この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
手のしびれや痛みでお悩みではありませんか?その症状、実はヘルニア、特に頚椎椎間板ヘルニアが原因かもしれません。頚椎椎間板ヘルニアは、首の骨の間にある椎間板が飛び出して神経を圧迫することで、腕や手のしびれ、痛みなどの症状を引き起こす病気です。この記事では、ヘルニアによる手のしびれの原因から症状、診断方法、治療法まで専門家の視点から徹底的に解説します。自分でできるセルフチェック方法や日常生活での注意点も紹介していますので、症状でお悩みの方はぜひ参考にしてください。
「手のしびれは日常生活に大きな支障をきたす症状ですが、原因を正しく理解し適切な治療を受ければ、多くの場合改善が期待できます。特に頚椎椎間板ヘルニアが原因の場合は、早期発見と適切な対処が重要です。」
目次
ヘルニアによる手のしびれとは?症状と原因を理解しよう
手のしびれは様々な原因で起こりますが、ヘルニア、特に頚椎椎間板ヘルニアが原因で起こることが多いです。頚椎椎間板ヘルニアとは、首の骨(頚椎)の間にあるクッションの役割をする椎間板が、何らかの原因で飛び出し、近くを通る神経を圧迫することで症状が現れる病気です。
頚椎は首の7つの骨で構成されており、それぞれの骨の間に椎間板があります。この椎間板は外側の線維輪と内側の髄核からなり、背骨に加わる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。しかし、加齢や外傷、不良な姿勢などにより椎間板が劣化すると、内側の髄核が外側に飛び出してヘルニアを形成することがあります。
頚椎椎間板ヘルニアによる手のしびれは、ヘルニアが神経根や脊髄を圧迫することで起こります。圧迫される神経によって症状が現れる場所も異なり、特に第4頚椎から第7頚椎の間でヘルニアが発生すると、腕や手にしびれや痛みが出ることが多いです。
頚椎椎間板ヘルニアの主な症状
頚椎椎間板ヘルニアでは、以下のような症状が現れることが特徴的です:
症状 | 特徴 |
---|---|
手のしびれ | 指先や手のひらにしびれがあり、特に朝起きた時に強く感じることがある |
腕の痛み | 肩から腕、手にかけて神経に沿った痛みが走ることがある |
握力低下 | 手に力が入りにくくなり、箸や小さな物を持つことが困難になる |
首の痛み | 首や肩の付け根に痛みを感じることがある |
動作時の悪化 | 首を後ろに反らしたり、長時間同じ姿勢でいると症状が悪化することがある |
頚椎椎間板ヘルニアによる手のしびれは、放置すると症状が悪化し、重度の場合は手の感覚障害や筋力低下、さらには歩行障害などの脊髄症状を引き起こす可能性があります。
手のしびれを引き起こすヘルニアの種類と特徴
手のしびれを引き起こすヘルニアには主に以下の種類があります:
1. 頚椎椎間板ヘルニア
最も一般的に手のしびれを引き起こすヘルニアです。首の骨の間にある椎間板が神経根や脊髄を圧迫することで、手や腕にしびれや痛みを引き起こします。特に第5-6頚椎や第6-7頚椎の間でヘルニアが起こると、親指や人差し指、中指にしびれが出ることが多いです。
2. 胸椎椎間板ヘルニア
比較的まれですが、胸部の背骨の椎間板がヘルニアを起こすと、脊髄を圧迫して手のしびれを引き起こすことがあります。胸椎ヘルニアは頚椎や腰椎のヘルニアに比べて診断が難しいことがあります。
3. 腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアは主に足のしびれや腰痛を引き起こしますが、まれに脊髄に影響を及ぼし、手にもしびれが出ることがあります。ただし、手のしびれだけが症状として現れることは少なく、通常は足のしびれや腰痛も伴います。
ヘルニアの種類 | 主な症状 | しびれる部位 |
---|---|---|
頚椎椎間板ヘルニア | 首の痛み、腕や手のしびれ、握力低下 | 親指、人差し指、中指など(ヘルニアの位置による) |
胸椎椎間板ヘルニア | 胸背部の痛み、手足のしびれ、歩行障害 | 全身の神経症状(脊髄圧迫による) |
腰椎椎間板ヘルニア | 腰痛、足のしびれ、坐骨神経痛 | 主に足(重度の脊髄症状がある場合は手にも影響) |
ヘルニア以外にも手のしびれを引き起こす病気
手のしびれは椎間板ヘルニア以外にも、以下のような病気で起こることがあります:
- 手根管症候群:手首の手根管という狭いトンネル内で神経が圧迫される病気
- 肘部管症候群:肘の内側で尺骨神経が圧迫される病気
- 胸郭出口症候群:肩から腕にかけての神経や血管が圧迫される病気
- 脳梗塞:脳の血管が詰まることで生じる病気で、手のしびれを引き起こすことがある
手のしびれの原因が特定できない場合は、整形外科や神経内科を受診して適切な診断を受けることが重要です。
【セルフチェック】あなたの手のしびれはヘルニアが原因かも?
