「腰痛ってどうして起こるんだろう」
「ぎっくり腰を繰り返し発症してしまう」
「腰を痛めやすいけど、どうして?」
腰痛持ちの人や腰痛を経験したことがある人は、腰が痛くなる仕組みや原因など、不思議に思ったことがある人も多いのではないでしょうか?
日本整形外科学会の2003年の調査では「治療を必要とするほどの腰痛を経験した人」の割合が男性57.1%、女性51.1%の人が、腰痛を経験したことがあるという情報が出ています。しかし、この調査は「治療を必要とするほどの腰痛を経験した人」です。治療を必要としない「軽度の腰痛経験者」の有無を考えると、より多くの人が腰痛を経験したことがあると考えられるでしょう。
この記事では、腰痛のメカニズムについての解説や、腰痛の治し方や対策をご紹介しています。ぜひ最後までお読みください。
引用:https://www.joa.or.jp/media/comment/pdf/lumbago_report_030731.pdf
目次
腰痛が起こるメカニズム
人の背骨は横から見るとゆるやかなS字カーブになっていることをご存知の方も多いでしょう。頸椎(首)は少し前方へカーブし、胸椎(背中)は少し後方へカーブ、腰椎(腰)はまた前方へカーブして尾てい骨へと繋がっています。姿勢不良や猫背などが原因でこのS字カーブが崩れることで、腰痛が起こります。また、腰だけでなく首こりや肩こり、ストレートネックや背部痛の原因にもなってしまうでしょう。
腰椎は上半身と下半身を繋いでいる唯一の骨です。身体をかがめる、反らせる、捻るなどの動作は、腰椎に負荷がかかってしまうことが想像できます。これらの動作を繰り返すことや、異常に負荷をかけることで腰に痛みが生じてしまうでしょう。
腰痛のメカニズムはさまざまですが、他にも筋肉が硬くなっていることや、筋肉量がないこと、または椎間板の問題など、腰が痛くなる原因は数多くあります。この章では、腰痛が起こる主な原因をご紹介します。
筋肉や関節の問題
腰痛が起こるのは、腰回りの骨だけが原因ではありません。筋肉や関節が硬くなっていることや、筋力が減っている、または身体の筋肉のバランスが崩れていることなどが原因で腰痛を引き起こしてしまいます。
長時間のデスクワークや車の運転では、同じ姿勢を取り続けることで背中や腰の筋肉が緊張状態となり、血流が悪くなって腰痛を引き起こす原因になります。また、腰回りの筋肉は腰椎を支えるコルセットのような役割をしています。腰回りの筋肉が無いと、腰椎を支える役割が果たせずに腰椎に負荷がかかり、腰を痛めてしまうでしょう。他にも、腰とは関係の無さそうな前側の太ももの筋肉にも原因があるかも知れません。前側の太ももの筋肉を使いすぎて柔軟性が無いと、骨盤が前側に引っ張られて反り腰となり、腰が痛いと感じてしまうでしょう。
椎間板の問題
腰椎の骨と骨の間には椎間板があります。椎間板の中にはゼリー状のような弾力性のある髄核があります。髄核は、圧力や衝撃を吸収してくれるクッションのような役割を果たしています。髄核の弾力性がなくなったり、もろくなったりして髄核の一部が飛び出し、後ろを通る神経を圧迫したり刺激したりすることで痛みが生じます。ヘルニアという病名を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。椎間板が原因で腰に痛みが生じることを腰椎椎間板ヘルニアといいます。原因はさまざまですが、前かがみでの作業や、重いものを急に持ち上げるなどの動作で発症することが多くあります。
神経の問題
背骨には神経が通る道の脊柱管があります。腰部の脊柱管が何らかの影響で、圧迫されたり刺激されたりすることで痛みが生じます。腰部にある神経は足の指にまで伸びているので、腰痛の症状だけでなく、どにお尻や下肢な痛みやしびれなどの症状が現れるでしょう。
腰部脊柱管狭窄症
椎間板や腰椎が変形や変性をし、神経が通る脊柱管を圧迫したり刺激したりすることを腰部脊柱管狭窄症といいます。症状は、下肢の痛みやしびれ、背筋を伸ばすと痛みが生じるなどがあります。脊柱管狭窄症特有の症状に、間欠性跛行があります。間欠性跛行とは、歩くと強い痛みが現れ、休むと痛みが治まるといった症状です。脊柱管狭窄症の多くの原因は加齢によるものです。骨の老朽化が進み、腰椎や椎間板が変形や変性をしてしまうことで、症状を発症してしまいます。
腰椎変性すべり症・腰椎分離すべり症
腰椎は前側に椎体、後ろ側に椎弓と棘突起があり、間には脊柱管があります。腰椎が前へすべり出てしまうことを腰椎変性すべり症といい、椎体と椎弓が分離してすべり出てしまうことを腰椎分離すべり症といいます。どちらも椎体の間を通る脊柱管を圧迫しているので、下肢の痛みやしびれなどの症状が現れます。また、腰部脊柱管狭窄症と同様の間欠性跛行の症状が現れることもあります。原因は、スポーツで腰に負荷がかかる動きや腰を捻るなどの動作で発症します。また、加齢が原因で腰椎や椎間板が老化して発症することもあります。
