女性の体は妊娠・出産のために、男性よりも複雑になっています。そのため、原因のわからない腰痛で悩まされることも少なくありません。特に生理中はその傾向が顕著になりますが、右側だけ腰痛がある場合は、どんな病気の可能性があるのでしょうか。本記事では、右側だけ腰痛がある場合の原因と対処法を解説します。
右側だけ腰痛は子宮内膜症の可能性
生理と腰痛の関連は、まだ明確にわかっていない部分もあります。しかし、生理中に右の腰だけ痛い場合は、生理が原因かもしれませんが、別の病気のせいで、右側だけあるいは左側だけ腰が痛むこともあります。女性の場合は、ホルモンバランスの乱れなど、女性特有の症状が原因で、腰痛が起こることもあるので注意しなければなりません。
特に右側だけ強い痛みがある場合は、子宮内膜症の可能性があるので、医師に相談することも考えましょう。腰痛の中には、エクササイズやストレッチ等で治るような軽い症状もありますが、子宮内膜症のような内臓の病気の可能性がある場合は、早めに産婦人科を受診する必要があります。
子宮内膜症は、腰の片側だけに痛みが起こるのが特徴です。そのため、重い荷物を運んだあとに腰痛になると、「右手で重い荷物を持ったから右腰が痛くなった」と、勝手に理由をつけて、単なる腰椎の痛みで片付けてしまうことがあります。
しかし、いつまでたっても腰痛が治らず日常生活にも支障が出るので、クリニックを受診したところ、やっと子宮内膜症であることがわかったというケースもあります。他に情報もないため、単なる腰痛と子宮内膜症による腰痛を、自分で判別するのは難しいのですが、いつまでも腰痛が続くようなら、子宮内膜症を疑ったほうがいいでしょう。
子宮内膜症による腰痛の特徴
子宮内膜症は、子宮の内側を覆っている膜が、子宮の内側以外の場所に広がるために起こります。子宮以外の卵巣や卵管、腸膜、腸などに広がるケースが報告されており、安静にしていても痛みを感じるのが特徴です。通常の腰痛は、体を動かした場合に、腰に痛みを感じることが多いので、この点が子宮内膜症とは異なります。
通常の腰痛は、エクササイズなどで緩和されたり、姿勢に気をつければ痛みが軽減されたりしますが、子宮内膜症の場合は横になっていても痛みが治まりません。もし子宮内膜症であれば、腰痛のほかに下腹部の痛みや違和感が伴うケースが多いので、症状を見分けることが大切です。
紛らわしいケースもある
もともと、腰痛と子宮内膜症による腰の痛みは見分けにくいのに、さらに見分けにくくなるケースがあります。それは、普通の腰痛と子宮内膜症による腰の痛みが、ほとんど同時期に起きる場合です。パソコンで仕事をしている人は、長時間座りっぱななしなので、どうしても腰に負担がかかってしまい、そのことが原因で健康を害することもあります。
そのため、腰痛を起こすケースが多いのですが、これらの単純な腰痛と子宮内膜症による腰の痛みが重なると、見分けがつかなくなります。子宮内膜症の場合は、腰以外の部分にも痛みが出ることがありますが、そのような場合でも、「運動不足だから腰痛の範囲が広がったのかな」などと考えてしまいがちです。
また、安静にしていても痛みが出るのは、腰痛が悪化したためだろうと、あくまでも単なる腰痛と思い込んでしまいます。このように思い込みが強くなると、生理の前に出血が混じったり、下腹部に痛みが生じても、「仕事のストレスのせいでは」などと、さらに思い込みが重なってしまいます。
こういった状態になると、子宮内膜症だった場合に発見が遅れてしまうので、つらい腰痛が続くようなら思い込みを捨てて、手遅れにならない内に病院で検査を受けることが大切です。
子宮内膜症の可能性のある症状
腰痛だけでなく、生理痛や下腹部にも痛みがあれば、子宮内膜症の可能性が高まります。子宮内膜症の痛みは腰痛のように単純な痛みではなく、複数箇所に痛みが出るので、自分の症状をよく観察してみましょう。
体を動かすと痛いだけでなく、横になっても痛みが治まらず、徐々に悪化するのが子宮内膜症の特徴です。過去の経験から、少しでも生理痛と異なる痛みがあれば注意しましょう。
さらに、以下のような症状があれば、子宮内膜症の疑いが濃くなります。
・生理痛がひどくなっていく
・生理中以外にも下腹部に痛みがある
・不正出血がある
