「親も外反母趾だからしかたない」
「小さいころから外反母趾だったから治らない」
外反母趾が原因で起こる足の変形や、症状を遺伝だからと言って諦めていませんか?気が付いたときには外反母趾になっていたという状態で、どう対処したらよいのか悩まれている方も多いと思います。
外反母趾は、足の親指が小指側に変形する症状で、痛みや歩行の困難を引き起こすことがあります。この症状の原因は靴の選び方や歩き方だけでなく、遺伝的要因も大きく関係しているとされています。では、外反母趾は本当に遺伝するのでしょうか?本記事では、外反母趾の遺伝的要因、発症リスクの高い人の特徴、そして予防方法について詳しく解説します。
外反母趾は遺伝する?
外反母趾の発症には遺伝的な要因が関与していると多くの研究で報告されています。特に家族に外反母趾の人がいる場合、そのリスクが高まることが知られています。
遺伝の影響を受ける要素
遺伝によって受け継がれるのは、外反母趾そのものではなく、以下のような足の構造的な特徴です。
- 扁平足(アーチが低い):足のアーチが低いと、親指の付け根に負担がかかりやすくなります。
- 柔らかい関節(関節の弛緩性):関節が柔らかすぎると、足の骨が本来の位置を保ちにくくなります。
- 足の幅や形:足幅が広い人は、特定の靴を履いたときに圧迫されやすく、外反母趾になりやすい傾向があります。
- 指の形 :親指が一番長いエジプト型であれば外反母趾になりやすいです。
外反母趾の発症に関わる遺伝的な足の特徴(詳細解説)
外反母趾は遺伝そのものではなく、「足の構造的な特徴」が遺伝することで発症リスクが高まります。以下の4つの特徴について詳しく解説します。
① 扁平足(アーチが低い)
◆ 特徴
扁平足とは、足裏のアーチ(特に内側の土踏まず)が低く、地面に接する面積が大きい状態のことを指します。
◆ 影響と外反母趾との関係
- 足のアーチが正常に機能している場合、体重がバランスよく分散されるため、親指の付け根への負担が軽減されます。足裏が地面から衝撃を受けるとき土踏まずやアーチが下からの衝撃を和らげる役割を果たすことができます。
- しかし、扁平足だと足のアーチが崩れ、親指の付け根に体重が集中しやすくなります。
- その結果、親指が外側へ押し出されやすくなり、外反母趾のリスクが高まります。
◆ 予防・対策
- アーチをサポートするインソールを使用する(土踏まずを補助する中敷き)
- 足の筋肉を鍛える運動を行う(タオルギャザーやつま先立ち運動・足のインナーマッスルのトレーニング)
- 扁平足用の靴を選ぶ(アーチサポート機能付きの靴)
② 柔らかい関節(関節の弛緩性)
◆ 特徴
関節の弛緩性とは、関節が通常よりも柔らかく、可動域が広い性質のことを指します。これは遺伝的に決まることが多く、特に女性はお産に適した身体である必要があるため、多い傾向があります。
◆ 影響と外反母趾との関係
- 足の骨を支える靭帯や関節が柔らかすぎると、土踏まず(内側縦アーチ)や横アーチが崩れやすく、正しい位置を維持するための安定性が低下する。
- 横アーチが低下すると、足の幅が広がり、親指の付け根の骨(中足骨)が開くため、親指が外側に傾きやすくなります。
- 靭帯や関節が緩いと、関節を安定させるための筋肉(足底筋群や母趾外転筋など)に頼ることになりますが、これらの筋肉が弱いと親指の位置を維持できません。その結果、親指が外側(小指側)に向きやすくなり、外反母趾が進行しやすくなります。
- 歩行時に親指がうまく地面を蹴れず、負担が親指の付け根に集中することで、外反母趾の進行が加速します。
- もともと関節が柔らかい人は、遺伝的に**靭帯の緩さ(関節弛緩性)**を持っていることが多く、外反母趾の発症リスクが高まります。
- 関節が柔らかいと、ヒールや幅の狭い靴を履いたときに足が変形しやすくなります。
- 靴の中で指が広がりすぎたり、締めつけによる影響を受けやすいため変形しやすい。
◆ 予防・対策
- 関節を安定させる筋力トレーニング(足裏や足指を鍛える運動)
- サポート力のある靴を履く(大きすぎず、柔らかすぎず、適度に足を固定するもの)
- テーピングやサポーターを活用する(関節の動きを制限し、正しい位置を維持する)
③ 足の幅や形
◆ 特徴
足の幅(ワイズ)や形状は遺伝的に決まる要素の一つです。特に、足幅が広い人(特に甲高・幅広の人)は、靴による圧迫を受けやすい傾向があります。
◆ 影響と外反母趾との関係
- 市販の靴は一般的な足型(標準的なワイズや甲の高さ)を基準に作られていることが多い。
- 日本では**「D〜Eワイズ」が標準とされているが、甲高・幅広の人は「3E〜4E」**などのワイズが必要なことが多い。
- 足は立ったり歩いたりすると横に広がる性質があるが、幅広の足の人はその広がりが大きくなる。
- 靴の設計がそれを考慮していないと、履いたときに足の横幅が収まらず圧迫され親指が外側に押し出されやすくなる。窮屈な靴を履くことで、親指が曲がった状態が続き、次第に変形していく。
- 甲高の人は、靴の甲部分(アッパー)に圧迫されやすいため、血流が悪くなったり痛みを感じたりすることがある。
