腰痛にもいろいろなタイプがありますが、中でも比較的多いのが伸ばすと痛いタイプです。伸ばすと腰が痛い場合のメカニズムや原因はどのようになっていて、どんな対処法があるのでしょうか。
伸ばすと腰が痛い場合について、原因や予防法などを解説します。
目次
痛みのタイプによる腰痛の分類
腰痛には、どんな体勢や動作をしていても常に痛いタイプ、前に屈むと痛みが出るタイプ、腰を伸ばすと痛みが出るタイプなどがあります。それぞれのタイプにより原因や対処の方法が異なります。
常に痛い
どんな体勢をしていても常に腰が痛い場合には、筋肉や靭帯の疲労・損傷、腰椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症、内臓疾患、心理的な要因などの可能性があります。
筋肉や靭帯の疲労・損傷は、長時間の同じ姿勢、重い物の持ち上げ、運動不足などが原因で起こります。椎間板ヘルニアは、椎間板が飛び出し神経を圧迫する疾患、腰部脊柱管狭窄症は、背骨の脊柱管が狭くなり神経を圧迫する疾患、変形性腰椎症は、背骨の骨や軟骨がすり減る疾患です。
腰が痛くなる内臓疾患には腎臓病や膵臓炎などがあり、婦人科疾患などが原因で腰が痛い場合もあります。心理的な要因としては、ストレスや不安があります。
腰の痛みの原因が特定できていないうちは、まずは安静にしているとよいです。痛みが強い場合は無理をしないで横になって体を休め、市販の痛み止めの服用も有効です。
また、患部を温めると血行が促進され痛みを和らげることができます。痛みが落ち着いてきたらストレッチをして筋肉をほぐしたり、マッサージを受けるのも効果的です。
原因が特定できている場合は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症では、整形外科を受診し適切な治療を受ける必要があります。内臓疾患では原因となっている内臓疾患の治療を受ける必要があります。
心理的な要因の場合にはストレスや不安を解消するための対策が必要で、精神科や心療内科の受診も有効です。
筋肉や靱帯、背骨系が痛みの原因となっている場合は、日常生活での姿勢に気をつけることで予防や改善が図られます。猫背や反り腰などの悪い姿勢は腰痛の原因となるので、正しい姿勢を意識しましょう。
また、適度な運動は腰痛の予防や改善に効果的です。一方、喫煙は腰痛を悪化させ、肥満は腰痛の原因となるので、禁煙や体重管理を心がけましょう。
屈むと痛い
前屈すると腰が痛い場合は、主に以下の3つの原因が考えられます。
1 椎間板への負荷
椎間板ヘルニアに罹患していると、前屈をした際に飛び出した椎間板が神経をさらに圧迫し痛みが増します。また、腰椎分離症やすべり症は背骨の骨の一部が分離したり、ずれたりする疾患ですが、これに罹患している場合も、前屈すると骨が神経を圧迫し痛みが増します。
2 筋・筋膜への負荷
長時間の同じ姿勢や重い物の持ち上げなどによって腰の筋肉が疲労したり損傷したりすると、前屈時に痛みが出ることがあります。また、筋肉を包んでいる筋膜が緊張すると筋肉を圧迫し痛みが出ることがあります。
3 仙腸関節への負荷
背骨の下部にある仙骨が骨盤の左右の腸骨と組み合わさってできている関節を仙腸関節といいますが、そこに炎症が起こると前屈時に痛みが出ることがあります。
前屈すると腰に痛みが出る場合は、上記のいずれかである場合が多いですが、原因が特定できていないうちは、まずは安静にしているとよいです。痛みが強い場合は、患部を温めることで血行が促進し痛みを和らげることができますし、市販の痛み止めを服用することも有効です。
