肩こりといえば、多くの人が経験したことのある身近な不調です。しかし、ただの肩の痛みと思って放置していると、「めまい」や「吐き気」といった、より深刻な症状を引き起こすことがあります。
本記事では、肩こりが原因で起こる様々な症状のメカニズムや、改善・予防方法について、わかりやすく解説していきます。
目次
肩こりと一緒に起こる不調の正体
肩こりとは何か?
肩こりとは、肩周辺の筋肉が緊張し、血行不良によって痛みや違和感を引き起こす状態を指します。現代では、長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用によって、若い世代でも肩こりに悩む人が増えています。
肩こりが引き起こす「めまい」
肩こりがひどくなると「めまい」を感じることがあります。これは、肩や首の筋肉が固くなることで、脳に送られる血流が悪くなり、脳が酸素不足や栄養不足のような状態になるからです。とくに、首の後ろには「椎骨動脈(ついこつどうみゃく)」という血管が通っており、ここが筋肉の緊張で圧迫されると、バランスを司る「小脳(しょうのう)」などへの血流が減り、めまいが起こりやすくなります。
めまいには大きく分けて2種類あります。ひとつは「ぐるぐる回るようなめまい(回転性めまい)」、もうひとつは「ふわふわするようなめまい(浮動性めまい)」です。肩こりによるめまいは、後者の「ふわふわめまい」であることが多く、「なんとなく不安定」「頭がぼーっとする」「立ちくらみのような感覚」と表現されます。
また、姿勢の悪さも関係しています。長時間パソコンやスマートフォンを使うことで猫背になり、首や肩に負担がかかると、自律神経のバランスが乱れることがあります。自律神経は血圧や心拍、体温などをコントロールしているため、乱れるとめまいや動悸、倦怠感などの症状が出ることがあります。
めまいが起きたときは、無理に動かず、まずは座ってゆっくり深呼吸をして休みましょう。日ごろから肩こりを予防するために、ストレッチや軽い運動を取り入れたり、姿勢に気をつけることが大切です。また、水分不足でも血流が悪くなるので、こまめに水を飲むようにしましょう。
肩こりが原因の「吐き気」
肩こりと同時に「吐き気」を感じることがあります。これも血流や神経の働きが関係しています。肩や首の筋肉がガチガチにこると、その近くを通る神経が圧迫され、自律神経のバランスが崩れやすくなります。自律神経が乱れると、消化器官の働きにも影響が出て、胃がムカムカしたり、気持ち悪くなったりするのです。
また、肩こりによって頭痛が引き起こされ、それが原因で吐き気が出ることもあります。特に「緊張型頭痛」や「偏頭痛」といったタイプの頭痛では、吐き気を伴うケースが多くあります。偏頭痛はこめかみのあたりがズキズキ痛むのが特徴で、光や音に敏感になったり、吐き気や嘔吐をともなうこともあります。これも肩こりがきっかけになる場合があります。
さらに、肩こりで首の筋肉が緊張すると、首の後ろにある「延髄(えんずい)」という場所にも影響を与えることがあります。延髄は、吐き気や嘔吐に関係する神経の中枢があるところです。そこに影響が及ぶと、理由がはっきりしないのに気持ち悪くなることがあります。
このように、肩こりはただ筋肉の問題にとどまらず、全身の不調につながることがあるのです。吐き気が続くときは、無理をせずに体を休め、温かいお風呂で肩を温めたり、軽くストレッチするのもおすすめです。また、空腹すぎたり、逆に食べすぎたりしても吐き気を助長することがあるため、食事のバランスにも気をつけましょう。
なぜ肩こりでこんな症状が起きるのか?
