腰痛が坐骨神経痛だと思っていたら、実は別の病気が原因だったというケースも少なくありません。
特に、がんによる腰痛は気づきにくく、見逃してしまうと症状が悪化する可能性があります。
そのため、がんによる腰痛の特徴を事前に知っておくことが大切です。
ここでは、坐骨神経痛と間違えやすい病気の特徴や症状、そして治療方法について、わかりやすく説明します。
目次
腰痛が起きる原因や症状とは?
腰痛は、体を動かしたり長時間同じ姿勢でいることで、筋肉やじん帯が疲れたり傷ついたりして起こります。
例えば、重いものを持ち上げたり、ずっと悪い姿勢で座っていたりすると、腰に大きな負担がかかり、痛みが出ることがあります。
実は、座っている姿勢も立っているより腰に負担がかかるので、デスクワークをしている人も腰痛になりやすいんです。
また、加齢や疲労、肥満も腰痛の原因になります。
年齢が上がると筋肉や骨が弱くなり、腰に痛みが出やすくなるのが特徴です。
腰痛の症状はどう違う?慢性的な腰痛が示す体の危険信号
がんが腰痛を引き起こすこともあります。
がんは最初は特定の臓器にできますが、進行すると血液やリンパ液に乗って体の他の部分に広がることがあります。
この広がりのことを「転移」といいます。
特に、がんが背骨に転移すると、腰痛の原因になります。
これは、がん細胞が骨を壊したり、神経を圧迫してしまうからです。
背骨にがんが転移している場合、痛みが徐々にひどくなることが多く、じっとしていても痛みが出たり、足にしびれや痛みが広がったりすることもあります。
坐骨神経痛と勘違いしやすい?がんによる腰の痛み方
がんによる痛み(がん性疼痛)は、進行に伴って徐々に強くなること状態です。
初期には不快感や軽い痛みとして感じることが多いですが、がんの進行に伴い、以下のような痛み方が見られます。
- ・持続的な痛み:体を動かしていない時にも痛みを感じる
- ・徐々に悪化する痛み:時間が経つにつれて悪化する
- ・夜間の痛み:寝ている間や休んでいる間に痛みが増す
- ・局所的な痛み:骨転移の場合、痛みが特定の部位に集中し、その部位の骨がもろくなる
がん細胞が骨を侵食して骨の構造を弱めるため、持続的な鈍い痛みが感じられます。
特に夜間や安静時に痛みが増すことが特徴です。
また、背骨に転移した場合、がん細胞が増殖して周囲の神経を圧迫し、鋭い痛みやしびれを伴うことがあります。
この痛みは腰から足にかけて広がることもあり、「坐骨神経痛」のように感じられることも多いです。
骨転移が進行すると、骨がもろくなり、ちょっとした衝撃で骨折することがあります。
これを「病的骨折」と呼び、非常に激しい痛みを伴います。
こうした痛みが1ヵ月以上続いたり、悪化する場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
ただの腰痛?がんによる痛みとの違いをチェック
がんによる腰痛は特定のがんが進行し、周囲の臓器や神経に影響を及ぼすことで生じます。
特に大腸がん、卵巣がん、すい臓がん、そして骨転移が腰痛を引き起こす主要な原因となる場合があります。
以下にそれぞれのケースと対処法について紹介します。
大腸がんが引き起こす腰痛
大腸がんが進行すると、がんが周囲の神経や骨盤内の臓器を圧迫し、腰痛が発生します。
例えば、左側の大腸にがんがあった場合、慢性的な腹部の痛みとともに腰痛が生じ、食欲低下や体重減少が見られるケースがあります。
このような場合、がんの進行による腸閉塞のリスクが高く、早期に治療が必要です。
大腸がんを予防するためには、普段の生活を少しずつ改善することが大切です。
- 【大腸がんの予防対策】
- ①サラダやフルーツを毎日の食事に取り入れる
- ②学校の帰りに少し歩いたり、週末に家族と散歩する
- ③カルシウムを含む牛乳やヨーグルトをしっかり取ること
