この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
肩こりと頭が痛いという症状でお悩みではありませんか?長時間のデスクワークやスマホ使用で、肩こりと頭が痛いという症状は、首や肩の筋肉の緊張が原因となることが多いです。
特に首から後頭部にかけての痛みは「緊張型頭痛」と呼ばれ、頭痛の約7割を占めると言われています。この記事では、肩こりが原因となって起こる頭痛のメカニズムと、自宅でできる効果的な対処法について詳しく解説します。マッサージやストレッチから姿勢改善まで、つらい症状を和らげる方法を専門家の視点からお伝えします。
頭痛とか首のだるさとか自律神経失調症とかで言われることが多いんですけれども、首をしっかり動かせ筋肉を働かせると症状が和らいでいきます。
目次
肩こりと頭が痛いとは?緊張型頭痛の症状と特徴
肩こりが原因で起こる頭痛は、主に「緊張型頭痛」と呼ばれる症状です。日本頭痛学会の調査によると、頭痛に悩む人の約70%がこの緊張型頭痛に分類されます。日本頭痛学会ガイドラインでは、緊張型頭痛の主な特徴として、頭が締め付けられるような感覚や、頭全体がずしりと重く感じられる痛みが挙げられています。片頭痛のようなズキズキとした拍動性の痛みとは異なり、持続的な鈍痛として感じられることが多いでしょう。
緊張型頭痛の主な症状には次のようなものがあります:
- 頭の両側または全体に広がる痛み
- 締め付けられるような、または重苦しい感覚
- 首や肩のこり・こわばり
- 頭皮の圧痛
- 集中力の低下
- 場合によってはめまいや吐き気を伴うこともある
これらの症状は、長時間同じ姿勢でのデスクワークやスマホ操作、ストレスなどによって悪化することが多く、肩こりと頭が痛い状態が続くと日常生活のパフォーマンスを著しく低下させる原因となります。
肩こりが頭痛を引き起こすメカニズム
なぜ肩こりが頭痛を引き起こすのでしょうか?そのメカニズムを理解することで、効果的な対処法が見えてきます。
過程 | 身体で起こること |
---|---|
筋肉の緊張 | 首や肩の筋肉(僧帽筋、頸板状筋など)が緊張して硬くなる |
血流の低下 | 筋肉の緊張により血管が圧迫され、血流が悪くなる |
神経への刺激 | 後頭神経や三叉神経などの頭痛に関わる神経が刺激される |
頭蓋骨の筋膜への影響 | 頭蓋骨を覆う筋膜の感受性が増大し、痛みを感じやすくなる |
頭痛の発生 | これらの要因が複合的に作用して緊張型頭痛が生じる |
つまり、長時間同じ姿勢を続けることで首や肩の筋肉が緊張し、血流が悪くなり、神経が圧迫されることで肩こりと頭が痛い状態が発生するのです。特に、デスクワークやスマホの使用が多い現代人は、この問題に悩まされやすい傾向があります。厚生労働省の肩こり対策では、適切な運動と休息の重要性が指摘されています。
肩こりによる頭痛の主な原因
肩こりと頭痛の関連性について理解したところで、次にどのような生活習慣や環境が肩こりを引き起こし、結果として頭痛につながるのかを見ていきましょう。
不良姿勢
猫背やうつむき加減の姿勢は、首や肩に過度な負担をかけます。特に長時間のデスクワークやスマホ使用時に頭を前に傾ける「ストレートネック」や「テキストネック」と呼ばれる状態は、筋肉の緊張を引き起こし、肩こりや頭痛の原因となります。姿勢改善については正しい姿勢の保ち方で詳しく解説しています。
筋肉の疲労と血行不良
同じ姿勢を長時間続けることで、筋肉が緊張し疲労します。これにより血行が悪くなり、筋肉内に老廃物が蓄積されるため、肩こりが悪化します。特に冷えは血行不良を促進するため、冷房の効いた環境での長時間作業は注意が必要です。
ストレス
精神的なストレスは、知らず知らずのうちに首や肩の筋肉を緊張させます。ストレスによって交感神経が優位になると筋肉が収縮し、緊張状態が続くことで肩こりや頭痛につながります。
睡眠環境の問題
