仕事の大半はパソコンを使うデスクワーク…
公私に関わらずスマートフォンを利用する時間が増えた…
そんな現代人の中で、坐骨神経痛や首の痛みを訴える方は少なくありません。
坐骨神経痛は腰から足にかけての痛みやしびれを特徴とし、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気が疑われます。
首の痛みは長時間の不良姿勢やストレス、筋肉の緊張などでも起きますが、深刻な病変が潜んでいる可能性もあります。
当ページでは、坐骨神経痛と首の痛みの原因について広く考察し、相互の関連性や効果的な治療法・予防法について詳しく解説します。
目次
坐骨神経痛の基礎知識
坐骨神経は、脊髄の最下部から始まり、腰部を通過し、足の先まで伸びる体内最大の神経です。
坐骨神経痛とは、坐骨神経が圧迫または損傷を受けた結果、発生する一連の症状を指します。
これには腰や臀部の痛み、脚への放散痛(原因となる部位から離れた場所で感じる痛み)、足のしびれなどが含まれます。
坐骨神経痛の主な原因
坐骨神経痛の原因とされる病気はさまざまです。
ここでは代表的なものを3つ取り上げて説明します。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは、腰椎の間にある椎間板が突出して神経を圧迫する状態です。
頭蓋骨から尾骨まで連なっている骨を椎骨といい、その中で首の部分を頚椎、背中の部分を胸椎、腰部を腰椎と呼びます。
これらの骨と骨の間には椎間板と呼ばれる軟骨があって、動きを滑らかにするクッションの役割を果たしています。
椎骨の後ろ側には脊柱管という管があり、その中を神経が通っているのですが、椎間板が突き出ることで神経が圧迫され、痛みやしびれが臀部や脚に現れるのです。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、加齢によって骨や靭帯が分厚くなって脊柱管が狭くなる病変です。
これによって、腰椎部の脊柱管を通る神経組織が圧迫され、腰痛や足のしびれ、痛みを引き起こします。
脊髄腫瘍
脊髄腫瘍は、腰椎部の脊柱管内にできる腫瘍です。
これが神経組織を圧迫することで坐骨神経領域に痛みやしびれ、感覚障害を引き起こします。
その他にも、椎間孔狭窄、椎間板嚢腫、椎間関節嚢腫、事故や老化による椎骨の変形、臀部や腰部の筋肉の緊張やけいれんが原因となることもあります。
症状の特徴
痛み
痛みの程度や感じ方は一様ではありません。
急激なもの、燃えるような感じ、電撃のような鋭い痛みなどさまざまです。
痛みは腰から臀部、太もも、ふくらはぎ、足先にかけて広がることが多く、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
しびれや感覚の低下
しびれは、足や足指、腰から足にかけての部分に感じるのが一般的です。
持続的なものから断続的なものまでさまざまで、感覚が鈍くなることもあります。
特に長時間座っていると、症状が悪化することが多いです。
筋力低下
重症の場合、足を上げるのが困難になることもあります。
筋力低下は、特に長期間にわたって神経が圧迫されている場合に顕著に現れ、歩行が不安定になったり、階段の上り下りが困難になることがあります。
首の痛みの原因とその影響
首は多くの重要な血管と神経が集中しており、非常にデリケートな部位です。
従って、首の痛みを引き起こす原因は多岐にわたります。
首の痛みの主な原因
パソコンやスマートフォンの操作のために長時間同じ姿勢をとり続けたとき、不自然な態勢で寝てしまったとき、あるいは過労やストレス等によっても首周辺の筋肉痛や関節痛を引き起こします。
こうした一時的な筋肉痛や関節痛であれば、湿布等を貼る、しばらく安静にする、マッサージを施すなどの対処によって、おおむね快方に向かうでしょう。
しかし、いつまでも痛みが引かない、痛みが強くなるなどの場合は、何らかの病気が原因となっている可能性があります。