血行不良による酸素不足
肩こりが起こると、筋肉がギュッと固くなってしまいます。筋肉が硬くなると、その周りにある血管も圧迫されてしまい、血液の流れが悪くなります。これを「血行不良(けっこうふりょう)」といいます。
血液は、体のすみずみに酸素や栄養を届ける大事な役割を持っています。でも血行が悪くなると、必要な酸素がうまく運ばれなくなり、特に脳に酸素が届きにくくなることがあります。脳が酸素不足になると、「ふわふわしためまい」や「頭がボーっとする」ような症状が出てきます。
また、酸素が足りない状態が続くと、体が「このままでは危ない」と感じ、吐き気などの不調でサインを出すこともあります。これは一種の防御反応でもあり、「今は休んだ方がいいよ」という体からのメッセージともいえるでしょう。
血流をよくするためには、肩を温めたり、軽くストレッチをしたり、長時間同じ姿勢にならないようにすることが大切です。お風呂でゆっくり温まるのも、血行改善に効果的です。水分補給も忘れずに。血液がサラサラになると流れやすくなります。
神経への圧迫
肩や首の周りには、たくさんの神経が通っています。肩こりで筋肉が固くなると、その筋肉の中を通る神経がギュッと圧迫されてしまうことがあります。この神経への圧迫が、体にいろいろな不調を引き起こす原因になります。
神経は、脳と体をつなぐ「電線」のような存在です。たとえば、自律神経(じりつしんけい)は、体のリズムを自動で調整する神経で、心臓の動きや胃の働き、体温調整などをコントロールしています。肩こりでこの神経が乱されると、めまいや吐き気、動悸(どうき:ドキドキ感)、体のだるさなどが出てくることがあります。
また、首の後ろには「延髄(えんずい)」という大事な部分があり、ここには吐き気や呼吸に関わる神経が集中しています。首のこりがこの部分にまで影響すると、理由がはっきりしないのに気持ち悪くなったり、呼吸がしにくくなることもあります。
神経への圧迫は見えにくいものですが、体の不調としてしっかり現れます。予防のためには、肩こりを悪化させないようにすることが第一です。無理な姿勢を避けたり、こまめに体を動かして筋肉の緊張をほぐすことが大切です。
姿勢の悪化
長時間のデスクワークやスマホの使いすぎで、私たちはつい「猫背」になりがちです。背中が丸まり、顔が前に出るような姿勢になると、首や肩の筋肉に大きな負担がかかり、肩こりが起こりやすくなります。
この「姿勢の悪化」は、肩こりだけでなく、全身の不調にもつながる原因になります。なぜなら、悪い姿勢は背骨のゆがみを引き起こし、血液や神経の流れを邪魔するからです。とくに首の周りには、脳につながる大事な血管や神経がたくさんあります。姿勢が悪くなることで、これらが圧迫されたり引っ張られたりし、めまいや吐き気といった症状が出てくることがあるのです。
また、姿勢が悪いと胸が圧迫され、呼吸が浅くなることもあります。そうすると、体に取り込まれる酸素の量が減り、脳が酸素不足になりやすくなります。それによって、頭が重く感じたり、集中力が続かなくなったりするのです。
正しい姿勢を意識することは、肩こりの予防だけでなく、体全体の健康を守ることにもつながります。イスに深く座り、背筋を伸ばし、目線はまっすぐ前へ。スマホやパソコンの位置も、目の高さに合わせるように工夫すると、首や肩への負担が減ります。
肩こりに関連するその他の症状
肩こりと頭痛の関係
肩こりがひどくなると、「頭がズキズキする」「頭が重い」といった頭痛を感じることがあります。これは、肩や首の筋肉が固くなることで、頭の血流が悪くなったり、神経が刺激されたりするために起こるものです。
特に多いのは「緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)」と呼ばれるタイプの頭痛です。これは、肩や首の筋肉が長時間こってしまい、そのこりが頭の周りにも影響を与えて、頭が締めつけられるような痛みが出るのが特徴です。「頭が重い感じがする」「帽子をきつくかぶっているみたい」という表現をされる方もいます。
また、肩こりが引き金となって「偏頭痛(へんずつう)」が起こることもあります。偏頭痛は、頭の片側がズキンズキンと強く痛むのが特徴で、光や音に敏感になったり、吐き気を伴ったりすることもあります。
