この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
変形性膝関節症は、一般的にKL分類という基準を用いて重症度や進行度を0から4の5段階に分類される疾患です。Grade 0は正常な膝関節の状態で、Grade IVになると関節の隙間がほとんどなくなり骨棘や骨変形が著しく進行した状態となります。
この分類により、患者さんの症状に応じた適切な治療法の選択が可能になり、症状の緩和や機能回復を目指すことができます。本記事では、変形性膝関節症の各ステージの特徴と治療方針について、専門家の見解を交えながら詳しく解説します。膝の痛みでお悩みの方は、まず自分の症状がどのステージに該当するかチェックしてみましょう。
目次
変形性膝関節症とは?ステージ分類の基本概要と原因
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、骨や関節に変形が生じる疾患です。
さらに、日本だけでも2000万人から3000万人の患者がいると推定されており、特に女性に多く見られる傾向があります。
変形性膝関節症というのは、日本だけでも2000万人から3000万人いると言われています。それだけ膝の痛い人って多いんです。これなぜかというと、年をとったからとか、体重が重いからとか、そういうのはあまり関係ないですよ。
一方で、変形性膝関節症の主な原因には以下が挙げられます:
原因分類 | 具体的要因 | 説明 |
---|---|---|
加齢 | 軟骨の老化 | 年齢とともに軟骨の水分含有量が減少し、弾力性が低下する可能性があります |
力学的負担 | 肥満・O脚・外傷 | 関節への過度な負担により軟骨の損傷が進行する傾向があります |
筋力低下 | 大腿四頭筋の衰え | 膝関節を支える筋肉の機能低下により関節不安定性が増加する可能性があります |
このため、膝関節は140度以上の大きな可動域を持ちながら体重を支える必要があるため、不安定性と負担の両方を抱える関節として知られています。この特性が、変形性膝関節症の発症リスクを高める要因となっている可能性があります。
変形性膝関節症のステージ分類:Kellgren-Lawrence(KL)分類の基本
変形性膝関節症の重症度評価には、国際的に広く使用されているKellgren-Lawrence分類(KL分類)が用いられる傾向があります。
さらに、この分類は、レントゲン画像での膝関節の隙間の狭さや骨棘(骨のトゲ)の有無、骨の変化の程度を評価する指標として活用されています。
一方で、KL分類では、関節軟骨の減少具合と骨棘の程度によって重症度を分類し、グレードは関節の隙間の大小によって0から4まで分類されています。このため、この分類により、治療方法の選択に大きな影響を与える可能性があります。
日本整形外科学会の変形性膝関節症診療ガイドラインでも、このKL分類が標準的な評価基準として推奨されています。
【ステージ別詳細解説】変形性膝関節症の各グレード(0~4)
Grade 0(正常):健康な膝関節の状態
Grade 0は正常な膝関節の状態を示します。大腿骨と脛骨の関節の隙間が十分にあり、骨棘の形成や軟骨下骨の硬化も見られません。
この段階では以下の特徴があります:
- 関節裂隙が正常に保たれている
- 骨棘の形成がない
- 軟骨下骨硬化がない
- 関節の変形が認められない
Grade I(疑い):変形性膝関節症の初期疑い段階
Grade Iは変形性膝関節症が疑われる状態です。
さらに、関節裂隙狭小のないわずかな骨棘形成、または軟骨下骨硬化が認められる段階とされています。
主な特徴として以下が挙げられます:
- 膝関節の隙間が狭くなり始める
- 骨棘の兆候が見られる
- 症状はまだ軽微または無症状の場合が多い
- 日常生活への支障は少ない傾向があります
Grade II(初期):変形性膝関節症の初期段階
Grade IIは変形性膝関節症の初期段階に該当します。
一方で、骨棘が明確に見られ、関節の隙間が狭くなっている状態です。
症状と所見は以下の通りです:
- 明確な骨棘の形成
- 関節裂隙狭小化の可能性
- 階段の上り下りで痛みを感じることがある
- 朝のこわばりが出現する場合がある
Grade III(進行期):変形性膝関節症の進行期
Grade IIIは変形性膝関節症の進行期にあたります。
このため、中等度で複数の骨棘、明確な関節裂隙狭小化、骨硬化、骨端部変形の可能性が認められる段階です。