痛みが落ち着いてきたら、ストレッチをして筋肉をほぐし、マッサージを受けるのも効果的です。
原因が特定できている場合には、椎間板ヘルニアや腰椎分離症・すべり症では整形外科の病院を受診し、適切な治療を受ける必要があります。筋・筋膜への負荷が原因の場合では患部を冷やし安静にしていれば自然に治癒するケースが多いですが、痛みが強い場合は整形外科を受診しましょう。
また、ストレッチやマッサージで筋膜をほぐすことも有効です。
仙腸関節炎では、整形外科を受診し適切な治療を受ける必要があります。
伸ばすと痛い
伸ばすと腰が痛い場合には、筋肉や靭帯の緊張、椎間関節の機能障害、腰椎分離症・すべり症などが考えられます。この伸ばすと痛い場合は比較的多い症状なので、次項で詳細に解説します。
伸ばすと痛い腰痛について
腰痛の症状として多いのが、腰を伸ばす際の痛みが挙げられます。例えば、椅子から立ち上がる、洗濯物を干す、背伸びをするといった動きの際に腰に痛みが生じ悩まされることがあります。
伸ばすと痛い腰痛のメカニズム
伸ばすと痛い腰痛は、主に以下の2つのメカニズムが考えられます。
1 筋肉・靭帯の緊張
腰を伸ばすと、腰の筋肉や靭帯が引っ張られます。この際に、筋肉や靱帯が以下のような状態にあると痛みが起こります。
【筋肉や靭帯が緊張している場合】
仕事での長時間にわたる同じ姿勢や運動不足、加齢などが原因で身体の筋肉や靭帯が緊張すると、筋肉や靭帯は本来の柔軟性を失い伸ばしにくくなります。その状態で無理に伸ばそうとすると、痛みを感じてしまいます。
【筋肉や靭帯に炎症がある場合】
筋肉や靭帯に炎症があると、刺激に敏感になり軽く伸ばしただけでも痛みを感じやすくなります。
2 椎間関節の機能障害
椎間関節は背骨を繋ぐ関節です。椎間関節に問題があると、腰を伸ばした際に以下の2つの原因で痛みが起こります。
【椎間関節の動きが制限されている】
骨盤の歪みや椎間関節炎などによって椎間関節の動きが制限されると、本来の可動域を超えて伸ばそうとした際に、痛みを感じてしまいます。
【椎間関節に炎症がある場合】
椎間関節に炎症があると、刺激に敏感になり軽い動きでも痛みを感じやすくなります。
伸ばすと痛い腰痛は、以上の2つのメカニズムが原因であることが多いですが、稀に、腰椎分離症・すべり症や腎臓結石が原因となっていることもあります。
伸ばすと痛い腰痛の原因
伸ばすと痛い腰痛のメカニズムは、筋肉・靭帯の緊張と椎間関節の機能障害が多いことをのべました。これらの原因について解説します。
1 筋肉・靭帯の緊張
筋肉・靭帯の緊張は、デスクワークなど同じ姿勢を長時間続けることによって起こります。また、運動不足や加齢により筋肉や靭帯が柔軟性を失い伸ばしにくくなることもあります。
2 椎間関節の機能障害
悪い姿勢などにより骨盤が歪むと、椎間関節に負担がかかり痛みが出ることがあります。また、椎間関節に炎症が起こると、腰を伸ばすことで痛みが出ることがあります。
伸ばすと痛い腰痛の対処法
伸ばすと痛い腰痛は、筋肉・靭帯の緊張や椎間関節の機能障害が原因であることが多いですが、その他様々な原因によっても起こります。原因によって適切な対処法が異なりますが、一般的な対処法についてご紹介します。
1 原因を特定する
まずは、なぜ伸ばすと痛いのか原因を特定することが重要です。考えられる原因としては、筋肉・靭帯の緊張、椎間関節の機能障害、骨盤の歪み、腰椎分離症・すべり症、腎臓結石などが挙げられます。
痛みの場所や種類、発生時期、日常生活での習慣などを参考に、思い当たる原因を推測してみましょう。とはいっても、原因を推測することは難しいので、痛みが大きくて長く続くようであれば、まずは、整形外科の受診をおすすめします。
