腰痛には、背中の張りや痛みを伴う場合があります。このような場合には、主に、筋肉、骨、内蔵、ストレスに原因があります。
これら原因別の対処法について解説するとともに、背中の張りや痛みを伴う腰痛を予防する方法についても述べていきます。
目次
背中の張りや痛みを伴う腰痛の原因と対処法
腰痛の中には、背中の張りや痛みを伴うものがあります。そのような腰痛の原因と対処法について解説します。
筋肉に原因がある場合
筋肉に原因があって起こる腰痛は、背中の張りや痛みを伴い日常生活に支障をきたすことも少なくありません。筋肉が原因の腰痛には、主に、筋筋膜性腰痛、腰椎椎間板ヘルニアの2種類があります。
筋筋膜性腰痛は、筋肉や筋膜と呼ばれる膜が緊張したり、炎症を起こしたりすることで起こる腰痛です。長時間のデスクワークや運動不足、ストレスなどが原因と考えられています。
腰椎の椎間板ヘルニアは、背骨にある椎間板が飛び出し神経を圧迫することで腰が痛くなります。重いものを持ち上げたり、急に体をひねったりすることが原因となることがあります。
筋筋膜性腰痛や腰椎椎間板ヘルニアといった筋肉が原因の腰痛では、主に、次のような症状が現れます。
・背中の張りや痛み・腰の鈍痛・動きが鈍くなる
・長時間同じ姿勢を続けられない ・咳やくしゃみで痛みが増す |
対処法としては、以下のような方法が有効です。
【急性期(発症初期)】
・無理な動きは避け、横になって休むなど安静にする。
・冷湿布などで患部を冷やし、炎症や痛みを抑えます。
・市販の痛み止めを服用する。
・医療機関で治療する。
【慢性期(痛みが落ち着いてきたら)】
・腰周りの筋肉や筋膜を柔らかくするストレッチを行う。
・筋力トレーニングで腰周りの筋肉を鍛えることで、腰痛の予防や再発防止に努める。
・日常生活の見直して、猫背などの悪い姿勢や、長時間同じ姿勢を続けることを避けるようにする。
・意識的に背筋を伸ばしたり、適度に体を動かしたりする。
・入浴やカイロなどで患部を温めることで、血行を促進し筋肉の緊張をほぐす。
・マッサージをして、筋肉の緊張をほぐし血行を促進することで、痛みを緩和する。
・ヨガは、ストレッチや筋力トレーニング、呼吸法などを組み合わせた運動であるヨガを行い、腰痛の改善のみならず心身のリラックスを図る。
・針灸によりツボを刺激することで、痛みを緩和し、筋肉の緊張をほぐす。
以上の対処法は、痛みが落ち着いてきた場合に行うものなので、痛みがある間は避けてください。また、症状が悪くなったり、長期間続く場合は、原因となる別の病気が潜んでいる可能性があります。
骨に原因がある場合
背中の張りや痛みを伴う腰痛は、骨に原因がある場合があります。骨が原因の腰痛の多くは、骨粗鬆症によって起こります。
骨粗鬆症は、骨密度と骨質が低下し、骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症による腰痛は、以下のような症状が現れます。
・背中の真ん中から腰にかけての鈍痛・朝起きた時や立ち上がった時に痛みを感じる・長時間同じ姿勢を続けると痛みが悪化する
・動作によって痛みが増す |
骨粗鬆症による腰痛の対処法は、以下の通りです。
・医療機関での治療
骨粗鬆症の治療には、薬物療法と非薬物療法があります。薬物療法は、骨吸収抑制薬、骨形成促進薬、ビスフォスフォネート製剤などの薬剤が用いられます。
非薬物療法では、カルシウムやビタミンDの摂取、運動、などを行います。
医療機関ではさまざまな療法が利用できますので、医療情報や記事をホームページで確認することも大切です。予約診察が可能なところや、徒歩でもアクセスが便利な場所などを選ぶと良す。
・痛み止めの服用
痛みが強い場合は、医師に相談して、痛み止めを服用することができます。
・コルセットの着用
コルセットを着用することで、腰椎の部位を固定し、痛みを軽減することができます。
・日常生活の見直し
骨粗鬆症では転倒は厳禁ですので、転倒予防のために、滑りやすい床に滑り止めマットを敷いたり、手すりを設置したりするなどの対策が必要です。また、重いものを持ち上げる際は、膝を使って持ち上げるようにするなど、腰への負担を軽減する工夫も大切です。
