現代人に多く見られる肩こりは、日常生活や仕事において大きなストレスの原因となっています。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、加齢などにより筋肉や神経に負担がかかり、慢性的な痛みや悪循環が生じるケースが少なくありません。
そこで注目されているのが、ペインクリニックや整形外科で行われるブロック注射やトリガーポイント注射です。これらの治療法は、肩や首、腰といった部位の痛みを改善し、筋肉の緊張や神経の異常な伝達を調整することで、症状の根本改善を目指します。
目次
肩こりの原因と悪循環
肩こりは、肩や首の筋肉が緊張して硬くなってしまいます。その原因の多くは、長時間の同じ姿勢、運動不足、ストレスなどです。特に、デスクワークやサイクリングの時間が増えると、首や肩に負担がかかりやすくなります。
肩こりが起こると、筋肉の血が流れやすくなり、老廃物が増えやすくなります。 すると、筋肉がさらに硬くなり、痛みや違和感が増していきます。これが「悪循環」と呼ばれる状態です。痛みがあると、無意識に肩をすくめたり、体をこわばらせたりしてしまいますが、これがさらに筋肉の緊張を強め、症状を悪化させる原因になります。
また、肩こりが続いたり、頭痛やめまい、目の疲れなどの症状があることもあります。ひどい場合は、集中力の低下や睡眠の質の悪化にもつながります。
肩こりの悪循環を断ち切るためには、適度なストレッチや運動で血流を良くすることが大切です。また、正しい姿勢を意識し、長時間同じ姿勢にならないようにすることも重要です。リラックスできる時間を作り、ストレスを減らすことも肩こりの改善につながります。毎日の習慣を少しずつ変えて、肩こりを予防しましょう。
ブロック注射とトリガーポイント療法とは?
ブロック注射
局所麻酔薬やステロイド剤を神経や筋肉の周囲に注射することで、痛みを抑え、血流を改善する効果が期待できます。 肩こりに対してよく行われるのは「星状神経ブロック節」や「神経根ブロック」です。
星状神経節ブロックは、首の付け根にある星状神経節に局所麻酔を注入し、自律神経の働きを調整することで、血流を促進し、筋肉のこりを緩和します。 交感神経の過剰な働きを考えることで、慢性的なこり効果も期待できます。 一方、神経根ブロックは、脊髄から出る神経の根元に直接薬剤を注入し、神経の炎症を鎮める方法です。
トリガーポイント療法
トリガーポイント療法は、筋肉のしこり(トリガーポイント)に直接アプローチする治療法です。 トリガーポイントは、肩こりによって形成される筋肉の硬結部分で、触ると強い痛みを感じることが特徴です。 治療では、トリガーポイントに局所麻酔薬や生理食塩水、場合によってはステロイドを注射する「トリガーポイント注射」や、手技によるマッサージ・ストレッチなどを用いて筋肉の緊張を解消します。
トリガーポイント注射とは、筋肉のコリや痛みの原因となる「トリガーポイント(圧痛点)」に直接薬を注射する治療法です。主に局所麻酔薬や筋弛緩薬が使われ、痛みを和らげたり血流を改善したりします。肩こりや腰痛、筋肉の張りが強い場合に用いられ、即効性があるのが特徴です。
ただし、根本的な原因を改善するには、姿勢や生活習慣の見直しもあわせて行うことが大切です。トリガーポイント注射は、即効性があり、短時間で痛みが軽減されることが多いですが、効果の持続時間には個人差があります。 また、繰り返し受けることで、慢性的な肩こりの改善が期待できます。
ブロック注射とトリガーポイント療法は、それぞれ異なるアプローチで肩こりを改善する治療法です。ブロック注射は神経の働きを調整し、痛みを軽減するのに優れた方法であり、トリガーポイント療法は筋肉の緊張を直接ほぐすことで肩こりの根本的な原因にアプローチします。症状の程度や原因によって、適した治療法を選ぶことが大切です。
治療の流れと診療体制
治療を開始する前には、まず診療や予約を通じて、専門の整形外科やペインクリニックで現在の症状を詳しくチェックします。問診や身体検査、場合によっては画像診断を行い、肩こりの原因や悪化している部位を特定します。
