この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
五十肩は一度治癒すると同じ肩に再発することはほとんどありませんが、反対の肩に発症することがあります。特に、五十肩をかばうように反対の肩を酷使した場合、そちらも五十肩になる可能性があります。また、糖尿病の方は五十肩になりやすく、再発しやすい傾向にあります。五十肩の再発について、専門家の見解とともに詳しく解説します。
筋スパズム、筋硬結という状態は体操することで改善していきます。働いていない筋肉と働きすぎている筋肉のバランスが悪くなった状態になると、筋肉のコリは強く硬くなりやすいのです。
目次
五十肩の再発について知っておくべき基本事実
五十肩の再発に関して、まず理解しておくべき重要な事実があります。一度治った肩に同じ症状が再び現れる可能性は極めて低く、医学的には「一度治癒した五十肩が同じ肩に再発することはほとんどない」とされています。
しかし、反対側の肩に発症する可能性は十分にあるため、注意が必要です。
五十肩は正式名称を「肩関節周囲炎」といい、肩関節の周囲組織に炎症が起こることで痛みと動きの制限が生じる疾患です。症状は急性期、慢性期、回復期の3つの時期を経て自然に治癒する傾向がありますが、完全な回復までには数か月から1年以上かかる場合があります。
五十肩再発の統計データ
医学的研究によると、五十肩を経験した人の約20〜30%が反対側の肩にも発症するとされています。日本整形外科学会
そのため、一度五十肩を経験した方は、予防的なケアを継続することが重要です。
なぜ五十肩は再発するのか?主な原因と発症メカニズム
五十肩の「再発」と呼ばれる現象の多くは、実際には反対側の肩への新たな発症です。この原因として以下の要因が挙げられます。
肩のかばい動作による負担増加
五十肩で痛みが強い肩をかばうために、無意識に反対の肩を酷使してしまいます。これにより肩関節周囲の筋肉や組織に過度な負担がかかり、炎症を引き起こしやすくなる可能性があります。
特に日常生活での動作において、痛みのない方の肩に依存する動きが続くことで、筋肉の使いすぎや姿勢の悪化を招く傾向があります。
再発リスク要因 | 影響度 | 対策 |
---|---|---|
糖尿病の合併 | 高 | 血糖値の適切な管理 |
運動不足・筋力低下 | 中~高 | 定期的なストレッチと運動 |
長時間の同一姿勢 | 中 | 姿勢の改善と適度な休憩 |
肩の冷え | 中 | 保温と血行促進 |
糖尿病との関連性
糖尿病の方は五十肩を発症しやすく、治療期間も長引く傾向があります。これは高血糖により組織の修復能力が低下し、炎症が慢性化しやすい可能性があるためです。
また、糖尿病患者の場合、適切な血糖値管理が五十肩の再発予防にとって非常に重要となります。
詳細は厚生労働省_糖尿病をご参照ください。
五十肩の再発を防ぐ効果的な予防法5選
五十肩の再発リスクを最小限に抑えるため、以下の予防法を継続的に実践することが大切です。専門家による具体的な方法をご紹介します。
1. 定期的な肩のストレッチ
肩関節の可動域を維持し、筋肉の柔軟性を保つことが重要です。特に肩甲骨周りの筋肉をほぐすストレッチを日常的に行いましょう。
朝起きた時と就寝前に、簡単な肩回し運動や肩甲骨の開閉運動を5分程度行うだけでも効果が期待できます。
2. 正しい姿勢の維持
猫背や前かがみの姿勢は肩関節に負担をかけ、筋肉のバランスを崩す可能性があります。デスクワーク中は背筋を伸ばし、肩の力を抜いた自然な姿勢を心がけましょう。
さらに、1時間に1度は立ち上がって肩を動かすことも大切です。適度な休憩を取ることで、筋肉の緊張を和らげることができます。
3. 適度な運動習慣
全身の血行を促進し、筋力を維持するため、週に2〜3回の軽い運動を取り入れましょう。ウォーキングや水中運動など、肩に負担の少ない運動がおすすめです。
運動により関節の動きがスムーズになり、炎症の予防にもつながる可能性があります。無理のない範囲で継続することが重要です。
4. 肩を冷やさない工夫
肩の冷えは血行不良を招き、筋肉の硬直や炎症のリスクを高める可能性があります。特に夜間は肩が冷えやすいため、適切な寝具を使用し、肩を温めるよう心がけましょう。
また、入浴時には湯船にゆっくり浸かり、肩周りを温めることも効果的です。温熱療法により血流が改善され、筋肉の緊張が緩和される傾向があります。
5. ストレス管理
慢性的なストレスは筋肉の緊張を引き起こし、肩こりや五十肩の発症リスクを高める可能性があります。適度なリラクゼーションを取り入れ、十分な睡眠を確保することで、身体の回復力を高めましょう。
専門家の見解:サボり筋とがんばり筋のバランス
理学療法士 笹川先生によると、五十肩の根本的な原因は「働いていない筋肉(サボり筋)と働きすぎている筋肉(がんばり筋)のバランスの悪化」にある可能性があります。
このバランスが崩れることで、特定の筋肉に過度な負担がかかり、コリや硬結が生じやすくなる傾向があります。
笹川先生は動画の中で、「働いていない場所をしっかり働かせていくと、筋肉はどんどん柔らかくなる」と説明されています。