以下のチェックリストを使って、あなたの手のしびれがヘルニア、特に頚椎椎間板ヘルニアによるものかどうかを確認してみましょう。当てはまる項目が多いほど、頚椎椎間板ヘルニアの可能性が高くなります。
チェック項目 | はい | いいえ |
---|---|---|
首や肩に痛みやこわばりがある | □ | □ |
手や腕にしびれや痛みがある | □ | □ |
特定の指(親指、人差し指、中指など)にしびれがある | □ | □ |
朝起きた時に症状が強い | □ | □ |
首を後ろに反らすと症状が悪化する | □ | □ |
手に力が入りにくい、握力が低下している | □ | □ |
長時間のデスクワークやスマホの使用後に症状が悪化する | □ | □ |
40歳以上である | □ | □ |
首や肩に外傷の経験がある | □ | □ |
結果の目安:
3項目以上当てはまる場合:頚椎椎間板ヘルニアの可能性があります。整形外科を受診することをお勧めします。
6項目以上当てはまる場合:頚椎椎間板ヘルニアの可能性が高いです。早めに整形外科を受診しましょう。
このチェックリストはあくまで参考であり、正確な診断は医師による適切な検査が必要です。手のしびれが気になる場合は、必ず医療機関を受診してください。
専門医に聞く!ヘルニアによる手のしびれの診断と検査方法
ヘルニアによる手のしびれを診断するためには、専門医による診察と適切な検査が必要です。ここでは、一般的な診断の流れと検査方法について解説します。
医師の診察で行われること
整形外科や神経内科を受診すると、以下のような診察が行われます:
- 問診:いつからどのような症状があるか、どんな時に症状が強くなるか、日常生活への影響などを詳しく聞かれます。
- 神経学的検査:筋力、感覚、反射などを調べ、どの神経が障害されているかを確認します。
- 頚部の可動域検査:首の動きを確認し、特定の動作で症状が悪化するかを調べます。
画像検査
診察の結果、頚椎椎間板ヘルニアが疑われる場合、以下のような画像検査が行われることがあります:
検査方法 | 特徴 | 何がわかるか |
---|---|---|
X線検査(レントゲン) | 頚椎の骨の状態を調べる基本的な検査 | 骨の変形や脊柱管の狭窄があるかどうか |
MRI検査 | 磁気を使って体内の断層画像を撮影 | 椎間板ヘルニアの有無、位置、神経への圧迫状態 |
CT検査 | X線を使って体内の断層画像を撮影 | 骨の詳細な状態、脊柱管の形状 |
脊髄造影検査 | 脊髄腔に造影剤を注入してX線撮影 | 脊髄や神経根の圧迫状態(詳細な評価が必要な場合) |
神経伝導検査 | 神経の電気的活動を測定 | 神経障害の程度や部位(他の病気との鑑別に有用) |
「ヘルニアの診断においてMRI検査は非常に重要です。MRIでは椎間板の状態や神経への圧迫の程度を詳細に確認できるため、治療方針の決定に大きく役立ちます。ただし、画像だけで判断せず、症状との関連性を総合的に評価することが重要です。」
鑑別診断
手のしびれは様々な原因で起こるため、以下のような病気との鑑別診断も重要です:
- 手根管症候群:主に親指、人差し指、中指にしびれが出る
- 肘部管症候群:主に小指側にしびれが出る
- 胸郭出口症候群:腕を挙げると症状が悪化する
- 脊髄症:両側の手足にしびれや運動障害が出る
- 末梢神経障害:糖尿病などが原因で起こる
正確な診断を受けるためには、しびれの場所や性質、いつ症状が出るかなどを詳しく医師に伝えることが大切です。
ヘルニアによる手のしびれの治療法(保存療法から手術まで)
頚椎椎間板ヘルニアによる手のしびれの治療法は、症状の程度や神経障害の状態によって異なります。一般的に、まずは保存療法が試みられ、効果がない場合や症状が重い場合に手術療法が検討されます。
保存療法(非手術治療)
多くの頚椎椎間板ヘルニアは、以下のような保存療法で改善することが期待できます:
治療法 | 内容 | 効果 |
---|---|---|
安静 | 首への負担を軽減し、炎症を抑える | 急性期の痛みやしびれの軽減 |
薬物療法 | 消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、神経障害性疼痛治療薬など | 痛みやしびれの軽減、炎症の抑制 |
頚椎カラー | 首の動きを制限し、安静を保つ補助具 | 首への負担軽減、症状の悪化防止 |
