「妊娠したらなんだか腰が痛い…」
「まだお腹が大きくなっていないのに、なんで腰が痛くなるの?」
「つわりだけでもしんどいのに、腰痛で辛い…」
このようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
腰痛は妊娠初期から出現し、つわりと同様に悩みの種になる症状のひとつです。
妊娠中の立ち仕事やデスクワークにおいて、思うように体を動かせずストレスを感じる女性も少なくないでしょう。
本記事では、妊娠初期の悩みのひとつである腰痛について、悪化させないための対策や妊娠中に自分でできる対策方法を解説していきます。
妊娠初期に腰痛になるのはなぜ?主な原因は6種類
妊娠初期の腰痛では、妊娠によって分泌されるホルモンが原因であるケースが多く見られます。
また、多胎(双子以上の)妊娠である場合には、妊娠初期から姿勢や体型変化が起こるため、通常の妊娠と比較して腰痛が強く出るという人もいます。
ほかにも、体型の変化や血行、ストレス等心理的影響なども腰痛の主な原因です。
ここからは、妊娠初期に起こる腰痛の主な原因についてひとつずつ紹介していきます。
①妊娠時に分泌されるホルモンの影響
・リラキシン
リラキシンとは、妊娠中に胎盤から分泌される女性ホルモンで、出産する際に赤ちゃんがスムーズに骨盤を通過できるよう骨盤の靭帯、関節、筋肉を柔らかくする働きをします。
リラキシンは、妊娠2ヶ月(6週頃)を目安に分泌が始まり、その分泌量は妊娠4ヶ月を目安にピークに達します。
これは分娩に必要なホルモンで、出産を迎えるまで分泌され続けます。
妊娠初期からリラキシンが分泌され始めるため、お腹が大きくなっていなくても腰が痛くなる場合があるのです。
・プロゲストロン
プロゲステロン(黄体ホルモン)とは、妊娠を維持するために分泌されるホルモンのひとつで、妊娠前の黄体期から分泌され、受精卵が着床しやすいよう子宮内膜を維持を保つ働きを持つホルモンです。
プロゲステロンには食欲を増進させるだけでなく、体温を高く保ったり水分や栄養素を溜め込むといった働きがあります。
このプロゲステロンも、産道を作るために働くホルモンで、腰回りの筋肉等を柔らかくします。
その結果、腰への負担が増し、妊娠初期から腰が痛くなるのです。
②反り腰の姿勢になるため
反り腰とは、背骨のなかでも腰椎(腰の骨)が反り返った状態の姿勢のことをいいます。
妊娠中期(大体20週頃)になると、胎児の成長に伴ってお腹が前に出るため、身体の重心も前方向に傾きます。
重心が前に傾くことで、バランスをとるために自然と腰が反り返った姿勢となるため、結果として反り腰になってしまうのです。
特に妊娠中期には、ホルモンバランスの変化と反り腰が相まって、腰痛を引き起こす場合が非常に多く見られます。
特に、お腹が目立ってくると反り腰になり、常に腰が反った状態で立ったり座ったりの生活を余儀なくされます。
腰の筋肉や靭帯だけでなく足関節にも負担が増し、それが腰痛につながるのです。
③身体の冷え
妊娠に由来する身体の冷えも、腰痛の原因となります。
妊娠中に身体が冷える原因は主に血行不良と自律神経バランスの乱れです。
・血行不良
妊娠中は、赤ちゃんの成長に伴い子宮が大きくなるため、妊娠していない時と比べ骨盤内の静脈が圧迫されやすくなります。
その結果、足元から心臓に向かう血流が悪くなってしまい、腰の周りを中心に冷えを感じやすくなるのです。
人間の身体は本来、歩行や運動による下半身の筋肉の収縮がポンプのような働きをすることによって、正常な血流を保っています。
しかし、妊娠すると活動量が低下したり、リラキシンなどのホルモンが分泌されたりという理由から筋肉が緩みやすく、心臓に戻ろうとする血液の流れを押し出す力が弱くなってしまうのです。
・自律神経バランスの乱れ
妊娠中は、内蔵の機能を調整する自律神経のバランスが乱れがちです。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、状況に応じてそれぞれが働き内蔵の働きを調整します。
特に副交感神経には主にリラックスしている時に活発化し、全身の血流を促進する働きがあります。
