この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
首痛と手のしびれが同時に発生する場合、何らかの神経の圧迫や障害が起きている可能性があります。この症状は日常生活に大きな支障をきたし、放置すると症状が悪化することもあるため注意が必要です。本記事では、首痛と手のしびれの主な原因となる疾患や、自宅でできる対処法、専門医への受診タイミングについて詳しく解説します。症状の改善には適切な原因の特定と早期の対応が重要です。いずれの症状も長引く場合は、専門医による適切な診断を受けることをおすすめします。
「ストレートネックになるとですね、具合悪くなったり、吐き気がしたり頭痛がしたり、あとずっとなんか肩凝ってるとか、こういうようなことが起きるわけです」
目次
首痛と手のしびれの主な症状とセルフチェック方法
首痛と手のしびれが同時に起こる場合、単なる肩こりや疲れとは区別すべき症状です。以下のような症状がある場合は、神経の圧迫や障害が起きている可能性があります。
- 首を動かすと痛みが増す
- 手や腕にしびれや痛みが広がる
- 指先の感覚が鈍くなる
- 物をつかむ力が弱くなる
- 長時間同じ姿勢でいると首痛や手のしびれが悪化する
- 腕や肩に力が入りにくい
特に朝起きた時に首痛や手のしびれの症状が強い場合や、日常生活に支障をきたすレベルの痛みやしびれがある場合は、早めに専門医への受診を検討しましょう。
なぜ起こる?首痛と手のしびれの5つの原因とメカニズム
首痛と手のしびれが同時に発生する主な原因は、首から腕にかけて走る神経(頚神経根や腕神経叢)が何らかの理由で圧迫されることにあります。この圧迫は以下のような状況で発生します:
原因 | メカニズム | 主な影響 |
---|---|---|
加齢による変形 | 頚椎の椎間板や骨の変形が神経を圧迫 | 首から腕、手にかけての痛みやしびれ |
不良姿勢 | 長時間のデスクワークやスマホ使用による姿勢の悪化 | 筋肉の緊張、神経の圧迫 |
外傷 | 事故やスポーツ外傷による組織損傷 | 急性の痛みとしびれ |
筋肉の過緊張 | ストレスや過労による筋肉の緊張 | 神経の圧迫、血行不良 |
ストレートネック | 首の自然なカーブの喪失による神経圧迫 | 首から肩、腕にかけての痛みとしびれ |
これらの原因によって、首から腕や手に向かう神経が圧迫され、首痛や手のしびれといった症状が生じます。特に長時間同じ姿勢を続けるデスクワークや、スマートフォンを見る際の前傾姿勢(ストレートネック)は、現代人に多い首痛と手のしびれの原因の一つです。
ストレートネックと神経圧迫のメカニズム
特に現代人に多いストレートネックは、首痛と手のしびれの重要な原因の一つです。本来、首の骨(頚椎)はゆるやかなカーブを描いていますが、長時間の前傾姿勢によってこのカーブが失われると、首の筋肉に過度の負担がかかり、神経が圧迫されることで症状が現れます。
「ストレートになると首のここの筋肉が硬くなって、ここに神経が通ってるんで、腕がだるくなったりとか、痛みに感じたり、頭痛がしたりっていうような症状が起きるわけです」
要注意!首痛と手のしびれから考えられる代表的な7つの疾患
首痛と手のしびれが同時に現れる場合、以下のような疾患が考えられます。それぞれの症状と特徴を理解し、自分の状態に当てはまるかどうかをチェックしましょう。
1. 頚椎症
頚椎症は、加齢による頚椎の変形や、椎間板の圧迫によって神経が刺激され、首や肩の痛み、手のしびれを引き起こす可能性がある状態です。特に50歳以上の方に多く見られる疾患ですが、若い世代でも不良姿勢や過度の負担によって発症することがあります。
頚椎症の特徴的な症状として、首を後ろに反らすと痛みやしびれが増強することや、朝起きた時に症状が強く出ることがあります。
2. 頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎の間にあるクッションの役割をする椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで首痛や手のしびれを引き起こす疾患です。突然の首の痛みや、特定の腕や手の指にしびれが集中して現れることが特徴です。首痛や手のしびれに加えて、腕の脱力感や筋力低下を伴うこともあります。
