事は、椎間板への負担が比較的少なく、ヘルニアを抱えながらでも続けやすい傾向があります。ただし、個人の症状や状態によって適性は異なりますので、医師に相談することをお勧めします。
- 座位と立位を適度に切り替えられるデスクワーク(高さ調整可能なデスクを使用)
- 重量物の持ち上げが少ない事務職
- オンラインでのコンサルティングや教育関連の仕事
- 柔軟な勤務形態が選べるリモートワーク
- 姿勢の自由度が高い在宅ワーク
2. 適度な動きと休憩が取れる仕事
長時間同じ姿勢を続けることなく、適度に動き回れる仕事は腰への負担を分散させることができます。また、自分のペースで休憩が取れる環境も重要です。椎間板は適度な動きによって栄養を得るため、完全に動かないことも避けるべきです。
3. 腰部への急激な負荷がない仕事
急に重いものを持ち上げたり、不自然な姿勢を取る必要がない仕事は、ヘルニアの方にとって理想的です。IT関連、デザイン、コンサルティングなどのデスクワークは、適切な環境設定と定期的な休憩を取ることで継続しやすい傾向があります。
ヘルニアを抱えながら働くための5つの重要ポイント
ヘルニアの症状がある方が働き続けるためには、いくつかの重要なポイントを押さえることが大切です。以下に、専門家の見解も交えながら解説します。
1. 適切な姿勢を保つための工夫
ヘルニアの症状悪化を防ぐためには、日常的な姿勢に気を配ることが重要です。特に猫背や前かがみになりやすい方は、意識的に正しい姿勢を心がけましょう。腰椎の自然なカーブを維持することがヘルニア管理の基本です。
2. 休憩と運動のバランス
長時間同じ姿勢を続けることは避け、定期的に休憩を取りながら、適度なストレッチや体操を行うことが効果的です。
職場での対策 | 効果 |
---|---|
1時間ごとに5分の小休憩 | 姿勢による負担の蓄積を防ぎ、血流を改善 |
腰痛対策クッションの使用 | 座位時の腰椎への負担を軽減 |
立位デスクと座位デスクの併用 | 同じ姿勢の継続を避け、筋肉の偏った使用を防止 |
簡単なストレッチの実施 | 筋肉の緊張をほぐし、血流を促進 |
3. 自前のコルセット(筋肉)を作るトレーニング
ヘルニアの症状を抱える方にとって、腰回りの筋肉を適切に鍛えることは非常に重要です。筋力が低下すると、腰椎をしっかり支える力がなくなり、症状が悪化する可能性があります。ただし、無理なトレーニングは逆効果となる場合もあるため、専門家の指導を受けることをお勧めします。
実は以前に施術した方の中に30代の方で年に3回もぎくり越しになったという方がいらっしゃいました。施術のために星を触ってみたら全然筋肉がなかったんです。聞くと毎日座り仕事で同じ姿勢でパソコン作業をしていって運動もほとんどしていないということでした。
専門家の見解によると、腰の筋肉、特に「コルセットの筋肉」と呼ばれる腹横筋を鍛えることが重要です。また、腿の前側の筋肉も腰をサポートする上で大切な役割を果たします。
4. 職場環境の最適化
デスクの高さ、椅子の調整、モニターの位置など、作業環境の最適化も重要です。人間工学に基づいた適切な設定により、腰への不必要な負担を減らすことができます。
5. 症状の変化に注意
ヘルニアの症状は変動することがあります。痛みや痺れが強くなった場合は無理をせず、すぐに休息を取り、必要に応じて医療機関を受診しましょう。症状の変化を日記などに記録しておくと、医師への相談時に役立ちます。
ヘルニアと診断されたら?仕事の継続と治療のバランス
ヘルニアと診断された場合、仕事をどうするべきか悩む方も多いでしょう。ここでは、治療と仕事の両立について考えていきます。
治療中の仕事継続は可能?
ヘルニアの治療中でも、症状の程度や仕事内容によっては、継続して働くことが可能な場合があります。しかし、医師の指示に従い、無理をしないことが大切です。症状が重い場合は、一時的に休職することも検討すべきでしょう。
配置転換や職種変更を検討すべきケース
重度のヘルニアの場合や、現在の仕事が症状を明らかに悪化させている場合は、配置転換や職種変更を検討する必要があるかもしれません。この判断は必ず医師に相談した上で行いましょう。
医師に相談すべき3つの重要ポイント
ヘルニアと仕事の関係について、医師に相談する際のポイントをまとめました。適切な治療方針や仕事の継続について、専門家の意見を仰ぐことが重要です。
1. 症状と仕事内容の関連性
現在の仕事内容がヘルニアの症状にどのような影響を与えているか、詳しく医師に伝えましょう。具体的な動作や姿勢、一日の流れなどを説明することで、より適切なアドバイスを受けることができます。
2. 治療期間と仕事への影響
治療にかかる期間や、その間の仕事への影響について確認しておくことも大切です。保存療法と手術療法それぞれの場合で、どの程度の期間仕事を休む必要があるのか、また復帰後の注意点などについても相談しておきましょう。
3. 就業上の配慮・環境調整
職場での配慮や環境調整について、具体的なアドバイスを求めるのも効果的です。例えば、持ち上げ作業の制限や、定期的な休憩の必要性など、医師からの具体的な指示があると、職場での理解を得やすくなります。