不適切な枕の高さや硬さ、寝具の質は、首や肩の負担につながります。睡眠中の姿勢が悪いと、起床時に首や肩のこりを感じ、それが頭痛へと発展することがあります。
これらの原因を理解することで、日常生活の中で予防策を講じることができます。次に、具体的な対処法について見ていきましょう。
肩こりと頭が痛い時の効果的な対処法
肩こりによる頭痛を緩和するためには、首や肩の筋肉の緊張を和らげ、血行を促進することが重要です。以下に、自宅でできる効果的な対処法をいくつか紹介します。
首と肩のストレッチ
首や肩の筋肉をストレッチすることで、多くの場合、緊張を緩和し、血行を促進できる可能性があります。理学療法士が推奨する簡単なストレッチを紹介します。効果的なストレッチ方法はストレッチ記事をご参照ください。
手のひらを天井に向けて、軽く握ってもらって、手首を返して、この状態のまま腕を後ろのほうに持っていきます。肩甲骨の内側がピリピリしてくるのを感じて、内側の筋肉をしっかり伸ばしていきましょう。
このストレッチを1日に数回、各10秒程度行うことで、首や肩の筋肉の緊張を和らげることができる可能性があります。特に、長時間同じ姿勢で作業した後や、肩こりと頭が痛い症状を感じ始めたときに効果的です。
温めることによる血行促進
お風呂で体を温めたり、肩や首にホットタオルやカイロを当てたりすることで、筋肉の緊張をほぐし、血行を促進することができます。特に冷えを感じる季節や、エアコンの効いた環境で長時間過ごした後は、積極的に温めることをおすすめします。
適度な運動
デスクワークの合間にストレッチや軽い運動を取り入れることで、筋肉の緊張を防ぎ、血行を促進できます。例えば、オフィスでの簡単なストレッチや、昼休みの短い散歩などが効果的です。
肩こりと頭が痛い症状の予防には、定期的に体を動かすことが効果的で、運動習慣を身につけることで症状の発生頻度も減少する可能性があることが研究で示唆されています。運動は血行を促進するだけでなく、ストレス解消にも効果的です。
自宅でできる肩こりによる頭痛の即効性対策
肩こりと頭が痛い状態に悩まされているとき、すぐに試せる対策があります。以下に即効性のある方法をご紹介します。
姿勢の改善
デスクワークやスマホ使用時の姿勢を意識することで、首や肩への負担を軽減できます。以下のポイントに注意しましょう:
- モニターの高さを目線と同じか少し下に調整する
- 椅子の高さを適切に調整し、背筋を伸ばして座る
- 長時間同じ姿勢を続けないよう、定期的に姿勢を変える
- スマホを見るときは、持ち上げて目線に近づける
正しい姿勢を維持することで、首や肩の筋肉への負担が軽減され、肩こりや頭痛の予防につながります。
マッサージ
自分でできる首や肩のマッサージや、プロによるマッサージも効果的です。特に、首の付け根や肩甲骨周辺の筋肉をほぐすことで、緊張を和らげ、血行を促進できる可能性があります。
マッサージは軽い圧で始め、徐々に強さを調整しながら行いましょう。痛みを感じるほど強く押すことは避け、心地よいと感じる強さを保つことが重要です。
適切な睡眠環境
自分に合った枕の高さや硬さを選び、質の良い睡眠を確保することで、首や肩の負担を軽減できます。横向きで寝る場合は、首が曲がりすぎないよう、適切な高さの枕を選びましょう。
いつ医療機関を受診すべきか
自宅でのケアで改善が見られない場合や、以下のような症状がある場合は、医療機関を受診することをおすすめします:
- 突然の激しい頭痛
- 頭痛に加えて吐き気や嘔吐がある
- 視覚異常や言語障害を伴う頭痛
- 以前に経験したことのないような強い頭痛
- 頭痛が徐々に悪化している
- 50歳以降に初めて現れた頭痛
これらの症状は、単なる肩こりからくる頭痛ではなく、より深刻な疾患の可能性があります。早めに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが重要です。
肩こりからくる頭痛の予防法
最後に、肩こりからくる頭痛を予防するための日常的な取り組みについて紹介します。
