ぎっくり腰などの腰痛で動けなくなった場合は、応急処置が必要です。しかし、突然激痛に見舞われて動けなくなると、誰もが慌ててしまうでしょう。本記事ではぎっくり腰の原因について解説し、応急処置や予防法などをご紹介します。
目次
ぎっくり腰の原因
ぎっくり腰は、ある日突然強い痛みの症状が出ます。しかも、何でもない動作をしただけなのに、起きてしまうことが多いのです。中には、声も出ないほどの、激痛に見舞われる場合もあるということですから、なるべくぎっくり腰にならないようにしたいものです。もしぎっくり腰になったら、動かずに安静にしているのが一番です。
たとえ仕事中であっても、残っている仕事を片付けようとしないで、動かないようにしましょう。「腰痛は動かして治す」という考え方もあるようですが、それはしばらくたってからのことで、ぎっくり腰になった直後は動かないことが大切です。無理に動くと、痛みが出るだけでなく、症状が悪化して回復に時間がかかるので注意しましょう。
ぎっくり腰のタイプ
ひと口にぎっくり腰といっても、実際には4つのタイプに分かれます。
・筋肉が炎症を起こすタイプ
・椎間板に原因があるタイプ
・脊柱管狭窄症などの椎間関節が原因のタイプ
・仙腸関節に原因があるタイプ
この中で特に多いのが、筋肉が炎症を起こすタイプです。脊柱起立筋という、首から腰にかけて身体の表面を覆っている筋肉に、過度の負担がかかることが原因で起こります。これを予防するには、腹横筋や多裂筋などのインナーマッスルを鍛えて、脊柱起立筋の負担を減らすのが効果的です。
なぜぎっくり腰になるのか
ぎっくり腰は、普段の何気ない動作が引き金となって、起こる場合が多いようです。重い物を持ち上げた時やお辞儀をした時、立ち上がろうとした時など、単純な動作で起きてしまいます。何か特別なことをした場合に起こるのではないので、予防しにくいという特徴があります。
腰に負担がかかった場合にも起きますが、単純な動作でも発症することがあるので、予想もしない状況で起こるのがぎっくり腰なのです。しかし、見た目には原因がわからなくても、実はわかりにくいだけで、身体の中では腰痛につながるような症状が、進行していることも少なくありません。
筋肉疲労や関節への負荷
腰には日常の行動で、知らず知らずのうちに疲労が蓄積されています。たとえば、事務職や運転手などの仕事では、長時間同じ姿勢でいるために、腰に大きな負担がかかっています。腰の疲労はそのまま、腰周りの筋肉や関節の疲労につながるので、ぎっくり腰の要因になりやすいのです。腰の筋肉疲労の蓄積が進むと、そのうち耐えきれなくなって、ある日突然腰痛という形で現れます。
骨のゆがみ
姿勢が悪かったり、仕事で常に同じ動作を繰り返していると、骨がゆがんでくる場合があります。骨がゆがむと、それを補正しようとして、筋肉に余計な負担がかかります。特に腰周りの筋肉に負担がかかると、腰痛を引き起こすきっかけとなるので注意が必要です。
しかも、筋肉に負担がかかるとその部分が硬くなり、血流が悪くなるためにさらに症状が悪化します。この状態がある程度進行すると、腰痛が発症することになります。
日常のストレス
複雑な現代社会では、誰もが何らかのストレスを感じながら生活しています。ストレスは、人間関係から発生することが多いのですが、ストレスの元となる人間関係は、職場だけでなく家庭でも生じることがあります。職場の人間関係にしろ家庭にしろ、逃げることができない状況で起きるのが厄介なところです。
人間の身体は、ある程度以上のストレスが溜まると、筋肉が緊張状態になります。腰の筋肉が緊張すれば、その部分の血流が悪化し、新陳代謝が阻害される上に、腰の筋肉の柔軟性が失われるので、腰痛を起こしやすい状態になってしまいます。
腰痛は温める?それとも冷やす?
