この記事は「日本身体運動科学研究所 代表理事・笹川 大瑛」の監修のもと作成されています。
肩こりと動悸は、一見無関係に思えるかもしれませんが、実は深い関係があります。肩こりの原因は肩ではなく、肩甲骨を動かす筋肉にあり、この筋肉が硬くなることで血行不良を引き起こし、さらに自律神経の乱れにつながることがあります。この記事では、肩こりと動悸の関係、原因、そして効果的な改善方法について詳しく解説します。
肩こりの原因は肩ではなくて、肩甲骨を動かす筋肉にあります。肩甲骨周りの筋肉が衰えやすいのは、スマホやパソコンを使うときに長時間じっとして前傾した姿勢を続けている時です。
目次
肩こりと動悸の深い関係性について
長時間のデスクワークやスマホ使用で、私たちの肩甲骨周りの筋肉は硬くなりがちです。この状態が続くと、筋肉の緊張が血流を悪くし、さまざまな症状を引き起こします。特に注目すべきは、肩こりと動悸の関係です。
なぜ肩こりが動悸を引き起こすのか?
肩こりが動悸を引き起こす主なメカニズムは以下の通りです:
メカニズム | 影響 |
---|---|
肩甲骨の固着 | 肩甲骨が胸郭にベタッとくっつき、肺の動きが制限される |
呼吸の浅化 | 肺の働きが制限され、体に十分な酸素が取り込めなくなる |
自律神経の乱れ | 交感神経が優位になり、心拍数が増加して動悸を感じる |
血圧上昇 | 筋肉のコリによって交感神経が緊張し、血圧が上がる |
肩甲骨が動かず呼吸も浅くなり全身への酸素の供給も減り、全身でも大きな割合を占める肩甲骨の筋肉が働かずに血流が低下して全身があっという間に老化してしまうんです。
肩こりと動悸の主な原因
肩こりと動悸の症状が同時に現れる場合、以下のような原因が考えられます:
1. 悪い姿勢と筋肉の緊張
長時間のデスクワークやスマホ使用による前傾姿勢は、肩甲骨周りの筋肉を緊張させます。特に、前鋸筋、菱形筋、小胸筋が働かなくなると、肩甲骨が胸郭にベタッとくっついた状態になります。
この状態が続くと、首や肩の筋肉がさらに緊張し、血流が悪化します。姿勢の悪さは単なる見た目の問題ではなく、体全体の機能に影響を及ぼす重要な要因なのです。
2. 自律神経の乱れ
ストレスや睡眠不足、不規則な生活などは自律神経のバランスを崩します。自律神経が乱れると、交感神経が優位になり、心拍数の上昇、不整脈、動悸などの症状が現れやすくなります。また、自律神経の乱れは筋肉の緊張も引き起こすため、肩こりも悪化します。
肩こりと動悸の改善には、自律神経のバランスを整えることが重要です。また、日常的なストレッチや正しい姿勢の維持も効果的です。
3. 血流の低下と酸素不足
肩甲骨周りの筋肉がガチガチに硬くなると、全身の血流が悪くなります。血流が低下すると、酸素や栄養素の供給が減少し、老廃物が蓄積されます。これにより、脳への酸素供給も減少し、思考力や認知能力の低下につながる可能性があります。
また、血流の低下は冷えやむくみの原因にもなり、特に女性は症状を感じやすいでしょう。定期的な運動と肩甲骨の動きを改善することで、これらの症状を緩和できます。
詳しい肩甲骨のメカニズムについては日本整形外科学会でも解説されています。自律神経と肩こりの関係については厚生労働省の健康情報も参考になります。
肩甲骨はがしとは?肩こりと動悸の改善に効果的なアプローチ
肩甲骨はがしとは、肩甲骨周囲の筋肉を働かせて、胸郭にベタッとくっついた肩甲骨がスムーズに動くようにするトレーニングです。肩甲骨が自由に動くようになることで、呼吸が深くなり、全身に酸素が行き渡るようになります。
肩こりと動悸の改善には、肩甲骨周りの筋肉をほぐし、血流を促進することが効果的と考えられています。特に効果的なのが「肩甲骨はがし」と呼ばれるエクササイズです。
肩甲骨はがしの効果
肩甲骨はがしを定期的に行うことで、筋肉の柔軟性が向上し、血流が改善され、冷えやむくみも軽減されます。さらに、筋肉量が増加することで代謝がアップし、疲れにくい体づくりにもつながります。
