肩こり、腰痛、日々の生活やスポーツでの疲れ・・・。そんな不調に陥っているあなたへ。現代人の悩みとも言えるこれらの症状には、1つのキーワード「筋膜」が関わっています。
筋膜は私たちの体を支えるボディスーツの存在のようなもので、私たちの体調やパフォーマンスに大きく影響しています。これまでのケアや治療法で満足できなかったあなたの体の悩みを根本から改善するヒントがここにあります。
目次
筋膜とは何か?
筋膜とは筋肉を包む膜のこととよくいわれていますが、骨、内臓、血管、神経などの組織全て包むように存在しています。人間は筋膜というウェットスーツを着ており、筋膜は組織を支える第2の骨格といわれています。
筋膜の基本的な成分と構造
筋膜は浅筋膜(せんきんまく)、深筋膜(しんきんまく)、筋外膜(きんがいまく)、筋周膜(きんしゅうまく)、筋内膜(きんないまく)と連続した層になっています。筋内膜以外はコラーゲンとエラスチンという2種類のタンパク質でできています。コラーゲンは強く伸び縮みしない性質で、エラスチンはゴムのように伸びたり元に戻ったりする性質を持っており、ガーゼのように織り込まれた状態です。
筋膜の役割と機能
筋肉を保護し、筋収縮時に滑りを助け、血管や神経・リンパ管を支えて通過させています。全身のあらゆる組織をおおっている筋膜は、その張力で左右前後のバランスを保つことで動作時を含む姿勢を保持しています。特定の腱や筋肉の力を伝え、固定感覚受容器という神経により皮膚の痛みや痒みなどの感覚を脳に伝える働きをしています。
筋膜が癒着すると起こる症状
仕事などで繰り返す動きや激しい運動、加齢などにより炎症や血行不良が起こると筋膜が癒着してしまいます。筋膜の癒着は肩こりや腰痛をも引き起こし、体の動きにくさや可動域を狭めてしまいます。
整体の歴史
整体の歴史は長く、その始まりは中国といわれています。
整体の歴史
整体の起源には諸説ありますが、約2,000年前の中国で考案された推掌(すいな)が起源だといわれています。
日本においては大正時代、アメリカ発祥のオステパシーが山田信一氏によって日本に紹介されました。その際、他の療術も組み合わせて「整体術」として紹介し、「山田式整体術」として普及・発展しました。昭和時代に整体操法設立委員会が設立され、議長を勤めた野口晴哉氏が「整体」という言葉を作ったといわれており、現在に至ります。
病院で行う筋膜リリース治療
病院でも肩こりなどの原因として筋膜に注目し、筋膜リリースを行うことで症状を改善させる治療を行っているところもあります。
筋筋膜性疼痛症候群
筋のしこり、トリガーポイントを特徴とした痛みをきたします。トリガーポントは痛みに敏感になっている、圧迫すると痛みを生じる筋のしこり部分です。トリガーポイントと実際に痛い部分が離れているケースが多くみられます。血液検査やレントゲンなどの画像診断では異常が認められない、肩こりや腰痛などの痛みの原因と考えられています。
筋膜リリース(ハイドロリリース)
炎症などによって癒着(ゆちゃく)した筋膜を、人体には無害な生理食塩水(人間の血液や組織液と同じ浸透圧の塩化ナトリウム溶液。病院によっては麻酔薬を使うことがある)を注入することにより、癒着部分を剥離して症状を緩和させます。超音波検査(エコー)では筋膜周囲の組織がはまりこんでいるのが確認でき、そこへ生理的食塩水を注入します。
筋膜整体とは
筋膜整体は、整体の中でも筋膜に注目した施術です。
筋膜整体とは?