ぎっくり腰になったら、患部を温めたほうがいいのか、それとも冷やしたほうがいいのでしょうか。結論から言いますと、ズキッとくる痛みや内出血がなければ、温めるのが正解です。ズキッとくる痛みや、内出血があれば怪我をした状態なので、温めてはいけません。
怪我はなく腰痛だけがある状態であれば、温めることによって血流が促進されるので、ぎっくり腰の症状の緩和につながります。
ぎっくり腰になったら気をつけたいこと
ぎっくり腰になったら、痛みを緩和して、それ以上悪化しないようにすることが大切です。悪化すると完治するまでに時間がかかり、仕事や家事に大きな影響を及ぼします。
ぎっくり腰になったら、以下の注意を守りましょう。
寝る姿勢は横向き
ぎっくり腰は、寝る姿勢によってある程度痛みを緩和することができます。寝る姿勢を間違えると、痛みがおさまらないだけでなく、症状が悪化することもあるので注意しましょう。ぎっくり腰の痛みを緩和するには、横向きに寝るのがおすすめです。ぎっくり腰になると、朝起きるのがつらくなる傾向があります。
その点、横向きに寝ると朝起きやすくなるので、痛みのある側を上にした横向きの姿勢で、寝るようにしましょう。左右のどちらも痛かったり、痛い場所がハッキリしない場合は、左右の寝方を試してみて、痛くないほうの向きで寝てください。
中腰の姿勢を避ける
中腰の姿勢は、ぎっくり腰の大敵です。ぎっくり腰になると、普段なら何でもないちょっとした動作でも、激痛が走ることがあります。特に中腰で行う動作が、ぎっくり腰の引き金になることが多いので注意しましょう。とはいっても、仕事で中腰にならざるを得ない場合もあるでしょうし、日常生活でも中腰の姿勢で行う動作は多いものです。たとえば、顔を洗うのも中腰の姿勢になります。
そこで、ぎっくり腰になったら、洗面台に太腿をつけて顔を洗ったり、足を前後に開いた状態で洗うなど、中腰の姿勢を避けることが大切です。また同様に、うつ伏せで寝たりあぐらをかいたり、足を組んで椅子に座る姿勢も、腰に負担がかかるので避けたほうが無難です。
車のシートやソファーに座る場合は座布団を敷く
ぎっくり腰になったら、できるだけ車に乗らないほうがいいのですが、仕事や普段の生活で、どうしても乗らざるを得ない場合もあるでしょう。ぎっくり腰になると、車の乗り降りに注意が必要なだけでなく、座席のシートに座る場合も工夫が必要です。通常、車のシートは乗り心地がいいように、柔らかい構造になっています。
柔らかいシートは普段なら快適なのですが、ぎっくり腰の人にとってはつらいものがあります。そこで、ぎっくり腰の人が車に乗る際は、座布団や折りたたんだバスタオルを尻の下に敷いて、お尻の位置を高くするようにしましょう。こうすれば、腰への負担が軽くなるので、車に乗るのが楽になります。
同様に、柔らかいソファーや低い椅子に座る場合も、座布団やバスタオルを尻の下に敷くことをおすすめします。可能であれば、ソファーや低い椅子に座るのを避けて、フラットで固い椅子に座るようにしたいものです。
腰痛ベルトを活用する
ぎっくり腰になったからといって、寝てばかりはいられないという人も多いでしょう。しかし、痛みが発生すると、仕事や家事にも影響します。そこで、痛みを和らげるアイテムとして、ドラッグストアなどでも手に入れることのできる、腰痛ベルトを使うのがおすすめです。腰痛ベルトをつけると腰周りが安定するので、動作がしやすくなり痛みも軽減されます。
エクササイズで応急処置
インナーマッスルを鍛えて、腰痛を改善するエクササイズがあるのでご紹介しましょう。「ドローイン」というエクササイズは、多少の痛みがあっても行えるので、ぎっくり腰の応急処置として活用できます。
ドローインは以下の手順で行います。
1.まず、膝を立ててあお向けに寝てください。
2.次に、息を吐きながら、おへそを引き込むようにして、おなかに軽く力を入れます。
腰骨の少し上の部分に触ってみて、硬くなっていたら腹横筋が緊張状態になっている証拠です。もしへその周辺が丸く膨らんでいたら、表面の腹筋が緊張しているだけなので意味がありません。
腹横筋が緊張しているときは、お腹が平らになるのですぐにわかります。お尻の穴を閉じたり、尿意を我慢する意識で力を入れることができれば、腹横筋を動かすことができます。
このエクササイズによってインナーマッスルの1つである腹横筋を鍛えることができれば、腰痛が緩和されます。ぎっくり腰の痛みを我慢しながら、このエクササイズを行うのは大変かもしれません。しかし、痛みをこらえて身体を動かすことが、ぎっくり腰を早く治すコツなのです。
再発予防が大事
一度ぎっくり腰になると、その後1年以内に約25%が再発するというデータがあります。そのため、つらいぎっくり腰を再び経験することがないように、しっかりと再発防止をする必要があります。
