猫背は以前から私たちを悩ませる問題でしたが、スマホの登場でさらにストレートネックという問題も出てきました。その解決法の1つとして整体があります。この記事では猫背が及ぼす悪影響、整体による猫背矯正の効果、自宅でできるストレッチなどを紹介します。
目次
猫背の定義と特徴
猫背とは一般的に頭の位置が肩より前にあり、背中が丸くて前に傾いてしまう姿勢のことです。首猫背、背中猫背、腰猫背、腹猫背があります。
首猫背はいわゆるストレートネックで、頭だけが前方にでてしまっている状態をいいます。頭から首や肩への負担で血行不良を起こし、頭痛や肩こりの原因になりやすいです。
背中猫背は背中の中心が曲がっている状態で、一般的な猫背がこれに当たります。背中の筋力低下が関係しており、お年寄りの場合は加齢が関係しています。
腰猫背は背中猫背同様、背中の筋力不足になっている人が多い傾向があります。腰部分が曲がっています。腹猫背は反り腰猫背ともいい、腰が前に沿っているせいでお腹がぽっこり突き出た姿勢になり、首と腰への負担が大きい特徴があります。女性に多くみられます。
姿勢が悪いと元気がなく暗い印象を与え、老けて見られてしまいます。血行不良により代謝が悪くなり、太りやすくなります。バストやヒップの位置も下がり、美容面でもいいことはありません。
猫背による悪影響
猫背は肩こりや背中の痛み、呼吸がしにくくなる、消化器への悪影響を引き起こします。
猫背は筋力低下のサインであり、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、いわゆるロコモにつながりかねません。ロコモとは、運動器障害のために立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態であり、進行すると将来、介護が必要な状態になるリスクが高まります。
肩こりと背中の痛み
本来首の骨は横から見た時、前側が緩やかにカーブしています。成人で約4〜6kgと言われる頭の重さを、首の骨を含む背骨と首・肩・背中の筋肉で支えています。ストレートネックで前に15度うつむくと頭の重さの倍である12kgもの負荷がかかります。60度の場合は実に27kgの負荷がかかるといわれています。その結果、体幹の筋肉への負荷が大きくなり、肩こり、腰痛、背中の痛みを引き起こすのです。
痛みがあると生活が思うようにできなくなり、QOL(生活の質)低下につながりかねません。
呼吸がしにくい
背中が丸くなると、腹圧が上昇します。腹圧とは、肋骨と骨盤の間にある腹腔というスペース全体にかかる圧力のことです。
腹腔の上にある肺は自分自身で伸びることができないため、通常、筋肉と横隔膜が動いて胸郭(肋骨、背骨、胸骨で囲まれたスペースのこと)の内圧を上げて、肺を膨らませます。肺は縮むことはできるので、膨らんだ後は自分で縮むというように呼吸運動がなされています。腹腔上昇により横隔膜が押され、肺が動きにくくなるために呼吸が浅くなり、息がしにくくなります。
消化器への悪影響
腹腔内にある内臓には胃や肝臓などがあります。腹圧上昇で胃液の逆流を起こし、胸やけ(逆流性食道炎)を引き起こします。立っている時は重力の影響で起こりにくいですが、横になると胃酸が逆流しやすくなります。猫背による内臓の圧迫、筋力低下により消化器官の動きが悪くなり、便秘しやすくなります。
整体とは
諸説ありますが、整体は約2,000年前に中国で考案された、骨格や筋肉のバランスを調整する手技療法のひとつである推拿(すいな)が起源とされています。
大正時代には、アメリカ発祥の補完医療であるオステオパシーが山田信一氏によって日本に紹介されました。しかし、山田氏はオステオパシーに他の療術も組み合わせたものを「整体術」として紹介したため、「山田式整体術」として普及・発展しました。昭和18年に整体操法設立委員会が設立され、その議長を務めた野口晴哉氏が「整体」という言葉を作ったといわれています。
現在の日本では、手技を用いて体全体のバランスを整え、肩こりや腰痛を根本から改善させる民間療法です。
整体院と整骨院とのアプローチの違い
よく混同されやすい整体院と整骨院ですが、違いがあります。
整体院では、主に手技により筋肉や骨格のバランスを整え体の不調を取り除きます。やり方が決まっているわけでもなく、ボキボキ痛い施術もあれば、痛くないソフトな施術など様々です。
整骨院では、柔道整復師という国家資格保有者が、整復や固定しての治療を行います。軽いマッサージや矯正をすることもあり、整骨院ごとに施術内容は異なります。
整体による猫背矯正の効果
猫背によって引き起こされる様々な体の不調が改善されます。
筋肉の緊張を緩和
整体で全身のバランスが整うと、頭の重さが背骨の構造によってうまく分散されるようになります。肩や腰への負担が軽減します。筋肉の緊張がほぐれると血行も良くなるため、緊張性頭痛や肩こりの解消、冷え性やむくみの改善も期待できます。
骨格の調整
骨格の調整によって筋肉が効率よく使えるようになり、胃腸への圧迫がなくなり健康的にプラスになります。
姿勢の意識向上
体の歪みが整うと姿勢が良くなります。正しい姿勢は代謝が良くなり、やせやすくなります。効率よく体を使えるようになり、疲れにくくなります。周りの人にもはつらつとしてやる気があるようにみえ、好印象を与えます。
猫背はどのくらいで治る?
