妊娠は女性の体に様々な変化をもたらします。その中でも多くの妊婦さんが悩まされるのが「肩こり」です。妊娠前は肩こりとは無縁だった方も、妊娠をきっかけに肩こりに悩まされるようになることも少なくありません。このような肩こりは放置すると頭痛や吐き気などの症状を引き起こし、日常生活に支障をきたすこともあります。
この記事では、妊娠中の肩こりの原因や効果的な解消法、注意点について詳しくご紹介します。
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妊娠中に肩こりが起こる原因
妊娠中は様々な要因で肩こりが起こりやすくなります。妊娠初期と妊娠後期では原因が異なる場合もあるため、それぞれ見ていきましょう。
1. 妊娠初期のホルモンバランスの乱れによる血行不良
妊娠初期はホルモンバランスが大きく変化します。特にこの時期は女性ホルモンの急激な変化により、血行不良を招きやすくなります。血行が悪くなると筋肉への酸素や栄養素の供給が滞り、老廃物が溜まって肩こりの原因となります。
また、妊娠中に分泌されるリラキシンというホルモンは関節を柔らかくする効果があります。このホルモンにより骨盤や背中の結合が緩み、姿勢が変化し、肩や首の筋肉に負担がかかることがあります。つわりによる体調不良も合わさり、血行不良が悪化することも少なくありません。
2. ストレスと筋肉の緊張
妊娠中は出産への不安やつわりによる体調不良、行動の制限などにより、普段以上にストレスを感じやすくなります。ストレスを感じると体が緊張状態になり、肩や首の筋肉が無意識に力んでしまうことで肩こりが発生します。
特に妊娠初期は体の変化に適応する過程で精神的ストレスも大きく、自律神経のバランスが崩れやすい時期です。これにより血行不良が起こり、肩こりの症状が悪化することがあります。
3. 妊娠後期の姿勢の変化と体重増加
妊娠が進むにつれてお腹が大きくなり、体の重心が変化します。妊娠後期になると、お腹の重みで姿勢が前かがみになったり、猫背になったりすることが増えます。この姿勢の変化により、首や肩の筋肉に過度な負担がかかり、肩こりを引き起こします。
また、妊娠中は胸が大きくなることも多く、その重みで背中が丸まり、頭が前に出た姿勢になりがちです。この姿勢では首や肩の筋肉で頭の重さを支えることになり、筋肉に負担がかかります。身体のバランスが崩れることで腰痛も伴うことが多いです。
4. 運動不足と血行不良
妊娠中はつわりや体調不良、お腹の大きさによる動きにくさから、運動量が減少することがあります。運動不足は血行不良を招き、筋肉が硬くなって肩こりを悪化させる原因となります。また、妊娠中は体内の血液量が増加しますが、静脈の圧迫などにより血行が滞りやすくなることも肩こりの一因です。
産後も赤ちゃんを抱っこする姿勢や授乳時の前かがみの姿勢など、肩や首に負担がかかる状況が続きます。妊娠中から適切なケアを行わないと、産後も肩こりが長期化するリスクがあります。
妊婦の肩こり解消法8選
妊娠中の肩こりは、胎児や母体に深刻な影響を及ぼすものではありませんが、日常生活の質を低下させる原因となります。ここでは、妊婦さんでも安全に行える肩こり解消法をご紹介します。
1. 血行不良を改善するために体を温める
血行不良は肩こりの主な原因のひとつです。体を温めることで血流が改善され、肩こりの緩和につながります。妊娠中は特に体温調節がしづらいことがありますが、以下の方法で体を温めましょう。
- お風呂にゆっくり浸かる(熱すぎないよう注意)
- 蒸しタオルを肩や首に当てる
- 首や肩、手首、足首などを温める
- 温かい飲み物を飲む
- 適切な服装で体を冷やさないようにする
特に、首や手首、足首は皮膚と太い血管の位置が近いため、これらの部位を温めると効率的に体が温まります。冷えは血行不良の大きな原因となるため、特に冬場は注意しましょう。
2. ストレッチで筋肉をほぐして肩こりを改善する
軽いストレッチは、こわばった筋肉をほぐし、血行を促進するのに効果的です。以下に妊婦さんでも安全に行える肩こり改善ストレッチをいくつか紹介します。
肩回りのストレッチ
- 両手の指先をそれぞれ肩に置く
- 肘を後ろから前に大きく回す(5〜10回)
- 反対回しも同様に行う
首のストレッチ
- ゆっくりと首を右に傾け、20秒キープ