・運動
適度な運動やスポーツは、骨粗鬆症の予防や進行抑制に効果があります。特に、骨に負荷をかける運動が効果的です。
・バランスのとれた食事
カルシウムやビタミンD、ビタミンKといった骨の健康に必要な栄養素を十分に摂取することが大切です。
・禁煙
喫煙は骨粗鬆症の進行を早めるので、できれば禁煙することが大切です。
・過度な飲酒を控える
過度な飲酒は骨粗鬆症の進行を早めるので、控えることが大切です。
骨粗鬆症による腰痛は、進行すると日常生活に支障をきたすだけでなく、歩行障害や寝たきりなどの状態になることもあります。早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。
内臓に原因がある場合
背中の張りや痛みを伴う腰痛は、尿路結石、腎盂腎炎、膵炎、胆石症、子宮筋腫、卵巣腫瘍、などの内臓疾患によっても引き起こされます。以下で、各疾患の症状および対処法を述べます。
【尿路結石】
尿路結石は、腎臓や尿管にできる結石が尿路を刺激することで痛みが起こる疾患です。その症状には以下のようなものがあります。
・背中や腰、下腹部への激痛
・頻尿
・排尿時痛
・吐き気や嘔吐、頭痛
・血尿
対処法には以下のような方法があります。
・市販の痛み止めを服用
・尿路結石を溶かす薬を服用
・体外から衝撃波を与えて尿路結石を砕く体外衝撃波治療
・尿路結石が大きすぎる場合や、他の治療法で効果がない場合は、手術で石を取り除く
【腎盂腎炎】
腎盂腎炎は、腎臓が細菌に感染して炎症を起こす病気です。この病気の症状には以下のようなものがあります。
・腰や背中の痛み、肩や首の痛み
・発熱
・悪寒
・頻尿
・排尿時痛
・膿尿
対処法には以下のような方法があります。
・抗菌薬を服用して、細菌を退治
・解熱剤を服用して、発熱を抑える
・水分を十分に補給して尿量を増やすことで、細菌を体外に排出する。
【膵炎】
膵炎は、膵臓が炎症を起こす病気です。その症状には、以下のようなものがあります。
・上腹部や背中の激痛
・吐き気や嘔吐
・発熱
・下痢
対処法には、以下のような方法があります。
・痛みや炎症が強い場合は、入院して治療を受ける必要がある。
・症状が落ち着くまでは、絶食と禁酒を行う。
・痛み止めや吐き気止めなどの薬を服用する。
【胆石症】
胆石症は、胆のうに胆石ができる病気です。その症状には、以下のようなものがあります。
・右上腹部の痛み
・吐き気や嘔吐
・背中の痛み
対処法には、以下のような方法があります。
・市販の痛み止めを服用する。
・胆石を溶かす薬を服用する。
・体外から衝撃波を与えて、胆石を砕く体外衝撃波治療法
・胆石が大きすぎる場合や、他の治療法で効果がない場合は、手術で取り除く。
【子宮筋腫】
子宮筋腫は、子宮の筋肉層にできる良性の腫瘍です。その症状には、以下のようなものがあります。
・下腹部痛
・腰痛
・月経過多
・不正出血
対処法としては以下のような方法があります。
・症状が軽い場合は、経過観察を行う。
・ホルモン剤を服用して、症状を改善する。
・症状が重い場合や、妊娠を希望する場合は、手術で子宮筋腫を摘出する。
【卵巣腫瘍】
卵巣腫瘍は、卵巣にできる腫瘍です。良性と悪性があります。その症状には以下のようなものがあります。
・下腹部痛
・腰痛
・腹脹
・便秘
・おりもの異常
対処法としては以下のような方法があります。
・腫瘍が小さい場合は、経過観察を行うこともある。
・腫瘍が大きい場合や、悪性の場合などは、手術で腫瘍を摘出する。
上記以外にも、内臓が原因で背中の張りや痛みを伴う腰痛を引き起こす病気はたくさんあります。痛みが強い場合や、上記のような症状がある場合は、早めに医療機関の診療を受けてください。
なお、自己判断で治療を行うことは危険ですので、必ず医師の指示に従ってください。
ストレスに原因がある場合
ストレスが原因で背中の張りや痛みを伴う腰痛になる場合もあります。ストレスが腰痛を引き起こすメカニズムは、主に以下の3つが考えられます。
【筋肉の緊張】
