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産後の体の変化とは
出産は病気ではない、といわれますが、正常な状態ではありません。出産後のママの体は出産時のダメージや元の体の状態に戻ろうとする急激な変化を受け、多くの女性が産後に不調を感じる傾向にあります。
出産時には、会陰部の裂傷予防・赤ちゃんが通りやすくする目的で行われる会陰切開の傷や帝王切開した場合、そこから感染を起こして発熱する可能性があります。また妊娠中、大量に分泌されていたエストロゲンは急激に低下し、ほぼゼロに近い状態です。他の女性ホルモンも分泌量が少なくなっているため、脱毛や肌荒れ、肌の乾燥などが起こりやすくなります。出産時の出血や母乳で水分を取られることで体内の水分量が減り、便秘にもなりやすくなります。尿道を閉める筋肉を含む骨盤底筋がダメージを受けて回復していない時期は、尿もれしやすくなります。出産後の筋肉の衰えや育児中に赤ちゃんを抱っこしたり、授乳時の姿勢、子宮が収縮する痛みで腰痛も起こりやすくなるのです。
骨盤の歪みや痛み
妊娠すると出産時に赤ちゃんが産道を通りやすくするため、リラキシンというホルモンの分泌が増加します。このホルモンは骨盤のつなぎ目である仙腸骨の靭帯や恥骨結合を緩ませる作用があり、それに伴って腰痛や恥骨痛の症状が出現します。
子宮は出産直後から元の大きさに戻ろうとして強く収縮し(子宮復古)、6〜8週間で妊娠前と同じ大きさに戻ります。特に産後2〜3日は強い生理痛や陣痛のような痛みを感じるといわれています。授乳によって子宮が収縮するため、より痛みを感じやすくなります。次第に治るものではありますが、中には夜も眠れないほどつらく感じる人もおり、つらい時は医師への相談をおすすめします。
肩こりや腰痛
肩こりは腰痛と並んで多い産後の悩みです。おむつ替えや授乳など、前屈みになる姿勢を頻繁にとる機会が増えます。乳房が張って痛みを感じやすくなり、肩を動かさなくなることや睡眠不足などの要因も肩こりになりやすくなります。
腰痛は妊娠中から女性を悩ませることが多く、リラキシンの他にも分泌が増加するプロゲステロンという女性ホルモンも骨盤を緩める作用があります。またお腹が大きくなる妊娠中期〜後期は重心が前にかかりやすくなり、反り腰になることや動きにくくなって運動不足になる影響で腰痛が起こる原因となります。出産後はホルモンの影響で骨盤の関節が緩んでいることに加え、育児中に前屈みの姿勢になる頻度が多く、妊娠中に引き延ばされた腹筋(腹直筋)が左右に離れて姿勢を保てなくなり、腰痛が生じます。
体重の変化と筋力低下
産後に痩せすぎる原因として母乳によるカロリー消化、育児や家事の疲れやストレスによる食欲減退が考えられます。母乳育児は1日約500kcalといわれ、体重55kgの女性が約1時間ジョギングしたくらいに相当します。
逆に体重が減らない人もいます。授乳期間が短かったり、卒乳したにもかかわらず、授乳期と同じ量の食事を摂取しているのが原因です。
妊娠中はお腹周りの筋肉が引き伸ばされてたるんでしまい、筋力低下につながります。出産後は赤ちゃんの体重、羊水、胎盤、出血分で4〜5kg減るのが自然です。産後1か月は体を元に戻すためにも安静が必要で、体重が減らなくても焦らないようにしましょう。
出産による影響を受けやすいのが骨盤底筋です。産後緩んでしまうために尿もれが起こったり、内臓が重力によって落ち、体外に飛び出す子宮脱・膀胱脱になっていまうこともあります。
産後のホルモンバランスの影響
ホルモンバランスが乱れる産後は自律神経にも悪影響を及ぼし、交感神経が優位になりがちでイライラしやすくなります。満腹中枢をコントロールする女性ホルモンのエストロゲンが減る産後は太りやすくなり、髪や肌にも関係しているため髪のごわつきや肌荒れ、乾燥・しわ、パサつくトラブルも起こしやすくなります。不眠を引き起こすこともあります。産後、生理が再開しても周期が不安定です。
心理的な変化とストレス
産後うつの主な原因として、出産によって女性ホルモンが急激に減少したことです。育児で慢性的な睡眠不足や疲労、家族の理解・サポート不足も産後うつの症状を悪化させます。妊娠前や妊娠中にうつ病になった人も発症しやすい傾向があります。
産後の骨盤矯正は意味がない?
「産後整体 いつから」で検索すると骨盤矯正関連の情報があふれています。整骨院でも産後の骨盤矯正のサービスを行っているところもありますが、この記事では、整体院における骨盤矯正が産後必要なのかを調べてみました。
骨盤は、尾てい骨の上にある仙骨という骨を左右の骨(腸骨)が挟むような構造になっており、そのつなぎ目を仙腸関節といいます。骨盤が歪んでいるとの表現がありますが、硬い骨であり、交通事故などの大きな衝撃を受けない限り、簡単に変形するものではありません。動くとすれば、出産時に産道を少しでも広くするために緩む仙腸関節でしょう。仙腸関節を緩ませるホルモンであるリラキシンは、プロゲステロンなどと違って産後も分泌されますが、半年ほどかけて減少していき、骨盤も自然に妊娠前に戻っていきます。
近年、腰痛の原因に仙腸関節が関係しているという見解も強くなってきているものの、仙腸関節は2〜3mmしか動かず、手技で動かすのは困難だという医師の意見もあります。そもそも骨盤矯正自体が医学用語ではなく、産後の緩んだ骨盤を治す、という意味では無意味だといえるでしょう。しかし、前述した通り腰痛の原因はいくつもあり、全身的にアプローチする整体は効果が期待できるでしょう。
産後整体はいつから始めるべき?