・生理の出血量が多い
・排便時に肛門が痛む
・性交時に痛みがある
・腹部が膨らんだ感じがする
・骨盤付近にも痛みがある
生理中は、何らかの異常があることが多いものです。だから、「いつものこと」とか「大したことない」と思って我慢していると、受診するのが遅れてしまいます。
受診が遅れると、症状が悪化してから治療することになりますが、それでは完治までに時間がかかります。そこで、気になる症状があれば、早めに婦人科を受診するのが賢い方法です。
子宮内膜症の具体的な症状
右側だけ腰痛がある場合は、子宮内膜症の可能性が疑われます。子宮内膜症にかかっても、それほど重篤な状態にはなりませんが、下腹部の痛みや違和感が続くので、早めに治療することが望まれます。人によっては、生理痛がひどくなって仕事を休まざるを得なくなったり、体調の悪い日が続くこともあるので、甘く見てはいけません。
また、子宮内膜症が不妊の原因になることもあるので、家庭生活や夫婦生活に影響が出る場合もあります。いずれにせよ、子宮内膜症にかかると、「生活の質」が低下する傾向にあるので、子宮内膜症と分かったら早めに改善したいものです。
子宮内膜症は完治が難しいので、早期発見して症状が軽いうちに、治療することをおすすめします。子宮内膜症は、子宮の内側を覆っている膜が子宮以外に広がる病気です。本来の子宮内膜は、子宮の中で増殖と出血を繰り返しますが、出血した血液は子宮から膣を通って流れていきます。
これがいわゆる月経なのですが、子宮以外に広がった部分から出血すると、月経のように外に出すことができません。そのため、出血した血液がその部位に溜まるために、痛みや違和感などさまざまな障害を引き起こすことになります。
妊娠への影響
子宮内膜症にかかると、妊娠しにくくなる傾向があります。実際に、子宮内膜症の患者の約2割~3割の女性が、不妊を訴えています。また、逆に不妊で悩む女性の4割~5割に、子宮内膜症が見られるというのも事実です。もちろん、不妊の原因は子宮内膜症だけではありませんが、子宮内膜症が妊娠に悪影響を及ぼしているのは間違いありません。
子宮内膜症になったために妊娠しにくくなるのは、子どもが欲しい夫婦にとっては深刻な問題です。このことが原因で、夫婦間にトラブルが生じるおそれもあるので、注意しなければなりません。子宮内膜症にかかるのは、主に20代~40代の女性です。ちょうど女性に生理がある年代と重なっているために、不妊にもつながりやすいのです。
生理痛の可能性
生理前に腰が痛む場合は、生理が原因で起こる腰痛の可能性があります。では、生理前に腰が痛むのは、体がどんなサインを出しているのでしょうか。女性の体は男性に比べてかなりデリケートで、特に生理前になるとその傾向が顕著になります。そのため、普段とは違うさまざまな症状が表れるのですが、生理前の腰痛もその1つです。
では、生理前に起こる腰痛の原因は何なのでしょうか。生理前に腰痛を訴える女性は少なくないのですが、その原因の1つとして女性ホルモンの影響が考えられます。生理前になると、女性の体の中でプロスタグランジンという、生理活性物質の分泌量が増えます。プロスタグランジンは経血を排出するために、子宮の収縮を促す作用をする物質です。
このプロスタグランジンの分泌量が多すぎると、必要以上に血管を収縮させ、子宮やその周辺の血流を悪化させるので痛みが生じます。これが、生理前に起こる腰痛の原因です。この症状を緩和するには、食事や睡眠、運動などの生活習慣を見直すことで、プロスタグランジンの分泌量がある程度抑えられるようになります。
なぜ腰痛が起こるのか
男女を問わず、腰痛で悩む人は多いのですが、ではなぜ腰痛が起こるのでしょうか。腰痛の原因は、人類が二足歩行を始めたことによると言われています。四足歩行だった人類が、二本の足で歩くようになったために、頭と内臓の重量をすべて腰で支えなくてはならなくなりました。
そのため、腰には常時大きな負担がかかるようになり、四足歩行の頃には起きなかった腰痛が、起きるようになったということです。しかし、腰痛の根本要因は二足歩行にあるとはいえ、個人個人の腰痛の症状は、実にさまざまな原因で起きています。
生理前に左の腰が痛む病気