妊娠中にはお腹の中で赤ちゃんを育てるために必要なホルモンが分泌されるため、妊娠していない時に比べてホルモンバランスが乱れがちです。
ホルモンバランスの乱れが自律神経にも影響を及ぼした結果、血行不良が起き、結果として妊娠中の身体の冷えにつながります。
⑤ストレスや不安の影響
妊娠中は、お腹の赤ちゃんの事や仕事、お金のことなど心配事が多く些細なことでストレスを感じたり、体調の変化に過敏に反応したりしてしまいます。
特に妊娠後期は大きくなったお腹に膀胱が圧迫されるため、頻尿、動悸や尿もれといった細かいトラブルにつらい思いをし、さらに出産への不安感も加わり体調を崩してしまうケースが見られます。
このような不安やストレスによって放出されるのが、コルチゾールというホルモンです。
実は、このコルチゾールは個人が痛みに耐えられるラインを引き下げるという特徴を持っています。
コルチゾールが分泌されると、平常時よりも痛みを感じやすくなってしまうのです。
さらに、不安やストレスは身体の中枢神経系を刺激するため、些細な刺激でも痛みを感じやすくするといった変化を引き起こします。
妊娠中の腰痛対策!負担をかけず痛みを和らげるには
では、妊娠中に起こる腰痛に対して、どのような対策をすれば痛みが和らぐのでしょうか。
本来であれば、腰痛があれば痛み止めを服用するなどして、簡単に対処することができます。
しかし妊娠中に服用できる薬は限られますし、薬が赤ちゃんに及ぼす影響も心配ですよね。
ここからは、妊娠中であっても使える腰痛対策を分かりやすく解説します。
①姿勢に気を付ける
反り腰による腰痛を防ぐためには、妊娠初期から姿勢を改善し、正しい姿勢を意識することが重要です。
妊娠中は、お腹が大きくなるにつれて身体の重心が前に傾きやすくなるため、反り腰の姿勢になりがちです。
反り腰の姿勢でいると、背中や腰の筋肉が常に緊張している状態になり、背中や腰周辺の血液の循環が悪くなるため腰痛を引き起こす場合があります。
背筋を真っ直ぐ伸ばし、頭頂部が吊られているような感覚を意識して顎を引き、肩の力を抜いてお尻を引き締めて歩くよう意識してみましょう。
正しい姿勢を保つにはある程度の筋力も必要となるため、体調の良いときに散歩をして足の筋肉を意識することも役立ちます。
②入浴などで身体を温める
身体を温めることで、腰痛を改善できる場合があります。
妊娠中に起こる腰痛の原因のひとつは血行不良です。
したがって、血行不良の改善が腰痛の軽減につながる場合があります。
身体が温まると、血管が拡張され血行が促進され、筋肉の緊張をほぐしリラックスできるという効果も得られます。
・日常的に膝掛けを使用する
・ゆっくり湯船につかる
・半身浴をする
・温かい飲み物を飲む
・伸縮性が高くお腹を締め付けないタイプの腹巻きを使用する
このような行動を心掛け、下腹部から下半身にかけての血行を改善しましょう。
特に、妊娠中の腰痛を和らげたい場合には、背中を中心に温めるのが効果的です。
ただし、妊娠中は全身の血液量が増えるため、入浴するとのぼせやすくなります。
そのため、入浴する場合には38度前後のぬるま湯に浸かるようにし、10分以上かかる長湯は避けましょう。
③物を持ちあげるときには一度かがむ
妊娠中には5kg以上の重い物を持つのを避けましょう。
何かを持ち上げなくてはいけないときや、お子さんを抱っこしなくてはいけない場合には、一度かがんだり、対象となるものを一度椅子や台に置いたりしてから持ち上げるのがおすすめです。
スクワットのようにひざを曲げ、腰を落としてから持ち上げると、中腰や前屈に比べて腰への負担が減ります。
ただし、妊娠中に物を持ち上げる動作をすると、腰に負担をかけるだけではなくお腹に力が入ってしまいます。
お腹の筋肉に負担をかけると子宮が収縮しやすくなるため、無理は厳禁です。
ぐっと力を入れないと持ち上げられないような重さのものを持つのは注意しましょう。
④ゆっくり動くことを心がける
妊娠中は、基本的にゆっくり動くように心がけましょう。
歩いたり立ち上がる際に急に立ち上がったり、急に身体の向きを変えると腰やその周囲の負担が増え、腰痛のリスクが増すためです。
特に妊娠後期はお腹が大きくなるのに比例して体重も増えるため、お腹や体重そのものを支えるために膝や足首に負担がかかります。
