この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
目次
- 1 椎間板ヘルニアとウォーキング:正しく理解して適切に対処する
- 2 椎間板ヘルニアに対するウォーキングの効果:科学的根拠
- 3 椎間板ヘルニア患者におすすめのウォーキング方法
- 4 椎間板ヘルニア患者が注意すべきポイント
- 5 水中ウォーキングと他の代替運動
- 6 実例:椎間板ヘルニアとウォーキングの成功事例
- 7 医師への相談と専門的サポート
- 8
- 9 椎間板ヘルニアとウォーキングに関するよくある質問(FAQ)
- 10
- 10.1 Q1: 椎間板ヘルニアの場合、毎日ウォーキングしても大丈夫ですか?
- 10.2 Q2: ウォーキング中に痛みが出たらどうすべきですか?
- 10.3 Q3: ウォーキングでどれくらいの距離や時間を目標にすべきですか?
- 10.4 Q4: ウォーキングの効果はどれくらいで実感できますか?
- 10.5 Q5: 椎間板ヘルニアの手術後にウォーキングは勧められますか?
- 10.6 Q6: 椎間板ヘルニアの症状が悪化している場合、ウォーキングは控えるべきですか?
- 10.7 Q7: 椎間板ヘルニアにはどのような靴を選ぶべきですか?
- 10.8 Q8: 椎間板ヘルニアの方が水中ウォーキングを行う利点は何ですか?
- 10.9 Q9: 椎間板ヘルニアの方は登山やジョギングなどの衝撃の強いウォーキングはできますか?
- 10.10 Q10: 椎間板ヘルニアの方が歩く際に補助器具は有効ですか?
- 11 椎間板ヘルニアとウォーキングの最新研究動向
- 12 まとめ:椎間板ヘルニアとウォーキングの共存
椎間板ヘルニアとウォーキング:正しく理解して適切に対処する
椎間板ヘルニアのメカニズムとウォーキングの関係
椎間板ヘルニアは、脊椎の椎骨と椎骨の間にあるクッションの役割をする椎間板の内部組織(髄核)が突出し、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす状態です。これは日常生活での姿勢や動作、加齢による椎間板の変性などが原因で発生します。
椎間板ヘルニアの発生原因には、中腰姿勢が多い仕事や生活、重い荷物を持つことや腰を強くひねる動作、姿勢の悪さ、長時間の座位、腹筋の弱さなどが挙げられます。これらは共通して腰に負担をかけています。
椎間板ヘルニアの場合、ウォーキングは適度に行うことで、血行促進に繋がったり、筋力強化に繋がったり、症状の改善に役立つ場合もあります。ただし、炎症をおこしており、症状が強い場合に無理に歩くと悪化してしまいますので、痛みがある場合は無理にあるこうとはしないでください。
椎間板ヘルニアの主な症状
椎間板ヘルニアでは以下のような症状が現れることがあります:
- 腰痛(特に前かがみになると悪化)
- 足や臀部への放散痛
- 下肢のしびれや感覚異常
- 筋力低下や脱力感
- 長時間の座位や立位での痛みの増加
椎間板ヘルニアは脊椎の椎間板が隣接する神経に圧迫をかけることで、腰痛や足への放射痛などを引き起こす状態です。この症状はしばしば日常生活に大きな影響を与えます。
椎間板ヘルニアに対するウォーキングの効果:科学的根拠

筋肉強化による脊椎安定化
ウォーキングは背筋、腹筋、臀筋などの体幹筋群を強化し、脊椎の安定性を高めます。筋肉が強化されると、椎間板への負担が分散され、神経圧迫のリスクが軽減します。
研究によると、有酸素運動により「関節の位置や可動域の拡大」「筋力アップによる脊椎の安定化」「運動による痛みの緩和」「内因性物質の活性化」が確認されています。
ウォーキングは背筋、腹筋、臀筋などの体幹筋群を強化し、脊椎の安定性を高めます。その結果、筋肉が強化されると、椎間板ヘルニアの原因となる椎間板への負担が分散され、神経圧迫のリスクが軽減します。
研究によると、有酸素運動により「関節の位置や可動域の拡大」「筋力アップによる脊椎の安定化」「運動による痛みの緩和」「内因性物質の活性化」が確認されています。つまり、適切なウォーキングは椎間板ヘルニアの症状改善につながる生理的変化を促進するのです。
血行促進と炎症軽減
定期的なウォーキングによって血流が改善されると、椎間板周辺の炎症が軽減される可能性があります。また、栄養供給も向上し、組織の修復を促進する効果も期待できます。
歩行は心臓を活発にし、血液循環を促進します。椎間板は血管が直接通っていないため、周囲の組織からの栄養供給に依存しています。良好な血流はこれらの栄養供給を助け、損傷した椎間板の修復を促します。
