この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
脊柱管狭窄症の痛みやしびれに対して処方されるリリカ(プレガバリン)。しかし、「飲んでも効果がない」「症状が改善しない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。実は、リリカが効かない理由にはいくつかの可能性があり、個人の体質や痛みの原因によって効果に差が出ることがわかっています。
本記事では、脊柱管狭窄症におけるリリカの限界と、効かない場合の代替療法について詳しく解説します。薬物療法だけでなく、運動療法や他の治療法を組み合わせることで、つらい症状の緩和を目指しましょう。
筋肉がなぜ固くなるかというと、働いていない筋肉があるとその筋肉を補おうとするために固くなる筋肉というのが出てきます。ですのでストレッチだけやるというのは僕はあまりおすすめしないです。
目次
脊柱管狭窄症とリリカの基本:効果と作用機序
リリカ(一般名:プレガバリン)は、神経伝達を抑制することで神経障害性疼痛を緩和する薬です。脊柱管狭窄症では、神経が圧迫されて起こる神経障害性の痛みやしびれに対して処方されることが多くあります。
リリカの主な作用は、神経細胞のカルシウムチャネルに作用し、神経の過剰な興奮を抑えることで痛みを和らげることです。坐骨神経痛や脊柱管狭窄症による神経性の痛みには効果が期待できますが、すべての痛みに万能というわけではありません。
リリカの有効率とは?
医学的な研究によると、リリカの有効率は約60~70%程度とされています。つまり、3人に1人は十分な効果を得られない可能性があるのです。また、効果が現れるまで数週間かかることもあり、すぐに効果を実感できない方も少なくありません。
なぜ?リリカが脊柱管狭窄症に効かない5つの主な原因
脊柱管狭窄症でリリカが効かない理由には、いくつかのパターンがあります。主な原因を理解することで、より適切な治療法を選ぶ参考になります。
1. 痛みの原因が神経障害以外の場合
脊柱管狭窄症では、神経の圧迫による痛みだけでなく、筋肉や関節由来の痛みを伴うことがあります。リリカは神経障害性疼痛に特化した薬であり、筋肉痛や炎症性の痛みには効果が限定的です。
特に腰が悪い方というのはこの横腰の筋肉が働きにくくなっている状況になっていますので、背中の腰の方はすごくガチガチなのにこの横腰の方はあまり働いてないということがよく起きてます。
2. 神経圧迫の程度が重度の場合
神経の圧迫が強すぎる場合、薬物療法だけでは対応しきれないことがあります。特に長期間にわたって症状が進行している場合や、脊柱管の狭窄が高度に進んでいる場合は、リリカだけでは痛みを十分にコントロールできないケースがあります。
3. 個人の体質による薬の効きにくさ
同じ薬でも、個人の体質や代謝の違いによって効き目に差が出ることがあります。特に高齢者や腎機能が低下している方は、リリカの作用が弱まったり、逆に副作用が強く出たりする可能性があります。
4. 複合的な痛みメカニズムの存在
脊柱管狭窄症の痛みは、神経障害性要素だけでなく、炎症性・機械的・心理的要因など複数の要素が絡み合っていることが少なくありません。リリカは主に神経障害性疼痛にのみ作用するため、他の痛みメカニズムには効果が限られます。
5. 投与量や服用期間の不適切さ
リリカは効果が現れるまでに時間がかかることがあり、また適切な投与量も個人差があります。投与量が不十分であったり、効果発現前に服用を中止してしまったりすると、十分な効果を得られないことがあります。
効かない原因 | 特徴 | 対処法 |
---|---|---|
神経障害以外の痛み | 筋肉や関節の痛み、炎症性の痛みが主体 | 消炎鎮痛剤、運動療法、物理療法 |
神経圧迫が重度 | しびれや痛みが強く、歩行困難 | 神経ブロック、手術検討 |
個人の体質 | 高齢者や腎機能低下者に多い | 用量調整、他の薬剤への変更 |
複合的な痛みメカニズム | 神経・炎症・機械的要因の混在 | 多角的アプローチ、複数薬剤の併用 |
投与量・期間の問題 | 不十分な量、短すぎる服用期間 | 医師と相談し用量・期間の最適化 |
リリカが効かない時の7つの代替療法:医師に相談すべき選択肢