女性の腰痛は、子宮や卵巣の異常が原因で起こる場合があります。その中でも、左側に腰痛があれば、卵巣捻転(らんそうねんてん)という病気の可能性があります。卵巣捻転は下腹部の激痛や腰痛、吐き気や嘔吐を伴う病気です。
卵巣捻転は左側に腰痛が起こるので、左の腰が痛む場合は卵巣捻転を疑いましょう。ただし、膵臓や左側の腎臓に異常がある場合も、左の腰に痛みが生じるので注意が必要です。
生理前に右の腰が痛む病気
生理前に右の腰に痛みがある場合は、子宮内膜症のほかに子宮筋腫の可能性もあります。子宮筋腫はそれほど珍しい病気ではなく、20〜50代女性の4人に1人は子宮筋腫があるといわれるほどです。
子宮筋腫は女性ホルモンが原因となって、子宮の筋層の中に塊ができる病気です。この筋腫で周囲が圧迫されるために、腰痛や頻尿などの症状が表れます。
生理で生じる腰痛の対処法
生理の痛みには個人差があります。もし生理時の腰痛がひどい場合は、無理をしないで仕事を休んだり、鎮痛薬を飲んで静かに過ごしましょう。生理痛は温めると痛みが軽減するので、部屋を暖かくして過ごすことをおすすめします。
もし体を休めても鎮痛剤を飲んでも、生理痛からくる腰の痛みが改善しない場合は、子宮内膜症などの病気の可能性があるので、婦人科を受診しましょう。子宮内膜症は早期発見早期治療が大切です。
右側だけ腰が痛くなる理由
腰痛を訴える人はかなりの数にのぼりますが、ひと口に腰痛と言っても、痛みを感じる場所も痛みの程度もさまざまです。また、腰痛は腰全体に生じる場合もありますが、右側だけあるいは左側だけに発生することもあります。この中で、右の腰に痛みが偏る場合は、重篤な病気が潜んでいる可能性があるので注意が必要です。
右の腰だけ痛む病気とは
右の腰だけ痛む場合は、「どんな時に痛むのか」「痛み以外の症状があるか」の2つがポイントになります。右の腰だけ痛む場合は、普段の生活で右の腰に負担がかかっている可能性があります。たとえば、右肩ばかりにカバンをかけるとか、仕事で右の腰に負担がかかる姿勢が続くといったことがあると、ある日突然右の腰が痛くなることがあります。
また、内臓に原因があって右の腰が痛むこともありますが、この場合は内臓に疾患があるので事態は深刻です。内臓に原因がある場合は、じっとしているときに痛みが出やすいので、痛みの症状を観察する必要があります。
腎臓は腹部の左右にありますが、このうち右側の腎臓に異変があると、右の腰が痛くなります。病気ではなくても、右の腎臓に結石ができると右腰が痛みます。また、肝臓は体の右側にあるので、肝臓に異変があると同様に右腰が痛くなるので、注意しなければなりません。
一般的な腰痛の原因
内臓疾患が原因で起こる腰痛は別として、一般的な腰痛は以下のような原因で起こります。
椎間板ヘルニア
背骨は、骨と骨が椎間板と呼ばれる組織でつながっています。つまり、椎間板がクッションの役割を果たして、下からの突き上げに対して、頭を守る働きをしているのです。この椎間板は加齢とともに劣化していくので、やがてクッション性が失われて腰に痛みが出るようになります。
筋肉の劣化
筋肉は柔らかくて弾力性がありますが、加齢とともに硬くなり弾力性も失われていきます。腰の周りには多くの筋肉があり、腰を保護する働きをしていますが、加齢とともに筋肉が衰えると、腰を保護しきれなくなって腰痛が起こります。
運動不足が筋肉の劣化を早める
年齢を重ねると筋肉量が減っていきますが、それに加えて筋肉が硬くなるために、さらに腰痛を引き起こしやすくなります。これに運動不足が重なると、さらに筋肉が落ちてしかも硬くなるので、なおさら腰痛を悪化することになります。
若い頃は運動していた人でも、年齢を重ねるごとに体を動かす機会も減っていきます。そうなると、さらに状況が悪化するので、ジョギングなどの軽めの運動から始めて、常時体を動かす習慣をつけたいものです。
姿勢が悪いために起こる腰痛
腰に負担がかかる姿勢を続けていると、腰痛が起こりやすくなります。腰痛を発症しないために、以下のような姿勢に注意しましょう。
・ずっこけ座り
椅子に浅く腰かけ、上半身を背もたれにもたれさせる座り方を、「ずっこけ座り」といいます。ずっこけ座りはお尻の奥の仙骨を傷めやすく、背中が丸まりやすいので腰に負担がかかります。ずっこけ座りを長期間続けていると、腰に疲労が蓄積されるので、腰痛を引き起こす可能性が高くなります。
