【紹介文】
日本人の約7割が、腰痛で悩んでいるといわれています。腰痛はどうして起こるのでしょうか。また、腰痛を治すには、どうすればいいのでしょうか。本記事では、さまざまな腰痛の治し方をご紹介します。腰痛で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
腰痛の原因
腰痛というのは病名ではなく、腰に表れる痛みやだるさなどの症状の総称です。たとえば、ぎっくり腰やヘルニアなども腰痛に含まれます。腰痛が起こるのは、腰に原因がある場合のほか、職業や生活習慣、ストレスなどの要因が複合して起こる場合もあります。そのため、腰痛を改善したければ、自分の生活をかえりみることも大切です。腰痛が起こる原因はさまざまで、複数の要因が絡んでいるケースも珍しくありません。
しかも腰痛の原因が特定できるのは15%だけで、あとの85%は原因不明です。腰痛は、何かの病気が原因となって、起こることもあります。腰痛を起こす代表的な病気には、椎間板ヘルニア、高齢者に多い腰部脊柱管狭窄症、骨粗しょう症などがあります。これらはすべて、脊髄の神経が圧迫されて起こるもので、圧迫がひどいと激しい痛みや足のしびれなどが起こります。
腰痛は単なる腰の痛みでだけなく、内臓や血管、心因性の病気に原因があって起こる場合もあります。特に内臓に原因がある場合は、早期発見して治療する必要があるので、念のため内科を受診することも大切です。
腰痛を誘発するさまざまな要因
腰痛の大半は原因不明で、エックス線やCT、MRIなどで検査しても、痛みの原因を特定できない場合がほとんどです。しかし、ハッキリした原因はわからなくても、腰痛につながる要因は明らかになっています。では次に、腰痛を起こす要因をいくつかご紹介しましょう。
日頃の生活習慣
仕事やプライベートな生活で、同じ姿勢を長時間続けなければならない場合もあります。たとえば、長時間中腰の姿勢を続けたり、背中を丸めたままでいたりすると、腰や背中の筋肉が緊張し続けるために、腰に大きな負担がかかります。また、運動不足で腰を支える筋肉が弱っていたり、寒さで筋肉が硬くなっている場合なども、痛みが起こりやすくなります。
通常は少し休めば回復することも多いのですが、体が疲れていたり、抵抗力がなくなっていたりストレスを抱えていると、回復しきれない場合もあるようです。このような状態が続くと、腰への負担が大きくなり、腰痛という形で症状が表れます。慢性化しているケースが多いために、治療を受けてもなかなか改善しないのも、腰痛の特徴の1つです。
労働環境の問題
腰痛の大きな要因の1つに、労働環境の問題があります。労働環境が悪いために、腰痛になる人は非常に多いのが現状です。重いものを持ち上げて運ぶような作業を続けていると、知らず知らずのうちに腰に負担がかかっています。また、体をひねったり、曲げたりする動作が多い仕事も要注意です。腰に負担がかかるために、腰痛になるケースは、介護や看護の現場でも増えているようです。
これとは逆に、体に負担がかからないデスクワークや、トラックドライバーにも腰痛が多く見られます。体に大きな負荷がかからなくても、同じ姿勢を続けるだけで、腰痛を引き起こす要因となるのです。長時間椅子や運転席に座り続けていると、股関節とその周辺の筋肉の柔軟性が失われるために、腰痛が起こりやすくなります。
また、体にかかる負担だけでなく、仕事に対するやりがいや、職場の人間関係のストレスなども、腰痛の発症と無関係ではないようです。さらに、運動不足や喫煙が、腰痛に影響していることもわかっているので、腰痛対策のためには、軽い運動をしたり禁煙することも必要です。
女性特有の腰痛
腰痛は、妊娠や生理など、女性特有の原因によって起こる場合もあります。生理痛がひどくなると、腰痛を起こすことがあります。また、妊娠中は大きなお腹を支えるために、腰に負担がかかり腰痛を引き起こす要因となります。特に臨月が近づくと、お腹がせり出すために体の重心が変わり、常に上体を反らせる姿勢になるため、腰痛を起こしやすくなるのです。