- 元の位置に戻し、左側も同様に行う
- 前後にも同じように行う(前に倒すときは顎を引くように)
背中〜腕のストレッチ
- 両手の指を組み、手のひらを外側に向ける
- 両肘を伸ばし、手のひらを前に押し出す
- 5秒キープしたら手を降ろす
- 5〜10回繰り返す
ストレッチを行う際は、急な動きや無理な姿勢は避け、痛みを感じたらすぐに中止しましょう。肩甲骨周りの筋肉をゆっくりと伸ばすことで、肩こりの緊張を緩和できます。
3. マッサージを活用した肩こり対処法
軽いマッサージは血行を促進し、筋肉の緊張を和らげるのに役立ちます。パートナーや家族に依頼するか、自分でできる範囲で行いましょう。
セルフマッサージの方法
- 肩や首の筋肉を軽く揉む
- 肩甲骨周辺を指の腹で円を描くようにマッサージする
- 首の後ろから肩にかけて、手のひらでやさしく圧をかける
マッサージをする際は、お腹を圧迫しないよう注意し、強い刺激は避けましょう。妊娠中期や後期に入ったら、整骨院や接骨院でマタニティマッサージを受けるのも効果的です。施術を受ける際は、必ず妊娠中であることを伝え、マタニティケアの経験がある施術者を選ぶことが重要です。
4. 姿勢改善で肩こりを予防する
妊娠中は姿勢が崩れやすいため、意識的に良い姿勢を保つことが肩こり予防に効果的です。
- 座るときは背筋をまっすぐに伸ばし、腰を深く掛ける
- 長時間同じ姿勢を続けず、こまめに姿勢を変える
- クッションなどを使って腰や背中をサポートする
- パソコン作業では画面の高さを目線に合わせる
- スマートフォンの使用時間を減らし、首への負担を軽減する
特に妊娠後期は骨盤の前傾が強くなり、腰痛と肩こりが同時に起こりやすくなります。正しい姿勢を意識することで、筋肉への負担を減らしましょう。
5. 適度な運動で血行を促進する
妊娠中でも安全に行える軽い運動は、血行促進や筋肉の柔軟性維持に役立ちます。
- ウォーキング(無理のないペースで)
- 妊婦向けのヨガやピラティス
- 水中ウォーキングや水泳
- マタニティエクササイズ
運動を始める前には必ず産婦人科医に相談し、妊娠週数や体調に合わせた適切な運動を選びましょう。特に妊娠初期は、つわりなどの体調不良で運動が難しい場合も多いですが、体調の良い日に軽い運動を取り入れるだけでも効果があります。
6. 休息と睡眠の質を高める
質の良い睡眠と適切な休息は、筋肉の回復や疲労の軽減に不可欠です。
- 寝具や枕を見直し、首や肩への負担を減らす
- 横向きで寝る場合は、膝の間にクッションを挟む
- 仰向けで寝る場合は、首や腰の下にタオルを入れて自然なカーブをサポート
- 日中も適度に休息を取り、肩や首の緊張を緩める時間を作る
特に妊娠後期は、お腹の重みで仰向けに寝ることが難しくなります。左側を下にした横向き寝が良いとされていますが、首や肩に負担がかからないよう枕の高さや硬さに注意しましょう。
7. 肩こり解消グッズを利用する
妊婦さんでも安心して使える肩こり解消グッズを活用するのも一つの方法です。
- 低反発枕や肩こり専用枕
- ホットパック(電子レンジで温めるタイプ)
- 肩当てカイロ
- 肩こり解消クッション
使用前には商品の注意事項を確認し、体に合わないと感じた場合は使用を中止しましょう。特に温熱グッズは血行を促進するので効果的ですが、熱すぎないように注意が必要です。
8. 整骨院や接骨院でのケアを受ける
妊娠中の肩こりがひどい場合は、マタニティケアに対応した整骨院や接骨院での施術も選択肢の一つです。妊婦さん専用のマタニティ整体では、お腹に負担をかけない姿勢や手技で安全に施術を行います。
施術内容としては以下のようなものがあります:
- 筋肉の緊張緩和
- 骨盤の歪み調整
- 肩甲骨周りのマッサージ
- 首や肩のストレッチ
- リンパドレナージュ
施術を受ける際は、必ず担当医に相談し、安定期(妊娠16週以降)に入ってからの利用をおすすめします。特に初めての妊娠の場合は、専門家のアドバイスを得ることで安心して過ごせるでしょう。
妊娠中の肩こり対策における注意点
妊娠中の肩こりケアは、胎児と母体の安全を最優先に考える必要があります。以下の点に注意して対処しましょう。
1. 薬は安易に使わない
妊娠中は市販の鎮痛薬や湿布薬などの使用が制限されることが多いです。痛み止めや筋弛緩剤、外用薬を使用する場合は必ず産婦人科医に相談しましょう。特に妊娠初期は胎盤が完成していないため、薬の使用には特に注意が必要です。