ストレスを感じると、交感神経が優位になり、筋肉が緊張しやすくなります。背中の筋肉が緊張すると、血行不良や酸素不足が起こり、痛みを感じやすくなります。
【ホルモンバランスの乱れ】
ストレスを感じると、コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。これらのホルモンは、筋肉を緊張させたり、痛みを感じる神経を刺激したりする作用があります。
【痛みの感受性が高まる】
ストレスを感じると、脳の痛みを感じる部分が活性化し、些細な痛みでも大きく感じやすくなります。
ストレスが原因で腰痛が発症する場合の症状には、以下のようなものがあります。
・背中の張りや痛み・腰の鈍痛・動きが鈍くなる
・長時間同じ姿勢を続けられない ・咳やくしゃみで痛みが増す |
対処法としては、以下のような方法があります。
・ストレスの原因を特定し、それを取り除いたり、軽減したりする。
・ウォーキングやジョギング、ヨガなどの有酸素運動や、ストレッチなどの軽い運動を行う。
・毎日7〜8時間程度の睡眠時間を確保する。
・ヨガ、瞑想、アロマテラピーなどのリラクゼーション法を取り入れる。
・栄養バランスのとれた食事を心がける。
・入浴やカイロなどで背中の部分を温めることで、血行を促進し、筋肉の緊張をほぐす。
・背中の筋肉をマッサージすることで、緊張をほぐし、痛みを緩和する。
・精神科などの専門医へ相談する。
背中の張りや痛みを伴う腰痛の予防法
背中の張りや痛みを伴う腰痛に罹患しにために、その予防法を解説します。
ストレッチ
背中の張りや痛みを伴う腰痛は、日常生活に支障をきたす辛い症状です。この症状は、筋肉、骨、内臓、ストレスなど様々な原因によって引き起こされます。
ストレッチは、腰痛の予防や改善に効果的な方法の一つです。 ストレッチを行うことで、以下の効果が期待できます。
・筋肉を柔らかくし、血行を促進することで、痛みを予防する。
・柔軟性を高め、腰への負担を軽減する。
・ストレスを解消し、心身をリラックスさせることができる。
背中の張りや痛みを伴う腰痛に効果的なストレッチを、以下でいくつか紹介します。
・背中の反りを伸ばすストレッチ
仰向けに寝て、両膝を曲げ、足の裏を床につけます。
両手を頭の上に伸ばし、ゆっくりと息を吐きながら、胸を上に持ち上げるようにします。
息を吸いながら、ゆっくりと身体を元に戻します。
10回程度繰り返します。
・腰の筋肉をほぐすストレッチ
仰向けに寝て、両膝を曲げ、足の裏を床につけます。
右膝を抱え込み、胸に引き寄せます。
息を吐きながら、ゆっくりと体を右側へ倒します。
息を吸いながら、ゆっくりと体を元に戻します。
左膝も同様にストレッチを行います。
左右交互に10回程度繰り返します。
・股関節の柔軟性を高めるストレッチ
仰向けに寝て、右膝を曲げ、足の裏を床につけます。
左足を床から持ち上げ、右膝に掛けます。
息を吐きながら、ゆっくりと右膝を胸に引き寄せます。
息を吸いながら、ゆっくりと体を元に戻します。
反対側も同様にストレッチを行います。
左右交互に10回程度繰り返します。
ストレッチを行う前には必ずウォーミングアップを行い、痛みを感じたら無理に行わないでください。また、症状が悪化したり、長期間続く場合は、我慢せずに医療機関を受診してください。
姿勢を正す
背中の張りや痛みを伴う腰痛は、姿勢が悪いことが影響している場合があります。 猫背や反り腰などの悪い姿勢は、腰に負担をかけ、筋肉や骨を痛めてしまう可能性があり、関節の変形や損傷が生じることがあります。
また、血行不良や酸素不足を引き起こし、痛みを感じやすくなることもあります。姿勢を正すことで、腰痛の予防や改善に効果が期待できます。
姿勢を正せば、以下のような効果が期待できます。
・姿勢を正すことで、背骨が本来の形になり、腰への負担が軽減される。
・姿勢を正すことで、筋肉の緊張がほぐれ、痛みを予防することができる。
・姿勢を正すことで、胸が開き呼吸が深くなるので、深呼吸をすることで血行が促進され、酸素や栄養素が筋肉に行き渡りやすくなる。
姿勢を正すためのポイントには以下のようなものがあります。
・座っているときも立っているときも、背筋を伸ばしてまっすぐにする。