優しく圧をかけ、筋膜の癒着やねじれの改善を行います。
筋膜マニピュレーション
ルイージ・ステッコ氏による1987年から体系化された徒手療法で、筋膜にアプローチします。全身をおおう筋膜を体内でお互いに引っ張り合って影響を及ぼし合う複雑なネットワークとしてとらえ、1か所に機能障害が生じると、それが引っ張り合う力の不均衡を起こし、他の場所で症状となってあらわれます。痛みのある場所と筋膜の機能異常を起こしている場所は離れていることも多々あり、痛みの原因となっている箇所を特定し、治療します。それにより筋出力、関節可動域、運動パフォーマンス、ADLの改善を目指すものです。
オステオパシー
19世紀のアメリカでアンドリュー・テーラー・スティル博士によって創始された施術です。
オステオパシーは、オステオ(Osteo=骨)とパシー(Pathy=病気、治療)を合わせた造語で、スティル博士の「健康か病気かは体の構造のと関連する」という考えをあらわしています。
筋肉や骨・臓器など全体的にとらえ、原因を探し出して手技による施術で頭痛や耳鳴り、自律神経の乱れ、肩こり、ぎっくり腰、坐骨神経痛などの体の不調の改善を目指します。
施術後はだるくなることも
施術後、痛みが出たり、体がだるく感じたり眠気などが現れやすい傾向にあります。これは好転反応といわれ、もみ返しとは別物です。
好転反応は施術を受けることで体の中にたまった老廃物・疲労物質などが血液の中に入り、排出される過程の変化で、体が大きく変化した場合と刺激が多かった場合に出るパターンがあります。
体が大きく戻ろうとして体のバランスが大きく変わることがあります。例えば腰痛の場合、それまで問題がなかった首などに痛みが生じるといった具合です。刺激が多すぎる、強すぎた場合も痛みが生じることがあります。
好転反応ともみ返しとの違いは、好転反応が「体が回復している」状態であるのに対し、もみ返しは「体から警告が出ている」状態であることです。
好転反応の対処法としては軽く運動をする、ぬるめの湯船に浸かる、体を温める飲み物や食べ物を摂取しましょう。運動する習慣のない人は1日15分程度のストレッチやウォーキングでも十分です。
好転反応が出た約7割の人は症状が1〜3日続きます。好転反応が出て3日も続くようであれば医療機関への受診をおすすめします。
通う頻度は?どのくらい期間かかる?
体の状態によって施術頻度は異なります。急性の症状の場合、3〜4回で改善することもあれば、1〜2週間に1度通い、痛みが治ったら通院間隔を徐々にあけていきます。整体院にて適切な施術頻度のアドバイスをもらいましょう。
自宅でできる筋膜ケア
自宅でも簡単にできる筋膜リリース法があるのでご紹介します。
道具は不要!筋膜リリース
【椅子で行う肩こり・首こり解消筋膜リリース】
- イスに座り、首を倒す側と反対側の肩を手で押さえる。手で押さえた側の手は肩から指先を斜め後ろ下方に伸ばす。
- あごを引いて首を横に倒す。
- 首を倒した状態で鼻を肩に近づけるようにし、20秒キープ。
- 反対側も1〜3を行う。
※押さえた肩は上がらないようにし、首を倒した側に体が曲がらないように注意しましょう。
【テーブルを使って全身のこりを解消】
- テーブルの前に立ち、股関節から曲げてバンザイのように伸ばした両手をテーブルに乗せる。足は床の中に入り込むようなイメージで。
- 1の状態で30秒以上キープ。慣れてきたら時間を伸ばす。
※あごが上がらないようにし、腰が丸まったりしないように注意しましょう。お尻は出ないようにし、逆に後ろに突き出るのもNGです。
まとめ
筋膜とはコラーゲンとエラスチンをガーゼ状に織り込んだもので、筋肉や内臓をおおっています。その役割は多岐にわたり、筋肉の力を伝えたり、スムーズに動かすのを助けたりし、動作時も含む姿勢を保っています。
筋膜の癒着は、何度も繰り返す動作や激しい運動、加齢などによって炎症や血行不良が起こった結果で、肩こりや腰痛をも引き起こします。
整体はこれらの問題に対処する有効なアプローチであり、筋膜整体は特に筋膜に焦点を当てた施術です。整体の歴史とともに進化してきたこの手法は、筋膜の癒着を解消し、痛みの軽減や身体機能の改善を目的としています。
自宅での筋膜ケアについても、手軽にリリースする方法を紹介しました。筋膜の健康を見つめつつ、日々の不調を軽減することが期待できます。
筋膜整体の施術を受け、日常生活でも筋膜ケアを生活の一部に取り込むことで、慢性的な痛みの軽減、体のメンテナンスが可能です。自分の体の不調に適切に対処するために具体的な手段を見つける助けになることを願っています。