また、妊娠により子宮が大きくなるために、骨盤の周りの体幹支持筋群という筋肉が引っ張られることも、腰痛の原因となります。出産後も、子育てに追われるストレスから、腰痛がひどくなったり慢性化することも多いようです。さらに、更年期になるとホルモンバランスが変わるために、腰痛が起こることもあります。これらはすべて、女性特有の腰痛の要因です。
人間の体は構造的に腰痛を起こしやすい
人類が二足歩行をするようになって、腰痛という症状が発生しました。人類が四つ足で歩いていた頃には、まだ腰痛はありませんでした。二足歩行をすると、体の大部分の重さが腰にかかるので、どうしても腰を痛めやすいのです。これは、二足歩行をするがゆえに起こる症状なので、腰痛は人間特有の病気と言っていいでしょう。おそらく、人間以外の動物には、腰痛は見られないはずです。
人間の体は、腰にかかる負担を少しでも減らすために、背骨はゆるやかなS字カーブを描いています。さらに腹圧が腰椎を支え、背骨と背骨の間には椎間板がクッションとして配置されています。しかし、これだけでは腰痛を抑えるのに十分とはいえず、ちょっとした過重労働やストレスなどの要因が加わると、腰痛を発症してしまうのです。
腰痛と密接な関係のある筋肉
背骨は椎骨という、ブロック状の骨が積み重なってできています。この椎骨の腰の部分が腰椎で、筋肉と靭帯によって支えられています。腰椎は前方に、ゆるやかなS字カーブを描いでいますが、腰椎を支える筋肉が弱くなると、このS字カーブが大きくなり、腰に負担がかかって腰痛を起こしやすくなります。
腰の周辺の筋肉の中で、腰痛の原因となるのは腸腰筋(ちょうようきん)、腰方形筋(ようほうけいきん)、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)の3つです。これらの筋肉が弱ったり硬くなったりすると、腰への負担が大きくなるので腰痛を発症しやすくなります。
腸腰筋
股関節の奥にあるインナーマッスルで、大腰筋・腸骨筋・小腰筋の3つの筋肉を合わせて腸腰筋と呼ばれます。腹筋の代表的な筋肉で、腰を前に曲げる際に使われる筋肉です。デスクワークなどのように、椅子に座ったままの姿勢が続くと、腸腰筋が硬くなって骨盤のゆがみの原因となり、腰痛へとつながります。腸腰筋は体の奥にあるので、マッサージなどの外部からの治療はできない筋肉です。
腰方形筋
腰の奥にある筋肉で、腰椎を両側から支えています。姿勢を安定させるのに重要な筋肉で、左右対称についているので、バランスが保てないと、片方の腰が痛むような症状が発生しやすくなります。
脊柱起立筋
頭蓋骨から骨盤まで、背骨に沿ってついている筋肉で、一般的に背筋と呼ばれる筋肉のことです。棘筋(ちょくきん)、最長筋、腸肋筋(ちょうろっきん)の3つの筋肉で構成されており、背骨をまっすぐ保つのに欠かせない筋肉です。この筋肉が衰えると背骨のS字カーブが深くなるため、腰に負担がかかって腰痛を発症しやすくなります。
腰痛を改善する筋トレ法
腰痛を改善したり、予防に役立つ筋トレ法・ストレッチがあるのでご紹介しましょう。簡単にできて腰痛の改善や予防効果があるので、腰痛で困っている人は試してみてください。腰痛の大きな原因の1つに、腰周りの筋肉の衰えがあります。腰の姿勢を維持するために必要な筋肉が衰えると、腰に余計な負担がかかるので、腰痛を発症しやすくなります。
そこで、腰痛改善のためには、腰周りにある腹直筋や脊柱起立筋、腸腰筋を鍛えるのが効果的です。普段トレーニングをしていない人は、最初からいきなりハードな筋トレをすると逆効果になるので、少ない回数から始めることが大切です。
腹直筋を鍛える
腹直筋は、お腹の表面に沿っている板チョコ型の筋肉で、いわゆる「シックスパック」と呼ばれる部位です。腹筋は腹直筋の他に大きく分けて2つの筋肉(腹横筋と腹斜筋)が存在しており、それぞれの筋肉が重要な役割を担っています。
腹直筋はクランチという筋トレ法で鍛えることができます。簡単なエクササイズで、しっかりとした腹筋を作ることができます。
クランチは以下の方法で行います。
1.まず、仰向けになり、膝を曲げます。
手は頭の後ろに置くか、お腹の上に置きます。
2.息を吐きながら、おへそを見るように上体を起こします。
3.限界まで起こしたら、息を吸いながらゆっくり後ろへ倒します(肩甲骨が床につかないところまで)。
