腰が痛くてまっすぐ伸ばせないことがありますが、どのような場合にそうなるのでしょうか。また、腰が痛くて伸ばせない原因は何であり、どうすれば改善するのでしょうか。
腰が痛くてまっすぐ伸ばせない場合の原因と改善法について解説します。
腰が痛くてまっすぐ伸ばせないのはなぜか
腰が痛くてまっすぐ伸ばせないときは、筋肉や関節に原因がある場合、内蔵に原因がある場合、ストレスが原因の場合などがあります。内臓に原因がある場合には、消化器内科、泌尿器科、循環器科などでの治療となり、ストレスに原因がある場合には、精神科や心療内科での治療となります。
ここでは、整形外科や整骨院などでの治療となる筋肉や関節に原因がある場合に限って解説します。筋肉や関節に原因があって腰がまっすぐ伸ばせないのは、腸腰筋が伸びなくなっている場合が多いです。
腸腰筋とは、腰椎から腹腔内を通り、大腿骨の上方へ走る筋肉です。 わかりやすく言えば、背中から太ももの付け根にかけて、腹の中を後ろから前に斜めに通っている筋肉です。
この腸腰筋が硬くなって伸びにくくなると、腰を伸ばす際に、その両端が腰椎と大腿骨につながっている腸腰筋が無理やり伸ばされて痛みが出ます。筋肉は硬くなると、伸ばすだけで痛くなります。
長時間同じ姿勢をして血行が悪くなり、骨盤周辺の筋肉が一時的に硬くなってしまう、老化により腸腰筋などのインナーマッスルが縮む、といったような場合に腰を伸ばそうとすると痛みが生じます。
腰が伸ばせない腰痛の原因と改善法
腰を伸ばそうとすると痛みが生じる場合、多くは、腸腰筋に原因があることを述べました。ここでは、より具体的に、腰痛疾患別に、症状、原因、急性期の対処法、慢性期の対処法について解説します。
ぎっくり腰
ぎっくり腰は急性腰痛とも言われ、何かの拍子に腰が急激に痛くなる症状です。ぎっくり腰になると腰を動かすと痛みが生じるので、まっすぐ伸ばすこともできません。
【症状】
立ち上がったり荷物を持ち上げたりした時に、急に腰に激痛が走ってズキズキ痛んだり、腰が抜けそうな感覚を覚えたりするなど、痛みの感じ方は人によってさまざまです。ぎっくり腰は、前触れなく突然の激痛がくる場合が多いですが、その数日前から軽い腰の痛みや違和感を感じる場合もあります。
【原因】
ぎっくり腰では、エックス線検査など画像検査を行っても病変が見られることはほとんどないので、原因を特定することはできません。一般には、日々の生活での負担が積み重なっての筋肉、腰椎、椎間板のトラブルや、運動不足による筋肉の衰え、長時間同じ姿勢をしていたことによる筋肉の硬直、加齢に伴う腰椎の変形などが原因とされています。
【急性期対処法】
腰を軽く曲げて横向きに寝るなど、起き上がらず腰に負担がかからない楽な姿勢をとり、無理せず安静にしていることが大切です。痛みを和らげるには、患部に氷枕をあてて冷やしたり、湿布や痛み止めを使うのも効果的です。
痛みが弱まってきたら痛みが出ない範囲で動いて、できるだけ普段通りの生活を心掛けると回復していくことが多いです。
【慢性期対処法】
ぎっくり腰による痛みは、多くの場合、数日から10日程度でなくなります。 10日を過ぎても痛みが治まらない場合には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎分離症など他の疾患を疑う必要があります。
また、内臓の病気が原因となっていることもあります。ぎっくり腰以外の他の病気であるか調べるためにまずは、整形外科を受診しましょう。
【防止法】
ぎっくり腰は、腸腰筋などのインナーマッスルの硬直や衰えが原因になっていることが多いです。ぎっくり腰を防ぐには、筋肉が硬直しないように同じ姿勢を長く続けないようにします。
デスクワークが多い仕事の場合だと時々休憩して立って歩いたり、座っている間も前かがみにならず正しい姿勢を心がけます。朝顔を洗うときは、腰だけ前傾するのではなく足の膝も少し曲げると、ぎっくり腰を避けられます。
腸腰筋など体幹部にあるインナーマッスルを鍛えると、筋肉の衰えを防げます。体幹部のインナーマッスルは意識的に行わないと鍛えるのが難しいです。
慢性腰痛
慢性腰痛とは、痛みを感じてから数か月から半年以上といった長い時間を経過している腰痛をいいます。我慢できない程ではないにしても悩ましい鈍い痛みが続きます。
【症状】
ぎっくり腰ほどの激しい痛みはありませんが、鈍痛やだるさが続き、身体の動きによっては痛みが増す場合があります。腰部の痛みに加えて、臀部や大腿部、首の痛み、肩こり、頭痛が出ることもあります。
年齢にかかわらず小学生から高齢者まで幅広く見られます。
【原因】
悪い姿勢、疲労の蓄積、肥満などが原因で慢性腰痛は発症します。これらの原因により腰に痛みを感じはじめて、体を動かすのを控えたり不自然な姿勢を続けていると、筋肉が緊張し硬直して炎症を起こし腰痛が長引くことになります。
腰痛が長引き悪化するようであれば、脊柱管狭さく症や椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、骨粗しょう症を疑う必要があります。