- ④タバコを吸ったり、お酒をたくさん飲むことはできるだけ控える
- ⑤40歳以上になったら、年に一度は病院で大腸がんの検査を受ける
逆に、食品添加物が多い食べ物(加工食品やスナック菓子)や、お肉の食べすぎ、そして運動不足は、大腸がんの原因になることがあります。
大腸がんを早く見つけるためには、年に一度「大腸がん検診」を受けるようにしましょう。
卵巣がんによる腰痛
女性特有の卵巣がんは、下腹部の痛みや腰痛が現れます。
がんは骨盤内に発症するため、がんが進行して骨盤内の臓器や神経を圧迫します。
卵巣がんは自覚症状が出にくいため、症状が現れた時にはすでに進行していることが多いので気づくのが遅れがちです。
長期間、原因不明の腹部の膨満感や疲労感が続き、検査を受けた結果、進行した卵巣がんが発見されるケースも少なくありません。
卵巣がんには、子宮頸がん検診のような定期的な検査がないのが現状です。
卵巣がんの早期発見のためにも、健康診断や人間ドックでお腹のエコー検査をオプションで追加したり、婦人科で定期的に診てもらったりすることが大切です。
特に40歳を過ぎると卵巣がんのリスクが高まりますので、症状が出る前に予防として、定期的に婦人科で検査を受けることをおすすめします。
すい臓がんが進行した際の腰痛
膵臓は腰に近い位置にあるため、腰痛を発症しやすいです。
膵臓がんが進行すると、神経叢(しんけいそう)という神経の集まりを刺激し、腰痛や背中の痛みが生じやすくなります。
この痛みは夜間に悪化しやすく、四つん這いの姿勢を取ると痛みが軽減することもあります。
また、進行した場合は膵臓がんは早期には症状が出にくいですが、進行すると激しい腹痛とともに腰痛が現れるのが特徴です。
すい臓がんを防ぐためには、すい臓に負担をかけるような生活習慣をやめることが大切です。
これには、すい炎や糖尿病の予防にもつながるポイントがたくさんあります。
- ・お酒を控える・やめる
- ・適度な運動で健康を保つこと
- ・できるだけ早くタバコをやめる
- ・リラックスする時間を持つこと
- ・ゆっくり噛んで食事を楽しむこと
- ・肉や脂分の多い食べ物を減らすこと
- ・コーヒーを飲み過ぎないに気をつける
- ・日常生活で野菜や果物をたくさん食べる
- ・一度にたくさん食べたり飲んだりしない
- ・膵臓を休ませるためにもしっかり眠ること
これらの生活習慣を守らないと、特に年を取ったときに、すい臓が疲れて病気になりやすくなります。
たとえば、若い頃に運動後のビールが好きだった人が、そのままの習慣を続けると、年齢を重ねてから糖尿病やすい臓の問題に直面するかもしれません。
また、すい臓が弱ると、脂っこい食べ物を食べたときに背中に痛みを感じたり、下痢をするようになったりします。
これを避けるためにも、健康的な食事と生活を心がけることが、すい臓がんの予防につながるでしょう。
骨転移による腰痛
がん細胞が背骨(腰椎)や骨盤などの骨に転移すると、腰痛が引き起こされることがあります。
がんは血液やリンパ液に乗って骨に広がり、そこに定着して増殖し始めます。
これを「骨転移」といいます。
骨転移が起こると、がん細胞が骨を破壊してしまい、骨がもろくなりやすくなります。
これによって痛みが強くなったり、骨折しやすくなったりするのです。
特に、肺がんは初期に症状が出にくいため、知らないうちに骨に転移している可能性があります。
そのため、腰痛が続く場合は、念のため医師に相談しつつ、詳しい検査を受けることが大切です。
がんによる腰痛の治療と対処法
がんによる腰痛は、がんそのものを治療しない限り根本的に改善されることは難しいですが、痛みを緩和するための治療法もあります。
以下で治療方法を解説します。
鎮痛薬
がんによる痛み(がん性疼痛)には、特に強い痛みを抑えるためにオピオイド系鎮痛薬が使用されます。