この動作を10回×3セット行います。
クランチを行う際は、腰が浮かないように注意してください。首ではなく背中を丸めるイメージで行うのがポイントです。キツくなっても、反動を使わないようにしましょう。反動を使うと、腰の痛みに繋がる可能性があります。
脊柱起立筋を鍛える
脊柱起立筋はリバースプランクという筋トレ法で鍛えましょう。背中を鍛えるのに効果的なエクササイズで、通常のプランクとは逆に仰向けの状態で行います。
リバースプランクは以下の方法で行います。
1.まず、座った状態で腕を身体の横に置き、肘を床につけます。
2.身体を持ち上げ、両足の踵で身体を支え、頭からつま先まで一直線にします。
初心者は20〜30秒間を3セット実施します。リバースプランクは通常のプランクよりも負荷が高いため、初心者は短い時間から始めましょう。少し慣れたら、30〜45秒間を3セット実施します。実施する際に、上半身から下半身まで一直線に保つのがポイントです。首も真っ直ぐに維持しましょう。足首は180度(真っ直ぐ)にして、太ももに力を入れるのがコツです。
腸腰筋を鍛える
腸腰筋は、身体のバランスに大きく影響する重要な筋肉です。以下に、腸腰筋を鍛える方法をご紹介します。腸腰筋を鍛えるには、ニートゥーエルボーという筋トレ法が効果的です。ニートゥーエルボーは、腹筋と腸腰筋を鍛えるための体幹トレーニングです。このエクササイズは、立った姿勢から上体を斜め下にひねりながら脚を上げ、対角にある肘とひざを付ける動作を行います。以下に具体的な方法とポイントをご紹介します。
1.まず、四つんばいの姿勢をとりましょう。
2.次に、膝を肘に近づけるように脚を引き寄せるイメージで動作します。腹筋を意識し、負荷がかかっていることを実感してください。腰を曲げずに、腹部を丸め込むように行うのがコツです。股関節をしっかり曲げて、膝を上げるようにしましょう。
この動作を左右各20回×3セット行ってください。
腰痛を改善する電気治療マッサージ
筋トレで腰痛を改善できるとわかっても、筋トレを継続して続けるのはかなり困難です。仕事や家事の合間に筋トレするわけですから、どうしても忙しさに負けて、筋トレが続かなくなってしまいます。そういう方には、家庭用の電気治療器を使ったマッサージがおすすめです。ここでは、同様の効果が得られる経皮的電気刺激(TENS)によるマッサージをご紹介します。
TENSによるマッサージの効能
TENSとは、ゲートコントロール理論をきっかけに開発されたもので、低周波治療とも呼ばれます。腰痛のある場所に電極を貼って、知覚神経に弱い電流を流して痛みを改善する治療法です。短時間の施術で効果が実感できるのが特徴で、施術が終わっても効果が持続します。ではなぜ、TENSによるマッサージ治療が、腰痛に効くのでしょうか。
筋肉が硬くなると、血流が滞るため、細胞に栄養や酸素が供給されにくくなります。この状態が続くと、痛みを生み出す発痛物質が分泌されるので、その部位に痛みが生じます。この時点で、何らかの改善策を講じれば痛みは軽減しますが、そのままにしておくと、痛みのためにさらに筋肉が緊張するので、なおさら血行が悪化します。
こうなると、さらに発痛物質が分泌されるという、悪循環に陥ってしまいます。この状態が腰部に起こるのが腰痛であり、悪化すると慢性腰痛になります。これを改善するには、血行を促進して痛みの元を断ち切るのが効果的ですが、そのために有効なのがマッサージです。
患部をマッサージすることにより、その部位の血行が促進されるので、筋肉の緊張が和らぎます。この状態では、痛みの原因物質は老廃物として血流に取り込まれ、排出されるので腰痛が軽減することになります。TENSによるマッサージは、腰痛に限らず痛みのある部位なら、どこでも効果があるので、興味のある方は試してみてください。
ツボ押しによる腰痛改善
腰痛に効くツボを押すことによって、短時間で腰痛改善ができます。ツボを押すと、そのツボにつながる部位の血行が促進されるので、改善効果が期待できるのです。ツボ押しは、ちょっとした時間があればどこでもできるので、正しいやり方を覚えておくといいでしょう。
ツボとは?
