「指を曲げ伸ばしすると引っかかる感じがする…。ばね指がなかなか治らない。」
「もしかして手術するしかないの?」
ばね指に悩み、このような不安を抱えている方は少なくありません。
実は、ばね指が治りにくい原因はいくつかあり、適切な対処法を知ることが大切です。
ばね指が治らない主な原因として、以下が考えられます。
- 1. 十分な安静が取れていない
- 2. 指に負担がかかる動作を繰り返している
- 3. 痛みを無視してストレッチやマッサージをおこなっている
- 4. 妊娠・出産や更年期などによるホルモンバランスの変化
- 5. 基礎疾患や健康状態の悪化
これらの原因が重なると、ばね指の症状が悪化し、最終的には手術が必要になる可能性もあります。
本記事では、なかなか治らないばね指への効果的な対処法と、手術の必要性についてくわしく解説します。
正しい知識を身につけることで、ばね指の症状改善や適切な治療選択につながります。
ぜひ最後までお読みいただき、ご自身のばね指対策にお役立てください。
目次
ばね指が治らない5つの原因
ばね指が治らないおもな原因についてくわしく解説します。
1.安静が保てていない
ばね指の治療には適切な安静が不可欠です。
日常生活や仕事で過度に指を使いつづけてしまうと炎症がおさまらず、治りが遅くなります。
2.同じ動作を続けている
ばね指の原因となる動作をくりかえすことで、症状が悪化します。
たとえば、長時間のパソコンタイピングやスマートフォンの過度な操作などがあげられます。
これらの動作は、指の腱や腱鞘に負担をかけ続けることになり、ばね指の治癒を遅らせることにつながりかねません。
3.痛みがあるのにストレッチやマッサージをしている
痛みを感じる状態で無理にストレッチやマッサージをおこなうと、かえって症状が悪化します。
炎症がある時期には、適切な医療専門家の指導なしに自己流の処置をおこなうことは避けるべきです。
まずは安静を保つことを意識し、痛みがつづく場合は無理をせず医療機関を受診しましょう。
4.妊娠・出産や更年期などホルモンの変化がある
ホルモンの変化は、ばね指の発症や悪化に影響を与えることがあります。
とくに、妊娠中や産後、更年期の女性はホルモンバランスが変わることで症状が出やすくなります。
この時期は体の変化に注意をはらい、早めの対処が重要です。
5.病気がある、健康状態が悪い
糖尿病やリウマチなどの慢性疾患は、ばね指の発症リスクを高めることがあります。
これらの基礎疾患や全身の健康状態の悪化が、指先の循環を悪くさせ、ばね指の治りを遅くする要因となりえます。
そのため、全身の健康管理がばね指の治療には重要です。
ばね指の診断方法
ばね指の正確な診断は、適切な治療につながる重要なステップです。
おもな診断方法について解説します。
1. 症状の確認と問診
医師は以下のような症状や状況についてくわしく聞きとりをおこないます。
- 指の痛みや腫れの有無
- 指の動きに引っかかりや引っ掛かる感覚の有無
- 症状が出始めた時期や悪化のタイミング
- 日常生活や仕事での指の使用状況
これらの情報は、ばね指の重症度や原因を特定する上で重要な手がかりとなります。
2. 身体診察
医師が直接指をさわって診察し、以下のような点を確認します。
- 指の付け根部分(手のひら側)の腫れや押したときの痛みの有無
- 指を曲げ伸ばしした際の引っかかりの有無
- 腱鞘の厚み
身体診察は、ばね指の物理的な症状を直接確認できる重要な診断ステップです。
この段階でばね指と診断される場合もあります。
3. 超音波検査
必要に応じて超音波検査をおこない、以下の点を精密に観察します。
- 腱の肥厚の程度
- 腱鞘の炎症や滑膜の肥厚状態
- 腱の動きの異常
超音波検査は痛みがなく、軟部組織の状態をくわしく調べられる有用な検査方法です。
ばね指の多くのケースで超音波検査がおこなわれています。
4. レントゲン検査
レントゲン検査は、ばね指を直接診断するものではありません。
以下の目的でレントゲン検査をおこないます。
- 関節の変形や損傷の有無の確認
- ほかの疾患(関節炎など)の除外
レントゲン検査は、骨や関節の状態を確認し、ほかの疾患と鑑別するのに役立ちます。
ばね指のレントゲン検査について、以下の記事でくわしく解説しています。
ばね指の症状をやわらげる対処法
ばね指の治療には、以下のような対処法があります。
- 安静を保つ
- 指の負担を減らす
- 痛みをともなわないストレッチとマッサージ
それぞれくわしく解説します。
安静を保つ方法
指をできるだけ使わず、安静を保つための工夫を紹介します。
- スプリントを使用して指を固定する
- 痛みを感じる動作をひかえる
- 夜間はスプリントを装着して就寝する
- 家事や仕事で指を使う際は、休憩をこまめにとる
適度な安静は炎症をおさえ、治癒を促進する重要な要素です。