また、肩甲骨の動きが良くなることで、猫背や巻き肩といった姿勢の問題も改善され、見た目にも美しい姿勢を保てるようになります。これは単なる美容効果だけでなく、内臓の働きを正常に保つためにも重要です。
椅子に座ったままできる肩甲骨はがしエクササイズ
以下は、デスクワーク中でも簡単にできる肩甲骨はがしのエクササイズです。各エクササイズは10秒間行います。毎日続けることで、徐々に効果を実感できるでしょう。
1. 前鋸筋のトレーニング
- 手の甲を合わせて、斜め45度くらいに手を上げる
- この状態でグッと手を伸ばし、脇に力を入れる
- 手を伸ばし続けるように10秒間力を入れる
2. 肩甲下筋のトレーニング
- 片方の手はそのままで、もう片方の手を内側に入れる
- 内側に向けてグッと力を入れ、反対の手で押さえる
- 10秒間この状態を維持する
3. 菱形筋のトレーニング
- 手のひらを天井に向け、肘を90度くらい曲げる
- 両肘をグッと内側の方に引き寄せる
- 肩甲骨の内側に力が入るよう10秒間維持する
4. 上腕三頭筋のトレーニング
- 手のひらを前に向けたまま、肘を伸ばし続ける
- 二の腕の裏側に力を入れる
- 10秒間この状態を維持する
肩こりと動悸の改善に効果的なその他の方法
肩甲骨はがしのエクササイズに加えて、以下の方法も肩こりと動悸の改善に効果的です:
1. 正しい姿勢を意識する
長時間のデスクワークやスマホ使用時は、背筋を伸ばし、肩が前に丸まらないよう意識しましょう。定期的に姿勢をチェックし、必要に応じて修正することが重要です。座り方一つで肩こりの症状が大きく変わることもあります。
特に注意すべきは、モニターの高さです。目線よりも低すぎると首を前に出す姿勢になり、首や肩の負担が増加します。モニターは目線と同じか、やや下に設置するのがおすすめです。
2. ストレスを軽減する
ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、肩こりや動悸の原因となります。十分な睡眠、適度な運動、リラックスできる時間を作るなど、日頃からストレス管理を心がけましょう。
特に有効なのは、深い呼吸法です。1日に数回、意識的に深呼吸を行うことで、交感神経の過剰な活動を抑え、副交感神経の働きを促進します。これにより、心身のリラックス効果が得られます。
3. 温浴やマッサージで血行を良くする
温かいお風呂やマッサージは、血行を良くし、肩の筋肉の緊張を和らげる効果があります。特に肩甲骨周りのマッサージは、筋肉の緊張を緩和し、血流を促進します。入浴時に肩を温めながら軽くマッサージするだけでも効果があります。
また、半身浴やストレッチ風呂など、じっくりと体を温める方法も効果的です。体の芯から温まることで、筋肉の緊張がほぐれ、血行が促進されます。
4. 定期的な運動と栄養バランス
ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、全身の血流を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。特に肩甲骨を意識的に動かす運動は、肩こりの予防や改善に効果的です。
また、栄養バランスの取れた食事も重要です。特にマグネシウムやカリウムなどのミネラルは、筋肉の緊張緩和に役立ちます。緑黄色野菜、ナッツ類、魚介類などを積極的に摂取しましょう。
肩こりと動悸に関するよくある質問
Q. 肩こりが原因で動悸が起こるメカニズムは?
A. 肩こりが悪化すると、肩甲骨が胸郭にベタッとくっつき、呼吸が浅くなります。これにより全身への酸素供給が減少し、自律神経のバランスが崩れます。特に交感神経が優位になると、心拍数が上昇し、動悸を感じるようになります。また、筋肉のコリによって血管が圧迫され、血圧上昇や心臓への負担増加につながることもあります。