産後、整体を始める時期としてはいつがいいのか?というと通常の経膣分娩でも最低、産後1か月は経過してから受けましょう。産後2〜3週間は授乳やおむつ交換、赤ちゃんの最低限のお世話だけにし、ママはなるべく横になって休む時間を確保して体力の回復に努めます。産後3〜4週間は簡単な家事をしても良いですが、体は回復途中のため、無理は禁物です。産後5週間以降から徐々に元の生活に戻していきましょう。
このように1か月はママの体の回復のための期間が必要なのです。整体院によっては産後2か月以降または3か月〜6か月の間でも良い、というところもあります。行こうと思っている整体院に確認しましょう。帝王切開を受けた場合は必ず医師に相談してください。産婦人科の中には産後ケアとして整体のサービスを行っていることがあります。
産後整体の効果
骨盤矯正は意味がない、と前述しましたが、産後の骨盤矯正を謳っている整体院は多いのが現状です。それを踏まえた効果としては、まず肩こりや腰痛の改善が期待できます。前屈みになりがちになるおむつ交換や授乳時の姿勢の悪さが改善され、筋肉のこりが解消されて血行も良くなるからです。冷えやむくみの改善も期待できます。血行が良くなることで血液だけでなく、リンパの流れも良くなることためです。人はストレスを感じると全身の筋肉が緊張し、肩こりや腰痛などを感じるようになりますが、血流が良くなり、筋緊張がなくなることでリラックスすることができます。
産後整体の注意点
刺激が強かったり、バキバキボキボキ鳴らす整体はおすすめしません。悪化する可能性があるからです。
施術を女性スタッフにしてほしいと希望されるのであれば、整体院に確認しましょう。整体院の整体院の産後ケアを行う整体院では、赤ちゃん連れでもOKというところもあります。ただし、保育士が常駐している場合もあれば、手の空いているスタッフが世話してくれる場合もあります。赤ちゃんと一緒に行くのであれば、整体院までの経路にベビーカーが通れるか、授乳室やおむつ交換台のあるトイレがあるかなどを調べておくと良いでしょう。
施術前にしっかりカウンセリングを実施してくれるか、料金が明確かであるかもチェックしておきたい点です。
自宅でできるセルフケア
日常でできる骨盤の歪みを予防するポイントは、①正しい姿勢で座る、正しい立ち位置を意識する②定期的にストレッチをする、です。
産後ガードルを推奨する整体院もありますが、ガードルはあくまで見た目の体型を整える目的で着用するもので、必ず使わなければならないものではありません。また、根本的な解決にはならないので、一時的なサポートとして使うようにしましょう。
正しい姿勢で座る、正しい立ち姿勢を意識する
普段から正しい姿勢を意識しましょう。普段、猫背や同じ側で荷物を持ったり、赤ちゃんを抱っこしていては、せっかく整体で整えてもらった体がバランスが崩れ、肩こりや腰痛が再発してしまいます。普段の生活で正しい姿勢を保つことが症状の悪化や再発を予防できます。
腰痛があり、長時間座りっぱなしの生活をしている人は時々、立ち上がったり動いたりして筋肉を疲労させないようにしましょう。重い物を持ち上げる際は、腰を丸めたまま持ち上げないようにし、腰のカーブを意識しスクワットをするような要領で腰を落として持ちましょう。荷物をおろす場合も腰を丸めないように気をつけます。動作に気をつけるだけで、体の負担を軽減させることも可能なのです。
定期的にストレッチする
ストレッチによってこり固まった筋肉をほぐしましょう。無理をしない程度に行います。整体院でも産褥体操を指導してくれるところもあります。産褥体操は産後のママにも負担なくできて、子宮や骨盤、膣などの回復を助けたり、出産で緩んだ筋肉や皮膚を元に戻すなどの効果があります。産後は本格的な体操や運動は負担が大きく避けた方が良いですが、産褥体操は産婦人科でも指導されており、おすすめです。
まとめ
出産後のママの体は、全治1か月のケガと同じといわれるほどダメージを受けています。赤ちゃんの世話に追われ、ママ自身を後回しにしがちですが、肩こりや腰痛などの不調は、放置せずに解消することで痛みの軽減や疲労回復、ストレス解消に効果的です。整体を受ける際には産後最低1ヶ月すぎていることが安全に受けられる条件です。可能であれば、1か月健診時に医師に相談するといいかもしれませんね。帝王切開で出産した場合は、医師の許可をもらうように、という整体院もあります。安全のためにも医師の許可をとりましょう。
整体師が産後整体に精通しており、毎回同じ人から施術を受けられるのが理想です。産後整体に関心がある方は医師や整体師に相談し、無理なく自分にあった適切な施術を受けましょう。