たとえば次のようなものです。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアは、坐骨神経痛の項で解説した腰椎椎間板ヘルニアと同様の症状が、頚椎に現れた病変です。
椎間板が突き出ることで神経が圧迫され、首や腕に痛みやしびれが出ます。
頚椎症性神経根症
頚椎症性神経根症は、加齢によって椎間板が変性し、骨棘というトゲのような突起が形成されることで神経組織が圧迫される状態です。
片側の腕や手、肩にしびれや痛みが現れます。
特に40代以上の中高年に多く見られます。
なお、神経根とは脊髄から枝分かれする神経の根元部分です。
頚椎症性脊髄症
頸症性脊髄症は、前述のような椎間板の変性や靭帯が肥大することが原因で、脊柱管が狭くなり、脊髄が圧迫される状態です。
四肢の感覚異常や運動障害、歩行障害、膀胱や直腸の機能障害が生じることがあります。
これらの病変は、医院等での早期の診断と適切な治療が重要です。
速やかに専門医へ連絡・予約のうえ診察を受けていただくことをお勧めします。
痛みの影響
日常活動の制限
痛みにより首を動かすことが困難になり、運転や仕事、日常生活に支障をきたしかねません。
睡眠障害
首の痛みは睡眠の質を低下させる原因となり、疲労感を増加させることがあります。
集中力の低下
慢性的な痛みはどうしても集中力や記憶力に影響を与えますから、多くの場合、仕事の効率は下がるでしょう。
情緒的な影響
継続的な痛みは不安やうつ病を引き起こすリスクを高めることが指摘されています。
坐骨神経痛と首の痛みの関連性
坐骨神経痛と首の痛みは、異なる部位の痛みであるにもかかわらず、身体の構造と機能の観点から見ると、互いに影響を及ぼし合うことがあります。
これは主に、身体の一部に生じた問題が全体のバランスや姿勢に影響を与えるためです。
姿勢の連鎖反応
首の痛みがあると、自然と体は痛みを避けるために姿勢を変えます。
このような姿勢の変化は腰や背中に余計な負担をかけることがあり、これが坐骨神経痛の発生や悪化につながることがあるのです。
逆に坐骨神経痛がある場合、歩行や立ち姿勢が変わり、それが首や上部背中に負担をかけ、首の痛みを引き起こすこともあります。
神経の連結
脊髄は首から腰まで伸びています。
前述のように、脊髄から枝分かれする神経の根元部分を神経根といいますが、体のどこかで生じた異常がこれらの神経根を刺激する場合があります。
特に首の問題があると、その影響が脊髄を通じて下部にも波及し、坐骨神経に影響を与える可能性があるのです。
生理学的ストレスと炎症
坐骨神経痛や首の痛みにはさまざまなパターンが存在しますが、腫れたり赤くなったり熱を持ったりなど炎症を伴うケースも少なくありません。
この炎症は局所的に始まることが多いのですが、慢性化すると全身に広がることがあり、他の部位の痛みを引き起こし得るわけです。
これが首と坐骨神経の痛みの相互作用を説明する一要因とされています。
効果的な治療法と予防策
効果的な治療と予防には、症状の根本的な原因を理解し、それに対応するアプローチを取る必要があります。
坐骨神経痛や首の痛みを治療する際、前述した相互関係を理解しておくことは重要です。
例えば、姿勢の改善は両方の痛みに良い影響を与える可能性がありますし、筋肉を強化し柔軟性を高める運動は、首と腰部の両方のサポートに役立つでしょう。
慢性的な痛みを管理し、再発を防ぐためには、医療的介入だけでなく、生活習慣の改善が重要です。
坐骨神経痛や首の痛みに対する診断
共通的な診断
問診
痛みの場所、種類、始まった時期、引き起こす要因などを詳しく質問します。
また、生活習慣や職業、過去の病歴なども確認事項です。
視診・触診・打診
患者の姿勢や動き、皮膚の異常を観察し、触診や打診で異常を確認します。
神経学的検査
神経の圧迫や損傷を確認するためのテストです。
反射検査や徒手筋力検査、知覚検査などが含まれます。
画像検査
X線、CT、MRIなどを使用して、骨や筋肉、神経の状態を詳しく調べます。
血液検査
感染症やリウマチ、癌など、筋骨格系の損傷以外の原因を特定するために行われる検査です。