婦人科系の問題
女性特有の腰痛で婦人科系が原因の可能性があります。女性は生理前や生理中、妊娠中などに分泌されるホルモンの関係で腰に痛みが生じてしまいます。また、子宮の病気が原因で腰を痛めてしまうこともあります。
月経痛
生理前や生理中などは、プロスタグランジンという物質が生成されます。プロスタグランジンは、経血を排出させるために子宮を収縮させています。同時に血管も収縮されるので、身体の血流が悪くなり、腰痛を引き起こしてしまうでしょう。
妊娠
女性の身体は妊娠をするとリラキシンというホルモンが分泌されます。リラキシンは、腰周辺の関節や靱帯を緩める働きがあります。骨盤は上半身を支える土台となっています。骨盤周辺の関節や靱帯が緩むことで身体のバランスが崩れてしまうので、過度に力が入ったり、筋肉が緊張したりして腰を痛めてしまうでしょう。
また、お腹が大きくなるにつれて重くなり、骨盤が前方へ引っ張られることで腰が反れた「反り腰」の状態になってしまいます。これらが原因で腰痛を引き起こしてしまいます。
その他の婦人科系の疾患
女性特有の疾患に、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気があります。
子宮内膜症とは、通常であれば子宮の中にできる子宮内膜が、何らかの影響で大量に作られたり、子宮以外のところで作られたりすることです。子宮以外のところで作られた子宮内膜は、スムーズに体外へと排出されず、他の組織と癒着を起こして腰痛の症状が現れます。また、子宮筋腫は子宮にできる筋腫のことです。筋腫ができて肥大化してしまうと周辺の臓器を圧迫して腰に痛みが生じてしまいます。
内臓疾患の問題
実は腰痛の原因が、内臓の疾患の可能性があることをご存知でしょうか。消化器系や泌尿器系、循環器系などの病気が原因で腰痛を引き起こすことがあります。また、脊髄や脊椎の疾患が原因の可能性も。腰が痛いからと腰痛体操を行ったり、整骨院や整体院などを受診して症状が改善されていますか?内臓の疾患が原因で腰痛を引き起こしている場合と、骨や関節、筋肉が原因で腰痛を引き起こしている場合の見分け方は「安静にしていても痛みがあるかどうか」です。
通常の骨や関節、筋肉などが原因の腰痛は、安静時には痛みが少なく、立ったり座ったりなどの身体を動かす動作で痛みが生じるでしょう。それに対して内臓の疾患が原因の場合は、横になって安静にしていても痛みが生じる、または症状が改善されず、痛みが悪化してしまうことがあります。ご自身の腰痛が安静時にも痛みがある場合は、整形外科や内科などを早めに受診するようにしてください。
「腰痛の原因のひとつに内臓の疾患が関係している」記事はこちら⇒
腰痛の対処法
何をするにも腰が痛くて、動くのが億劫になってしまう腰痛。少しでも痛みを緩和してストレスを取り除く方法が知りたいもの。この章では、腰痛の治し方をご紹介しています。ただし、痛みが激しい時はまずは安静にすることを優先させてください。無理に身体を動かすと悪化する恐れがあります。また、腰痛の治療中の人は、かかりつけ医に痛みが生じたことを相談してください。
湿布薬やロキソニンを使用
急性的で炎症がある腰痛にはロキソニンが効きます。しかし、炎症がない慢性的な腰痛はロキソニンの効果はあまり感じられないでしょう。外用薬のロキソニンは部位ごとに使いやすく、パップ剤やテープ剤、ローションやゲルタイプなどがあります。内服薬のロキソニンはドラッグストアや薬局などで購入ができます。ただし、腰痛以外の疾患がある人や、日常から薬を服用している人は、医師に相談してからロキソニンを服用するようにしてください。注意点として、ロキソニンは市販で購入できますが、第一類医薬品です。薬剤師からの説明や副作用についてしっかりと説明を受けたうえで、服用するようにしましょう。
「ロキソニン湿布の効果」についての記事はこちら
整体院や整形外科へ行く
整体院や整形外科では、筋肉をほぐして関節などを整え、バランスの良い身体へと整えてくれます。患者一人ひとりの身体の癖なども見抜いてくれるので、自分の改善点が見つかるでしょう。また、自分にあった腰痛体操や運動が分からない人なども、医師に相談すると患者にあったおすすめの運動法を教えてくれます。
また、腰痛には骨や関節、筋肉以外にも、内臓の疾患が原因で腰に痛みが生じることがあります。腰が痛くなって「ただの腰痛」だと思わずに、一度整形外科などを受診すると良いでしょう。また、腰痛の病気の椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などは、ほっておくことで症状が悪化する可能性があります。医師に適切な診断をしてもらい、治療をすることをおすすめします。
