坐骨神経痛の症状はどのようなもので、その原因は何でしょうか。また、坐骨神経痛の検査法や治療法にはどのようなものがあるでしょうか。
目次
坐骨神経痛の症状
坐骨神経痛の症状は多様ですが、主なものに、痛み、しびれ、だるさがあります。
痛み
坐骨神経痛の最も一般的な症状の一つは「痛み」です。この痛みは、腰から尻・臀部、太もも、ふくらはぎ、そして足先まで広がることがあります。
また、上体を前に傾けると痛みが増す場合と、上体を後ろに反らすと痛みが増す場合があります。
痛みの程度は軽度から重度まで様々で、痛みの種類も鋭い痛み、鈍い痛み、焼けるような痛みなど、個々の患者によって異なります。痛みの原因は、坐骨神経が圧迫されたり、刺激を受けたりすることに起因します。
例えば、椎間板ヘルニアでは、飛び出した椎間板が坐骨神経を圧迫することで、激しい痛みが生じます。
坐骨神経痛の痛みは、動作によって悪化することが多く、特に長時間座ったり、立ち上がったりする際に悪化することがあります。この痛みが続くと、睡眠障害や悩み・精神的ストレスを引き起こすこともあります。
また、稀に、頭痛を伴うこともあります。痛みを軽減するには、薬物療法や物理療法が行われ、場合によっては手術が必要になることもあります。
専門的な診断と治療を受けることで、症状の改善が期待できるので、早期の対応が重要です。
しびれ
坐骨神経痛の症状の一つである「しびれ」は、多くの患者が経験する特徴的な症状です。坐骨神経は腰から脚にかけて走っているため、この神経が圧迫や刺激を受けると、下肢にしびれが生じます。
しびれの感じ方は人によって異なり、軽い違和感から強烈な感覚まで様々です。しびれは、長時間座ったり、歩いたりするときに顕著になる傾向があります。
しびれの原因としては、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、筋肉の過緊張などが考えられます。しびれが続くと日常生活に大きな影響を及ぼし、歩行や立ち上がりが困難になることもあります。
適切な治療やリハビリテーションを行うことで、症状の軽減が期待できますが、放置すると慢性化する可能性があるため、早期の対応が重要です。
だるさ
坐骨神経痛に伴う「だるさ」は、しびれや痛みとともに現れることが多い症状です。このだるさは、特に脚や腰に集中し、重い感覚や疲労感となります。
だるさの原因は、神経の圧迫や血行不良、筋肉の緊張などが考えられます。また、長時間立っていたり、同じ姿勢を続けていると、筋肉に負担がかかり、だるさが増すことがあります。
だるさが慢性的になると、日常生活に支障をきたすことがあります。例えば、仕事や家事をする際に集中力が欠けたり、疲労感が増したりします。
だるさを改善するためには、ストレッチやマッサージ、適切な休息を取ることが推奨されます。また、専門医の診断を受けて、具体的な治療法を見つけることも重要です。
坐骨神経痛の原因
坐骨神経痛の原因には、神経の化学的炎症や機械的圧迫があります。
化学的炎症
坐骨神経痛の原因の一つに「化学的炎症」があります。これは、神経根周囲の組織が炎症を起こすことで発生します。
神経根とは、神経の本幹である脊髄から左右に枝分かれする細い神経のことです。坐骨神経は、腰椎から出て下肢にかけて走行していますが、神経根はこの経路に沿って存在します。
神経根は椎間板や周囲の組織によって保護されていますが、椎間板ヘルニアになったり組織が損傷すると、炎症性物質が放出されることより神経根周囲の組織が炎症を起こし、坐骨神経が刺激されます。
炎症性物質には、プロスタグランジンやサイトカインなどが含まれ、これらが神経に対して痛みやしびれを引き起こします。例えば、椎間板ヘルニアになると、椎間板の中の髄核が外部に飛び出し、神経根を圧迫するだけでなく炎症性物質を放出します。
これにより、神経根周囲に炎症が広がり、痛みやしびれが強くなることがあります。
化学的炎症による坐骨神経痛の治療には、炎症を抑えることが重要です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬の投与が一般的であり、これにより炎症性物質の生成や放出を抑制します。
また、身体に物理的エネルギー(熱、電気、マッサージなど)を加える物理療法やストレッチ、リハビリテーションも炎症を軽減し、症状を緩和するために用いられます。場合によっては、神経ブロック注射が行われ、直接的に炎症を抑えることもあります。
適切な治療を行うことで、化学的炎症による坐骨神経痛は改善し、患者の生活の質を向上させることが可能です。
機械的圧迫
坐骨神経痛のもう一つの主要な原因である「機械的圧迫」は、物理的な要因によって神経が直接圧迫されることによって引き起こされます。坐骨神経は腰椎から出発し、臀部や脚に向かって走行していますが、この経路で神経が圧迫されると痛みやしびれが生じます。