再発防止には、以下の3つを守ることが重要です。
無理な姿勢を避ける
ぎっくり腰の再発を防ぐには、腰に負担がかかるような姿勢を避けることが大切です。前かがみのような何気ない姿勢でも、腰に大きな負担がかかることがあるので注意したいものです。車のドアを開け、中にある小さな荷物を取り出そうと前かがみになっただけで、ぎっくり腰になったケースもあります。
肥満防止
身体が肥満すると、体重が増えた分だけ腰に負担がかかるので、腰痛を起こしやすくなります。そのため、肥満体質の人は食事制限をしたり運動したりして、太らないようにする必要があります。
適度な運動をする
適度な運動をして筋肉を鍛えると、腰痛を予防することができます。特に腰周りの筋肉の衰えが。ぎっくり腰に直結しやすいので、常日頃から運動に慣れ親しむことが大切です。運動といっても、それほど本格的なものでなくてもかまいません。
ジョギングや剣道の素振り、シャドーボクシングなどでも十分に効果があります。要するに、自分がやりやすい運動を続ければいいのです。
体操やストレッチは逆効果?
ぎっくり腰になった場合、体操やストレッチは効果があるのでしょうか。
発症直後は効果がない
ぎっくり腰を発症した直後は、体操やストレッチをしてもしなくても、ほとんど違いはありません。逆に言いますと、ストレッチをしても悪いわけではないので、痛みが緩和されたり楽になるのであれば、ストレッチをしてもかまわないでしょう。しかし、ストレッチをして痛みを感じるようであれば、すぐに中止するなどの判断が必要です。
1カ月後なら効果がある
ぎっくり腰を発症して1カ月くらいたってから、ストレッチを行うと効果があります。ただし、どんなストレッチを行うべきかは、人や症状によって違うので、リハビリテーションを行う医療機関に、相談することをおすすめします。
ではここで、ぎっくり腰に効果のあるストレッチを1つご紹介しましょう。
キャットキャメル
キャットキャメルは、ぎっくり腰に効果のあるストレッチです。くれぐれも無理をしない範囲で、下記の要領で行ってください。
1.手を手のひらを下に向け、膝をマットの上に置き、四つん這いの姿勢になってください。
2.次に、怒った猫のように背中を上げ、天井に向かってアーチ状にします。
3.次に、腹部を床に近づけながら、背中を反らせます。
4.ゆっくりと最初の姿勢に戻り、同じ動作を5回ずつ3セット、1日2回行いましょう。
ぎっくり腰は安静にすると逆効果
ぎっくり腰は、安静にしているよりも、普段の生活通りに体を動かすほうが治りが早いと言われています。あくまでも一般論なので、実際はケースバイケースと考えるべきなのですが、痛みを感じながらも体を動かしたほうが、早く治る場合が多いようです。
腰痛だからといって、仕事や家事を休むのではなく、無理しない程度にいつもの仕事や家事をこなすようにしましょう。もちろん、痛みがひどければ無理に体を動かす必要はありません。この場合は椎間板ヘルニアなど、他の病気が併発している可能性もあるので注意が必要です。
ぎっくり腰を発症しやすい生活習慣
ぎっくり腰は、腰に負担をかけることによって発症しますが、腰に負担がかかれば必ず発症するわけではありません。一度もぎっくり腰を発症しない人もいれば、何度も発症する人もいます。これは、その人の健康状態や体質によるところが大きいようです。
また、ぎっくり腰は生活習慣によって発症しやすくなる場合があります。以下のケースに当てはまる場合は、発症のリスクが高まるので注意が必要です。
長時間同じ姿勢を続けた直後
長時間同じ姿勢を続けた後、動きはじめにぎっくり腰になることがあります。たとえば、長時間車を運転して車から降りた直後や、朝起きてすぐ、デスクワークが終わって立ち上がったときなどに起こりがちです。
これは、長時間同じ姿勢でいると、筋肉や関節が硬くなったり、緊張状態が続いていることが原因です。同じ動作に慣れた筋肉が、瞬間的に違う動きをするためにぎっくり腰が起こります。
睡眠不足や疲れている状態
睡眠不足や疲れがたまった状態では、体の筋肉が硬くなっていることが多いので、急に腰を曲げたりすると、思わぬ負担が腰にかかってぎっくり腰になりやすくなります。
運動不足
日頃から体を動かしている人に比べて、運動不足の人は筋肉が硬くなっているため、ふとした動作でぎっくり腰になってしまうことがあります。背骨を曲げたり反らしたり、ねじる動作をすると筋肉と関節がほぐれるので、ある程度ぎっくり腰の予防になります。ラジオ体操のような軽い運動でもいいので、背骨や腰を動かす動作を、日常的に行うようにしましょう。
コルセットはつけたほうがいい?