・骨盤を前傾させたり、後傾させたりせず、真っ直ぐに立てる。
・あごを前に突き出さないように、軽く引いて首をまっすぐにする。
・目線を下に向けたり、上に向けたりせず、水平に保つ。
・適度に体を動かしたり姿勢を変えたりして、長時間同じ姿勢を続けない。
・椅子に座るときは背もたれにしっかりと背筋を預け、座面全体にお尻を乗せる。
・机を使うときは、高さや角度を調整して、肘が90度になるようにする。
・重い荷物は両手で持ち上げて、腰に負担をかけない。
・ハイヒールを履くときは、長時間履かない。
背中の張りや痛みを伴う腰痛の予防には、姿勢を正すことが重要です。姿勢を正すことで、腰への負担を軽減し、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進することができます。
上記を参考に、自分に合った方法を実践し、正しい姿勢を習慣化しましょう。
整体
背中の張りや痛みを伴う腰痛には、整体も効果的な腰痛予防方法の一つです。 整体では、骨格の歪みや筋肉の緊張を調整することで、体のバランスを整えます。
腰痛の効果には以下のようなものがあります。
・骨格の歪みや筋肉の緊張を調整することで、腰への負担を軽減し、痛みを改善する。
・体のバランスを整えることで、腰痛の再発を防ぐ。
・猫背や反り腰などの悪い姿勢を改善することで、腰痛を予防。
・筋肉の緊張をほぐすことで、血行を促進し、酸素や栄養素を筋肉に行き渡りやすくする。
・ストレスによる自律神経の乱れを改善することで、心身を安定化。
整体には、以下のような種類があります。
【構造矯正】
構造矯正は、骨格の歪みを直接調整する施術です。
【ソフト整体】
ソフト整体は、ソフトな力を使って筋肉の緊張をほぐす施術です。
【筋膜リリース】
筋膜と呼ばれる膜の緊張をほぐす施術です。
【オステオパシー】
全身的な体のバランスを整える施術です。
以上のように、整体には種類がありますが、そのうちのどれを行うか選ぶ際のポイントを以下に掲載します。
・自分の症状に合った整体を選ぶ
整体には様々な種類があるので、自分の症状に合った整体を選ぶことが大切です。
・実績のある整体院を選ぶ
経験豊富な施術者がいる整体院を選ぶことをおすすめします。
・口コミや評判を確認する
他の利用者の口コミや評判を確認するのも参考になります。
・無理のない料金プランを選ぶ
無理のない料金プランの整体院を選びましょう。
整体を受ける際には、次のような点に注意しましょう。
・初めて整体を受ける場合や、妊娠中や持病がある場合は、事前に医師に相談する。
・痛みが強い場合は、無理に施術を受けない。
・施術後は、水分を十分に補給して、体を休める。
整体は、腰痛の改善や再発防止、姿勢改善など様々な効果が期待できます。上記を参考に、自分に合った整体院を見つけて、定期的に受けるとよいでしょう。
しびれやこりが出る場合は、整形外科や脊椎専門クリニックでの診察・診断が推奨されます。
まとめ
腰痛には、背中の張りや痛みを伴う場合があります。このような場合には、主に、筋肉、骨、内蔵、ストレスに原因があります。
筋肉に原因がある場合の対処法としては、急性期では、安静にする、冷やす、痛み止めを服用するといった方法があります。慢性期の対処法としては、ストレッチを行う、筋力トレーニングを行う、日常生活の見直す、といった方法があります。
骨に原因がある場合は骨粗鬆症であることが多いので、対処法としては、医療機関で治療する、痛み止めを服用する、コルセットを着用するといった方法があります。
内蔵に原因がある場合の対処法としては、原因となっている疾患である尿路結石、腎盂腎炎、膵炎などの治療を行うことになります。ストレスに原因がある場合の対処法としては、
ストレスの原因を特定してそれを取り除く、有酸素運動やストレッチ、栄養バランスのとれた食事を心がけるなどの方法があります。
背中の張りや痛みを伴うような腰痛を予防したり、改善したりするには、ストレッチ、姿勢を正す、整体などが効果的です。
腰痛にも腰部の痛みに伴って、背中や脚など腰とは別の場所も痛むことがありますので、症状に注意して対処をしましよう。