ぎっくり腰は突然激痛がして、動けなくなる腰痛の一種です。ぎっくり腰になると日常生活や仕事などに支障をきたすので、発症した際の対処法や予防法などを知っておきたいものです。
本記事ではぎっくり腰の症状や、治療法、予防法などについて詳しく解説します。また、ぎっくり腰になった場合に、病院を受診すべきかどうかの見極めや、痛みを軽減するエクササイズもご紹介します。
目次
ぎっくり腰とは
重い物を持った時など、何かの拍子に突然腰に激痛が走るのがぎっくり腰です。多くの場合、あまりの激痛にその場で動けなくなってしまいます。ぎっくり腰は、1週間から2週間くらい時間がたてば自然に治ることが多いのですが、いつまでたっても治らない、あるいは痛みのほかに痺れもあるようなら、椎間板ヘルニアなど他の病気の可能性もあるので、注意しなければなりません。
これといった原因がない場合もある
ぎっくり腰は重い物を持ち上げた時になりやすいのですが、軽くお辞儀をしたり、何か取ろうとして手を伸ばしただけで起こることもあります。お辞儀のような軽い動作でも起こるということは、いつでもどこでも起こる可能性があるということです。軽い動作でも起こるのですから、気をつけようがないとも言えるでしょう。
だから、ぎっくり腰は厄介なのです。防ぐのが難しいのに、発症したら激痛が走るのですから、できるだけかかりたくない病気です。ぎっくり腰は、なぜ起こるのかもハッキリしていませんが、ぎっくり腰が起きたときに、体の中でどういう変化が起きているのかもわかっていません。
わからないことが多いために、椎間板ヘルニアや圧迫骨折の痛みを、ぎっくり腰と間違えることもあるようです。このように、ぎっくり腰は多くの場合原因もわからず、これといった治療法もないのが現状です。
体操やストレッチをしてもかまわない?
普通に考えて、腰に激しい痛みがある状態で、体操やストレッチ等は絶対にやってはいけないように思えます。もしやったとしたら、確実に症状が悪化すると誰もが考えるでしょう。しかし、実際はそうとも限りません。ぎっくり腰を発症した直後なら、ストレッチや体操を行っても行わなくても、ほとんど問題がないのです。
つまり、ストレッチをしたからといって今以上に悪くなるわけではないので、ストレッチをすると痛みが楽になるのであれば、ストレッチをしたほうがいいでしょう。しかし、ストレッチをして痛みが出たり、あとで痛みが強くなるようなら控えるべきです。
ぎっくり腰になってから1カ月くらいたつと、症状も落ち着いてくるので、少しずつ体操やストレッチをすると、早く良い状態になるのでおすすめです。ただし、体操やストレッチにもいろいろあるので、どれがいいかについては、個人個人で違うので、理学療法士のような専門家に相談するようにしましょう。
どんなときに発症する?
ぎっくり腰は洗面所で顔を洗っていたり、くしゃみをしただけで発症することがあります。ぎっくり腰になると激痛に襲われて動けなくなり、声も出せなかったり呼吸をするのも辛いというほど、ひどい状態になることもあるようです。発症すると、これほど甚大な被害を及ぼすぎっくり腰ですが、現在のところ医学的にはほとんど解明されていません。
そのため、多くの場合ぎっくり腰は原因もわからないのです。一説には、ぎっくり腰の20%はストレスによるもので、あとの80%は原因不明だとも言われています。つまり、多くの場合ぎっくり腰は原因のわからないまま、対症療法による治療が行われているケースも少なくないのです。こんな話を聞くと不安になる人もいるかもしれませんが、これが現状なのです。
現代医学の進歩には目覚ましいものがあり、不治の病と言われていた癌でさえも、発見が早ければかなりの確率で完治できるようになりました。その現代医学でも、ぎっくり腰の詳細についてはほとんどわかっていないのです。
しかし、ある程度はぎっくり腰の原因がわかっています。その中でも代表的なものが、以下に紹介する3つです。代表的な原因を知っていれば、ぎっくり腰になってもある程度対処することが可能で、ぎっくり腰にならないための予防策を立てることもできます。
椎間板への過度の負荷
椎間板は脊椎の24個の骨の間にあって、クッションの役割をしています。椎間板があるから、脊椎で頭や上半身の重さを支えることができるのです。さらに、高い所から飛び降りた際などに、足からの衝撃を吸収して、脳へのダメージを抑えるのも、椎間板の大事な役目です。