リリカが効かない場合でも、他の治療法が効果を発揮することがあります。ただし、薬の変更や併用は必ず医師の指導のもとで行いましょう。
1. 消炎鎮痛剤(NSAIDs)
ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、炎症を抑える作用があり、特に筋肉や関節由来の痛みに効果的とされています。脊柱管狭窄症の初期段階や、軽度から中等度の痛みに対して使用されることがあります。
2. トラマドールなどの麻薬性鎮痛薬
トラムセットやトラマールといった弱オピオイド系の鎮痛薬は、リリカでコントロールできない強い痛みに対して処方されることがあります。ただし、依存性や副作用のリスクがあるため、医師の厳密な管理のもとで使用します。
3. 漢方薬による治療
体質に合わせた漢方療法も、脊柱管狭窄症の症状緩和に役立つ可能性があります。特に長期間服用する場合は、副作用が比較的少ない漢方薬が選択肢となることも。代表的なものには牛車腎気丸や疎経活血湯などがあります。
4. 神経ブロック注射
神経ブロック療法は、痛みを伝える神経の働きを一時的に遮断する可能性がある治療法とされています。局所麻酔薬やステロイド剤を神経の周囲に注射することで、短期間で痛みを軽減する効果が期待できます。
5. 理学療法・運動療法
腰部や下肢の筋力強化、ストレッチなどの運動療法は、脊柱管狭窄症の症状改善に効果的です。特に体幹の筋肉を強化することで、脊柱にかかる負担を軽減し、痛みの緩和につながることが期待されます。
腰のつらさだるさを改善するためにも、ストレッチのほかに筋肉を働かせるということを頭に入れてやっていただければなと思います。特に腰が悪い方というのは横腰の筋肉が働きにくくなっている状況になっています。
6. 物理療法
温熱療法、電気刺激療法、超音波療法などの物理療法も、脊柱管狭窄症の痛みやしびれの緩和に効果的な場合があります。特に筋肉の緊張を和らげ、血流を改善する効果が期待できます。
7. 手術療法
保存的治療で十分な効果が得られず、日常生活に重大な支障をきたしている場合には、手術療法が検討されることもあります。手術法には、椎弓切除術、椎間板切除術、固定術などがありますが、手術の適応は専門医が慎重に判断します。
薬だけじゃない!脊柱管狭窄症の痛みを和らげるセルフケア
薬物療法だけでなく、他の治療アプローチを組み合わせることで症状改善の可能性が高まります。特に運動療法は、脊柱管狭窄症の症状改善に重要な役割を果たします。
脊柱管狭窄症では運動療法と薬物療法の併用が症状改善の鍵となります。日常生活での工夫も大切です。姿勢の改善や適度な運動、腰への負担を減らす生活習慣の見直しなどが症状改善につながります。
専門家推奨のセルフケアエクササイズ
脊柱管狭窄症に効果的なエクササイズには以下のようなものがあります:
- インナーマッスルである腸腰筋を鍛えるエクササイズ
- 横腰の筋肉を働かせるストレッチ
- 肩甲骨周りの筋肉を強化する運動
- お尻の筋肉を伸ばすストレッチ
- バランスボールを使った体幹トレーニング
これらの運動を継続的に行うことで、腰への負担が軽減され、脊柱管狭窄症の症状改善につながる可能性があります。
日常生活での注意点
- 長時間の同じ姿勢を避け、定期的に体を動かす
- 重いものを持つときは膝を曲げて腰に負担をかけない
- 適切な姿勢を心がける(特に座っているとき)
- 体重管理で腰への負担を減らす
- 質の良い睡眠と適度な休息を取る
脊柱管狭窄症におけるリリカの副作用と注意点
リリカによる治療を検討する際は、期待される効果だけでなく、起こり得る副作用についても理解しておくことが大切です。
リリカの主な副作用
リリカで報告されている可能性のある副作用には以下のようなものがあります:
- 眠気やめまい(最も一般的)
- ふらつきや転倒リスクの増加
- 浮腫(むくみ)
- 体重増加
- 口の渇き
- 視力の一時的な変化
- 思考力や集中力の低下
- 吐き気や消化器症状
特に高齢者では副作用が出やすい傾向があるため、慎重な投与が必要とされています。副作用が気になる場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談しましょう。
リリカを安全に使用するためのポイント
リリカを処方された場合、以下の点に注意して服用することで、安全性を高めることができます:
- 医師の指示通りの用量を守る
- 効果が実感できるまで最低でも2週間程度は継続する
- 自動車の運転など、注意力を要する作業は避ける
- アルコールとの併用は避ける
- 急に服用を中止せず、医師の指示に従って徐々に減量する
- 他の薬との相互作用に注意する
脊柱管狭窄症とリリカに関するよくある質問
Q. リリカはどのくらいの期間で効果が出ますか?
A. リリカの効果は個人差がありますが、多くの場合2〜4週間程度の継続服用で効果が現れ始めます。すぐに効果が実感できなくても、医師の指示に従って継続することが重要です。効果が不十分な場合は用量調整が必要なこともあります。
Q. リリカを服用中に運動療法を行っても大丈夫ですか?
A. リリカ服用中でも運動療法は併用できます。むしろ、薬物療法と運動療法を組み合わせることで、より効果的に症状を改善できる可能性があります。ただし、めまいやふらつきなどの副作用が出ている場合は、転倒に注意し、無理のない範囲で行いましょう。
Q. 脊柱管狭窄症で筋肉の痛みが主な症状の場合、どんな治療が効果的ですか?
A. 筋肉由来の痛みが主な症状の場合、リリカよりも消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩剤の方が効果的なことがあります。また、理学療法で筋肉のバランスを整えることや、正しい姿勢・動作の指導を受けることも重要です。特に脊柱管狭窄症では、腹部や背部の筋力強化が症状改善に役立つことが多いです。
Q. リリカの副作用が強く出た場合、どうすればよいですか?
A. 副作用が強く出た場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず処方医に相談してください。医師は用量の調整や代替薬への切り替えなど、適切な対応を検討します。特に眠気やめまいが強い場合は、車の運転などの危険を伴う作業は避けるべきです。
Q. 脊柱管狭窄症の痛みを和らげるための日常生活での工夫はありますか?
A. 脊柱管狭窄症の痛みを和らげるための日常生活での工夫としては、正しい姿勢の維持、長時間の同じ姿勢を避ける、適度な休息を取る、腰に負担をかけない動作(重いものを持つ際に膝を曲げるなど)を心がける、適度な運動(水中ウォーキングなど低負荷の運動)を継続するなどがあります。また、体重管理も腰への負担軽減に重要です。
Q. インナーマッスルとは何ですか?脊柱管狭窄症との関係を教えてください。
A. インナーマッスルとは、体の深層部にある筋肉で、姿勢の維持や関節の安定に重要な役割を果たします。脊柱管狭窄症では、特に腹部と背部のインナーマッスル(腸腰筋や多裂筋など)が弱まることで脊柱の安定性が低下し、症状が悪化することがあります。これらの筋肉を強化することで、脊柱にかかる負担を減らし、症状の改善につながる可能性があります。
Q. 脊柱管狭窄症でリリカが効かない場合、手術は必要ですか?
A. リリカが効かないからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。他の保存療法(神経ブロック、他の薬物療法、運動療法など)を試してみることが先決です。手術が検討されるのは、保存療法で十分な効果が得られず、日常生活に著しい支障がある場合や、排尿・排便障害などの深刻な神経症状がある場合です。手術の必要性は、症状の程度や画像診断の結果、患者さんの全体的な健康状態などを総合的に判断して決定されます。
まとめ:リリカが効かない脊柱管狭窄症と向き合い、最適な治療法を見つけるために
脊柱管狭窄症の治療において、リリカが効かない場合があることを理解し、その5つの主な原因(神経障害以外の痛み、神経圧迫の重度化、個人の体質、複合的な痛みメカニズム、投与量や期間の問題)について見てきました。
リリカが効かない場合でも、7つの代替療法(消炎鎮痛剤、トラマドールなどの麻薬性鎮痛薬、漢方薬、神経ブロック注射、理学療法・運動療法、物理療法、手術療法)など、さまざまな対処法があります。
重要なのは、一つの治療法に固執せず、医師と相談しながら複数のアプローチを組み合わせることです。特に、薬物療法だけでなく、運動療法を取り入れることで、筋肉のバランスを整え、腰への負担を軽減することが症状改善の鍵となります。さらに詳しい治療法については日本整形外科学会の情報も参考にしてください。
症状や体質は個人によって異なるため、あなたに最適な治療法を見つけるためには、医師との継続的な相談が必要です。焦らずに、長期的な視点で症状改善に取り組んでいきましょう。