東洋医学では、人体には多くのツボがあると言われています。人体には、「気」と「血」のエネルギーが巡るルートである「経絡」があり、経絡上の要所にあるとされるのが「経穴」です。この経絡がツボと呼ばれるものです。人体には300を超えるツボがあり、そのツボの1つ1つが体の各器官や内臓とつなっがっています。
そのため、腰痛があればそれに関連したツボを押すと、痛みを感じますが、さらに押し続けると腰痛が改善していきます。ツボ押しが腰痛改善に効果があるのは、こういう理由によるものです。ツボ押しは腰痛に限らず、さまざまな病気を改善できる可能性を秘めています。
ツボ押しの効果的な行い方
腰痛に効果のあるツボは、腰腿点(ようたいてん)と委中(いちゅう)、太衝(たいしょう)の3つです。ツボ押しを効果的に行うには、ゆっくり息を吐きながら、少し強めに5秒間ほど圧迫してください。押し続けていると、血行がよくなって体がポカポカしてきます。
ツボは指で押してもいいのですが、ツボ押し専用の棒などで押すと、やりやすくて効果的です。ただし、ツボを押しすぎると筋肉に負担がかかるので、かえって悪化する場合もあります。
腰腿点
手の甲の2箇所にあるツボで、人差し指と中指の骨が接合する手前のくぼみを第一腰腿点、中指と薬指の骨が接合する手前にあるくぼみを第二腰腿点と呼びます。親指の腹でこの箇所を、5〜10回程度強めに押してください。ツボに米粒をテープで貼っても効果があります。
委中
ひざの裏の真ん中あたりにあるツボです。ひざを両手でつかんで、両手の中指を使って5〜10回ほど押すと効果があります。
太衝
足の親指と人差し指の間の、骨が接合している部分にあるツボです。親指の腹で強めに5〜10回ほど刺激してください。ボールペンなど、先のとがった道具を使うと、ツボを的確に押すことができます。
マインドフルネスによる腰痛改善
腰痛は、原因不明で起こる場合が多いので、慢性的な腰痛が続くと、不安な気持ちになってさらに痛みを強く感じるようになるという、悪循環に陥る場合があります。このような場合には、マインドフルネスによるメンタルケアが有効です。マインドフルネスとは、実際に起きている現実に意識を向けることを指します。
つまり、何にもとらわれることなく、目の前の現実を評価することもしないで、ただ意識を向けるだけ、というのがマインドフルネスなのです。慢性的な腰痛に悩まされていると、どうしても痛みに心がとらわれてしまうので、不安な気持ちが膨らんできます。そうなると、さらに不安が不安を呼ぶという繰り返しになるので、そこから抜け出せなくなってしまいます。
マインドフルネスは、このようなマイナス思考を取り除くための手法です。マインドフルネスを活用すると、目の前の現実だけを見るようになるので、不安な気持ちがなくなるため、痛みに向けられる意識も減って症状の緩和につながります。
マインドフルネスの方法
マインドフルネスの実践法をご紹介します。
・瞑想
瞑想といっても、座禅を組む必要はありません。静かに座って、呼吸を整えるだけでも効果があります。これまで抱いてきた不安な気持ちを払拭するつもりで、ただ静かに今の自分を見つめましょう。
・呼吸法
呼吸法といっても、特別な呼吸の方法を実践するのではなく、自分の呼吸に意識を向けるだけでいいのです。腹式呼吸を行うと、心が落ち着いてリラックスできます。
・ヨガ
ここでいうヨガとは、健康志向のヨガではなく、精神的な安定を目指すものです。ヨガのポーズを取りながら、自分を見つめ直します。精神的な安定が得られ、運動不足の解消にも役立ちます。