脊椎で、クッションの役割を果たしている椎間板は、かなりの重さを受けるので丈夫にできていますが、意外にデリケートな面もあります。そのため、椎間板ヘルニアという症状を引き起こすことがあります。腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の中にある髄核という物質が、椎間板の外に飛び出てしまう病気です。
この飛び出した髄核が、脊髄神経に触れると激痛が起こりますが、激痛が起こるほどではなくても、髄核が出ている状態が続くと椎間板に負荷がかかります。この症状が腰椎で起こると、何かの拍子に腰に激痛が走る場合があり、これがぎっくり腰の一因となるケースもあります。
慢性的な腰への負担
現代社会では、どこに行くにも乗り物を使います。江戸時代など、現代のような交通機関がなかった時代には、どこに行くにも歩くしか方法がありませんでした。しかし、現代では車などを使って移動するケースが多くなり、現代人はすっかり歩く距離が短くなってしまいました。
アフリカなどに住む狩猟民族は、狩りのために1日に数十キロ歩くのは普通のことのようですから、いかに先進国の人々が歩かなくなったかがわかります。先進国の人々が歩かなくなったのは、文明が進歩した証とも言えるでしょう。
文明の進歩により、交通機関が発達したために、歩かなくて済むようになったのです。しかし、これが腰痛を生む原因となりました。人類は四つ足歩行から二足歩行に変わり、文明が発展してきましたが、二本足で歩くメカニズムは、かなり複雑なものだと言われています。
人類の最大の特徴は直立二足歩行ですが、二足歩行を獲得した人類は、実は歩くことによって体のバランスを保ってきたのです。つまり、文明人が昔と比べて歩かなくなったことが、腰痛の原因だと言うのです。二足歩行すると、嫌でも腰に負担がかかります。
この適度な腰への負担が、人体のバランスを取る上で重要なのですが、文明国に住む現代人は、歩かなくなったために、自分からバランスを崩しているのです。足は2本しかないので、歩けば歩くほど左右の足にかかる負荷が平均化し、バランスが取れるようになっています。
しかし、現代人は歩かなくなったため、体がアンバランスなままの状態で、生活している人が多いのです。これが腰痛や、ぎっくり腰の一因となっています。
骨格の歪み
「骨格の歪み」とは、しばしば耳にするフレーズですが、では骨格の歪みとは具体的に、どんな状態を指すのでしょうか。他人の後ろ姿を見ると、骨格の歪みはよくわかります。しかし、自分の骨格の歪みは、ほとんどの場合わかりません。
背骨がねじれていたり、骨盤の左右の位置が違うなど、体の中でも大きな骨がねじれたり歪んでいると、さまざまな健康障害を引き起こします。実際に、骨格の歪みを調整しただけで、内臓系の疾患が改善する例も珍しくありません。
ではなぜ、骨格が歪むのでしょうか。前述しましたように、現代人は歩行量が減少しているために、左右の足に均等に体重を乗せることができなくなっています。人が歩くと、足やひざ、股関節、骨盤などに、地面から押す力がかかります。
骨盤には、仙腸関節という関節が左右にありますが、この関節の左右の位置に違いがあると、骨格が歪んでくるので注意しなければなりません。
ぎっくり腰手前の症状
ぎっくり腰は、普段の何気ない動作で腰に激痛が走り、動けなくなってしまう病気です。突然腰が痛くなるので、これから出かけるところだったり、仕事中だったりすることもあるでしょう。そこで、ぎっくり腰が起こる手前で、異変を察知できればいいのですが、それは可能なのでしょうか。
ぎっくり腰の前兆
結論から言いますと、ぎっくり腰にハッキリした前兆はありません。ぎっくり腰は、普段の何気ない動作で起こる症状ですから、前兆をつかむのは非常に困難です。しかし、何度もぎっくり腰を経験している人は、「またやりそう」とか「嫌な予感がする」といった、前兆ともとれる感覚を覚えることがあるといいます。
ただし、これは前兆というほどのものではなく、過去の経験から何となく気づいているだけでしかありません。しかも、その人が独自の感覚で察知できるだけですから、他の人の参考にはならないでしょう。
ぎっくり腰は予防できる
ぎっくり腰は、ある程度予防することができます。前述しました通り、ぎっくり腰は軽く会釈した程度でも起こることがあるので、完全に予防するのは不可能です。しかし、以下のポイントに注意して生活することにより、かなりの確率で予防することができます。
