この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
肩こりと頭痛、特に偏頭痛に悩まされている方は少なくありません。「肩がこると頭も痛くなる」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。研究によれば、肩こりと偏頭痛には関連性が高い可能性があり、一方が悪化するともう一方も悪化することがあります。本記事では、肩こりが偏頭痛を引き起こすメカニズムや、両方の症状を効果的に改善するための対処法について詳しく解説します。特に菱形筋などの肩甲骨周りの筋肉を鍛えることで、肩こりと頭痛の両方を改善できる可能性があります。日常生活に取り入れやすいトレーニング方法もご紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
肩甲骨のサボり筋がしっかり内側、外側に動くことで首の硬さをとってくれます。肩こりがひどいとか頭痛がするなど首が硬くて起こることはこの肩甲骨を動かすことで改善していきます
目次
肩こりと偏頭痛の関係性とは?なぜ肩こりで頭痛が起こるのか
肩こりと偏頭痛は、一見別の症状のように思えますが、研究によれば関連性が高い可能性があります。首や肩の筋肉の緊張が頭部へと波及し、頭痛を引き起こすケースが多いとされています。
特に、長時間同じ姿勢でデスクワークをしていたり、ストレスを抱えていたりすると、肩こりが慢性化し、それが偏頭痛の引き金となることがあります。
このメカニズムを理解することで、効果的な予防策と対処法を見つけることができるでしょう。
偏頭痛の予兆としての肩こり
偏頭痛持ちの方の中には、発作が起こる前に首や肩の張りや痛みを感じることがあります。これは偏頭痛の予兆として現れる症状の一つで、発作の数時間前から数日前に感じることもあるようです。日本頭痛学会の研究によると、この段階で適切な対処をすることで、偏頭痛の発作を軽減できる可能性があるとされています。肩こりを感じ始めたら、早めに休息を取ることが大切です。
緊張型頭痛と偏頭痛の違い
肩こりが原因で起こる頭痛は「緊張型頭痛」と呼ばれることが多いですが、肩こりによる頭痛と偏頭痛は区別が難しいこともあります。緊張型頭痛は頭を締め付けられるような痛みが特徴ですが、実は肩こりが原因で起こる頭痛が偏頭痛の一種である可能性も指摘されています。正確な診断と適切な治療のためには、症状の特徴を理解することが重要です。
症状の種類 | 主な特徴 | 肩こりとの関係 |
---|---|---|
偏頭痛 | 拍動性の痛み、光・音に敏感、吐き気を伴うことも | 肩こりが予兆や発作中の症状として現れることがある |
緊張型頭痛 | 頭が締め付けられるような非拍動性の痛み | 首や肩の筋肉の緊張が直接の原因となることが多い |
群発頭痛 | 目の周囲の激しい痛み、短時間で繰り返す | 肩こりとの直接的な関連は少ない |
肩こりが偏頭痛を引き起こすメカニズム
日本内科学会雑誌の研究によれば、肩こりが偏頭痛を引き起こすメカニズムは複雑ですが、主に以下の要因が考えられています。
筋肉の緊張と血流不足
首や肩の筋肉(特に僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋など)が緊張すると、血流が悪くなり、筋肉内に老廃物が溜まりやすくなります。この状態が続くと、頭部への血流も影響を受け、頭痛の原因となる可能性があります。また、筋肉の緊張は神経を圧迫し、痛みの信号を脳に送ることもあると考えられています。特に頭部から首にかけての血管や神経は密接に関連しているため、肩こりの影響を受けやすい部位となっています。
自律神経の乱れ
肩こりが慢性化すると、自律神経のバランスが崩れることがあります。自律神経の乱れは血管の収縮や拡張に影響を与え、偏頭痛の発作を誘発する可能性があります。特にストレスや疲労が重なると、その影響はさらに大きくなる傾向があるようです。国際頭痛学会の研究では、自律神経機能と偏頭痛の関連性について言及されています。
偏頭痛と肩こりの関係については、さまざまな研究機関で調査が進められています。また、日本医師会のサイトでも、頭痛と肩こりの関連について信頼性の高い情報が提供されています。
菱形筋トレーニングで肩こりと頭痛を改善する方法