自然な鎮痛効果
ウォーキングなどの適度な運動は、体内で自然な鎮痛物質(エンドルフィンなど)の分泌を促し、痛みの軽減に役立ちます。また、気分転換にもなり、痛みへの心理的な対処能力も高まります。
科学的研究結果
医学雑誌「PAIN」によると、ウォーキングは集団運動プログラムや通常のリハビリ(理学療法)と比較して有効性に差がなく、継続的に続けられ、費用が安価であるとされています。
慢性的な腰痛を訴える地域住民に対して、指導開始1~6ヵ月後の痛みの程度と日常動作、自己効力感、QOL(生活の質)を確認したところ、良好な結果が確認されています。
椎間板ヘルニア患者におすすめのウォーキング方法

準備運動と適切な装備
- 適切なストレッチ:歩き始める前に軽いストレッチで背中、腰、足の筋肉をほぐしましょう。
- サポート性の高い靴:クッション性とサポート性に優れた靴を選び、衝撃を吸収しましょう。
- 腰部サポーター:必要に応じて医師や理学療法士に推奨された腰部サポーターを使用しましょう。
正しい姿勢とフォーム
正しい姿勢でウォーキングすることは、椎間板ヘルニアの方にとって特に重要です。
ウォーキング中は常に正しい姿勢で、背骨が自然に曲がるようにします。肩の力を抜いて、頭は背骨の上にバランスよく乗せましょう。前屈みにならないようにすることが重要です。
- 背筋を自然に伸ばし、過度に反らしたり丸めたりしない
- 視線は前方に向け、頭を前に突き出さない
- 腹筋に軽く力を入れて体幹を安定させる
- かかとから着地して、つま先で蹴り出す自然な歩行パターンを維持する
距離と時間の管理
椎間板ヘルニアの方は、無理のない範囲で徐々にウォーキングの距離と時間を増やしていくことが重要です。
痛みを感じない範囲でゆっくりと歩き、無理をしないことが大切です。痛みを感じたら、すぐに休憩を取り、必要に応じて活動を中止してください。
- 最初は5〜10分程度の短い時間から始める
- 症状が安定していれば、徐々に時間を延ばしていく
- 一般的には20〜30分のウォーキングを週3〜5回が目標
- 自分の体調や痛みのレベルに合わせて調整する
適切な場所選びと環境への配慮
不均一な地形や急な坂は避け、平坦で安定した路面を選んで歩くことが望ましいです。これにより椎間板に不要なストレスをかけずに済みます。
- 平坦な歩道や公園を選ぶ
- クッション性のある土の道は衝撃を和らげる
- 気温が高すぎたり低すぎたりする時間帯は避ける
- 安全で照明の良い場所を選ぶ
椎間板ヘルニア患者が注意すべきポイント

無理な運動を避ける
椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の症状がある場合、多少の痛みやしびれがあっても、歩くとかえって調子が良くなったり、歩いても症状がさほど悪化しないようであれば、ウォーキングに取り組んでみてください。
しかし、以下のような場合は運動を控え、医師に相談しましょう:
- 急性期の強い痛みがある
- ウォーキング中や後に痛みが増す
- 下肢の筋力低下や感覚異常が悪化する
- 排尿や排便の障害がある
姿勢と動作に注意
日常生活での姿勢や動作も椎間板ヘルニアの症状に大きく影響します。
寝た姿勢から起き上がる時にも腰にかかる負担は大きくなります。一度横向きになって、手で体を支えながらゆっくりと起き上がるようにしてください。
- 重い物を持ち上げる時は膝を曲げて腰を守る
- 長時間同じ姿勢を続けない
- 座る時は腰を支える椅子を選ぶ
- 急な動きや捻る動作は避ける
椎間板への負担を減らす対策
椎間板ヘルニアでは腰を丸めることで、椎間板の前方がつぶれ後方が膨らみます。すると脊髄をより圧迫してしまうため痛みが強くなります。
- 正しい座り姿勢を保つ(深く腰掛けて背筋を伸ばす)
- 適切な高さの椅子を使用する(足裏が床につく高さ)
- 長時間の座位を避け、定期的に立ち上がって動く
- 腹部と背部の筋力強化エクササイズを行う
椎間板ヘルニアのストレッチなどで悪化してしまった場合は以下の記事も参考にしてみて下さい
水中ウォーキングと他の代替運動

通常のウォーキングが辛い場合の代替運動として、水中ウォーキングは特に有効です。
ウォーキングは全身運動の一つですが、プールでの水中歩行の方が、浮力が生じ体重による負荷もかかりにくく、椎間板ヘルニアに対する負荷もかかりにくいです。ウォーキングが辛い場合は、水中歩行も試してみると良いでしょう。
水中ウォーキングの利点
- 浮力により椎間板への圧力が軽減される
- 水の抵抗が適度な筋力トレーニングとなる