Q. 肩こりと動悸が同時に起こる場合、病院を受診すべき?
A. 肩こりと動悸が突然強く現れたり、長期間続く場合は、心臓の病気や脳卒中の可能性もあるため、すぐに医療機関を受診することをお勧めします。特に、息切れ、胸痛、めまい、意識の混濁などの症状を伴う場合は、緊急の対応が必要です。自己判断は避け、内科や循環器科などの医療機関で原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。
Q. 肩甲骨はがしのエクササイズはどのくらいの頻度で行うべき?
A. 肩甲骨はがしのエクササイズは、理想的には毎日2〜3回、特にデスクワークやスマホ使用の合間に行うことをお勧めします。各エクササイズは10秒程度で完了するため、短時間で効果的に筋肉を活性化できます。朝起きた時、昼休み、夕方の帰宅後など、日常生活の中で定期的に取り入れると効果的です。継続することで、張り付いていた肩甲骨がスルスル動くようになり、肩こりや動悸の症状が徐々に改善していきます。
Q. 肩こりによる動悸と心臓の病気による動悸の見分け方は?
A. 肩こりによる動悸は、通常、姿勢の改善やストレッチで症状が和らぎ、持続時間も比較的短いことが多いです。一方、心臓の病気による動悸は、突然発症し、強い胸痛や息切れ、冷や汗などを伴うことがあります。また、安静時にも症状が続く場合は注意が必要です。自己判断は危険なので、不安がある場合は医師に相談してください。
Q. 肩こりと動悸の改善に効果的な食事や栄養素はありますか?
A. マグネシウムやカリウムなどのミネラルは筋肉の緊張緩和に役立ちます。マグネシウムは緑黄色野菜、ナッツ類、豆類に、カリウムはバナナ、アボカド、ほうれん草などに多く含まれています。また、オメガ3脂肪酸(青魚に多い)には抗炎症作用があり、血流改善に効果的です。水分摂取も十分に行い、カフェインや刺激物の過剰摂取は避けるようにしましょう。
Q. デスクワーク中の肩こり予防に効果的な対策は?
A. デスクワーク中は、30分ごとに小休憩を取り、軽いストレッチを行うことが効果的です。モニターの高さを目線と同じかやや下にし、キーボードは肘が90度になる位置に調整しましょう。また、背もたれのある椅子を使用し、背筋を伸ばして座ることで、肩への負担を軽減できます。加えて、本記事で紹介した肩甲骨はがしのエクササイズを定期的に行うことで、肩こりを予防できます。
Q. 肩甲骨はがしは運動が苦手な人でもできる?
A. はい、肩甲骨はがしは運動が苦手な方でも無理なく行えるエクササイズです。座ったままでもできる簡単な動きが多く、特別な道具も必要ありません。各エクササイズは10秒間の力の入れ方が基本となっており、激しい動きや複雑な姿勢を取る必要はありません。毎日の生活の中で、テレビを見ながらや休憩時間に気軽に取り入れることができます。
まとめ:肩こりと動悸の改善に向けて
肩こりと動悸は、肩甲骨周りの筋肉の緊張や自律神経の乱れが原因で起こることが多いです。これらの症状を放置すると、全身の血流が悪くなり、酸素供給が減少し、さまざまな健康問題につながる可能性があります。
本記事で紹介した肩甲骨はがしのエクササイズは、肩こりと動悸の改善に効果的です。特に、前鋸筋、肩甲下筋、菱形筋、上腕三頭筋のトレーニングを定期的に行うことで、肩甲骨の動きが良くなり、呼吸が深くなり、全身に新鮮な酸素が行き渡るようになります。
ただし、突然の強い肩こりや動悸、特に胸痛や息切れを伴う場合は、心臓の病気や脳卒中の可能性もあるため、すぐに医療機関を受診してください。自己判断は避け、専門医による適切な診断と治療を受けることが重要です。
日常生活では、正しい姿勢を意識し、ストレス管理を心がけ、定期的な運動を取り入れることで、肩こりと動悸の予防や改善につなげましょう。健康的な生活習慣を続けることで、全身の血流が改善し、自律神経のバランスも整っていきます。
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