電気生理学的検査
神経伝導検査や筋電図検査を行い、神経や筋肉の機能を評価します。
坐骨神経痛固有の診断
ラセーグテスト
仰向けに寝た状態で足を持ち上げ、痛みが出るかを確認します。腰椎椎間板ヘルニアの疑いがある場合に行われます。
FNSテスト
うつぶせに寝た状態で膝を曲げ、太ももを持ち上げて痛みが出るかを確認するテストです。
ケンプテスト
立った状態で体を回旋させ、痛みが出るかを確認します。
首の痛み固有の診断
スパーリングテスト
頭を側屈させ、圧迫を加えることで神経根への影響の有無を確認するテストです。
治療法の選択
坐骨神経痛や首の痛みに限らずですが、すべての治療はその原因と症状の重さに応じて適した方法が取られます。
以下のような治療法が一般的です。
物理療法
ストレッチや筋力トレーニングを通じて痛みやしびれを緩和します。
筋肉の緊張をほぐし、神経への圧迫を軽減することが目的です。
首の柔軟性と筋力を改善するためのエクササイズも行われます。
薬物療法
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛剤が用いられ、炎症と痛みを管理します。
プレガバリンやロキソニンなどが一般的です。
ブロック注射
痛みを感じている神経の周辺に局所麻酔薬や抗炎症薬を注射し、神経の情報伝達を抑えることで痛みやしびれを緩和します。
リハビリ治療
頚椎のけん引や温熱療法などが行われます。
手術
これらの治療法で効果が見られない場合は、手術が考慮されます。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などであれば、神経を圧迫している原因を取り除きます。
予防策
坐骨神経痛や首の痛みの発生を予防するためには、日常生活が重要です。
具体的には、以下に挙げる予防策をしっかり行うことで、リスクを減らすことができます。
適切な姿勢の維持
日常生活における姿勢を意識することが重要です。
長時間同じ姿勢でいることを避け、定期的に体勢を変えることが推奨されます。
定期的な運動
身体の柔軟性と筋力を向上させることで、姿勢をサポートし、痛みのリスクを減らすことができます。
水泳やヨガ、ピラティスが特に効果的だと言われますが、ウォーキングでもジョギングでもスクワットでも続けられそうなものであれば何でもいいです。
普段運動不足の方は、今日から取りかかることをお勧めします。
エルゴノミクス(人間工学)による改善
エルゴノミクスとは、人間の身体や心理の特性を考慮して、作業環境や道具を設計する学問分野です。
エルゴノミクスを応用して職場や家庭での作業環境を改善することで、首や背中への負担を軽減することができます。
例えば、コンピューターのモニターの位置を調整し、適切な椅子を使用するなどです。
ストレス管理
ストレスは筋肉の緊張を引き起こし、痛みを悪化させる可能性があります。
リラクゼーション技法を学び、ストレスを効果的に管理することが推奨されます。
まとめ
当ページでは、主に現代の生活習慣が引き起こす坐骨神経痛と首の痛みについて、みなさんが気になるところを解説してきましたが、いかがでしたか。
デスクワークやスマートフォン利用の増加により、最近これらの痛みを経験する人が増えています。
特にリモートワークが普及したことも影響しているでしょう。
坐骨神経痛は何らかの病気によって腰から足にかけての痛みやしびれが現れるのが特徴です。
また、首の痛みは、病変以外に不良姿勢やストレスが原因であることも多いです。
効果的な治療法と予防策についても詳しく説明し、適切な姿勢を意識することや、適度な運動等生活習慣の改善が重要であることを強調しました。
ここまで説明してきた内容を正しく理解し、ご自身に合った予防策を実践できれば、より健康的な生活を送ることができるはずです。
ただし、もし何らかの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談し受診してください。
みなさんの健康と幸福を心から祈っております。