腰痛体操
腰に痛みが生じたら、腰に負担がかからない姿勢をとって、湿布やロキソニンを服用して痛みが治まるまで、まずは安静にしてください。痛みが治まって動けそうになると、徐々に体を動かすようにしてください。腰痛体操をすることで、腰回りの筋肉や関節がほぐれて痛みが緩和できるでしょう。反対に、腰が痛いからと安静にしすぎると、慢性化してしまったり、かえって腰痛を悪化させてしまう可能性があります。腰の様子を見ながら、無理のない範囲で腰痛体操などを続け、身体を動かすようにしましょう。
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腰痛の対策
この章では、腰痛の対策をご紹介します。ストレスになる腰痛は、日常生活に以下のものを取り入れるだけで対策ができます。誰でも今から始められる内容を記載しているので、ぜひ参考にしてください。
日常に運動やストレッチを取り入れる
腰痛には原因の分かる特異的腰痛と、原因の分からない非特異的腰痛があります。非特異的腰痛の多くは、日常生活の姿勢が悪いことが原因で腰痛を引き起こしていると考えられます。正しい姿勢を保つにはある程度の筋力が必要です。正しい姿勢を保つ為の筋力が無いが故に、自分の使いやすい筋肉ばかりを使って腰痛を引き起こしてしまいます。
日常の生活で運動やストレッチを取り入れることで、身体に筋肉が着き正しい姿勢の維持が可能となるでしょう。また、ストレッチを行うことで、使いすぎている筋肉の緊張をほぐしてくれます。なお、運動の前後には必ずストレッチを行ってください。運動前は怪我の予防に、運動後は使った筋肉の緊張をほぐすために行います。日常から運動やストレッチを取り入れることで腰痛対策となるでしょう。
腰に負担がかかる動作を避ける
長時間のデスクワークや、中腰で重い物を持ち上げるなどの作業は腰に負荷がかかっています。デスクワークの場合は小まめに休憩を摂り、席を立って伸びをして身体をほぐすようにしてください。中腰で重い物を持ち上げる作業の人は、しっかりとしゃがんでから荷物を持つようにしましょう。また、コルセットを使用しての作業もおすすめです。ただし、コルセットはあくまでも補助の役割です。コルセットを付けっぱなしにすることや、就寝中にも使用することは控えてください。血流が悪くなることや、コルセットを使用していることで、腰回りの筋力が低下して腰痛を悪化させてしまう可能性があります。腰を使う作業のときにだけ使用するようにしましょう。
食生活の見直し
食生活と腰痛は関わりが無いように感じますが、実は関係しています。そもそも、肥満は腰痛の原因になります。上半身や腰回りに余分な脂肪がついていると、上半身を支える腰椎に過剰な負荷がかかり腰を痛めてしまうでしょう。
アルコールの過剰摂取や暴飲暴食は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めることや、内臓の疾患の原因になってしまいます。外食を減らし、自炊するときの味付けに意識をするようにしましょう。
また、夏場の食事にも注意が必要です。身の危険を感じるほどの猛暑となる日本ですが、ついつい冷たい飲み物や食事をしてしまい、内臓が冷えてしまっているかも知れません。冷えは腰痛の原因になります。身体が冷えると血管が収縮します。血液は新しい酸素や栄養を運んで、不要な老廃物を回収してくれます。血管が収縮することで新しい酸素や栄養が行き届かず、不要な老廃物が溜まって腰痛を発症してしまうでしょう。
「腰痛に効く食べ物や食べてはいけないもの」の記事はこちら⇒https://selfcareseitai.com/blog/youtsuu-tabetehaikenaimono/
まとめ
腰痛のメカニズムは、背骨のS字カーブが崩れることや腰椎に過度な負荷がかかってしまうことです。腰椎は上半身と下半身を支える唯一の骨です。日常生活の姿勢不良や腰に負荷がかかる動作を繰り返し行うことで、腰に痛みが生じてしまうでしょう。また、腰痛は骨や関節の損傷や、筋肉の凝りだけの問題で発症するとは限りません。背骨を通る神経を圧迫することや、女性特有のホルモンが原因だったり、内臓の疾患が隠れていたりする場合があります。
腰に痛みが生じると、まずは安静にして整形外科や整体院へ訪問して検査をすると良いでしょう。原因を突き止め、治療をしていく必要があります。また、対策として、腰に負担のかかる動作を控えることはもちろんですが、日常から運動やストレッチなどを取り入れ、食生活の改善に意識を向けると良いでしょう。身体を動かす運動は、腰痛対策にもなり生活習慣病の予防にもなります。食事は暴飲暴食を避け、バランスの良い食生活を心がけると良いでしょう。