- 幅広の人は、横幅に合わせてサイズを選ぶため、長さが大きめの靴を買うことがある。その結果、かかとが浮いたり、歩行時のバランスが悪くなったりする。
- 靴紐やベルトの締め付けが強くなるため、足の動きを制限されやすい。
◆ 予防・対策
- 自分の足のサイズとワイズを正しく測定する(専門店で測るとより正確)
- 幅広・甲高に対応した靴を選ぶ(「3E」「4E」などの表記をチェック)
- 足に合った形状のインソールを使用する(靴のフィット感を高め、足を適切にサポート)
④ 指の形(エジプト型)
◆ 特徴
足の指の形は3つのタイプに分類されることが多く、その中で「エジプト型」は親指が最も長く、他の指が徐々に短くなる形を指します。
◆ 影響と外反母趾との関係
- エジプト型の足は親指が突出しているため、歩くときに靴の先端に当たりやすく、親指の付け根に負担がかかります。これが長期間続くと、親指が外側(小指側)に押しやられ、外反母趾の原因になります。
- エジプト型の人は足の先端が細くなるためつま先の細い靴を選びがちですが、親指が内側に押し込まれやすく、これが変形を促進します。
- 土踏まずのアーチ(特に横アーチ)が低下すると、足全体のバランスが崩れ、親指の付け根に負担が集中しやすくなります。
- エジプト型の人は、つま先が狭いパンプスやハイヒールなど履物の影響を受けやすい。
◆ 予防・対策
- つま先に余裕のある靴を選ぶ(先細りしていない、ラウンドトゥ・スクエアトゥの靴)
- 親指を動かすエクササイズを行う(足指のストレッチやグーパー運動)
- 靴のサイズを見直す(親指が当たらず、適度なゆとりがある靴を選ぶ)
外反母趾は遺伝的な足の特徴だけでなく、日常の靴選びや歩き方、姿勢などによっても影響を受けます。リスクが高い人は、早めに適切な対策を取ることで、症状の進行を防ぐことができます。
遺伝だけではなく環境要因も重要
遺伝的な要因があるからといって、必ず外反母趾になるわけではありません。生活習慣や靴の選び方、歩き方などの環境要因も大きく影響します。
ハイヒールや先の細い靴を履く
もし幅が狭い靴や先が細い靴を履いていると、母趾が圧迫されて変形が進みます。
仕事でスリッパやサンダルを履く
足がフィットしないスリッパなどの長時間の使用は、脱げないように無意識に足指が力んでしまい、歩行時の足の機能性は低下する。そうしてアーチが緩んだり伸びたりして親指の変形が起きやすい。
長時間立ち仕事をしている
立ち仕事では、体重が足に均等にかかるのではなく、特に前足部(つま先部分)に負担が集中しやすくなります。特に女性のパンプスやヒールのある靴を履くと、さらに前足部に圧力がかかり、母趾(親指)が圧迫されやすくなります。
立ち仕事による疲労で足の筋肉が疲れやすくなり、足裏の筋肉や足指を支える筋肉が弱まります。足指の筋肉が衰えると、母趾を正しい位置に保つ力が弱まり、外反母趾が進行しやすくなります。
足に合わない靴を履き続けている
クッション性の低い靴は衝撃が直接足に伝わり、足のアーチを崩す原因になります。サイズが大きすぎても小さすぎても足に過剰な負担がかかってしまう。
足裏への刺激が少ない
現代人は昔に比べて小さいころから裸足で過ごしたり、外で遊ぶということが少なくなっています。そうすると、足からの刺激が減るためアーチや筋力の機能が低下します。
これらの要因を避けることで、遺伝的なリスクを持っていても外反母趾の発症を防ぐことができます。
外反母趾を予防する方法
外反母趾のリスクを減らすために、日常生活でできる予防策を紹介します。
テーピングやサポーターの活用
- 外反母趾用サポーターを装着する
- テーピングで親指の位置を補正する
- テーピングや専用靴下でアーチを補助する
- 夜用の矯正器具を使って変形を防ぐ
足に合った靴を選ぶ
- つま先が広く、足にフィットする靴を選ぶ
- かかとの高さは3cm以下が理想的
- インソールを使って足のアーチをサポートする
- 歩きたくなるような履き心地の良いスニーカーを選ぶ
足の筋肉を鍛える
- タオルギャザー運動:足指でタオルをたぐり寄せることで、足の筋力を強化。
- つま先立ち運動:かかとを上げ下げすることで、足の筋肉を鍛える。
- 足指のグーパー運動:足の指を開いたり閉じたりすることで、筋力と柔軟性を向上。
- 専門的な筋肉トレーニング:足を安定させる筋肉を鍛え、歩行時に足指が自然と使えるようにする。
歩き方を意識する
- 足裏全体を使って歩く
- 指・指の付け根・かかとが地面につくように着地
- 正しい姿勢を保ち、歩幅は無理に広く取らない
整形外科や整体での相談
- 専門医による診断を受ける
- 早期の治療で進行を防ぐ
- インソール処方や理学療法を受ける
まとめ
外反母趾は、遺伝的な要因が関係することが多いですが、適切な予防策を取ることで発症や進行を防ぐことができます。
ポイントまとめ
外反母趾は足の形状や関節の柔らかさなど、遺伝的な要因が関与する
靴の選び方や歩き方などの環境要因も大きく影響する
予防には、専用のサポーターで保護・適切な靴の選択・足の筋力トレーニング・歩き方の改善が重要
すでに症状がある場合は、早めに整形外科や整体で相談することが大切
家族に外反母趾の人がいる方は、早めの対策を行い、健康な足を維持しましょう。