そこで、ずっこけ座りをしている人は、すぐにやめて正しい座り方に直しましょう。ずっこけ座りをするのは若い人に多いのですが、若いうちは筋肉もしっかりしているので何の問題もありません。ところが、年齢を重ねて筋肉が衰えてくると、ずっこけ座りによって長年蓄積された疲労が原因となって、腰痛を起こしてしまうので注意しましょう。
・首を前に出す姿勢
若い人のなかには、首を前に出す姿勢の人が多く見受けられます。特に、スマホやパソコンを長時間見続けていると、首を前に出す姿勢になりがちです。通常、頭は体全体で支えていますが、首を前に出す姿勢では、首だけで頭を支えることになります。
この状態が続くと首に負担がかかるので、首回りが凝りやすくなります。体のどこかが凝るのは、体がアンバランスになっている証拠なので、首回りの凝りも腰に負担がかかる要因になります。
・足を組んで座ることによる弊害
足を組んで座る癖のある人は、常に同じ足を上に組んで座る傾向があります。両足を交互に組めばまだいいのですが、片方の足だけを上に組む姿勢を続けていると、腰にゆがみが生じます。
このように、足を組んで座ると体にゆがみが生じますが、体がゆがんでいるから足を組んで座りたくなるという側面もあります。つまり、もともと体がゆがんでいるので、普通の姿勢で座ることが難しいのです。
足を組んで座る癖がついていると、骨盤にゆがみが生じることがありますが、こちらも同様に、もともと骨盤がゆがんでいるために、足を組んで座ることもあります。いずれにせよ、いつも同じ足を上に組んで座っていると、腰周りに負担がかかるので、体のゆがみがさらにひどくなる可能性があり、腰痛の原因になりやすいので注意しましょう。
腰痛の改善方法
腰痛を改善する方法には、筋トレやストレッチなどがありますが、どちらも継続して行うのは難しいようです。そもそも、運動不足のために筋肉が衰え、腰痛を引き起こした人に筋トレやストレッチをすすめても、長続きするはずがありません。そこで、ここではもっと手軽に、腰痛改善ができる方法をご紹介します。
低周波治療
低周波治療とは、経皮的電気刺激(TENS)によるマッサージのことです。TENSは、痛みのある部位に電極を貼り、微弱な電流を流して痛みを改善する治療法です。微弱な電流によって患部の緊張をほぐしたり、痛みの伝達をブロックして痛みを軽減します。
わずかな時間で効果が現われ、終了後もしばらく鎮痛効果が続きます。電極を貼って、一定時間じっとしているだけで効果が得られるので、筋トレやストレッチが長続きしない人でも続けられます。
マッサージによる改善
マッサージをすることにより、血行を促進して痛みを改善する方法です。筋肉が硬くなると血行が悪くなるので、酸素や栄養が行き渡らなくなるため、そこから新たな痛みが生じることがあります。痛みが生じなくても、血行不良になると体の各部位に悪影響を及ぼすので、マッサージで血行を促進するのは非常に大切なことです。
血行が改善され、体全体に酸素と栄養が行き渡るようになると、腰の痛みも改善していきます。マッサージは、ある程度まではセルフでもできますが、もっと本格的に行う場合は施術院に通う必要があります。
ツボ押しによる腰痛改善
「ツボ」とは、東洋医学で使われる用語です。東洋医学では、人体には「気」と「血」がめぐる「経絡」があると考えられており、経絡の要所に「経穴」と呼ばれるツボがあるとされています。
このツボは、体の各器官や臓器とつながっているため、ツボを刺激することにより、そのツボとつながる部位の痛みなどが緩和されるといいます。腰痛に効くツボには、「腰腿点(ようたいてん)」、委中(いちゅう)、太衝(たいしょう)の3つがあります。
・腰腿点
手の甲の2箇所にあるツボです。人差し指と中指の骨が接合する手前のくぼみを第一腰腿点、中指と薬指の骨が接合する手前にあるくぼみが第二腰腿点です。親指の腹を使って、5〜10回ほど強めに押しましょう。
・委中
ひざの裏の中央あたりにあるツボで、ひざを両手でつかんで、両手の中指を使って5〜10回ほど押します。
・太衝
足の親指と人差し指の間の、骨が接合している部分にあるツボです。親指の腹を使って強めに5〜10回ほど刺激します。