どのくらいで治るかは個人差があり、猫背の程度でも変わってきます。すぐに治るわけではなく、整体院での施術以外でも、普段の生活で正しい姿勢を心がけるかどうかで結果は変わってきます。
自宅でできる改善方法
ストレッチ
大胸筋や脊柱起立筋、大腰筋、大腿直筋を伸ばすストレッチが有効です。
【大胸筋のストレッチ】
- 壁に背中とかかとをつけて立つ。
- 両手をあげてバンザイの姿勢をとる。
- 息を吐きながら、腕を壁に沿わせて下げる。
- 3を5〜6回繰り返す。
【脊柱起立筋のストレッチ】
- 両手、両膝を肩幅に開いて床につけ、四つんばいの姿勢をとる。手は肩の真下に、お尻の真下に膝がくるようにする。
- 息を吸いながら、背骨をひとつひとつ動かすイメージで、背中を反らしていく。この時、両手で床を押し、目線は斜め上に。
- 息を吐きながら、おへそをのぞきこむように背中を丸める。この時、目線はおへそに。息を吐ききったら2に戻る。
- 2〜3を5〜6回繰り返す。
【大腿直筋を伸ばすストレッチ】
- 筋肉を伸ばす側の脚を上にして、体を横向きに寝る。下側、床についている脚を前に出し、股関節と膝がそれぞれ90度になるように曲げる。
- 上になっている方の手で同じ側の足首をつかみ、お尻の方に引き寄せる。太ももの前側が伸びているのを感じながら15〜20秒保持する。
- 左右3回繰り返す。
正しい姿勢を意識しよう
普段の姿勢の見直しをしましょう。スマホを手に持って操作する際にどうしてもうつむいた姿勢になるため、スマホは目線と同じ高さにするように意識しましょう。デスクワークでの座り方も注意が必要で前屈みにならないよう、かつ、背もたれにもたれかからないようにします。背筋を伸ばして膝が90度になるようにするのが正しい座り方です。
正しい姿勢を保つには筋力が必要で、初めのうちはすぐ疲れてしまい、姿勢が崩れてしまうことがあるでしょう。姿勢が崩れていると気づいたら、正しい姿勢に修正します。人は立っている時よりも座っている方が正しい姿勢を保ちにくいのです。
【正しい姿勢の作り方】
- 腰に両手を当てて、背骨の両サイドにある背筋を触り、硬さをチェック。
- そのまま少し上を見ながら前かがみになり、背筋が硬くなっているか確かめる。
- 少しずつ上半身をまっすぐ起こしていく。
- 背筋が柔らかくなったところでストップ(これが正しい姿勢。)
まとめ
猫背は肩こりや腰痛の原因になるだけでなく、将来介護を必要とする状態にもなりかねません。たかが猫背と軽くみず、整体での調整を検討するのをおすすめします。要介護状態にならないように予防するとともに、筋肉の緊張を緩和して肩こりや腰痛が改善し、姿勢が良くなり、疲れにくくなるメリットがあります。
どんなに腕のいい整体師の施術でも1回で完璧に改善することは難しく、長期間にわたって猫背になる姿勢で生活しているとそのクセはなかなか治りません。整体での調整に加え、普段の生活でも気をつけることについて助言をもらいましょう。正しい姿勢での立ち方・座り方を実践し、自宅や職場でできるストレッチ等を行うことで猫背は改善できます。