この疾患は、重い物を持ち上げる動作や、急な首の動きによって発症することがあります。症状は徐々に進行する傾向があり、早期の治療が重要と考えられています。
3. 胸郭出口症候群
胸郭出口症候群は、首から胸にかけての神経や血管が、筋肉や骨によって圧迫されることで発症する疾患です。特に腕を上げた状態を長時間維持すると首痛や手のしびれの症状が悪化し、手や腕の痺れ、冷感、痛みなどが現れます。
デスクワークや特定のスポーツをする方に多く見られ、肩甲骨周辺の筋肉のバランスが崩れることで発症リスクが高まります。
4. 頚椎椎間関節症
頚椎椎間関節症は、首の椎骨同士をつなぐ小さな関節(椎間関節)に炎症や変形が生じる疾患です。首痛と手のしびれに加えて、首の動きが制限されたり、頭痛を伴ったりすることがあります。特に首を後ろに反らしたり、横に傾けたりすると痛みが増す特徴があります。
5. 脊髄症
脊髄症は、脊髄自体が何らかの理由で圧迫されることで起こる症状です。首痛や手のしびれだけでなく、歩行障害や膀胱直腸障害などのより重篤な症状を引き起こす可能性があります。症状が進行性の場合や、足にもしびれや麻痺がある場合は、脊髄症の可能性を考える必要があります。
6. 腕神経叢障害
腕神経叢は、首から腕に向かう神経の束で、これが何らかの理由で障害を受けると、首痛や腕、手のしびれを引き起こします。外傷や繰り返しの動作、特定の姿勢などが原因となることがあります。首痛と手のしびれに加えて、特定の筋肉の弱さや感覚の異常を伴うことが特徴です。
7. 外傷性頚部症候群(むち打ち症)
交通事故などによる首への衝撃で、首の筋肉や靭帯、神経などが傷害を受ける状態です。首痛や手のしびれに加えて、頭痛やめまい、吐き気などの症状が現れることがあります。症状は事故直後から出現することもあれば、数日〜数週間後に徐々に現れることもあります。
自分でできる?首痛と手のしびれの3つの応急処置と予防ストレッチ
首痛と手のしびれの症状を緩和するために、自宅でできるケア方法をご紹介します。ただし、これらは一時的な対処法であり、症状が継続する場合は必ず専門医に相談してください。
1. 安静とアイシング
症状が急に現れた場合や、痛みが強い場合は、まず安静にすることが大切です。首や肩に負担をかけないよう、無理のない範囲で安静を保ちましょう。また、痛みがある部分に氷嚢などを当て、15分程度冷やすことで炎症を抑える効果が期待できます。
2. 専門家推奨のストレートネック改善トレーニング
ストレートネックが原因の首痛と手のしびれの場合、以下のトレーニングが効果的です。特に電気筋(肩の前の筋肉)と肩甲挙筋を鍛えることで、首の負担を軽減することができます。
「ストレートネックを改善させる運動とストレッチについて。どこを働かせるべきかと言うと電気筋っていう筋肉と、肩甲挙筋っという肩の前の筋肉です」
- 電気筋トレーニング:
- 手のひらを前に向け、肘を曲げた状態で前に出す
- 反対の手で肘を内側に入らないように押さえる
- 押さえている側に力を入れ、10秒間キープ
- 両側交互に3セット行う
- 肩甲挙筋トレーニング:
- 手のひらを下に向け、肘を曲げる
- 反対の手で手首を押さえ、曲がらないようにする
- 10秒間キープし、両側交互に行う
- 小胸筋ストレッチ:
- 鎖骨の下にある小胸筋を優しくマッサージする
- 神経や動脈が通る部分なので、優しく行う
3. 温熱療法と筋肉のリラクゼーション
急性期(24〜48時間)を過ぎたら、温熱療法も効果的です。首や肩の周りを温めることで血行が促進され、筋肉の緊張が緩和されます。入浴時に首や肩を暖める、または温かいタオルを首に巻くなどの方法が簡単です。温めた後は、ゆっくりと首を回したり、肩をすくめたり下げたりする軽いストレッチを行うと効果的です。
日常生活での予防策
首痛と手のしびれを予防するには、日常生活での姿勢や習慣も重要です:
- デスクワーク時は定期的に姿勢を正し、休憩を取る
- スマートフォンの使用時間を制限し、目線が下がりすぎないよう注意
- PC画面は目線と同じ高さに設置する
- 適切な枕を使用し、睡眠中の首の負担を軽減する
- 定期的なストレッチで首や肩の筋肉をほぐす