これには、「モルヒネ」や「オキシコドン」などの薬が含まれます。
オピオイドは、痛みを感じる神経に直接作用して、強力に痛みを緩和します。
痛みが軽い場合や、中程度の痛みには、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドが併用されることもあります。
例えば、イブプロフェンやアスピリンといった市販薬は軽い痛みを和らげますが、がん性疼痛に対しては、医師の指示のもとで使われます。
放射線療法
がんが骨に転移している場合、放射線療法が効果的です。
放射線は、がん細胞を縮小させることで、痛みを引き起こしている神経への圧迫を軽減し、痛みを和らげます。
例えば、骨にがんが広がって神経を圧迫している場合、放射線を当てることでその圧迫が減り、痛みが楽になります。
手術
がんが原因で骨が弱くなり、骨折してしまう場合、手術で骨を固定することがあります。
例えば、骨がんによって骨が脆くなり、腰や背中の骨が折れやすくなるのです。
この場合、骨を固定する手術を行うことで、痛みや動きやすさを改善します。
がんによる慢性腰痛(坐骨神経痛)注意すべき症状
がんによる腰痛は、通常の腰痛と異なる点がいくつかあります。
以下の症状がある場合は、医療機関を早急に受診することが重要です。
- ・1ヵ月以上続く腰痛
- ・休んでいても痛む、夜間に痛みが増す
- ・腰痛と同時に体重減少、食欲不振、倦怠感などの全身症状がある
- ・過去にがんを患っていた場合
「最近体重が急に減り、疲れやすく食欲もなくなってきた…。」
このような場合、単なる腰痛ではなく、がんが原因の可能性があります。
なるべく早めにがん専門の医療機関で診察を受け、早期発見・治療を受ける必要があります。
がんによる腰痛は、がんの進行や転移の程度に応じて治療法が異なるため、医師による正確な診断と適切な治療が非常に重要です。
がんによる慢性腰痛(坐骨神経痛)早期発見が鍵!健康管理を心がけよう
今回の記事では、坐骨神経痛と間違えやすい病気、特にがんによる腰痛について、特徴や症状、そして治療方法を説明しました。
腰痛は多くの人が経験する一般的な症状ですが、坐骨神経痛だと思っていたら、実は他の病気が原因だったというケースもあります。
特に注意したいのが、がんによる腰痛です。
がんによる腰痛は初期症状が分かりにくく、放っておくと進行してしまうことがあります。
坐骨神経痛は、通常腰からお尻、さらには足まで痛みやしびれが広がることが特徴です。
例えば、長時間立っていると足が痛くなったり、歩くのが辛くなったりすることがあります。
しかし、がんによる腰痛は、腰の特定の部分に痛みが集中することが多く、痛みの広がり方が違います。
例えば、腰の一部分に鋭い痛みを感じたり、痛みがどこにも広がらずに局所的に感じることが特徴です。
もし腰痛に「体重が急激に減少」や「異常な疲労感」などのような症状がある場合、がんの可能性を考慮して、すぐに医師に相談することが大切です。
がんが原因の腰痛の場合、まずはがんそのものの治療が必要です。
一般的には、手術で腫瘍を取り除いたり、抗がん剤治療や放射線治療が行われます。
腰痛が長期間続く場合や、今までとは違う痛みを感じた場合は、自己判断せずに医師に相談することが大切です。
腰痛やがんの検査では、通常X線(レントゲン)やCTが使われますが、これらの検査では転移した脊椎の腫瘍を早期に見つけることが難しいことがあります。
より詳しい検査としてMRI検査も必ず受けるようにしましょう。
MRIは、骨や神経、腫瘍などの細かい部分まで映し出すことができるので、がんの転移を早い段階で発見するのに役立ちます。
早期に診断されれば、治療の選択肢も増え、予後も良くなる可能性が高くなります。
腰痛がいつもと違うと感じたら、早めに診療所や整形外科に受診しましょう。