- 転倒リスクが少ない
- 関節への負担が少ない
その他の推奨される運動
- ヨガ:特に腰痛に配慮したプログラムが効果的
- ピラティス:体幹強化に効果的
- 軽い水泳:特に背泳ぎなど腰に負担の少ないスタイル
- エルゴメーター:座位での軽い有酸素運動
実例:椎間板ヘルニアとウォーキングの成功事例

椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛が、2か月のウォーキングで大幅に改善した事例があります。40代男性の患者さんは、当初歩くのも辛いほどの激痛がありましたが、適切なウォーキングを続けることで症状が改善しました。
成功のポイント
- 段階的な増加:短時間から始め、徐々に時間を延ばした
- 正しいフォーム:常に正しい姿勢を意識した
- 継続:最低2〜3ヶ月は継続した
- 専門家のサポート:当院では、NOBU先生がYouTubeで椎間板ヘルニアの人に、ご自宅で出来るセルフケア方法も解説しております。
コメント見て貰えればわかるように、このやり方で解決した人も沢山おります。また、ヘルニアやギックリ腰で歩けなかった人が歩けるようになったりしてます。
医師への相談と専門的サポート
椎間板ヘルニアの治療として歩行を取り入れる前には、必ず専門の医師や整体師と相談してください。個々の症状や体の状態に応じた適切なアドバイスを受けることが重要です。
医師に相談すべきタイミング
- ウォーキングを始める前
- 症状が悪化した場合
- 新たな症状が出現した場合
- 6〜8週間ウォーキングを続けても改善が見られない場合
専門家によるサポート
- 理学療法士:正しいウォーキングフォームの指導
- スポーツトレーナー:適切な筋力トレーニングの指導
- 整形外科医:症状の定期的な評価と治療計画の調整
椎間板ヘルニアの症状について、ストレッチによる対処法については椎間板ヘルニアに効くストレッチで詳しく解説しています。
日本整形外科学会の腰椎椎間板ヘルニアに関するガイドラインでも、適切な運動療法の重要性が指摘されています。
椎間板ヘルニアとウォーキングに関するよくある質問(FAQ)
Q1: 椎間板ヘルニアの場合、毎日ウォーキングしても大丈夫ですか?
症状が安定していれば、軽いウォーキングは毎日行っても問題ありません。しかし、体に負担をかけすぎないよう、週に2〜3日は休息日を設けることをお勧めします。痛みがある場合は必ず休息を取り、医師に相談してください。
Q2: ウォーキング中に痛みが出たらどうすべきですか?
痛みを感じたら、すぐにペースを落とすか、ウォーキングを中止して休息を取りましょう。痛みが続く場合や、ウォーキング後に症状が悪化する場合は、医師に相談することが重要です。無理をして症状を悪化させることは避けてください。
Q3: ウォーキングでどれくらいの距離や時間を目標にすべきですか?
初心者は5〜10分間、約500m程度から始め、徐々に時間と距離を延ばしていくことをお勧めします。最終的には20〜30分、約2〜3kmを目標にするとよいでしょう。ただし、個人の症状や体力に合わせて調整することが最も重要です。
Q4: ウォーキングの効果はどれくらいで実感できますか?
効果の現れ方には個人差がありますが、一般的には2〜3ヶ月程度の継続で効果を実感できることが多いです。ただし、筋力向上などの身体的変化は4〜6週間程度で始まることもあります。根気よく続けることが大切です。
Q5: 椎間板ヘルニアの手術後にウォーキングは勧められますか?
手術後のリハビリテーションとしてウォーキングは効果的ですが、開始時期や方法については必ず担当医の指示に従ってください。通常、軽い歩行は手術後数週間で許可されることが多いですが、個々の症例によって異なります。
Q6: 椎間板ヘルニアの症状が悪化している場合、ウォーキングは控えるべきですか?
急性期や症状が悪化している場合は、ウォーキングを含めた運動を一時的に控え、医師の指示に従うことが重要です。強い痛みがある場合や、痺れや筋力低下が進行している場合は、まず適切な治療を受け、症状が安定してから徐々に運動を再開するようにしましょう。
Q7: 椎間板ヘルニアにはどのような靴を選ぶべきですか?
クッション性が高く、アーチサポートがしっかりしているウォーキングシューズが最適です。足に合ったサイズで、かかとの安定性が良く、足裏全体をサポートする靴を選びましょう。必要に応じて、医療用インソールを使用することも検討してください。専門店でフィッティングを受けることをお勧めします。
Q8: 椎間板ヘルニアの方が水中ウォーキングを行う利点は何ですか?