肩こりと頭痛の改善には、肩甲骨周りの筋肉、特に菱形筋を適切に鍛えることが効果的と考えられています。菱形筋は肩甲骨を内側に引き寄せる役割を持ち、この筋肉が弱ると肩こりの原因となる可能性があります。以下に紹介するトレーニングは、専門家も推奨する方法です。
効果的な菱形筋トレーニング
以下のトレーニングを1日1分でも行うことで、肩こりの改善に繋がる可能性があります:
- 手のひらを上に向けてグーを作ります
- 手首を返して、脇を締めます
- 同じ方向を向いたまま、グーの状態で肩甲骨を内側に寄せるように上方へ持ち上げます
- このとき手のひらが前に向かないように注意し、外側を向いたままキープします
- 肩甲骨の内側にピリッと力が入る感じがするまで持ち上げます
- 両腕を交互に行い、片側5〜10回程度繰り返します
肩こりからくる頭痛の日常生活での予防法
肩こりが原因の頭痛を予防するために、日本肩関節学会の研究に基づいた、日常生活で心がけたいポイントをご紹介します。これらの方法は特別な道具や専門知識がなくても実践できるものばかりです。
姿勢の改善
デスクワークなどで同じ姿勢を長時間続けることは、肩こりの大きな原因になるとされています。1時間に一度は立ち上がって軽くストレッチをしたり、正しい姿勢を心がけたりすることで、肩こりを予防できる可能性があります。特に猫背は首や肩に負担をかけるため、背筋を伸ばした姿勢を意識しましょう。モニターの高さや椅子の位置も重要なポイントです。目線がやや下向きになるようモニターを設置し、椅子に深く腰掛けて背筋を伸ばせるよう調整しましょう。
ストレス管理
ストレスは筋肉の緊張を高め、肩こりや頭痛の原因となる可能性があります。適度な運動や趣味の時間を持つなど、ストレス発散の方法を見つけることが大切です。また、十分な睡眠も肩こりと頭痛の予防には欠かせないでしょう。睡眠不足は筋肉の回復を妨げるため、7〜8時間の質の良い睡眠を確保するよう心がけましょう。リラクゼーション技法や深呼吸なども、ストレス軽減に役立つことがあります。
温熱療法と入浴
肩こりに悩んでいる方は、入浴時に首や肩を温めることで筋肉の緊張をほぐせる可能性があります。入浴後にストレッチを行うと、さらに効果的かもしれません。また、肩こりがひどい時はホットタオルやカイロなどで部分的に温めるのも良いでしょう。入浴時に首や肩をマッサージするのも効果的な方法の一つです。湯船につかりながら、首の後ろから肩にかけてゆっくりとマッサージすることで、血行が促進され、筋肉の緊張が和らぐ可能性があります。
肩こりの対処法についてさらに詳しく知りたい方は、首のストレッチ運動や頭痛予防のライフスタイル改善法、またセルフマッサージテクニックについての記事もご参考ください。
肩こりと偏頭痛が改善しない場合の対処法
自己対処で改善しない場合は、専門家の診察を受けることも大切です。適切な診断と治療により、症状の根本的な改善が期待できる場合があります。
いつ医師に相談すべきか
以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします:
- 頭痛が急に激しくなった
- 今までに経験したことのない頭痛がある
- 頭痛と一緒に吐き気や嘔吐、意識の混濁などがある
- 肩こりや頭痛が長期間(数週間以上)続いている
- 市販薬で症状が改善しない
- 頭痛の頻度や強さが増している
適切な診療科の選び方
偏頭痛の場合は神経内科や脳神経外科、肩こりが主な症状であれば整形外科や鍼灸院、整骨院などが適していると考えられます。どちらの症状も強い場合は、まずは神経内科を受診するのが良いでしょう。最近では「頭痛外来」や「肩こり外来」など、特定の症状に特化した専門外来を設けている医療機関も増えています。地域の医師会や保健所で情報を得ることもできますので、参考にしてみてください。
まとめ:肩こりと偏頭痛の関係と効果的な対策
本記事では、肩こりと偏頭痛の関係性について解説しました。両者には密接な関連があり、肩こりが偏頭痛の予兆や引き金となることがあります。特に首や肩の筋肉の緊張が頭部へと波及し、頭痛を引き起こすメカニズムが明らかになっています。効果的な対策としては、菱形筋トレーニングや日常生活での姿勢改善、ストレス管理、温熱療法などが挙げられます。症状が改善しない場合は医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。日常的なケアと専門家のアドバイスを組み合わせることで、肩こりと偏頭痛の両方の症状を効果的に管理することができるでしょう。