定期的なストレッチと運動
日常的に首や肩のストレッチを行い、適度な運動を心がけることで、筋肉の緊張を防ぎ、血行を促進できる可能性があります。特にデスクワークが多い方は、1時間に一度は軽いストレッチを行うことをおすすめします。
作業環境の整備
デスクの高さやモニターの位置、椅子の調整など、作業環境を整えることで、不良姿勢による肩こりを予防できます。また、適切な照明も目の疲れを防ぎ、間接的に肩こりの予防につながります。
ストレス管理
ストレスは筋肉の緊張を引き起こす大きな要因です。ストレスを適切に管理するための時間を作り、リラックスする習慣を身につけることが重要です。例えば、趣味の時間を確保したり、深呼吸やメディテーションを取り入れたりすることが効果的です。
まとめ
肩こりと頭が痛い症状は、現代社会で多くの人が悩まされる問題ですが、適切な対処法と予防策を知ることで、かなり改善することができる可能性があります。首や肩の筋肉の緊張を和らげるストレッチ、適切な姿勢の維持、温めによる血行促進など、日常生活に取り入れやすい方法で対処していきましょう。
症状が重い場合や改善が見られない場合は、医療機関を受診し、専門的なアドバイスを受けることも大切です。健康な身体は、仕事や日常生活のパフォーマンスを向上させる基盤となります。この記事を参考に、肩こりと頭痛のない快適な毎日を目指してください。
肩こりと頭が痛い時のよくある質問
Q. 肩こりと頭が痛い場合、片頭痛との違いは何ですか?
A. 肩こりからくる頭痛(緊張型頭痛)は、頭全体が締め付けられるような鈍い痛みが特徴で、首や肩のこりを伴います。一方、片頭痛は通常頭の片側がズキズキと脈打つような痛みがあり、光や音に敏感になったり、吐き気を伴ったりします。また、片頭痛は前兆(視覚異常など)が現れることもあります。
Q. デスクワークが多い場合、肩こりと頭が痛くなるのを予防するにはどうすればよいですか?
A. デスクワークが多い場合は、1時間に1回程度は姿勢を変えたり、軽いストレッチを行ったりしましょう。モニターの高さを目線と同じかやや下に調整し、椅子の高さも適切に設定します。また、デスクワークの合間に首や肩のストレッチを行い、定期的に水分補給をすることも効果的です。
Q. 肩こりと頭が痛いとき、効果的な市販薬はありますか?
A. 肩こりからくる頭痛には、鎮痛成分と筋肉の緊張を和らげる成分を含む市販薬が効果的な場合があります。具体的には、イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの鎮痛成分に加え、筋弛緩作用のある成分を含む薬が適していることがあります。ただし、長期的に使用する場合は医師に相談することをおすすめします。
Q. 肩こりによる頭痛が慢性化したらどうすればよいですか?
A. 慢性化した場合は、自己ケアだけでなく専門医の診察を受けることをおすすめします。整形外科や神経内科、頭痛専門外来などで適切な診断と治療を受けましょう。また、理学療法士によるリハビリテーションや、生活習慣の見直しも効果的です。ストレス管理や睡眠の質の改善も重要な要素です。
Q. 首や肩のストレッチはどのくらいの頻度で行うのが効果的ですか?
A. 首や肩のストレッチは、デスクワークなど同じ姿勢を続ける場合は1時間に1回程度、各ストレッチを5〜10秒間、2〜3回繰り返すのが効果的とされています。朝起きたときと就寝前にも行うと、筋肉の緊張を予防・緩和できる可能性があります。無理なく続けられる頻度で習慣化することが重要です。
Q. 気象条件や自律神経の乱れも肩こりと頭痛に影響しますか?
A. はい、影響する可能性があります。気圧の変化や湿度、気温の変動は肩こりからくる頭痛に影響することがあります。また、自律神経の乱れは筋肉の緊張や血管の収縮・拡張に影響し、頭痛を引き起こすことがあります。規則正しい生活習慣を心がけ、ストレス管理を行うことで、気象変化や自律神経の乱れによる症状を軽減できる可能性があります。