ブロック注射は、痛みの原因となっている神経や筋肉の周囲に局所麻酔薬や抗炎症薬を注入する方法です。
この治療は、肩こりが慢性的に続く場合や、筋肉の緊張による神経圧迫が疑われる場合に効果的です。次に、肩や首の痛みの原因となる部位を特定した後、CTやMRIでより詳しく状態を確認することもあります。 ブロック注射は、局所麻酔を使って神経や筋肉に直接注射を行い、痛みを軽減します。 通常、数分の施術で完了し、注射後に休憩する場合もあります。
トリガーポイント注射は、まず医師が問診と触診で痛みの原因となる部位(トリガーポイント)を特定します。次に、そのポイントに局所麻酔薬などを注射し、筋肉の緊張を緩めて痛みを軽減します。診療は整形外科やペインクリニックで行われ、医師の判断のもと安全に実施されます。多くは外来で対応でき、短時間で終了しますが、複数回の治療が必要なこともあります。再発予防には生活習慣の改善も重要です。
これらの治療法は、症状の程度や患者の状態に応じて採用されます。 診療体制としては、これらの治療法を提供する整形外科や痛みの専門医が、適切な診断と治療計画を立てて進めることが重要です。 また、症状が改善しない場合は、他の治療法やリハビリテーションが併用されることもあります。
効果・安全性とリハビリテーションとの連携
ブロック注射は、多くの患者に対して即効性のある痛みの緩和をもたらします。施術後、肩や首の動きが改善し、筋肉の硬直が和らぐケースが多く、長期的な改善が期待されます。ただし、注射には副作用や合併症のリスクも伴うため、治療前には十分な説明を受け、信頼できる医師や院長が在籍するクリニックを選ぶことが重要です。
また、治療効果をより高めるためには、リハビリテーションとの連携が欠かせません。注射後の短い期間に、適切な運動療法やマッサージ、ストレッチを取り入れることで、血流の改善や神経ブロックの効果が持続し、再発を防ぐ効果も期待できます。
治療にかかる時間と費用
治療自体は、注射施術としては短時間(数分〜30分程度)で行われるため、診療時間やアクセスの良いクリニックであれば、仕事の合間や急な症状の悪化時にも対応が可能です。
ただし、治療には費用がかかるため、自費診療の場合は特に、事前にカウンセリングや予約時に料金体系の確認が必要です。クリニックによっては、保険適用の範囲外となる場合もありますので、十分な情報収集と医師との相談が求められます。治療費用は、使用する薬の種類や注射回数、さらには神経や筋膜の状態に応じて変動するため、個々の症状に合わせたプランを提示されるケースが多いです。
日常生活への影響と再発防止のポイント
治療後、患者は日常生活において痛みの軽減を実感できるとともに、肩や腰、首の不調が改善されることが期待されます。しかし、効果が持続するためには、治療後の生活習慣の見直しが不可欠です。
具体的には、正しい姿勢の維持や適度な運動、リハビリテーションを通じた筋力の強化、そして十分な酸素供給を促すための軽い有酸素運動などが挙げられます。また、神経や血管の状態が悪化しないよう、日々のストレス管理や適切な休息が重要です。肩こりが再発するリスクを低減するためには、定期的な健康チェックや、体調に合わせた治療の見直しが求められます。
まとめ
現代の生活習慣が招く肩こりは、単なる痛みだけでなく、首や腰、背中など全身のバランスに影響を及ぼす可能性があります。ブロック注射やトリガーポイント注射は、その原因となる神経や筋肉の異常状態を改善し、悪循環を断ち切る有効な治療法として注目されています。
専門のペインクリニックや整形外科での適切な診断と治療、そしてその後のリハビリテーションや生活習慣の改善を通じ、肩こりの根本治療を目指すことが大切です。短時間で効果が現れる治療法である一方、治療後の自己管理や定期的な受診を行うことで、再発防止につながります。症状が改善されることで、日常生活や仕事の効率が上がり、ストレスの軽減にも寄与します。
もし、慢性的な肩こりにお悩みの場合は、まずは信頼できる医療機関で相談し、具体的な治療法やプランを確認することをおすすめします。正しい治療と日々のケアで、健やかな生活を取り戻しましょう