機械的圧迫の原因として最も一般的なのが椎間板ヘルニアです。椎間板の中の髄核が外部に飛び出し、神経根を圧迫することで坐骨神経痛が発生します。
その他にも、脊柱管狭窄症や骨棘(後天的な骨の突起)、筋肉の緊張(特に梨状筋症候群)なども機械的圧迫の原因となります。脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなることで神経を圧迫し、特に高齢者に多く見られます。
骨棘は、関節や骨に余分な骨が形成され、これが神経を圧迫することがあります。梨状筋症候群は、臀部の梨状筋が坐骨神経を圧迫することで発生し、特に長時間座ったり、激しい運動をする人に多く見られます。
機械的圧迫による坐骨神経痛の治療には、圧迫を軽減することが重要です。マッサージや温熱といった物理療法やストレッチ、姿勢の改善、筋力強化などの非手術的治療がまず試みられます。
これらの方法で症状が改善しない場合は、外科的手術が検討されることもあります。例えば、椎間板ヘルニアが神経圧迫の原因であれば、飛び出した髄核を取り除く手術(椎間板切除術)が行われます。
脊柱管狭窄症が神経圧迫の原因であれば、狭くなった脊柱管を広げる手術(脊柱管拡大術)が行われます。適切な診断と治療を受けることで、機械的圧迫による坐骨神経痛は効果的に管理・治療されます。
検査法
坐骨神経痛の検査法には、画像診断、神経学的検査、電気生理学的検査といったものがあります。
画像診断(MRIとCTスキャン)
坐骨神経痛の検査法の一つとして、画像診断は非常に有効です。特に、MRI(磁気共鳴画像)とCTスキャン(コンピュータ断層撮影)は、詳細な内部構造の画像を提供し、原因を特定するのに役立ちます。
【MRI】
MRIは、磁場と電波を使用して体内の詳細な断面画像を生成します。坐骨神経痛の原因として多い椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの状態を高解像度で確認できます。
MRIは、軟部組織(筋肉、神経、椎間板)を詳しく見るのに適しており、特に神経根の圧迫や炎症の有無を判断するのに有効です。患者は円筒形の機械に横たわり、30分から1時間程度静かにしている間にスキャンが行われます。
MRIは、非侵襲的で安全です。
【CTスキャン】
CTスキャンは、X線を利用して体の断面画像を撮影します。骨の構造や、骨棘(骨の突起)などの硬い組織を詳細に観察するのに適しています。
CTスキャンは、患者が機械の中央にあるベッドに5~10分の短い時間横たわるだけででスキャンが完了します。造影剤を使用する場合もあり、これにより血管や特定の組織をより鮮明に見ることができます。
MRIとCTスキャンは、それぞれ特性が異なるので、坐骨神経痛の原因を明確にするために併用されることもあります。これらの画像診断により、適切な診断と治療のための詳細な情報が得られます。
神経学的検査
神経学的検査は、坐骨神経痛の原因と影響を評価するために行われる検査の一つです。この検査は、神経機能の異常を特定し、痛みやしびれの原因を明らかにするのに役立ちます。
主な神経学的検査には、反射テスト、筋力テスト、感覚テストがあります。
【反射テスト】
反射テストは、神経の伝導機能を評価するために行われます。例えば、膝蓋腱反射やアキレス腱反射を検査することで、神経根の異常を確認します。
反射の低下や消失が見られれば、神経圧迫や損傷の可能性があります。
【筋力テスト】
筋力テストは、特定の筋肉群の強さを評価するもので、神経機能の障害を特定するのに役立ちます。患者に特定の動作を行わせ、筋力の低下が見られる場合には、その筋肉を支配する神経に問題がある可能性があります。
例えば、足首の背屈が弱い場合は、L5神経根に問題があるかもしれません。足首の背屈とは、足首を動かしつま先をすね方向に近づける動作です。
また、腰椎(Lumbar)の場所は上から下にL1~L5で表現され、L5神経根とはL5にある神経根ということです。
【感覚テスト】
感覚テストは、皮膚の感覚を評価して神経の機能を確認します。皮膚に軽く触れたり、ピンや温冷刺激を用いて、感覚の異常を検出します。
感覚の鈍化や異常な感覚があれば、特定の神経根に問題がある可能性があります。
これらの神経学的検査は、坐骨神経痛の診断において非常に重要であり、問題のある神経の特定や障害の程度を評価するのに役立ちます。これにより、適切な診断および治療方針を立てるための重要な情報が得られます。
電気生理学的検査(神経伝導速度検査と筋電図検査)