2. マッサージ店の利用は医師に相談の上で
マッサージや整体を受ける場合は、事前に主治医に相談し、安定期(妊娠16週以降)に入ってからの利用が望ましいです。また、必ず妊婦専門またはマタニティケアの経験がある施術者を選びましょう。施術院では妊娠中であることを必ず伝え、適切な施術を受けることが重要です。
3. ストレッチや運動の際の注意点
- 妊娠中期以降は、仰向けでの長時間のストレッチは避ける(仰臥位低血圧症候群のリスクがあるため)
- 立ったままのストレッチは転倒リスクがあるため注意する
- お腹の張りや出血、めまい、動悸などの症状が出たらすぐに中止する
- 可能な限り午前10時から午後2時の間に行う(子宮収縮が起こりにくい時間帯)
4. 危険信号に注意する
以下のような症状が現れた場合は、肩こりだけでなく、妊娠に関わる他の問題が生じている可能性があります。すぐに医師に相談しましょう。
- 激しい頭痛
- 視界のかすみや点状の光が見える
- 吐き気・嘔吐(つわりと明らかに異なる場合)
- 顔や手足のむくみが急に増加
- めまいや立ちくらみが頻繁に起こる
妊婦さんの肩こりを放置するとどうなる?
妊娠中の肩こりは、放置していると首回りの神経に影響を及ぼして、頭痛や吐き気、腕や手のしびれといった症状を引き起こす恐れがあります。出産してホルモンバランスが元に戻り、ストレスや血行不良から解放されたとしても、蓄積された肩こりはそのままです。
産後も、赤ちゃんを抱っこしたり授乳したりするなどして、引き続き首や肩、腕に負担がかかります。妊娠中の肩こりが、さらに悪化して慢性化する可能性も十分に考えられるでしょう。
肩こりによって筋肉が正しく機能しなくなると、ほかの筋肉が代わりに支えようとするため、無理が生じて痛みが全身に広がります。産後は赤ちゃんにかかりっきりになるため、痛みがあってもすぐに対処できないことも多いです。妊娠中から早めに対策を行うことをおすすめします。
日常生活での妊婦の肩こり予防ポイント
日常生活の中で意識するだけで肩こりを予防・軽減できるポイントをご紹介します。
1. バランスの良い食事で栄養をとる
- カルシウム、マグネシウム、カリウムなどのミネラルは筋肉の緊張を和らげる効果があります
- ビタミンEやビタミンB群は血行を促進します
- 十分な水分補給で血液の循環を助けます
- つわりがひどい時期は無理せず、食べられるものから栄養を摂取しましょう
2. リラックスする時間を作る
- 深呼吸やリラクゼーション法を取り入れる
- 趣味や好きなことに時間を使う
- リラックスできる環境を整える
- ストレスを感じたら意識的に肩の力を抜く習慣をつける
3. 服装や持ち物に気をつける
- 重いバッグは避け、必要なものだけを持ち歩く
- 締め付けない服を選び、血行不良を防ぐ
- 体を冷やさない、かつ蒸れない適切な服装を心がける
- 妊娠中期以降はマタニティ用の下着を利用し、体への負担を減らす
まとめ:妊娠中の肩こりを解消して快適なマタニティライフを
妊娠中の肩こりは、ホルモンバランスの変化、ストレス、姿勢の変化、体重増加、運動不足など、様々な要因によって引き起こされます。特に妊娠初期はホルモンバランスの乱れによる血行不良、妊娠後期は姿勢の変化と体重増加による筋肉への負担が主な原因となります。
肩こりが日常生活に支障をきたすほど酷くなる前に、適切なケアを行うことが大切です。体を温める、ストレッチやマッサージを行う、姿勢を意識する、適度な運動を取り入れるなど、妊娠中でも安全に実践できる方法を試してみましょう。
ただし、妊娠中は体に過度な負担をかけないよう注意が必要です。無理はせず、少しずつ取り入れていくことが重要です。肩こりがひどい場合は、整骨院や接骨院などでマタニティケアの経験がある専門家の施術を受けることも検討しましょう。
肩こりが改善されない場合や、他の症状を伴う場合は、必ず産婦人科医に相談してください。医師の指導のもと、マタニティ整体や鍼灸などの専門的なケアを受けることも選択肢の一つです。
妊娠期間中の体の変化に上手に対応し、快適なマタニティライフを送りましょう。肩こりのない快適な妊娠生活を送るための第一歩は、自分の体に耳を傾け、適切なケアを行うことから始まります。