妊娠後期にはリラキシンの影響によって骨盤周囲の靭帯や関節などが緩く、出産に備えて骨盤も動きやすい状態です。
妊娠中に急に動くと腰への負担が増してしまいますので、日常生活から意識して少しゆっくり行動しましょう。
⑤ローヒールの靴を選ぶ
妊娠中は、お腹が目立っていない初期の段階であってもスニーカーやローヒールの靴を選択しましょう。
パンプスなどのヒールが付いた靴はつまずいたり、段差などで転倒したりする原因となるからです。
ヒールが付いた靴を長時間履いていると、体重が一点に集中し、その部分の筋肉が張ってしまいます。
そのため足が疲れてしまい、転倒の危険性が上がってしまいます。
足元が不安定になり体重をしっかり支えることができなくなると、身体の他の部分でも体重を支えようと全身の筋肉を使ってしまい、疲労の原因になりかねません。
身体に負担をかける靴を選んでしまうと腰痛を悪化させるだけでなく、腰周囲の筋肉や関節、靭帯への負担となってしまいます。
妊娠初期の段階から履き慣れた靴を履くのがおすすめです。
⑥横向きに寝る
寝るときには、仰向けよりも横向きで寝た方が腰への負担が軽減されます。
特に妊娠後期には子宮が大きくなります。
そのため、仰向けで寝ると腰への負担をかけるだけではなく、下大静脈という太い血管が圧迫され、血流そのものも悪くなってしまうのです。
人間の身体は、右側に静脈、左側に動脈が位置しています。
右側を下にして寝る(右側臥位)の姿勢で横になると静脈が圧迫され、心臓に戻るための血流が阻害されやすくなります。
血流が阻害された結果、下肢の冷えから腰が痛くなってしまうのです。
腰が痛いときには、抱き枕などを利用し、左側臥位(左向きの姿勢)で寝ることで、痛みの緩和を期待できます。
下肢から心臓に向かう血流がスムーズになるため、楽に寝ることができるでしょう。
⑦適度な運動やストレッチをする
妊娠中の適度な運動には、血行を良くするだけでなく下肢の筋力を保つ効果が期待されます。
運動で血行が改善すると腰痛も改善するという点においては、妊婦さん自身が簡単にできるストレッチやウォーキングといった軽い運動がオススメです。
ただし切迫流産や切迫早産と診断されている場合は運動が許可されない場合もあります。
そういった場合には、運動を行う際には必ず医師の判断に従いましょう。
安静が必須と判断され歩行ができなくても、ベッド上で足首の上下運動や座ったままの足踏みといったごく軽い運動をすることで血行を促進できます。
対策グッズも有効!妊婦用の便利アイテムを紹介
ここからは、腰痛で悩んでいる妊婦さんに向けた便利アイテムをご紹介します。
通販はもちろん、ドラッグストアやベビー用品店などで気軽に入手できるため経済的な面からもオススメのアイテムばかりです。
腰の痛みに悩まされている妊婦さんは、ぜひチェックしてみてください。
マタニティ腹巻き
妊婦さん専用の腹巻きは、妊婦特有の腰痛対策に効果的です。
通常の腹巻きとの違いは、大きくなったお腹もカバーすることができるように伸縮性に富んでいるという点です。
「腹帯」は昔からありますが、これはお腹を支えるために用いるのが目的だったので、お腹や腰を温めることを目的とはしていませんでした。
一方でマタニティ腹巻きはお腹を温める目的から使用するものであるため、妊娠期間を通してずっと着用できるうえに、お腹と腰回りを冷えから守り血行を促進する非常に有用なアイテムです。
マタニティ抱き枕
マタニティ抱き枕も、妊婦さんにおすすめのアイテムです。
マタニティ抱き枕を利用するメリットは「シムス位」という体勢になりやすく、より楽な姿勢を取ることが可能という点です。
シムス位とは左側を下にして、ややうつ伏せぎみに左側臥位の体勢を取ることです。
シムス位を取るとお腹の重さを感じにくいだけでなく脊柱(背中の骨)の右側を通っている下大静脈を圧迫せずに済みます。
そのため、横になっているときの血圧低下を防ぐといという効果が期待できます。
マタニティ抱き枕を利用すると、枕がお腹からの体圧を程よく分散してくれ、お腹に程よくフィットします。
結果的に、直接マットレスに横になるのに比べてシムス位の体勢を維持しやすく、睡眠時も楽な姿勢を維持できるのです。