なるべく同じ姿勢を続けない
ぎっくり腰は、長時間同じ姿勢を続けたあとに、起きやすいことがわかっています。長時間同じ姿勢で座っていたり、立ちっぱなしの状態が続くと、「腰が硬くなる感じ」や「腰が重たくなる感じ」などの異変を感じたあとに、ぎっくり腰を起こすケースが見受けられます。
これは、長時間同じ姿勢を続けたために、腰や臀部の筋肉が硬くなり、血液が循環しにくくなるために起こるものです。このような状態が続くと、ちょっとした動作がきっかけとなって、ぎっくり腰を起こします。
ぎっくり腰は、何でもない動作でも起きることがありますが、その前段階として、腰に負担がかかるような姿勢を取った結果、ぎっくり腰になった可能性もあります。予防法としては、長時間同じ姿勢を続けたら、風呂で体を温めるのが有効です。
また、腰部のストレッチをするなどして、血液の循環を良くすることで、ある程度予防することができます。ただし、長時間同じ姿勢を続けたあとに、冷湿布やアイシングをすると、逆効果ですから注意しましょう。
腰痛の予防には、冷湿布やアイシングが効果があると一般的に言われていますが、ぎっくり腰の予防には、腰を温めることが大切です。
寝返りしにくい
腰周辺の筋肉が疲労すると、ベッドで睡眠中に同じ姿勢が続いた場合に、筋肉が硬くなって動きにくくなります。腰の状態が悪くなると、同じ姿勢を続けることがマイナスに働いて、寝返りが打ちにくくなります。
ぎっくり腰になった人の中には、寝ているときに腰に違和感を覚えたという人も多いようです。もし寝返りが打ちにくい状態が続いているなら、ぎっくり腰になる可能性があるので注意しましょう。
床の物が取りにくい
床に落ちた、片手で拾えるくらいのものを拾おうとした際に、取りにくいと感じたらぎっくり腰の前兆かもしれません。
床の物が拾えないということは、腰がスムーズに曲げられないということですから、腰に何らかの異常があることが考えられます。
この場合の原因には、2つの可能性があります。
まず1つ目は骨盤の歪みです。毎日長時間同じ姿勢を続けたり、日常的に腰に無理な力が加わるようなことをしていると、骨盤に小さな歪みが生じます。この歪みが徐々に積み重なって、ぎっくり腰の原因になる場合があります。
2つ目は、腰にできたトリガーポイントです。トリガーポイントとは、血行が悪くなった筋肉にできる痛みの元で、一度トリガーポイントができると、治癒するのは難しいので、たびたびそこが原因となって腰痛が起こります。もしも、トリガーポイントができてしまったら、施術して治すことを考えましょう。
筋膜性腰痛との違い
筋膜性腰痛とは、筋肉を覆っている筋膜が、何らかの原因で損傷して腰に生じる痛みのことです。筋膜性腰痛を発症するケースは意外に多く、しかも激しい痛みを伴うので、ぎっくり腰と誤認されることがあります。
筋膜性腰痛は、腰に負担がかかることで発症するので、スポーツや仕事で腰に過剰な負担がかかると、痛みを発する可能性があります。筋膜性腰痛は重い物を持ったり、長時間同じ姿勢を続けるなど、日常生活の中で起きるケースが多いので、なおさらぎっくり腰と間違えやすいのです。
ちなみに、急性の筋膜性腰痛は、肉離れや腰椎捻挫を伴うことが多いので、ぎっくり腰と区別しやすいのが特徴です。一方、慢性の筋膜性腰痛は、座りっぱなしや姿勢の悪さ、長時間同じ姿勢で過ごすなど、腰に負担をかけすぎた結果、腰の筋肉に疲労が溜まって発症します。
筋膜性腰痛を発症すると、激しい痛みのために日常生活もままならなくなりますが、骨や神経が損傷しているわけではありません。そのため、脊椎分離症や椎間板ヘルニアのような、下半身のしびれといった症状を起こさないのが特徴です。
筋膜性腰痛は、X線検査やMRI検査などの画像検査をしても、何の異常も見つからないので、原因がわからないままになってしまいます。筋膜性腰痛は、強い痛みがあっても数日で和らぐことが多く、1カ月もたてばほとんど完治します。ただし、腰に負担がかかるような生活を続けていると、再発するケースも多いので注意しなければなりません。
受診が必要かどうかの見極め