2 原因別の対処法
【筋肉・靭帯の緊張】
ストレッチやマッサージは有効です。痛みのない範囲でゆっくりと行いましょう。
また、患部を温めることで血行を促進し痛みを和らげることができますので、ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かると筋肉をリラックスさせることができます。
【椎間関節の機能障害】
椎間関節の機能障害は、骨盤が歪んで椎間関節に負担がかかると起こります。骨盤矯正は、整形外科でリハビリなどを担当する理学療法士によって、また、整骨院などで治療を受けることができます。
自宅での生活のしかたや患者の筋肉量によっても変わってきますが、骨盤の歪みがひどい方が骨盤の位置を最適な状態に戻すには、3か月間で15~20回程度の施術が必要です。専門の理学療法士や整骨院での施術を希望する場合は、予約が必要となることが多く、電話で確認してみてください。
また、痛みが強い場合や日常生活に支障が出ている場合は、整形外科を受診し適切な検査や治療を受ける必要があります。検査では主に、レントゲンやMRIといった画像撮影が行われます。
伸ばすと痛い腰痛の予防法
腰痛の中でも特に伸ばすと痛みを感じる場合は、筋肉の緊張や炎症などが考えられますが、そのような腰痛の予防法についてご紹介します。
姿勢の改善
猫背や反り腰などの悪い姿勢は、腰に負担がかかり筋肉を緊張させてしまいます。日頃から背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識することが大切です。
座っているときは、背筋をまっすぐ伸ばし、おへそを凹ませ、太ももと床が90度になるように椅子に座りましょう。立っているときは、あごを引いて首をまっすぐにし、背筋を伸ばし、お腹に軽く力を入れて立ちましょう。
運動や生活習慣の改善
適度な運動やスポーツは、腹筋などの筋肉を鍛え、腰痛予防に効果的です。ウォーキング、ジョギング、水泳などがおすすめですが、痛みがある場合は無理に行わないでください。
睡眠不足やストレス、肥満なども腰痛の原因となります。十分な睡眠、適度なストレス解消、バランスの良い食事を心がけましょう。
ストレッチ
長時間同じ姿勢で過ごしたり運動不足だったりすると、腰周りの筋肉が緊張し血流が悪くなって腰痛を起こしやすくなります。そこで、ストレッチで腰痛を予防する方法を紹介します。
【開脚前屈】
仰向けに寝て、両膝を曲げます。
両膝をできるだけ左右に開き、足裏を床につけます。
両手で膝を軽く押さえながら、ゆっくりと上体を起こします。
息を吐きながら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
以上を10回程度繰り返します。
【膝抱え込み】
仰向けに寝て、両膝を曲げます。
両手で膝を抱え込み、胸に引き寄せます。
そのまま、ゆっくりと体を左右に揺らします。
以上を10回程度左右交互に行います。
【猫背反り腰】
四つん這いになります。
息を吸いながら、背中を丸め、頭と尻尾を下に下げます(猫背)。
息を吐きながら、背中を反らせ、頭と尻尾を上に上げます(反り腰)。
以上を10回程度繰り返します。
【上半身ひねり】
仰向けに寝て、両膝を曲げます。
両手を胸の前で組みます。
息を吐きながら、ゆっくりと上半身を左右にひねります。
左右それぞれで10回程度繰り返します。
マッサージ
マッサージは、筋肉の緊張をほぐし血行を促進することで、腰痛の予防や痛みの軽減に効果的な方法の一つです。ここでは、セルフマッサージでできる腰痛予防法をご紹介します。