ヘルニアと仕事に関するよくある質問
Q. ヘルニアがある場合、どのような仕事が最も避けるべきですか?
A. ヘルニアがある場合、特に避けるべき仕事は、重いものを持ち上げる作業が多い建設業や運送業、長時間中腰の姿勢を取る必要がある農業や介護職、そして長時間立ちっぱなしの接客業などです。これらの仕事は椎間板に大きな負担をかけ、症状を悪化させるリスクがあります。また、姿勢が悪いまま長時間座り続けるデスクワークも注意が必要です。
Q. デスクワークはヘルニアに良いのでしょうか?
A. デスクワークは重労働に比べると腰への負担は少ないように思えますが、長時間同じ姿勢で座り続けることは椎間板に圧力をかけ、ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。特に「ずっこけ座り」と呼ばれる猫背の姿勢は腰椎への負担が大きいため注意が必要です。定期的に姿勢を変えたり、立ち上がってストレッチしたりすることが重要です。また、人間工学に基づいた椅子やクッションの使用も効果的です。
Q. ヘルニアと診断されても仕事は続けられますか?
A. ヘルニアの症状の程度や仕事内容によって異なります。軽度のヘルニアであれば、適切な対策を取りながら仕事を続けることは可能な場合が多いです。ただし、症状が重い場合や、仕事が明らかに症状を悪化させている場合は、一時的な休職や仕事内容の変更が必要になることもあります。必ず医師に相談し、個々の状況に合わせたアドバイスを受けることが大切です。
Q. ヘルニアの方にとって理想的な働き方はありますか?
A. ヘルニアの方にとって理想的な働き方は、座位と立位をバランスよく切り替えながら、身体に過度な負担をかけない環境です。具体的には、高さ調整可能なデスクを使用して座位と立位を適宜切り替える、定期的に休憩とストレッチを取り入れる、重いものを持ち上げる作業を避ける、などの工夫が効果的です。また、リモートワークなど柔軟な勤務形態が選べる仕事も、自分のペースで姿勢を管理できるため適している場合があります。
Q. ヘルニアの症状を悪化させないための職場での対策は?
A. 職場でヘルニアの症状を悪化させないためには、正しい姿勢を保つことが最も重要です。腰痛対策クッションの使用、人間工学に基づいた椅子の調整、モニターの高さの適正化などが効果的です。また、1時間に1回程度は立ち上がって軽いストレッチを行うこと、重いものを持つ際は膝を曲げて腰ではなく脚の筋肉を使うこと、可能であれば腰への負担が少ない作業への変更を上司や産業医に相談することもおすすめします。
Q. ヘルニアに効果的な自前のコルセット(筋肉)を作るトレーニングは?
A. ヘルニアに効果的な「自前のコルセット」となる筋肉を鍛えるには、腹横筋や多裂筋などの体幹深層筋を強化するトレーニングが重要です。プランクやバードドッグなどの姿勢保持エクササイズ、骨盤傾斜運動、腹式呼吸を意識した腹筋運動などが効果的です。ただし、トレーニング開始前に必ず医師や理学療法士に相談し、自分の症状に適した方法で行うことが大切です。無理なトレーニングは逆効果になる可能性もあるため注意が必要です。
Q. ヘルニアによる休職後、職場復帰するタイミングはいつがよいでしょうか?
A. ヘルニアによる休職後の職場復帰のタイミングは、症状の改善度や治療法によって個人差があります。一般的には、激しい痛みが落ち着き、日常生活の基本的な動作が無理なくできるようになった時点が一つの目安です。ただし、必ず担当医師の許可を得てから復帰することが重要です。また、復帰後も段階的に業務量を増やしていく「ならし勤務」を検討したり、職場の理解と配慮を得られるよう産業医や上司と相談することをおすすめします。
まとめ:ヘルニアと共存しながら健康的に働くために
ヘルニアを抱えながらも健康的に働くためには、自分の体の状態を理解し、適切な対策を講じることが重要です。重労働や不適切な姿勢は避け、定期的な休憩とストレッチ、そして腰を支える筋肉を適切に鍛えることで、症状の管理が可能になります。しかし、個人差があるため、必ず医療専門家に相談した上で、自分に合った対策を見つけていきましょう。
ヘルニアは完全に治癒することが難しい場合もありますが、適切な管理と対策により、症状を最小限に抑えながら、充実した職業生活を送ることは十分に可能です。この記事が、ヘルニアを抱える方々の仕事選びや職場環境の改善の一助となれば幸いです。