専門医に相談すべき5つのケースと医療機関での検査・治療法
自己対処で首痛や手のしびれの症状が改善しない場合や、以下のような状況では、早めに専門医(整形外科や脳神経外科)を受診しましょう:
- 痛みやしびれが2週間以上続く
- 手や腕の力が明らかに弱くなった
- 日常生活に支障をきたすほどの症状がある
- 痛みが急激に悪化した
- 腕や手だけでなく、足にもしびれが出現した場合(脊髄の病気の可能性)
医療機関での検査
医療機関では、首痛と手のしびれの症状の原因を特定するために以下のような検査が行われることがあります:
- レントゲン検査:頚椎の骨の変形や異常を確認
- MRI検査:神経や軟部組織の状態を詳細に観察
- CT検査:骨の状態を立体的に確認
- 神経伝導検査:神経の働きを調べる検査
医療機関での主な治療法
診断結果に基づき、以下のような治療が行われることがあります:
治療法 | 内容 | 適応症例 |
---|---|---|
薬物療法 | 消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミン剤など | 初期〜中等度の症状 |
物理療法 | 温熱療法、低周波療法、牽引療法など | 筋緊張や軽度の神経圧迫 |
装具療法 | 頚椎カラーなどによる首の固定 | 急性期の安静が必要な場合 |
リハビリテーション | 専門家による適切な運動療法 | 慢性期の筋力強化や姿勢改善 |
手術療法 | 椎間板ヘルニアの摘出や脊柱管の拡大など | 保存療法で改善しない重度の症状 |
症状や原因によって適切な治療法は異なるため、自己判断せず、専門医の診断に基づいた治療を受けることが重要です。特に症状が悪化している場合や、神経症状が強い場合は早急な受診が必要です。
日常生活で気をつけるべき6つのポイントと再発防止策
首痛と手のしびれの再発を防ぐためには、日常生活での注意点や習慣の改善が重要です。以下のポイントを意識して生活することで、症状の悪化や再発を予防しましょう。
1. 正しい姿勢を意識する
デスクワークやスマートフォンの使用時など、日常生活のあらゆる場面で正しい姿勢を意識することが大切です。特に以下の点に注意しましょう:
- 背筋を伸ばし、顎を引いた状態を保つ
- 肩の力を抜き、自然な位置に保つ
- PC作業時は画面が目線と同じ高さになるよう調整する
- スマートフォンを見る際は、なるべく目線を下げずに持つ
2. 適切な休息と運動のバランス
同じ姿勢を長時間続けることは、首や肩に大きな負担をかけます。以下のように休息と運動のバランスを取りましょう:
- 1時間に1回は姿勢を変え、軽いストレッチを行う
- 定期的な有酸素運動で全身の血行を促進する
- 肩甲骨周りの筋肉を意識したトレーニングを取り入れる
- 過度な運動や負荷は避け、適切な強度を保つ
3. 睡眠環境の改善
睡眠中の姿勢も、首痛や手のしびれに大きく影響します。良質な睡眠のために以下の点を意識しましょう:
- 首のカーブを自然に保てる高さの枕を選ぶ
- 横向きで寝る場合は、首が曲がりすぎないよう注意
- 適度な硬さのマットレスを使用する
- 寝る前のストレッチで筋肉の緊張をほぐす
4. ストレス管理
ストレスは筋肉の緊張を引き起こし、首痛や手のしびれを悪化させる原因になります。ストレスを軽減するために:
- 深呼吸や瞑想などのリラクゼーション法を取り入れる
- 趣味や好きな活動に時間を割く
- 適度な運動でストレスを発散する
- 必要に応じて、ストレス管理の専門家に相談する
5. 職場環境の整備
デスクワークが多い方は、職場環境を整えることが重要です:
- エルゴノミクスに配慮した椅子やデスクを使用する
- パソコンの画面は目線より少し下になるよう調整する
- キーボードやマウスの位置は肘が90度に曲がる高さに設定する
- 頻繁に使うものは手の届きやすい位置に置く
6. 定期的なセルフケア
症状がない時でも、定期的なセルフケアを行うことで予防効果が高まります:
- 週に2〜3回は首や肩のストレッチを行う
- 入浴時に首や肩の筋肉をほぐす
- 定期的に姿勢をチェックする習慣をつける
- 症状が出始めたらすぐに対処する
まとめ:つらい首痛と手のしびれ、7つの対策で改善しよう!