【腰方形筋:背骨の横にあり、腰を左右に曲げたり捻ったりする動きに関わる筋肉】
仰向けに寝て、膝を曲げます。
片手で反対側の腰方形筋を親指で押さえ、ゆっくりとほぐします。
痛みを感じない程度の強さで、上下左右にほぐします。
左右とも1分程度ほぐします。
【大臀筋::骨盤の後ろ側にある大きな筋肉で、体を支えたり、脚を後ろに蹴ったりする動きに関わる筋肉】
仰向けに寝て、テニスボールなどを腰の下に置きます。
ゆっくりと体を上下左右に揺らし、大臀筋をほぐします。
痛みを感じない程度の強さで、1分程度ほぐします。
【ハムストリングス: 太ももの裏側にある筋肉で、膝を曲げたり、体を前に倒したりする動きに関わる筋肉】
座った状態で、片足を前に伸ばします。
体を前かがみにして、太ももの裏側をゆっくりとほぐします。
息を吐きながら、ゆっくりと体を起こします。
左右とも10回程度繰り返します。
ツボ押し
ツボ押しは、東洋医学に基づいた伝統的な治療法で、体にあるツボと呼ばれる経穴を刺激することで、体の機能を整え症状を改善する効果が期待できます。
腰痛にも効果的なツボがいくつかあります。ここでは、セルフツボ押しでできる腰痛予防法をご紹介します。
【志室(しそう)】
腰骨の左右に2つずつあるツボです。腰痛だけでなく、腹痛や下痢にも効果があります。
場所:腰骨の高さで、背骨から指2本分外側。
押し方:親指でゆっくりと押圧します。
【腎兪(じんゆ)】
腰骨の下にある左右対称のツボです。腰痛だけでなく、膝の痛みや頻尿にも効果があります。
場所:腰骨の下、少し外側にあるくぼみ。
押し方:親指でゆっくりと押圧します。
【膀胱兪(ぼうこうゆ)】
腰骨の下、少し外側にある左右対称のツボです。腰痛だけでなく、排尿障害やむくみにも効果があります。
場所:腰骨の下、少し外側にあるくぼみ。
押し方:親指でゆっくりと押圧します。
【腰腿点(ようたいてん)】
手の甲にある左右対称のツボです。腰痛だけでなく、膝の痛みやむくみにも効果があります。
場所:手の甲、人差し指と中指の骨が交わるくぼみ、および中指と薬指の骨が交わるくぼみ。
押し方:親指でゆっくりと押圧します。
ツボ押しを行う際には、痛みがある場合は無理に行わないでください。また、妊娠中の方や持病のある方は、ツボ押しを行う前に医師に相談してください。
皮膚に炎症がある場合は、ツボ押しを行わないでください。
その他
腰を温めると血流が改善し筋肉の緊張がほぐれます。入浴やカイロ、ホットパックなどを活用しましょう。また、痛みを予防したり改善するのにコルセットも効果的です。
上記は一般的な予防法であり、個人の症状によって効果的な方法は異なります。痛みやしびれがひどい場合や、そうでなくても時間が経過し慢性となっている場合は、医療機関を受診してください。
まとめ
腰痛にもいろいろあり、いつも痛いタイプ、屈むと痛いタイプ、伸ばすと痛いタイプがあります。中でも比較的多いのが伸ばすと痛いタイプです。
伸ばすと痛い腰痛は、筋肉や筋膜の緊張、椎間関節の機能障害が原因のことが多いです。筋肉や筋膜が緊張している場合には、ストレッチやマッサージが有効です。
椎間関節の機能障害は、骨盤が歪んで椎間関節に負担がかかると起こります。骨盤矯正は、整骨院などで治療を受けることができますし、痛みが強い場合や日常生活に支障が出ている場合は、整形外科を受診し適切な治療を受ける必要があります。
伸ばすと痛い腰痛の予防法には、姿勢の改善、運動、生活習慣の改善、ツボ押しなどがあります。
腰痛になりやすければあらかじめ予防をし、痛みを感じれば早めに適切な対処をしましょう。