ぎっくり腰などのひどい腰痛を発症した場合、コルセットをつけると楽になります。ぎっくり腰になっても、できるだけ普段通りの生活をするのがベストなので、コルセットをつけることによって、普段の生活が続けられるなら有効と言えるでしょう。
コルセットをつけていると、筋肉が落ちると気にする方もいますが、長期間つけるわけではないので、筋肉の衰えを心配する必要はありません。むしろ、コルセットをつけないで無理に我慢するほうが、痛みを長引かせるなどの弊害が出てきます。コルセットで楽になるのであればつけて、必要なくなったら外すようにするといいでしょう。
病院に行くかどうかの判断基準
ぎっくり腰になっても、必ずしも病院に行かなければならないとは限りません。軽度のぎっくり腰であれば、自宅でセルフケアを行うことによって、改善することもあります。病院に行くかどうかの判断のポイントや、病院選びのコツをご紹介します。
痛みを観察する
ぎっくり腰は突然激痛が起こるので、急に腰が悪くなったように感じるかもしれませんが、実際はずっと前から腰にダメージが蓄積されていたのです。だからくしゃみをした程度でも、起きてしまうのです。
安静にしているだけで回復する方もいますが、この場合はダメージの蓄積が少なかったと考えるべきでしょう。安静にしていても回復しない場合は、腰へのダメージが深刻な状態なので、重度の腰痛が治療できる病院で、診てもらう必要があります。
病院の種類を知る
ぎっくり腰を診察してくれる病院は、3種類あります。
・整形外科
整形外科は骨や関節、それを取り巻く筋肉や神経系の機能改善を目的としており、主に背骨や骨盤、手足の治療を行います。外部から外科的な治療を施しますが、できる治療は限られているので、ぎっくり腰の場合は痛み止めや湿布薬を処方するだけです。整形外科は骨折や捻挫の患者には有効ですが、ぎっくり腰の根本的な治療には向いていません。
<h3>保険が効く接骨院</h3>
保険が効く接骨院や整骨院は治療費が安いので、ぎっくり腰の治療に適しています。高くても、1回当たりの施術に必要な料金は3千円くらいでおさまるので、腰痛の緩和のために多くの方が予約したり受診しています。
ただし、保険が効く接骨院では、交通事故による骨折やスポーツ障害による怪我など、骨に異常がある場合しか保険が適用されません。骨の異常が原因で、ぎっくり腰になるのはごく稀なので、ほとんどの場合保険が効く接骨院の治療対象外となってしまいます。
保険の効かない接骨院
ぎっくり腰の治療には、保険の効かない自費診療の接骨院がおすすめです。保険が適用されないため、治療費は5千円~1万5千円くらいになりますが、腰痛や膝の痛みなどの治療に向いています。腕の良い自費診療の接骨院なら、短期間でぎっくり腰を完治させることも可能です。しかし、院によって技量に差があるため、必ずしも料金に見合った治療が受けられるとは限りません。
知人に紹介してもらう
病院を探す方法として、誰もが思いつくのがインターネット検索です。しかし、病院のホームページを見ても、ぎっくり腰の治療の技量がどれほどなのかはわかりません。そこで、病院を見つけるのに効なのが、友人に紹介してもらう方法です。
友人が実際に、ぎっくり腰や重い腰痛を治した病院を紹介してもらうわけです。友人の情報なら信用できる上に、どのような症状がどれくらいの期間で治ったかなど、詳しい話が聞けるのも、友人に紹介してもらうメリットになります。