これは五十肩の予防においても重要な概念で、サボり筋を適切に鍛えることで、肩関節周囲のバランスを整え、再発リスクを低減できる可能性があります。
万が一五十肩が再発してしまった場合の対処法
もし五十肩の症状が再び現れた場合、以下の段階的な対処法を実践しましょう。早期の適切な対応により、症状の悪化を防ぐことが期待できます。
急性期(発症初期)の対応
痛みが強い急性期には、無理に動かさず安静を保つことが重要です。夜間痛で眠れない場合は、痛みのある肩を上にして横向きに寝るか、クッションで肩を支える姿勢を取りましょう。
この時期は炎症を抑えることが最優先となります。無理な動きは症状を悪化させる可能性があるため、避けることが大切です。
医療機関への受診タイミング
以下の症状がある場合は、早めに整形外科や専門家を受診することをおすすめします:
- 日常生活に支障をきたすほどの強い痛み
- 夜間痛により睡眠が困難
- 肩の動きが著しく制限される
- 1週間経っても症状が改善しない
適切な診断により、五十肩以外の疾患(腱板断裂、石灰性腱炎など)との鑑別を行い、最適な治療法を選択することができます。
治療法の選択肢
医療機関では症状や時期に応じて、以下のような治療法が検討される可能性があります:
- 薬物療法(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤)
- 理学療法(リハビリテーション)
- 注射治療(ステロイド注射、ヒアルロン酸注射)
- 温熱療法や電気治療
治療効果には個人差があるため、専門家と相談しながら最適な方法を選択することが重要です。
日常生活で気をつけるべき5つのポイント
五十肩の再発予防のため、日常生活で以下の点に注意しましょう。継続的なケアにより、再発リスクを大幅に軽減することが可能です。
肩に負担をかける動作を避ける
荷物を持ち上げたり、腕を高く上げたりする動作は、肩に負担をかける可能性があるため注意が必要です。重い物を持つ際は両手で持ち、身体に近づけて持つよう心がけましょう。
適切な姿勢を保つ
長時間同じ姿勢でいると、肩が凝りやすくなる可能性があるため、こまめな休憩やストレッチを挟みましょう。デスクワーク中は肩の力を抜き、自然な姿勢を意識することが大切です。
肩の筋肉を鍛える
肩周りの筋肉の安定性を高めることで、再発のリスクを低減できる可能性があります。肩甲骨周りの筋肉を鍛える軽い運動を継続的に行うことをおすすめします。
十分な睡眠の確保
睡眠不足は身体の回復力を低下させ、炎症を長引かせる可能性があります。質の良い睡眠を7〜8時間確保することで、組織の修復と筋肉の回復を促進しましょう。
栄養バランスの改善
抗炎症作用のある栄養素を積極的に摂取することで、五十肩の予防効果が期待できます。オメガ3脂肪酸やビタミンD、カルシウムなどを含む食品を意識的に取り入れましょう。
五十肩の再発に関するよくある質問
Q. 五十肩は治療をしなくても自然に治りますか?
A. 五十肩は自然治癒する可能性もありますが、適切な治療を行うことで回復期間を短縮し、症状を軽減することが期待できます。放置すると関節の動きが制限されたまま固まってしまう可能性もあるため、早期の対応が重要です。
Q. 反対側の肩に発症する確率はどのくらいですか?
A. 医学的研究によると、一般的に五十肩を経験した人の約20〜30%が反対側の肩にも発症する可能性があるとされています。特に糖尿病がある方や、適切なケアを行わなかった場合にリスクが高くなる傾向があります。
Q. 五十肩の予防に効果的なストレッチはありますか?
A. 肩甲骨の動きを維持するストレッチが効果的とされています。肩回し運動や、壁を使った胸部のストレッチ、首と肩のストレッチを毎日継続することで、肩関節の柔軟性を保ち、予防効果が期待できる可能性があります。
Q. 五十肩の痛みが再発した場合、どのタイミングで病院を受診すべきですか?
A. 夜間痛で眠れない、日常生活に支障が出る、1週間以上痛みが続く場合は早めに整形外科を受診することをおすすめします。早期の適切な治療により、症状の悪化を防ぐことが期待できます。
Q. 糖尿病がある場合、五十肩の再発リスクは高くなりますか?
A. はい、糖尿病の方は五十肩になりやすく、治療期間も長引く傾向があります。血糖値の適切な管理と、定期的な肩のケアを行うことで、再発リスクを低減することが可能とされています。
Q. 五十肩の再発予防のために、どのような生活習慣を心がけるべきですか?
A. 定期的なストレッチと運動、正しい姿勢の維持、肩を冷やさない工夫、適度なストレス管理が重要とされています。また、長時間同じ姿勢を避け、こまめに肩を動かすことも効果的な可能性があります。十分な睡眠と栄養バランスの改善も予防に役立ちます。
五十肩の再発を防ぐためには、日頃からの肩のケアと、適切な生活習慣が大切です。もし、五十肩が治癒した後も肩の痛みや可動域制限が続く場合は、専門家に相談するようにしましょう。
そのため、理学療法士などの専門家によるアドバイスを受けながら、健康な肩を維持していくことが重要です。