ぎっくり腰は患部に炎症を起こした状態ですが、軽い場合はじっとしていれば治ることもあります。軽い症状の場合は、少し痛みがある程度なので、動けるなら痛みが出ないように注意しながら過ごせば、普段通りに生活できます。症状が軽ければ、通常は1週間~2週間程度で回復していきます。どうしても気になるようでしたら、電話で予約の確認を取って診療を受けるとよいでしょう。
中程度の痛みの場合は、日常生活に支障をきたすことが多くなるので、慎重に過ごさなければなりません。重度になると、激痛のために立ったり座ったりする動作や、歩行もままならなくなります。クリニックや病院などの受診が必要なのは、重度の場合なので、その見極め方について解説します。
ぎっくり腰になっても、「こうすると楽」という姿勢があるなら、急いで受診する必要はありません。腰痛が楽になる姿勢がある場合は、軽度から中程度の症状と見ていいでしょう。また、軽くエクササイズをしてみて、少しならできそうであれば、重症の可能性は低くなります。
しかし、激しい痛みが続いて、まったく体を動かせない状態であれば、明らかに重症ですから早めに医療機関を受診しましょう。ちなみに、楽になる姿勢がある場合は、ぎっくり腰の可能性が高いのですが、楽になる姿勢がなくずっと激痛が続く場合は、別の病気の可能性があります。
たとえば、骨折やがんの転移、感染性脊椎炎などの場合でも、ぎっくり腰と似たような痛みが生じることがあるので注意が必要です。
骨や神経の損傷はない
ぎっくり腰は、動くと痛いのでじっとして過ごすことが多いのですが、放置すると悪化するとか、痛み以外に何か起こるといったことはありません。そこで、ぎっくり腰はエクササイズや体操などを行って、体を動かしたほうが回復が早くなるのでおすすめです。
むしろ、腰をかばって動かさずにいると、腰や背中の筋肉が緊張して血流が悪くなり、発痛物質が増えるのでさらに痛みがひどくなります。ぎっくり腰は激痛がするので、「この状態で体を動かすともっと悪化する」と思ってしまう人も多いようですが、実際はその逆なので、なるべく体を動かすようにしましょう。
ぎっくり腰の後に「安静にした場合」と、「できる範囲で動いた場合」を比較した研究では、できる範囲で動いたほうが痛みが長引かず、ぎっくり腰の再発率も低いという結果が出ています。
レッグレイズがおすすめ
ぎっくり腰の症状を緩和するエクササイズとして、レッグレイズがおすすめです。レッグレイズを行うと、腹筋とインナーマッスル(腹横筋・腸腰筋など)が鍛えられるので、骨盤の歪みや姿勢が改善されるため、ぎっくり腰に効果があります。
レッグレイズのやり方
レッグレイズは、以下の手順で行います。
1.仰向けの状態になり、体の横に手を置きましょう。
2.足をそろえたまま、ゆっくりと両足を上げていきます。
3.両足が床と垂直になるくらいまで上がったら、ゆっくりと下ろしていきましょう。
4.足を床に着くギリギリのところまで下ろしたら、2.からの運動を繰り返し行います。
上記の運動を、10回3セットを目安に行ってください。
この動作がきついと感じたら、軽く膝を曲げ、お尻の下に両手を敷いて行うと楽にできます。
また、回数も10回3セットではなく、10回2セットまたは5回3セットでもかまいません。
最初は少ない回数から始めて、徐々に増やしていけばいいのです。
レッグレイズのポイント
おへそから5cmほど下の、いわゆる丹田を意識してレッグレイズを行いましょう。そうするとインナーマッスルの腹横筋や多裂筋が鍛えられ、アウターマッスルの脊柱起立筋が緩みます。
ぎっくり腰で痛むのは、アウターマッスルが緊張した状態になっていることが原因なので、丹田を意識してレッグレイズを行うことによって、アウターマッスルが緩むので痛みを和らげることができます。
心因性腰痛とは
ぎっくり腰は、ストレスが原因で起こることがあります。強いストレスが長く続くと、脳に変化が起こって、本来感じないはずの痛み(実際にはない痛み)を感じることがあります。また、ストレスは体を硬くするので、筋肉が緊張して血液の循環が悪くなり腰痛を発症することもあるようです。
痛みは3種類ある
ぶつけたり骨折するような痛みを「侵害受容性疼痛」と言い、神経に異常が発生して起こるのが「神経障害性疼痛」です。この2つは実際に痛みの原因があるために起こりますが、何の異常もないのに、脳の変化によって痛みが起こる「痛覚変調性疼痛」もあります。心因性腰痛によって起こるのは、痛覚変調性疼痛による痛みです。
心因性腰痛の見分け方