とくにばね指の場合は、指の使いすぎが原因となることが多く、その原因動作をひかえることが症状をやわらげます。
指の負担を減らす方法
日常生活で指にかかる負担を減らすために、以下を試してみましょう。
- エルゴノミクスキーボードやマウスを使用する
- 家事用品は握りやすい太めのハンドルの道具を選ぶ
- スマートフォンの使用時間を短くする
- 重い物を持つときは両手や腕全体を使う
エルゴノミクスキーボードとは、自然な姿勢でタイピングしやすいキーボードのことで、人間工学にもとづいて設計されています。
また、包丁や調理器具などを握りやすいものにすることで、指に負担をかけにくくすることが効果的です。
このように、日常的に使用するものを指に負担がかかりにくいものに変更することも、ばね指の症状を緩和する方法のひとつです。
指先を使うことを避けられない場合、作業時間を減らしたり、指先以外に力を分散する工夫が痛みをやわらげるのに有効でしょう。
これらの工夫により、日常生活での指への負担を軽減することが期待できます。
痛みをともなわないストレッチとマッサージの方法
痛みをともなわない方法でおこなえるストレッチやマッサージをするために、以下をおこないましょう。
- 手首のストレッチをおこなう
- 手のひらを軽くマッサージする
- 手を温めてからマッサージをする
- 指を優しく曲げ伸ばしする(痛みのない範囲で)
ストレッチやマッサージは、血行促進や柔軟性の維持に役立ちます。
しかし、痛みがあったり、ケア中に痛みを感じながら継続したりすることで、ばね指の症状を悪化させてしまうことがあります。
その際は、すぐに中止することが重要です。
具体的なセルフケアは、以下の動画を参考にしてください。
誰でも簡単に、どこでもおこなえることがメリットです。
ばね指の医療機関での治療法
医療機関では、ばね指の治療に以下をおこないます。
- 保存療法(薬物療法やリハビリテーションなど)
- 手術療法
症状の程度や患者さんの状況に応じて、適切な治療法が選択されます。
それぞれの治療法について見ていきましょう。
保存療法
保存療法は、手術をおこなわずに症状の改善を目指す治療法です。
状態によって以下の治療が選択されます。
- 【薬物療法】
- ・内服薬:炎症を抑えるための非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方される
- ・注射療法:ステロイド注射により、腱鞘周囲の炎症を直接おさえる
- 【物理療法(リハビリテーション)】
- ・超音波療法:深部組織の炎症を軽減する
- ・ストレッチ指導:適切な方法で柔軟性を維持する
- ・マッサージ:血行促進と組織の柔軟性向上する
- 【装具療法(患部の固定)】
- ・スプリント装着:指や手首を固定し、安静を保つ
- ・テーピング:過度な動きを制限し、痛みを軽減する
これらの治療法を組み合わせることで、多くの場合で症状の改善が期待できます。
手術療法
保存療法で改善が見られない場合や、症状が重い場合には手術療法が検討されます。
ばね指の手術療法は、おもに以下の2種類です。
- 腱鞘切開術(けんしょうせっかいじゅつ)
- 内視鏡手術
それぞれの特徴について以下にまとめました。
- 【腱鞘切開術】
- ばね指の手術でもっとも一般的な手術方法
- 局所麻酔下で実施
- 狭くなった腱鞘を切開し、腱(けん)の滑りを改善
- 日帰り手術が可能な場合も
- 【内視鏡手術】
- 腱鞘切開術より低侵襲な方法
- 小さな切開で実施
- 回復が早く傷跡も目立ちにくい
手術後は、適切なリハビリテーションをおこなうことで、よりよい回復が期待できます。
ただし、回復するまでの期間は個人差が大きく、なかには2か月以上かかることもあります。
症状が治らない、むしろ症状が悪化しているなどの場合は、手術をした医療機関へ相談しましょう。
ばね指の手術の必要性
ばね指の多くは保存療法で改善します。
しかし、症状が重度だったり長期間治らなかったりする場合には手術が検討されます。
ここでは、ばね指の手術の必要性についてくわしく解説します。
手術が必要なケース
以下のような状況では、手術が推奨される場合があります。
- 日常生活や仕事に著しい支障がある
- 痛みが強く生活の質が著しく低下している
- 3〜6ヶ月の保存療法で改善が見られない
- 指が完全にロックされ、自力で曲げ伸ばしができない状態がつづいている
- 糖尿病や関節リウマチなどの既往がある場合で保存療法の効果が期待できない
医師は患者さんの状況を総合的に判断し、手術の必要性を決定します。
ただし、一概に上記が基準となるわけではありません。
医療機関によって方針も異なるため、ばね指と診断を受けて手術に不安を感じる方は医師に相談しましょう。
手術の効果とリスク
ばね指の手術をすることで、以下のようなメリットとリスクがあります。
- 【手術のメリット】
- 高い治療効果(多くの場合、症状が完全に改善)