物理療法 | 温熱療法、電気療法、牽引療法など | 血行促進、筋緊張の緩和 |
リハビリテーション | 頚部の筋力強化、姿勢改善エクササイズ | 長期的な症状改善、再発予防 |
神経ブロック注射 | 痛みの原因となる神経に局所麻酔薬を注射 | 一時的な痛みの緩和、診断的価値 |
保存療法は通常4〜6週間続けられ、多くの患者さんはこの期間内に症状の改善が見られます。しかし、症状が改善しない場合や悪化する場合は、手術療法が検討されることがあります。
手術療法
以下のような場合、手術療法が検討されます:
- 保存療法で症状が改善しない
- 筋力低下や感覚障害が進行している
- 日常生活に支障をきたすほどの痛みやしびれがある
- 脊髄の圧迫による脊髄症がある
頚椎椎間板ヘルニアに対する主な手術方法は以下の通りです:
手術方法 | 特徴 |
---|---|
前方除圧固定術 | 前方(首の前側)からアプローチし、椎間板を摘出して骨移植などで固定する方法 |
後方除圧術 | 後方(首の後ろ側)からアプローチし、神経の圧迫を解除する方法 |
頚椎椎間板人工椎間板置換術 | ヘルニアを摘出した後、人工椎間板を挿入して頚椎の動きを温存する方法 |
内視鏡下椎間板摘出術 | 小さな切開から内視鏡を用いてヘルニアを摘出する低侵襲な方法 |
手術方法の選択は、ヘルニアの位置や大きさ、神経の圧迫状態、患者さんの年齢や生活スタイルなどを考慮して決定されます。
「手術は最後の選択肢と考える方が多いですが、適切な時期に適切な手術を行うことで、神経の回復が期待できる場合があります。特に筋力低下が進行している場合は、早めの手術判断が重要なこともあります。」
専門家の見解:ヘルニアによる手のしびれの治療について
頚椎椎間板ヘルニアによる手のしびれの治療において最も重要なことは、症状の程度や神経障害の状態に応じた適切な治療を選択することです。多くの場合、保存療法で症状の改善が見られますが、症状が長期間続く場合や神経障害が進行する場合は、手術を検討する必要があります。また、日常生活での姿勢改善や頚部の筋力強化など、患者さん自身が行うセルフケアも非常に重要です。治療法の選択は、医師との十分な相談の上で決定することが大切です。
日常生活でできる!手のしびれを悪化させないための注意点と予防策
頚椎椎間板ヘルニアによる手のしびれを悪化させないため、また予防するためには、日常生活での注意点やセルフケアが重要です。
姿勢の改善
不良な姿勢は頚椎に負担をかけ、ヘルニアの原因や症状の悪化につながります。以下の点に注意しましょう:
- スマホやパソコン使用時:画面を見下ろす姿勢が続くと首に負担がかかります。画面の高さを調整し、定期的に休憩を取りましょう。
- デスクワーク:椅子の高さを調整し、背筋を伸ばして座りましょう。
- 就寝時:高すぎる枕や低すぎる枕は頚椎に負担をかけます。自分に合った高さの枕を選びましょう。
日常動作 | 注意点 | 改善策 |
---|---|---|
スマホの使用 | 首を長時間下に曲げる姿勢が負担に | 目の高さまで持ち上げる、1時間に5分休憩 |
デスクワーク | 猫背、首の前傾姿勢が続く | モニター位置の調整、背筋を伸ばす、定期的なストレッチ |
睡眠 | 不適切な枕の高さが頚椎を圧迫 | 頚椎を自然な形に保つ高さの枕を選ぶ |
重い荷物の持ち運び | 頚椎や肩に過度な負担がかかる | 両手で均等に持つ、リュックを利用する |
長時間の運転 | 同じ姿勢が続き、振動で負担が増加 | シートポジションの調整、休憩を取る |
首のストレッチと筋力強化
頚部の適切なストレッチや筋力強化は、頚椎椎間板ヘルニアの予防や症状改善に効果的です。以下のようなエクササイズを医師や理学療法士の指導の下で行いましょう:
- 首の軽いストレッチ:ゆっくりと首を前後左右に傾ける(痛みを感じない範囲で)
- 頚部深層筋の強化:頭を軽く持ち上げる運動、頭を手で軽く押さえながら抵抗をかける運動
- 肩甲骨周りの筋力強化:肩甲骨を寄せる運動、腕の軽い重量挙げ
エクササイズを行う際は、痛みを感じたらすぐに中止し、必ず専門家の指導を受けてから始めるようにしてください。不適切な運動は症状を悪化させる可能性があります。
生活習慣の改善
以下のような生活習慣の改善も、ヘルニアの予防や症状軽減に役立ちます:
- 適切な体重維持:過度な体重は脊椎全体に負担をかけます
- 禁煙:喫煙は椎間板の健康に悪影響を与えることが知られています
- 水分摂取:適切な水分摂取は椎間板の水分保持に役立ちます
- バランスの良い食事:カルシウムやビタミンDなど、骨や筋肉の健康に必要な栄養素を摂取しましょう
ヘルニアと手のしびれに関するよくある質問
Q. ヘルニアによる手のしびれと他の原因によるしびれはどう見分けるのですか?
A. ヘルニアによる手のしびれは、首や肩の痛みを伴うことが多く、特定の神経の走行に沿ってしびれが出ることが特徴です。また、首の動きによって症状が変化することもあります。一方、手根管症候群では主に親指から中指にかけてのしびれが特徴的で、夜間に悪化することが多いです。肘部管症候群では小指側のしびれが中心となります。正確な判断は医師による診察と検査が必要です。
Q. ヘルニアによる手のしびれは自然に治りますか?
A. 軽度から中等度の頚椎椎間板ヘルニアによる手のしびれは、適切な保存療法(安静、薬物療法、リハビリテーションなど)により、時間とともに改善することが多いです。多くの場合、6週間から3ヶ月程度で症状が軽減します。ただし、重度の神経障害がある場合や、保存療法で改善が見られない場合は、手術が必要になることもあります。症状が続く場合は、医師に相談することが重要です。
Q. 手のしびれがあるときはどの診療科を受診すべきですか?
A. 手のしびれがあるときは、まずは整形外科を受診することをお勧めします。整形外科では、頚椎椎間板ヘルニアなどの骨や関節、神経に関わる疾患の診断と治療を行います。症状によっては、神経内科や脳神経外科も適切な診療科となります。特に、しびれに加えて筋力低下や歩行障害などの症状がある場合や、頭痛や意識障害を伴う場合は、神経内科や脳神経外科の受診も検討してください。どの診療科を受診すべきか迷う場合は、かかりつけ医に相談するか、総合病院の初診外来を受診するとよいでしょう。
Q. 手術後も手のしびれが残ることはありますか?
A. 頚椎椎間板ヘルニアの手術後、手のしびれが完全に消失するかどうかは、神経障害の程度や期間、患者さんの年齢や全身状態などによって異なります。手術によって神経への圧迫が解除されても、長期間圧迫されていた神経は完全に回復しないことがあります。一般的に、症状が出現してから手術までの期間が短いほど、神経の回復が期待できます。また、手術後もリハビリテーションを継続することで、症状の改善を促進できる場合があります。手術前に医師と予後について十分に相談することが大切です。
Q. ヘルニアによる手のしびれに効果的なサプリメントはありますか?
A. ヘルニアによる手のしびれに特化したサプリメントの効果については、科学的に十分な証拠はありません。しかし、神経の健康をサポートする栄養素としてビタミンB群(特にB12)やオメガ3脂肪酸、抗酸化物質などが注目されています。これらの栄養素は、バランスの良い食事から摂取することが基本です。サプリメントの使用を検討する場合は、医師に相談することをお勧めします。サプリメントは医薬品ではなく、治療の補助として考え、適切な医学的治療を受けることが最も重要です。
Q. 運動や仕事はいつから再開できますか?
A. 運動や仕事の再開時期は、症状の程度や治療内容(保存療法か手術か)によって異なります。保存療法の場合、痛みやしびれが軽減してきたら、医師と相談しながら徐々に活動を再開することが一般的です。手術を受けた場合は、手術の種類や個人の回復状況によりますが、軽作業は2〜4週間後、重労働は3〜6ヶ月後に再開できることが多いです。スポーツの再開も、種類や強度により異なります。いずれの場合も、無理をせず段階的に活動量を増やし、症状が悪化する場合はすぐに中止して医師に相談することが重要です。
Q. 子供もヘルニアによる手のしびれを経験することがありますか?
A. 子供の頚椎椎間板ヘルニアは非常にまれです。子供の場合、椎間板はまだ水分を多く含み柔軟性があるため、ヘルニアを起こしにくいとされています。子供の手のしびれの原因としては、頚椎の先天的異常、スポーツなどによる外傷、神経圧迫を伴う腫瘍など、他の疾患を考慮する必要があります。子供に持続する手のしびれがある場合は、小児科や小児整形外科を受診して適切な診断を受けることが重要です。