心因性腰痛は、患部に疾患や炎症があるわけではないので、はっきりしたことを診断するのは困難です。椎間板ヘルニアや圧迫骨折、筋肉のこわばりなどがないかを調べ、どれにも該当しなければ心因性腰痛の可能性が高くなります。そこで、次に心理的なテストを行って、腰痛の原因を突き止めていきます。
たとえば腰椎椎間板ヘルニアでは腰を曲げると痛くなり、脊柱管狭窄症は立ったり歩いていると症状が出てきますが、そういった理由もなく「とにかくずっと痛い」というのが心因性腰痛の特徴です。このように、痛みの実体がないだけに、心因性腰痛の原因を突き止めるのは難しいでしょう。
心因性腰痛が起こる要因
心因性腰痛の具体的な要因には、以下の3つがあります。
・身体化による血流不足
身体化により、腰の筋肉の血流が不足すると腰痛が起こります。ストレスが原因で脳機能に不具合が起きると、「身体化」という現象が起こることがあります。身体化とは、ストレスによって起こる反応のことで、動悸や胃腸の不調、睡眠障害などがその例です。
さらに、身体化によって筋肉の血流が不足するため、体内の細胞に酸素欠乏や老廃物の蓄積が起こり、痛みを発するようになります。この現象が腰の筋肉で起こると、腰に痛みが生じるために脳が腰痛と誤認してしまいます。
・脳の痛みを感じる機能の麻痺
ストレスが原因で、脳の痛みを感じる機能に不具合が生じてしまい、痛みを感じにくくするメカニズムが働かなくなるために、体に痛みがあると誤認することがあります。これが腰で起こると、常に腰痛があるかのような状態を、脳が勝手に作り出してしまます。
・心理的ストレスによる姿勢の崩れ
強い心理的ストレスを受けると、姿勢のバランスが崩れ、物を持ち上げたときなどに腰に痛みを生じることがあります。姿勢のバランスが崩れた状態とは、背中や腰を丸めたような猫背の姿勢です。猫背の状態で急に重い物を持つと、腰椎椎間板に予想外の負荷がかかるため、腰痛を起こしてしまいます。
心因性腰痛の治療法
心因性腰痛は、実際には痛みの原因がないので治療するのは困難です。まず患者本人が、医師の言う事をよく聞いて、心因性腰痛であることを認識することが大切です。その上で治療に入りますが、近年効果があると言われているのが、「認知行動療法」と呼ばれる心理療法です。認知行動療法によって患者が病気と向き合い、痛みと上手に付き合っていくコツを身に着けていきます。
ちなみに、適度な運動も心因性腰痛の改善に効果があります。ウォーキング程度でいいので、軽い有酸素運動を続けることによって、ある程度の効果を出すことが可能です。また、薬にも一定の効果があります。ロキソニンなどの、一般的な鎮痛剤はあまり効果がありませんが、抗うつ薬、抗てんかん薬などを使うことによって、脳の機能を回復させ、心因性腰痛の原因を取り除く効果が期待されます。
薬はあまり飲みたくないと言う人もいますが、これらの薬は医者の処方のもとで用法容量を守って飲めば問題はありません。心因性腰痛にはこのような対処法があるものの、「これをすれば確実によくなる」という決定的なものがないのも事実です。
定期的にぎっくり腰を繰り返す人の改善法
ぎっくり腰の原因はっきりしないので、断定的なことは言えませんが、以下のような場合にぎっくり腰を繰り返しやすくなるようです。
長時間同じ姿勢でいたあとの動き始め
長時間同じ姿勢でいると、血の巡りが悪くなって筋肉や関節が硬くなります。朝起きてすぐや長時間車を運転した直後などに、急に体を動かすと腰に負荷がかかって痛みが走ることがあります。
睡眠不足
人の体は、睡眠不足や疲れが溜まった状態では、正常な動きができない場合があります。そんなときに急に腰を曲げたりすると、腰に負担がかかるのでぎっくり腰を起こしやすくなります。
運動不足
普段から運動不足の人は、筋肉や関節が日常的に硬くなっているので、ちょっとしたきっかけでぎっくり腰を誘発します。日頃からラジオ体操などをして、体を動かすとある程度運動不足の解消になります。
コルセットは使ってよい?
ぎっくり腰の改善には、コルセットが役立ちます。ぎっくり腰になっても、普段通りの生活を続けるのがベストですから、コルセットをつけることによって患部が楽になり、普段の生活ができるのであれば有効と見ることができます。ただし、いつまでもコルセットに頼るのはおすすめできないので、あくまでも一時的な改善策として使うようにしましょう。