これらの頭痛は、デスクワークやスマホ操作などで前かがみの姿勢が続いたり、精神的なストレスがたまることでも悪化します。肩や首の筋肉をほぐして血流を良くすることで、頭痛の軽減が期待できます。温めたタオルを肩に当てたり、ゆっくりと首を回すストレッチを取り入れるのも効果的です。
頭痛が続く場合は無理をせず、体をしっかり休めることが大切です。あまりにも強い痛みや頻繁な頭痛がある場合は、病院での診察を受けるようにしましょう。
肩こりとしびれ・耳鳴りの関係
肩こりが原因で「手がしびれる」ことや、「耳鳴り」が起きることもあります。これは、肩や首の筋肉が固くなりすぎて、その中を通る神経や血管が圧迫されることで起こります。
たとえば、首から肩、腕にかけて走っている「神経の通り道」があります。肩こりで筋肉がその神経を圧迫すると、電気が走るような手のしびれや、感覚の鈍さ、ピリピリする違和感が出ることがあります。これは「頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)」と呼ばれることもあります。
また、耳の近くには平衡感覚(バランス)や聴覚をつかさどる神経があります。肩や首の緊張が強くなると、このあたりの血流や神経伝達が悪くなり、「キーン」「ジーッ」といった耳鳴りが起こることがあります。耳鳴りは、めまいや不安感を伴うこともあり、日常生活に支障をきたすこともあります。
これらの症状は、一見すると肩こりと無関係に思えるかもしれませんが、実は深く関係していることが多いのです。長時間の同じ姿勢やストレス、冷えなども筋肉をこらせる原因になるため、こまめに肩や首を動かして血行を良くすることが予防になります。
しびれや耳鳴りが続くときは、神経や耳の病気が隠れていることもあるので、医療機関での診断も大切です。
頸部周辺の神経への圧迫により、手や指のしびれ、耳鳴りなどの症状も起こり得ます。
肩こりと不眠・疲労感の関係
肩こりがひどくなると、「なかなか眠れない」「寝ても疲れが取れない」といった不眠や慢性的な疲労感につながることがあります。
肩や首のこりがあると、寝ているときにも筋肉が緊張したままになり、体が完全にリラックスできません。すると、眠りが浅くなって夜中に何度も目が覚めたり、朝起きたときに「全然寝た気がしない」と感じることがあります。
また、肩こりが自律神経にも影響を与えると、夜になっても体が「休むモード」に切り替わらず、交感神経が優位なまま興奮状態が続いてしまいます。これによって寝つきが悪くなったり、眠っても途中で目が覚めてしまったりします。
不眠が続くと、日中も疲れが取れず、集中力が落ちたり、イライラしやすくなったりします。体がだるく、何をするにもおっくうに感じるようになってしまい、悪循環に陥ることもあります。
肩こりを軽減することで、睡眠の質が改善され、疲れも取れやすくなります。寝る前にスマホを見すぎない、軽いストレッチや深呼吸を取り入れる、入浴で体を温めるなどの工夫が効果的です。枕の高さや寝る姿勢も、首や肩に負担がかかっていないか見直してみると良いでしょう。
症状を和らげる具体的な方法
自宅でできるセルフケア
- 肩を温める:肩こりをやわらげるのに効果的なのが、「肩を温めること」です。肩や首の筋肉が冷えて硬くなると、血の流れが悪くなり、こりがひどくなります。そんなときは、温めて血行を良くするのが一番です。
お風呂にゆっくりつかるのが理想ですが、時間がないときは蒸しタオルを使ってもOK。やり方は簡単で、タオルを水でぬらして軽く絞り、電子レンジで1分ほど温めるだけ。温まったタオルをビニール袋に入れて、肩や首に当てれば、じんわり温かくてとても気持ちいいです。
市販のホットパックや温熱シート、カイロなどを使うのもおすすめ。とくに寒い季節は、肩を冷やさないように注意しましょう。シャワーだけの生活が続いている人も、たまには湯船につかって体全体を温めると、肩だけでなく全身がラクになりますよ。
毎日のちょっとしたケアで、肩こりはぐんと軽くなります。
- ストレッチ:肩こり解消には、ストレッチもとても効果的です。長時間同じ姿勢でいると、肩や首の筋肉が固まって血流が悪くなります。そこで、1日数回、軽く体を動かすだけでも、筋肉の緊張がゆるみます。