肩こりと偏頭痛に関するよくある質問
Q. 肩こりで頭痛が起こるのはなぜですか?
A. 肩こりで頭痛が起こる主な理由は、首や肩の筋肉の緊張が頭部へと波及するためと考えられています。特に僧帽筋や頭頸部の筋肉が緊張すると、頭蓋骨周囲の筋膜に影響を与え、頭痛を引き起こすことがあります。また、筋肉の緊張による血流低下も頭痛の原因となる可能性があります。慢性的な肩こりは自律神経のバランスを崩し、偏頭痛の発作を誘発することもあるとされています。神経科学の研究によると、首の筋肉と脳神経の密接な関連が指摘されています。
Q. 偏頭痛と緊張型頭痛の違いは何ですか?
A. 偏頭痛は拍動性(ズキンズキンする)の痛みが特徴で、光や音に敏感になったり、吐き気を伴ったりすることがあります。一方、緊張型頭痛は頭が締め付けられるような非拍動性の痛みが特徴で、肩こりを伴うことが多いです。また、偏頭痛は体を動かすと悪化することがありますが、緊張型頭痛はあまり影響を受けないとされています。ただし、両者の症状が重なることもあり、明確に区別できないケースもあります。日本頭痛学会の診断基準を参考にすると、より正確な判断ができるかもしれません。
Q. 肩こりを予防するための効果的なストレッチ方法はありますか?
A. 肩こりを予防するストレッチとしては、首の回旋運動(ゆっくり首を左右に回す)、肩の上下運動(肩をすくめてゆっくり下ろす)、胸を開くストレッチ(両手を後ろで組んで胸を前に押し出す)などが効果的と考えられています。また、本記事で紹介した菱形筋トレーニングも肩こり予防に役立つ可能性があります。これらのストレッチは1日に数回、特にデスクワークの合間に行うと効果的かもしれません。深呼吸をしながらゆっくり行い、痛みを感じない範囲で行うことが大切です。
Q. 肩こりが原因の頭痛に効く市販薬はありますか?
A. 肩こりが原因の頭痛には、解熱鎮痛成分と筋弛緩成分を組み合わせた市販薬が効果的なことがあります。イブプロフェンやロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が含まれる薬は、痛みを和らげる効果があるとされています。また、肩こりに特化した貼り薬やシップも一時的な症状緩和に役立つ可能性があります。ただし、市販薬は対症療法であり、根本的な原因解決にはならない場合があります。頻繁に使用する場合や症状が改善しない場合は、医師の診察を受けることをお勧めします。
Q. 仕事中に肩こりを感じたときの対処法を教えてください
A. 仕事中に肩こりを感じたら、まず姿勢を正し、デスクの高さや椅子の位置が適切か確認しましょう。1時間ごとに短い休憩を取り、立ち上がって肩を回したり、首を軽くストレッチしたりすることが効果的かもしれません。また、深呼吸をしながら意識的に肩の力を抜くことも大切です。可能であれば、温かいタオルやカイロで肩を温めたり、肩をほぐすためのマッサージボールを使ったりするのも良いでしょう。水分補給も忘れずに行い、長時間のパソコン作業中は目の疲れを軽減するために、時々遠くを見るようにするといいかもしれません。
Q. 菱形筋のトレーニングはどのくらいの頻度で行うべきですか?
A. 菱形筋トレーニングは、毎日1回、1分間程度行うことをお勧めします。初めのうちは軽い負荷から始め、徐々に回数や強度を増やしていくと良いでしょう。無理をして痛みを感じるようであれば、すぐに中止してください。継続することが最も重要なので、短時間でも毎日続けることを心がけましょう。また、デスクワークが多い方は、作業の合間に簡単な菱形筋のストレッチを取り入れることで、肩こり予防の効果が高まる可能性があります。2週間程度続けると、肩こりの軽減を実感できる方が多いようです。
Q. 肩こりと偏頭痛の関係について、最新の研究ではどのようなことがわかっていますか?
A. 最新の研究では、肩こりと偏頭痛の関連性がさらに明らかになってきています。特に「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる現象が注目されており、これは偏頭痛の発作中や前後に、通常は痛みを感じない刺激に対しても痛みを感じる状態を指します。この現象は神経科学研究でも確認されています。このアロディニアにより、偏頭痛患者は首や肩の筋肉にも痛みを感じやすくなることがわかっています。また、慢性的な頭痛と首の筋肉の関係を調査した研究では、頭痛の頻度が高い人ほど首の筋肉に異常が見られることも報告されています。この知見から、頭痛治療において首や肩の筋肉のケアの重要性が再認識されています。国際頭痛学会誌の最新の総説でも、この関連性について詳しく論じられています。
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