水中ウォーキングは浮力によって体重が軽減され、椎間板への負荷が大幅に減少します。また水の抵抗によって筋肉を効果的に鍛えられ、転倒リスクも低減します。特に急性期の症状がある方や、通常のウォーキングで痛みを感じる方にとって、水中ウォーキングは優れた代替運動となります。
Q9: 椎間板ヘルニアの方は登山やジョギングなどの衝撃の強いウォーキングはできますか?
椎間板ヘルニアの方は、登山やジョギングなど衝撃が強い活動は避けるか、症状が完全に安定してから医師の許可を得て慎重に行うべきです。これらの活動は椎間板に大きな負荷をかけ、症状を悪化させるリスクがあります。まずは平坦な場所での通常のウォーキングから始め、症状と体力が安定してから徐々に活動レベルを上げていくことをお勧めします。
Q10: 椎間板ヘルニアの方が歩く際に補助器具は有効ですか?
状況によっては、ウォーキングポールやステッキなどの補助器具が有効です。これらは姿勢を維持するのを助け、バランスを向上させ、腰への負担を分散させる効果があります。特に不安定な路面を歩く場合や、症状がある程度進行している場合は、これらの補助器具を活用することで安全にウォーキングを続けられる可能性が高まります。医師や理学療法士に相談しながら適切な補助器具を選びましょう。
椎間板ヘルニアとウォーキングの最新研究動向
2024年の医学研究からわかった椎間板ヘルニアへのウォーキング効果
2024年に発表された複数の研究によると、椎間板ヘルニア患者におけるウォーキングの効果がさらに明確になってきています。特に注目すべきは、椎間板ヘルニアによる慢性腰痛患者100名を対象とした研究で、週3回・30分のウォーキングを6ヶ月間続けたグループは、運動をしなかったグループと比較して、痛みの程度が平均47%減少したという結果です。
また、椎間板ヘルニア患者のウォーキングによる脳内物質の変化に着目した研究もあります。適度なウォーキングによって、自然な鎮痛効果をもたらすエンドルフィンの分泌が促進されるだけでなく、慢性痛のメカニズムに関わる神経伝達物質のバランスも改善することが確認されています。つまり、ウォーキングは単に身体的な効果だけでなく、椎間板ヘルニアの痛みを神経科学的な側面からも緩和する可能性があるのです。
テクノロジーを活用した椎間板ヘルニア患者のウォーキング管理
最近注目されているのは、椎間板ヘルニア患者向けのオンラインヘルスケアとウォーキングを組み合わせたアプローチです。スマートフォンのアプリを使って歩数や姿勢をモニタリングしながらウォーキングを行い、定期的にオンラインで専門家からフィードバックを受けるプログラムでは、従来の治療法よりも高い継続率と満足度が報告されています。
さらに、天候に左右されない屋内ウォーキングプログラムの有効性も確認されています。特に高齢の椎間板ヘルニア患者にとって、安全で快適な環境でのウォーキングは重要です。ショッピングモールなどの平坦で空調の整った環境でのウォーキングは、天候や季節に関係なく継続できるため、長期的な改善につながりやすいことがわかっています。
まとめ:椎間板ヘルニアとウォーキングの共存

椎間板ヘルニアを抱える方にとって、適切に行うウォーキングは筋力強化、血行促進、痛みの軽減など多くの利点があります。実際に、医学的研究でも、椎間板ヘルニア患者のウォーキングの効果は通常のリハビリテーションと同等であることが示されています。
しかし、安全で効果的なウォーキングのためには、以下のポイントを忘れないようにしましょう:
- 医師に相談する:椎間板ヘルニアの状態に合ったウォーキングプランを立てる
- 正しい姿勢を維持する:背筋を自然に伸ばし、腹筋を意識する
- 徐々に進める:短時間・短距離から始め、少しずつ増やす
- 適切な環境を選ぶ:平坦な道を選び、椎間板ヘルニアに配慮した靴を履く
- 痛みに注意する:痛みが出たら休息を取り、無理なウォーキングを避ける
椎間板ヘルニアは完全に治ることが難しい場合もありますが、適切なウォーキングと生活習慣の改善により、症状のコントロールと生活の質の向上は十分に可能です。ウォーキングを日常に取り入れることで、椎間板ヘルニアとうまく付き合いながら、健康的な生活を送ることができるでしょう。
最後に、この記事の情報は一般的なガイドラインであり、個々の症状や状態によって適切なアプローチは異なります。椎間板ヘルニアの治療とウォーキングの開始については、常に医療専門家の指導のもとで行うことをお勧めします。