O脚がひどく開くような症状というか、見た目の問題なんですけれども、まっすぐ脚を気をつけした時に膝と膝の間がこぶし2つ分くらい開いてしまうという場合、その場合は結構変形が進んでしまっています。
この段階での特徴は以下の通りです:
- 関節の隙間がさらに狭くなる
- 骨硬化や骨端変形が見られる
- O脚でこぶし2つ分開く場合は手術を検討する段階とされています
- ヒアルロン酸注射が効かなくなってくる傾向があります
- 歩行時の痛みが増強する可能性があります
Grade IV(末期):変形性膝関節症の末期段階
Grade IVは変形性膝関節症の末期段階です。
さらに、関節の隙間がほとんどなくなり、骨棘や骨変形が著しく、骨硬化が進行している状態とされています。
末期症状の特徴は以下の通りです:
- 大きな骨棘の形成
- 著明な関節裂隙狭小化
- 高度の骨硬化
- 明確な骨端部変形
- 膝が90度以上曲がらない状態が多く見られます
- 正座や階段の上り下りが困難になる傾向があります
膝が90度以上曲がらないという状況ですね。膝が90度曲がらない。大体、仰向けでいうとこのぐらいしか曲がらないとか、ただ座っているのも結構しんどいという状態です。
変形性膝関節症のステージ分類における検査と診断方法
変形性膝関節症の診断には、主にレントゲン検査とMRI検査が用いられる傾向があります。
このため、それぞれの検査方法には以下のような特徴があります:
レントゲン検査による診断
レントゲン検査は、KL分類の判定に最も重要な検査とされています。
さらに、立位での正面と側面の撮影により、関節裂隙の狭小化や骨棘の形成、骨硬化の程度を評価する傾向があります。
MRI検査の限界と有用性
一方で、MRI検査では軟骨の状態や半月板の損傷、関節液の貯留などを詳細に観察できます。
ただし、KL分類の判定はレントゲン画像を基準とするため、MRI所見とKL分類が必ずしも一致しない場合がある可能性があります。
ステージ分類に応じた治療法の選択肢
変形性膝関節症の治療は、ステージに応じて保存療法から手術療法まで様々な選択肢がある傾向があります。
ステージ | 推奨治療法 | 治療内容 |
---|---|---|
Grade I-II | 保存療法 | 運動療法、薬物療法、ヒアルロン酸注射 |
Grade III | 保存療法+再生医療 | PRP療法、幹細胞治療、骨切り術検討 |
Grade IV | 手術療法 | 人工関節置換術、高位脛骨骨切り術 |
保存療法の選択肢
保存療法には以下のような方法がある傾向があります:
- 運動療法:大腿四頭筋の筋力強化、可動域訓練
- 薬物療法:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、外用薬
- ヒアルロン酸注射:関節内への粘弾性補充
- 装具療法:膝装具、足底挿板
再生医療という新しい選択肢
さらに、近年注目されているのが再生医療です。
一方で、PRP(多血小板血漿)療法や幹細胞治療など、患者自身の血液や脂肪から採取した細胞を用いて軟骨の修復を促進する治療法が開発されています。
手術療法の適応
手術療法は主にGrade IVの患者に適応される傾向がありますが、症状の重さや患者さんの要望によってはGrade IIIでも検討される場合があります。
変形性膝関節症のステージ分類と進行を抑えるためにできること
変形性膝関節症の進行を遅らせるためには、以下の予防策が効果的とされています:
生活習慣の改善
- 体重管理:適正体重の維持により膝への負担を軽減する可能性があります
- 適度な運動:水中ウォーキング、サイクリングなど膝に優しい運動
- 正しい姿勢:O脚・X脚の矯正
セルフケアの重要性と実際の改善事例
変形性膝関節症と診断されて、ほぼ末期ということで、その時が55歳ぐらいで、今から6年ぐらい前です。本来であれば今の症状であればもう即手術ということだったんですが、年齢的なことを考えて65歳まで手術を延ばしたいと思いました。
このため、適切なセルフケアにより、末期の変形性膝関節症でも症状の改善が期待できる場合があります。
6回目が終わった頃には、スタスタと、自分の記憶で膝が悪くなる前ほどには戻ってはいませんけれども、少なくともここへ来る前よりは全然良くなっているというのは自分でも分かりましたし、足を引きずりながら歩くということがもうほとんどないですね。