- 比較的短時間の手術(通常30分程度)
- 多くの場合、日帰り手術が可能
- 【手術のリスク】
- 感染症のリスク(低確率だがありうる)
- 一時的な痛みや腫れ
- まれに、神経損傷や腱の損傷の合併
- 再発の可能性(5〜10%程度)
手術の効果は高く、多くの患者さんであきらかな症状の改善が見られます。
しかし、どんな手術でもリスクはともなうため、手術を受けるならあらかじめ理解しておきましょう。
手術後のリハビリについて
手術後のリハビリテーションは、術後の回復を促進し、再発を防ぐために非常に重要です。
時期ごとのリハビリの概要をまとめました。
- 術後1〜2週間:傷の保護と安静が中心
- 2週間後〜:徐々に指の動きを増やす
- 4〜6週間後:通常の日常生活動作が可能に
- 6週間以降:仕事や運動への完全復帰
以下は具体的なリハビリの内容です。
- 軽いストレッチやエクササイズ
- 徐々に負荷を増やす握力トレーニング
- 日常生活動作の練習
- 必要に応じて、物理療法(超音波治療など)
リハビリの進め方は個人差が大きいです。必ず医師や理学療法士の指導のもとでおこないましょう。
適切なリハビリをおこなうことで、より早く、より確実な回復が期待できます。
痛みがあったり、リハビリで痛みが出現したりする場合は中止して安静にしましょう。
ばね指が治らない原因を理解し日常生活での注意点を意識しましょう
ばね指は適切な対処と治療により、多くの場合改善が期待できる症状です。
しかし、ばね指がなかなか治らないことに不安を感じている方も多いはずです。
ばね指が治らない原因として、この記事では以下の5つをあげました。
- 十分な安静が取れていない
- 指に負担がかかる動作を繰り返している
- 痛みを無視してストレッチやマッサージをおこなっている
- 妊娠・出産や更年期などによるホルモンバランスの変化
- 基礎疾患や健康状態の悪化
今一度、自分にあてはまる行動がないか、確認してみましょう。
もしあてはまる場合は、早急に改善する必要があります。
ばね指は決してめずらしい症状ではありません。
適切な対処と治療をおこなうことで、症状の改善と日常生活の質の向上が期待できます。
この記事の情報を参考に、ご自身の症状と向き合い、必要に応じて医療機関に相談することをおすすめします。
治らないばね指についてのよくある質問
なかなか治らないばね指について、よくある質問にお答えします。
産後のばね指が治らない。どうしたらいい?
ホルモンバランスを整える生活を心がけましょう。
産後のばね指は、ホルモンバランスの変化が大きく関係しているためです。
具体的に、以下の方法があげられます。
- バランスのよい食事をとる(ばね指の予防にもなるビタミンB6やビタミンEなどを含む食品を積極的に摂取)
- 適度な運動をおこなう(ばね指に負担をかけない全身運動)
- 十分な睡眠をとる
- ストレス管理をおこなう(ばね指の症状悪化を防ぐため)
産後のホルモンバランスは、一般的に産後3〜6か月で正常に戻るといわれています。
母乳育児の場合は、卒乳後3か月です。
しかしお子さんのお世話でなかなか眠れず、一概に出産したすべての方があてはまるともいえません。
そのため、短時間でも休めるように以下の方法を試してみてください。
- 家族や友人にサポートをもとめる
- 赤ちゃんの睡眠中に休憩をとる
- リラックス法(深呼吸や瞑想など)を実践する
産後や卒乳後、1年以上経過しても改善がみられない場合は、医療機関に相談しましょう。
ばね指が注射で治らないと聞いたけど、本当?
ばね指自体を注射で完全に治すことは難しいです。
なぜなら、ばね指に対しておこなう注射(おもにステロイド注射)は、以下のような効果であるためです。
- 炎症をおさえる
- 痛みを軽減する
- 腫れを軽減する
ばね指の治療に使用される注射は、痛みを改善することには効果が高く、その効果は約3か月つづくと言われています。
そのため根本的に治ったと感じる方もいるでしょう。
しかし、ばね指を引き起こす根本原因が解決しなければ、いつかは再発します。
注射は何度も打てるわけではありません。
ばね指の原因を明確にし、再発予防をすることが重要です。
ばね指の手術をしても治らないことはある?
ばね指の手術は一般的に高い成功率を誇りますが、完全に治らないケースもまれにあります。
以下のような場合が考えられます。
- 手術後のリハビリテーションが不十分な場合
- 手術後も指に過度な負担をかけつづける場合
- 手術の合併症(感染や神経損傷など)が起こった場合
- 基礎疾患(糖尿病や関節リウマチなど)がコントロールされていない場合
手術後も適切なケアと生活習慣の改善が重要です。
リハビリテーションをしっかりとおこなうことで、よい結果が得られるでしょう。
ただし、手術後も症状がつづいたり、再発したりする場合は、速やかに医師に相談してください。
再評価や追加の治療が必要となる可能性があります。