特にマタニティ抱き枕は、妊婦さん特有の体型に応じて使用できるようになっています。
安定した抱き心地も得られ、妊娠後期にも安心して使用できるアイテムです。
骨盤ベルト
骨盤ベルトを使う目的は、本来産後の骨盤の歪みを改善させることにあります。
しかし、実は骨盤ベルトは妊娠中にも効果を発揮してくれるアイテムなのです。
妊娠中にはホルモンの影響を受けて骨盤周辺の関節や靭帯が緩みやすく、骨盤周囲が不安定になる傾向にあります。
しかし骨盤ベルトでしっかり骨盤を支えてあげると、腰はもちろん背中の筋肉全体の負担が軽減される効果を期待できるのです。
結果として腰痛の改善はもちろん、腰痛の予防にもつながるという効果が得られます。
そのため、出産時点の準備で購入し、ホルモンが分泌され始める妊娠初期から使用するのがおすすめです。
骨盤ベルトは、さまざまな素材やサイズが豊富に揃えられています。
手頃な価格で入手できるものも多いため、家計への負担を心配せずに安心して購入できるでしょう。
適切な医療機関を活用しよう
腰の痛みが強すぎたり長引きすぎたりする場合には、病院を受診し適切な診断をしてもらいましょう。
腰痛は、妊娠によってのみ引き起こされるとは限りません。
妊娠中であっても、椎間板ヘルニアなどの腰周辺のトラブルが起こる可能性はあります。
妊娠中のトラブルでは、対応法は妊婦さんひとりひとりに合わせて異なります。
医師や助産師、看護師に相談し、適切な処置を受けることが重要です。
湿布の使用は医師の判断にしたがう
湿布を使用したい場合には、産婦人科だけではなくかかりつけの整形外科も受診し、医師から適切な処方をしてもらいましょう。
特に妊娠前から椎間板ヘルニアなど何かしらの疾患を抱えている妊婦さんの場合、両方の医師から診察を受ける必要があります。
これは整形外科医が良しとした処方薬であっても、産婦人科で妊娠中の経過などを総合的に判断した結果、その薬の服用を良しとしないケースもあるためです。
湿布に限らず、鎮痛剤などの医薬品にも同じことが言えます。
自己判断で市販薬を使うのではなく、専門的な医師から処方された適切な医薬品の使用をおすすめします。
マッサージチェアは基本的にNG
妊娠中のマッサージチェア等の使用は控えましょう。
特に妊娠初期は、胎盤が作られ始める時期であり、マッサージチェアの使用はおなかの赤ちゃんに影響を及ぼすおそれがあります。
妊娠中は血栓(血の塊)が体に出来やすい状態です。電気マッサージ機等を使用すると、血栓が肺などの血管に詰まってしまうといった危険性もあります。
血栓症の恐いところは、血栓がどこかの血管を塞がない限り全く症状が現れないケースが多い点です。
マッサージチェアだけでなく、首や足などに用いる電気マッサージ機の使用も控えましょう。
整体やマッサージは妊婦に詳しいクリニックで受ける
整体やマッサージをしてもらいたい場合は、妊婦に詳しい整体やマッサージが可能な場所に行くのがおすすめです。
これらの施術メニューにはアロマや足ツボへの刺激といった内容もありますが、中には「妊娠中はNG」とされている香りや施術箇所があります。
妊婦へのマッサージに詳しくないクリニックで施術を受けると、腰痛の悪化を招くだけでなく施術そのものが体に合わない可能性もあります。
クリニックを検討する際には、妊婦への施術例が報告されている経験豊富な先生がいるかどうか確認しましょう。
最近は、助産師や看護師によるアロママッサージなどを提供している産婦人科クリニックもあり、積極的に情報発信しています。
興味のある方はぜひ医師監修のサイトをチェックしたり、「ママ歓迎」の特徴を掲げるクリニックを調べたりしてみましょう。
まとめ
妊娠中の身体には、お腹で赤ちゃんを育てていくために様々な変化が起こります。
腰痛やつわりといった妊娠中の悩みはホルモンの分泌等による身体の変化に基づくものとされますが、症状の不快さから仕事に打ち込めない方や、不安な気持ちになる方も多いです。
妊娠中の身体のトラブルには、ちょっとした対策を取り、上手に向き合っていくことが大切です。
妊娠時の悩みや身体の変化に関しての不安、産後の心配事などはかかりつけ医に相談し、安心できるマタニティライフを送りましょう。