簡単にできるストレッチの一つに、「首をゆっくり回す運動」があります。まず背筋を伸ばして座り、首を右に傾けて10秒キープ、反対側も同じように行います。その後、首を前後、左右にゆっくり動かして、最後にぐるりと回します。急に動かすのではなく、ゆっくり・気持ちよく動かすのがポイントです。
もうひとつは、肩をすくめるストレッチ。肩をグッと上げて数秒キープし、ストンと落とす。これを何回か繰り返すだけでも、肩まわりがほぐれてスッキリします。
テレビを見ながらや、家事の合間にできる簡単なものばかりなので、無理せず、毎日こまめに続けることが大切です。
- 姿勢の見直し:肩こりの大きな原因のひとつが、「悪い姿勢」です。とくに、パソコンやスマホを使うときの前かがみの姿勢は、首や肩に大きな負担をかけています。これを放っておくと、肩こりだけでなく、頭痛や疲れの原因にもなります。
まず見直したいのが、座る姿勢です。椅子には深く腰をかけ、背筋を伸ばし、肩の力を抜きましょう。パソコンの画面は目の高さに合わせ、スマホを見るときも、なるべく目線を下げすぎないように意識します。
また、立っているときも、耳・肩・腰・くるぶしが一直線になるように意識すると、自然と良い姿勢になります。壁に背中をつけて立ってみると、自分の姿勢のクセがわかりやすいですよ。
姿勢を少し意識するだけで、肩への負担は大きく減ります。**正しい姿勢は、それだけで肩こり予防になる「日常のストレッチ」**のようなもの。普段から意識して、無理のない範囲で姿勢改善を続けてみましょう。
ストレスの軽減
自律神経の乱れを防ぐために、深呼吸や瞑想、趣味の時間を大切にするなど、リラックスする時間を意識的に取りましょう。
整体・整骨院の利用
プロの施術によって、筋肉の緊張をピンポイントで緩和し、症状の根本改善を目指すことができます。早めの受診が効果的です。
受診の目安と注意点
すぐに病院を受診すべき症状
- めまいが立ち上がれないほど強い
- 吐き気に加えて視界がぼやける
- 手足にしびれや麻痺がある
- 意識がもうろうとする
これらの症状がある場合は、整形外科や脳神経外科など、専門医の診断を受けましょう。
医療機関での対応
肩こりがひどくなり、「めまい」や「吐き気」が出てくると、「これは単なる肩こりなのか?」「もしかして重大な病気では?」と不安になる方も多いと思います。そんなときは、無理をせずに医療機関を受診することが大切です。
まず、最初に相談しやすいのは内科や脳神経内科です。症状の原因が肩こりによるものか、それとも他の病気によるものかを調べてもらえます。たとえば、めまいや吐き気は、耳の病気(メニエール病など)や脳の問題(脳梗塞など)でも起こることがあるため、それらを除外することが重要です。
病院では、問診で症状の出方やタイミング、肩こりの有無、普段の生活習慣などを詳しく聞かれます。その後、必要に応じて血液検査やMRI、CT、耳の検査、神経の検査などが行われることもあります。これにより、重い病気が隠れていないかをチェックしてくれます。
「異常なし」と判断された場合でも、「肩こりからくるめまいや吐き気の可能性が高いですね」と言われた場合は、症状を和らげる治療が始まります。たとえば、筋肉の緊張をほぐす薬(筋弛緩剤)や、痛み止め、吐き気止め、自律神経を整える薬などが処方されることがあります。
また、病院によっては、理学療法士によるリハビリやストレッチ指導、鍼灸(しんきゅう)やマッサージを組み合わせて治療することもあります。特に首や肩まわりの血流を良くして、筋肉のこりをやわらげることで、症状が軽くなるケースが多くあります。
ただし、肩こりが原因だと思い込んで放っておくと、実は別の病気だった…ということもあります。「いつもと違う強いめまい」や「ろれつが回らない」「手足がしびれる」などの症状がある場合は、すぐに受診することが必要です。
病院で診断を受けることで、安心して対処ができるようになります。「たかが肩こり」と思わず、体からのサインを大切にしましょう。
肩こりを侮らず、早めの対策を!
肩こりは放っておくと、めまいや吐き気などの深刻な症状を引き起こすことがあります。原因を理解し、日常生活の中で予防・改善する意識を持つことが大切です。
特に長時間のデスクワークやスマホ操作が多い現代人にとって、肩こり対策は必要不可欠。症状がつらいときは無理をせず、セルフケアや専門家の力を借りて、健康的な日常を取り戻しましょう。