さらに、専門家の指導のもと、正しいフォームでの運動療法を継続することが重要とされています。
専門医による診療の重要性
変形性膝関節症の適切な診断と治療には、整形外科専門医による診察が不可欠とされています。
一方で、患者さんの症状、年齢、活動レベル、職業などを総合的に考慮し、個々の患者さんに最適な治療方針を決定することが重要とされています。
このため、定期的な検査により進行度を把握し、必要に応じて治療方針の見直しを行うことで、良好な機能維持と症状緩和を目指すことができる可能性があります。
変形性膝関節症のステージ分類に関するよくある質問
Q. KL分類のグレードはどのように決まるのですか?
A. KL分類は主にレントゲン画像での膝関節の隙間の狭さや骨棘(骨のトゲ)の有無、骨の変化の程度を評価して決定される傾向があります。関節軟骨の減少具合と骨棘の程度によって0から4のグレードに分類され、治療方法の選択に重要な指標となる可能性があります。
Q. Grade IIIでも手術は必要ないのでしょうか?
A. Grade IIIの段階では、まず保存療法や再生医療を試みることが一般的とされています。ただし、O脚でこぶし2つ分開く場合や、膝が90度以上曲がらない場合は手術を検討する場合があります。症状の程度や患者さんの生活スタイルによって判断が変わる傾向があります。
Q. 変形性膝関節症の進行を止めることは可能ですか?
A. 完全に進行を止めることは困難とされていますが、適切な治療とセルフケアにより進行を大幅に遅らせることは可能とされています。体重管理、適度な運動、筋力強化などの生活習慣の改善が重要で、患者体験談でも末期の診断から劇的な改善を見せる例があります。
Q. ヒアルロン酸注射はどのステージまで効果的ですか?
A. ヒアルロン酸注射は主にGrade I~IIの初期段階で効果的とされています。Grade IIIの進行期になると効果が限定的になることが多く、この段階では再生医療や手術療法の検討が必要になる場合がある傾向があります。
Q. 再生医療はどのような治療法ですか?
A. 再生医療には主にPRP(多血小板血漿)療法や幹細胞治療があります。患者自身の血液や脂肪から採取した細胞を用いて軟骨の修復を促進する治療法で、Grade II~IIIの患者に適応される新しい選択肢として注目されています。
Q. 手術後のリハビリはどの程度必要ですか?
A. 人工関節置換術後は通常3~6ヶ月のリハビリテーションが必要とされています。手術直後から段階的に可動域訓練や筋力強化を行い、日常生活への復帰を目指します。専門家の指導のもと、継続的なリハビリが良好な結果につながる可能性があります。
Q. セルフケアで症状改善は本当に可能ですか?
A. はい、適切なセルフケアにより症状の大幅な改善が期待できるとされています。61歳の患者さんの体験談では、末期の診断から6回の整体とセルフケアでスタスタ歩けるまで回復した例があります。専門家の指導を受けながら正しいフォームで継続することが重要とされています。
まとめ:適切な診断と治療選択の重要性
変形性膝関節症のステージ分類(KL分類)は、患者さんの症状に応じた最適な治療法を選択するための重要な指標とされています。
さらに、Grade 0の正常な状態からGrade IVの末期まで、それぞれの段階に応じた適切な治療を受けることで、症状の緩和や機能回復を目指すことができる可能性があります。
重要なポイントは以下の通りです:
- 早期診断により進行を遅らせることが可能とされています
- 保存療法から手術療法まで多様な治療選択肢があります
- 再生医療という新しい治療法も注目されています
- 適切なセルフケアにより症状の大幅な改善が期待できる可能性があります
- 専門医による継続的な管理が重要とされています
このため、膝の痛みや違和感を感じた場合は、早めに整形外科専門医を受診し、適切な診断を受けることをお勧めします。
一方で、ご自身の状態を理解し、医師と相談しながら最適な治療方針を決定することが、良好な予後につながる可能性があります。