電気生理学的検査は、神経の伝導機能と筋肉の活動を評価するために行われます。主な検査には、神経伝導速度(NCV)検査と筋電図(EMG)検査があります。
【神経伝導速度(NCV)検査】
NCV、神経がどれだけ速く電気信号を伝えるかを測定します。この検査では、皮膚の上に電極を配置し、神経に小さな電気刺激を与えます。
電気信号が神経を通過する速度を測定し、神経の損傷や障害の有無を判断します。例えば、神経の伝導速度が遅い場合は、その神経が圧迫されている可能性があります。
NCV検査は、神経の伝導障害の程度と場所を特定するのに役立ちます。
【筋電図(EMG)検査】
EMGは、筋肉の収縮時や安静時の電気的活動を記録し、神経障害や筋疾患の有無を特定します。細い針電極を筋肉に挿入して、筋肉の電気的活動を測定します。
例えば、坐骨神経が圧迫されている場合には、その神経に支配される筋肉の活動が異常になることがあります。
電気生理学的検査は、坐骨神経痛の診断において非常に重要です。これらの検査により、神経の伝導機能や筋肉の活動の異常を正確に特定でき、神経圧迫や損傷の場所と程度を明確にします。
検査にあたっては、痛い部分や下半身の症状を正確に医師に伝えることが大切です。病院を選ぶ際には、ホームページで検査の流れや患者のお客様の声を確認すると良いでしょう。
また、検査には長い時間がかかる場合があるので、予約を取る前に、時間の調整をしておくことが必要です。痛みが肩や首など、下半身以外の別の部位に痛みが生じることもあるため、全身の症状を全体的に把握して医師に伝えることが重要です。
治療法
坐骨神経痛の治療は、痛みの軽減と原因の除去を目的に、多様な方法が用いられます。治療法は、症状の重さや原因に応じて選ばれ、以下のようなアプローチが一般的です。
薬物療法
薬物療法では、痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩薬が処方されます。痛みが強い場合は、神経痛専用の薬や一時的にステロイド注射が行われることもあります。
薬物療法は、炎症を軽減し、神経の圧迫による症状を和らげるのに役立ちます。
物理療法
物理療法は、ストレッチや特定の運動を通じて筋肉を強化し、柔軟性を改善することで、神経の圧迫を軽減します。また、温熱療法や冷却療法、電気刺激療法が行われることがあります。
物理療法では、理学療法士による指導のもと、個別に適した運動プログラムが提供されます。
生活習慣の改善
坐骨神経痛の治療には、正しい姿勢を保つことや適度な運動、体重管理など、日常生活の改善が重要です。腰や背中への負担を減らすための姿勢矯正や、長時間の座位を避けるなど生活上の工夫が推奨されます。
また、腰や臀部を適度に動かし、血流を促進するよう心掛けることが大切です。
外科的治療
保存的治療(外科的治療以外の治療)が効果を示さない場合や、症状が重篤な場合には外科的治療が検討されます。椎間板ヘルニアにおける椎間板切除術や、脊柱管狭窄症における脊柱管拡大術により、神経の圧迫が取り除かれ、痛みやしびれが軽減されます。
整骨院や整体、鍼灸による施術
整骨院や整体、鍼灸での施術による治療もあります。整骨院では、骨盤や背骨の歪みを整える「骨盤矯正」や「鍼灸」が効果的です。
これにより、腰痛やぎっくり腰、さらには肩こりや五十肩など、全身のバランスを改善し、痛みを和らげることが期待できます。特に、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が原因の場合、骨盤や腰の外側の筋肉が硬くなることがあり、これをしっかりと施術することで改善が見込まれます。
整骨院では、各症状に合わせた施術メニューが用意されており、全身のバランスを整え、根本的な改善を目指します。
また、鍼灸や整体による施術も、痛みを軽減し、だるい感じや歩けないほどの痛みを緩和します。初めての来院でも、しっかりと相談をすることで治療が進められます。
整骨院は、交通事故やスポーツによる痛みの治療も対応しています。各院へのアクセスや施術料金などは、気軽に相談してて事前に確認してみてください。
痛みの原因に合わせた適切な治療法を選ぶことで、より楽な生活を取り戻せます。
これらの治療法を組み合わせることで、坐骨神経痛の症状を効果的に管理し、患者の生活の質を向上させることが可能です。
まとめ
坐骨神経痛は、症状が多様で、主なものに、痛み、しびれ、だるさがあります。また、その原因は、大きく分けると、神経の化学的炎症と機械的圧迫があります。
坐骨神経痛の検査法としては、画像診断、神経学的検査、電気生理学的検査があり、それらから得られる情報により、適切な診断と治療がなされます。治療法の一般的なアプローチとしては、薬物療法、物理療法、生活習慣の改善、外科的治療の順となっています。