また、腰痛の原因が解消された後であっても、末しょう神経から痛みの信号を受ける中枢神経が興奮したままの状態である場合があります。この場合には、痛みの信号が脳へ送り続けられるので痛みは続きますが、画像検査を行ってもなんら異常がないということがあります。
【急性期対処法】
腰に鈍痛を感じはじめたら、正しい姿勢をとるよう気を付けます。正しい姿勢とは、耳、肩、股関節、ひざ、くるぶしが、鉛直線上に並んでいて、背骨がゆるやかにカーブしている状態です。
また、無理のない範囲で運動をしたり、腰に携帯カイロをあてて温めると、血行が良くなり筋肉の硬直はほぐれます。肥満気味であればダイエットをして体重を落とせば、腰への負担も減ります。
【慢性期対処法】
腰痛が慢性化した状態では、急な痛みを抑える時に使われる消炎鎮痛薬はあまり効果が期待できません。そのため、慢性腰痛では心理的な要因による痛みに対して効果がある抗てんかん薬や抗うつ薬が用いられることがあります。
また、中枢神経が興奮していて誤った痛みの信号を脳に出しているような場合には、神経やその周辺に局所麻酔薬を注射する神経ブロック療法が行われます。その他、理学療法士の指導を受けての運動療法や脊柱管狭さく症や椎間板ヘルニアであれば手術療法が検討されます。
脊柱管狭さく症や椎間板ヘルニアの診断には画像検査が行われます。画像検査では予約が必要な場合があるので、医療機関にアクセスする前に電話をかけてみることをおすすめします。
【防止法】
慢性腰痛は悪い姿勢や肥満が原因となっている場合が多いことから、正しい姿勢をとること、太りすぎないことが重要となってきます。立っているときは、耳、肩、股関節、ひざ、くるぶしが鉛直線上にあるように気を付け、同じ姿勢を長時間とらないようにします。
肥満を避けるには、毎日体重計に乗って体重の増加に敏感になると、早くの対応ができます。
骨格の歪み
背骨や骨盤が歪んでいると体のバランスが崩れ、腰の特定の部位に負担がかかります。その状態が続くと、負担を受けた部分の筋肉や腰椎が疲労して痛みが生じます。
【症状】
骨格の歪みによる腰痛では、腰椎とその周辺部が痛いだけでなく、鼠径部やお尻、太ももの後面や側面も痛みが及ぶことがあり、鈍い痛みが特徴です。痛みは、動作に伴って生じることも多く、腰の曲げ伸ばしたり、反らしたりすると痛みが出ることが多いです。
【原因】
転んだり重いものを持ち上げたりした際に、腰をひねってしまうと、背骨や骨盤が歪むことがあります。また、妊娠中や産後の関節が緩み不安定になっているときに骨格が歪むこともあります。
背骨や骨盤が歪むと体のバランスが崩れで、腰の特定部に負担がかかって痛みが生じます。
【対処法】
転んだり重いものを持ち上げたりした際に腰をひねって、急に骨格が歪んでしまった場合には、関節を動かし可動域を広げていく施術で改善が見込めます。一方、妊娠して関節が緩んでくることによる骨格の歪みは、骨盤等を動かすのではなく固定することにより痛みが和らぎます。
【防止法】
正しい骨格の位置を保つためには、筋肉を付ければ、骨格を正しい位置で支えることができます。また、ストレッチなどにより筋肉を柔軟にすれば、骨格の可動域も広がり正しい位置を保ち続けることができます。
腰椎圧迫骨折
腰椎圧迫骨折は、腰椎の椎体に縦方向の力が加わり圧迫されて、椎体が潰れた状態になる骨折です。
【症状】
椎体が圧迫されて潰れた時には強い痛みがあります。そして、日常生活で寝返りをうったり、起き上がったりすると痛みが増してきます。
骨折した部位を軽く叩くと痛みがあり、椎体の潰れ方によっては神経を圧迫し、下肢のしびれや筋力の低下が起こります。
【原因】
腰椎圧迫骨折は、高所からの転落や交通事故など強力な外力により発症します。骨粗鬆症で骨がもろくなっている人では、尻もちや重い物を持ち上げた時など、比較的軽微な外力であっても発症します。
【急性期対処法】
麻痺などの神経症状がない場合には、保存療法を行います。コルセットを着用して安静にし、痛みが出れば薬でコントロールします。
【慢性期対処法】
保存療法を行っても痛みが取れない場合には手術が行われることもあります。腰椎圧迫骨折の手術は、圧迫されてつぶれた骨の中にセメントを注入して補強する方法が開発されています。
【防止法】
腰椎圧迫骨折は、骨粗鬆症で骨がもろくなっている人が発症しやすいです。骨粗鬆症を予防するには、ウォーキングやジョギングといったような重力のかかる運動、スポーツがおすすめです。
まとめ
腰が痛くてまっすぐ伸ばせないのは、腸腰筋に原因がある場合が多いです。腸腰筋はその両端が腰椎と骨盤につながっていますが、腸腰筋が硬くなっていると、腰を伸ばすと引っ張られて痛みが生じます。
腰が痛くて伸ばせない主な疾患としては、ぎっくり腰、慢性腰痛、骨格の歪み、腰椎圧迫骨折があります。各疾患の具体的な症状や原因、対処法、防止法について解説しました。
いずれの疾患も予防ができ、発症しても適切な治療を行えば改善します。