首痛と手のしびれは、日常生活の質を大きく低下させる辛い症状です。しかし、適切な対処と治療によって改善することが可能です。本記事でご紹介した内容をまとめると:
- 首痛と手のしびれの主な原因は、神経の圧迫や障害
- 頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群などの疾患が考えられる
- 自宅でできる対処法として、適切なストレッチや筋力トレーニングがある
- 正しい姿勢と適切な休息が症状の予防と改善に重要
- 睡眠環境の改善で朝の首痛や手のしびれを軽減できる
- ストレス管理と職場環境の整備で再発を防止
- 症状が改善しない場合は、早めに専門医の診断を受けることが重要
痛みやしびれが長期間続く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、自己判断せず、整形外科や脳神経外科などの専門医に相談しましょう。早期の適切な治療が、症状の改善と健康な生活の回復への近道です。
首痛と手のしびれに関するよくある質問
Q. 首痛と手のしびれが同時に発生している場合、考えられる病気は何ですか?
A. 首痛と手のしびれが同時に発生する場合、頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群などが考えられます。これらの疾患では、首から腕にかけての神経や血管が圧迫されることで症状が現れます。加齢による変形、不良姿勢、外傷などが原因となることが多く、症状が続く場合は専門医による適切な診断が必要です。
Q. ストレートネックは首痛と手のしびれの原因になりますか?
A. はい、ストレートネックは首痛と手のしびれの原因になります。ストレートネックは首の自然なカーブが失われた状態で、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、現代人の生活習慣によって増加しています。この状態では首の筋肉に過度の緊張が生じ、神経が圧迫されることで、首の痛みだけでなく、肩こりや手のしびれ、頭痛などの症状が現れることがあります。
Q. 首痛と手のしびれを自宅で改善するにはどうすればいいですか?
A. 自宅での改善法としては、適切なストレッチや筋力トレーニング、姿勢の改善、温熱療法などが効果的です。特に電気筋や肩甲挙筋のトレーニング、小胸筋のストレッチが推奨されます。また、長時間同じ姿勢を続けないよう意識し、定期的に休憩を取ることも重要です。ただし、症状が続く場合や悪化する場合は、自己対処だけでなく専門医の診断を受けることをおすすめします。
Q. どのような場合に医師の診察を受けるべきですか?
A. 次のような場合は、早めに整形外科や脳神経外科を受診することをおすすめします:①痛みやしびれが2週間以上続く場合、②手や腕の力が明らかに弱くなった場合、③日常生活に支障をきたすほどの症状がある場合、④痛みが急激に悪化した場合、⑤腕や手だけでなく、足にもしびれが出現した場合(脊髄の病気の可能性があります)。早期の専門的な診断を受けることで、症状の進行を防ぎ、より効果的な治療が可能になります。
Q. 首痛と手のしびれを予防するための日常生活での注意点は何ですか?
A. 予防のためには、正しい姿勢を意識することが最も重要です。特にデスクワークやスマートフォンの使用時は、背筋を伸ばし、顎を引いた姿勢を保ちましょう。また、PC画面は目線と同じ高さに調整し、長時間同じ姿勢を続けないよう、定期的に休憩を取りましょう。適切な枕や寝具の選択も重要で、首のカーブを自然に保てるものを選ぶことで、睡眠中の負担を軽減できます。さらに、定期的なストレッチや適度な運動で、首や肩の筋肉をバランスよく鍛えることも効果的です。
Q. 首痛と手のしびれに対する治療法にはどのようなものがありますか?
A. 治療法は症状の原因や重症度によって異なりますが、主な治療法には以下のようなものがあります:①薬物療法(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミン剤など)、②物理療法(温熱療法、低周波療法、牽引療法など)、③装具療法(頚椎カラーなどによる首の固定)、④リハビリテーション(専門家による適切な運動療法)、⑤手術療法(重度の症状で保存療法が効果がない場合)。専門医の診断に基づいた適切な治療を受けることが重要です。
Q. 首痛と手のしびれは完全に治りますか?
A. 首痛と手のしびれの完治可能性は、原因となる疾患や症状の重症度、治療の早さによって異なります。早期に適切な治療を開始した場合、多くのケースで症状は改善します。特に不良姿勢や筋肉の緊張が主な原因である場合は、適切なストレッチや姿勢改善で良好な結果が期待できます。ただし、加齢による変形や重度の神経圧迫がある場合は、完全な回復が難しいこともあります。いずれの場合も、専門医の指導のもと、継続的なケアと生活習慣の改善が重要です。